小説「夢結ぶ星りんご」~深い森とマルクソウル~

少しして、アイシェは目を擦りつつゆっくりと目を覚ました。

アイシェ「んっ…マホロア…?」

マホロア「ン…ンン…。」

傍で眠るマホロアを優しく揺するアイシェだが、マホロアは全く起きない…

いつもならすぐに起きるのに…不思議に思うアイシェだったが、頭上に大きな影が横切った!

アイシェ「マルク!」

影の正体はマルクで、アイシェはそのまま飛び去った彼を追って走り出した。

夢中で追っていたアイシェが気づいた時にはマルクの住む深い森に居て、辺りを見渡すも姿は無くて僅かな月明かりが差し込んでいるのみ…

すると、突然後ろからバッとマルクが現れた!

マルク「ギシシシシシッ!!」

薄暗い中に浮かぶマルクの紫の瞳は細く、いつもと笑い方も違う…

それによく見ると姿も違っていて…二股の帽子は鮮やかな赤と青では無くエメラルドグリーンと紫に、帽子の先の丸いポンポンもギザギザの物に変わっている

胸元の赤いリボンも禍々しいデザインの首飾りに変わり、靴も先が尖った物になっていて…彼の特徴的な煌めきの翼は黄色から赤に変わり形も刺々しく、鉤爪も3本に増えていた。

アイシェはその姿に見覚えがあった…それは生前「星のカービィウルトラスーパーデラックス」で「真格闘王への道」に出てきた事実上のラスボス…

「マルクソウル」その者だった。

アイシェ「マルク…どうしてその姿に…!?」

驚きを隠せないアイシェだが、マルクソウルは不気味な笑みを浮かべたまま翼をバッと広げると…

ズバッ!!

赤い薔薇の咲いた茨が地面から生え、アイシェの周りをあっという間に塞いで逃げ道を断たれた。

マルク「ギシシ…ギシシシシッ!」

アイシェ「マルク…!」

マルク「ギシシ…!」

じりじりと近づくマルクソウルに後ずさりするアイシェだが、周りの茨がそれを阻んでどんどん追い詰められていったその時!

アイシェ「痛っ…!」

茨の棘が手袋越しにアイシェの指に刺さり、脱いで見ると血が流れていた…。

するとマルクソウルはアイシェの手首を掴んでグイッと引っ張り…流れる血を舐め取った。

マルク「……………。」

アイシェ「っ……!!」

マルクソウルの舌が艶めかしくアイシェの手を舐め回し、驚きと恥ずかしさに頬を真っ赤に染めていると…今度はそのまま彼に両手首を掴まれてしまい…

ドサッ…アイシェが持っていた大きなバスケットが地面に落ちて、お菓子の入った袋が少し散らばった。

マルク「……………。」

さっきまでの不気味な笑みから一転、真顔になったマルクソウルの鋭い瞳がアイシェを見つめ…首元のリボンを咥えるとそのまま引っ張って解いてしまった。

カシャン…通信機チャームが音を立ててリボンと共に地面に落ち、パサッと乾いた音と共にフードが脱げて…

マルクソウルはアイシェの首元に顔を近づけると、大きな口を開けて鋭く光る牙を覗かせ…カプッと優しく噛みついた。

アイシェ「ひゃんっ…!」

マルク「…アイシェ…。」

驚きとくすぐったさで思わず目を瞑り声を漏らすと、少し狂気を含みつつも優しい声音で自分の名前を呼んできて…アイシェはゆっくり目を開けてマルクソウルを見た

アイシェ「マル…ク…?」

マルク「……………。」

するとマルクソウルはアイシェの手首を解放し大きなバスケットに顔を近づけて、クンクンと匂いを嗅いでいる。

アイシェ「お菓子…食べる?」

まだ戸惑いが残りつつも、アイシェが微かに震える手でそっとお菓子を渡すと…

マルク「Trick or ………Trickなのサ!」

そう言ってお菓子を受け取ると、アイシェの頬を鉤爪で優しくむにゅっと掴んだ!

アイシェ「ひゃ…!?」

驚いて青い瞳をぱちぱちさせるアイシェ…するとマルクソウルのさっきまでの雰囲気とは一転して、イタズラな笑みを浮かべて笑う「いつものマルク」の姿がそこにあった。

マルク「イタズラ大成功なのサ!まんまと引っ掛かったな〜アイシェ!」

アイシェ「えっ…マルク…なの?」

マルク「ボクは最初からボクなのサ。」

アイシェ「えぇ…それじゃあ、マルクソウルだと思ってたのは…そう演じてたの?」

マルク「そうなのサ、お前がいつ気づくかと思ってたけど…全然気づいてねーんだもん、面白くてついイタズラ続行しちゃったのサ!ま、許してちょーよ!」

アイシェ「もうっ…マルクったら!」

マルク「おっほっほっほっほっ!」

さっきまでの出来事が全て最初からマルクに仕掛けられた事だったと知ったアイシェは、頬を少し膨らませて抗議するもマルクは嬉しそうに笑うばかり…

しかし、急に真顔になるとアイシェの傷ついた手を取った。

アイシェ「どうしたの?」

マルク「ほら、指を見せてみろ。」

そう言ってアイシェの指の傷に鉤爪をかざすと…

パアァ…小さな光がたくさん包みこみ、傷を治してくれた。

アイシェ「傷が…ありがとうマルク。」

マルク「傷付けるつもりは無かったからな、悪かったのサ。」

少し頬を赤く染めて照れつつ、そっぽを向くマルクにアイシェが手袋をしながらクスッと笑うと…

マホロア「フフッ…フフフフフ…見つけタヨォ~?」

突然背後からマホロアの声が聞こえて…マルクはビクッと跳ね上がった!

そのままアイシェの隣に移動すると、マルクの居た場所から魔法陣が現れ…マホロアが出てきた。

マルク「ぎゃあぁぁぁ!!」

アイシェ「ま…マホロア!?」

突然現れたマホロアに、驚きを隠せない2人だが…

マホロア「ブラボー、ブラボー!ボク達を眠らせて、コ~ンナ風にイタズラしチャウなんテ…随分と楽しかったみたいダネェ~マルク?」

マルク「マホロアお前…何でここに?」

マホロア「ボクはアイシェの居場所が簡単に分かるんダヨォ。気を集中させレバ気配で探せるシ、通信機チャームもあるしネェ?」

黄色い瞳を弓形に細めながら、邪悪な笑みを浮かべて拍手をしながら近づくマホロアに、マルクは冷や汗をダラダラと流していて…

マルク「い…いつから居たのサ?」

マホロア「ンン~いつカラダロウネェ?」

マルク「……………!!」

さっきよりも細くなるマホロアの瞳は、より邪悪さを含みながらマルクの紫の瞳を覗き込んでいて…

アイシェ「マホロア…!」

危険を感じたアイシェは、マホロアの名前を呼んだ。

マホロア「アイシェ、無事でヨカッタヨォ〜!」

そう言いながらマホロアはマルクから離れ、アイシェを抱きしめた。

マルク「(はぁ…イタズラがバレずに済んだのサ…流石にちょっと度が過ぎてたからな…コイツに知られたらとんでもねー事になってたのサ…。)」

ふぅ…と小さく溜息を吐いて安心したマルクだったが…

マホロア「…バレてるんダヨネェ~マルク?」

その言葉に、マルクの体は再びビクッと跳ね上がった!

To be continued…