寝る時間を迎え、マルクの寝室へ向かうと…
アイシェ「わぁ…!」
とても大きくてふかふかそうなベッド、枕元にはたくさんのクッションが敷き詰められていて、近くに置かれたランプから照らされる優しい灯りが気持ちをリラックスさせてくれる。
マホロア「落ち着いた部屋ダネェ。」
マルク「寝室だから、余計な物は置かないのサ。」
アイシェ「ふかふかで気持ちいーい!」
そっとベッドに上がると…予想通りふかふかな事にアイシェは大喜びで、クッションをぎゅっと抱きしめて顔を埋め、耳は喜びを表現する様にピコピコと動いている。
マホロア「マルク、アレは何ダイ?」
そう言って、マホロアは天井の1ヶ所だけに付いている扉を指差した。
マルク「今から教えてやるのサ。」
そう言うと、マルクは灯りを消してしまい…寝室は真っ暗になってしまった。
アイシェ「わっ…どうしたの?」
マホロア「何を企んでるんダヨォ!?」
驚く2人だが、マルクの笑い声が帰ってくるのみ…
すると、突然視線の先でパッと灯りが点いて…そこには玉乗りをするマルクの姿があった。
マルク「おっほっほっほ「Malx circus」へようこそなのサ!」
アイシェ「Malx circus…どんな事をするの?」
マルク「2人は大事なお客様、これからボクが魔法のショーをお見せするのサ!」
マホロア「魔法のショー?」
マルク「まずはこちらなのサ!」
そう言うと、マルクは玉乗りをしたまま魔法で「クラブ」を出してジャグリングを始めた。
最初は2つだったが、次に3つ、4つ…とどんどん増えていき…最終的には6つのクラブを器用にジャグリングしていった。
アイシェ「すごい、すごいよマルク!」
青い瞳をキラキラ輝かせてはしゃぐアイシェだが、マホロアは真顔でじっと見ている…
それはつまらないからでは無くて…マルクのパフォーマンスに「魅せられて」いたから。
マホロア「…………!!」
マルクはそんなマホロアの様子を見るとニッと笑い…
クラブをポンと一瞬で消すと、次はバルーンを取り出してプゥーッと膨らませ、アイシェの前に持って来てそっと差し出した。
アイシェ「え、私に?」
マルク「プレゼントなのサ。」
優しい笑みを浮かべるマルクから、そっとバルーンを受け取ると…
パンッ!バルーンは目の前で小さく弾けた!
アイシェ「きゃあっ!」
驚いたアイシェだが、次の瞬間…その小さな手の中には赤と青のリボンで結ばれた一輪の薔薇の花があった。
マルク「気に入って貰えたのサ?」
アイシェ「うん、ありがとうマルク!」
薔薇の香りを楽しみながら喜ぶアイシェに、マルクも満足気で…マホロアはそんな2人のやり取りを見つつも相変わらず魅入っていて…
マルク「ラストスパートなのサ!」
そう言うと、マルクは玉乗りを止めてボールを消し…煌めきの翼を出した。
暗闇の中、煌めきの翼は色とりどりに輝いていて…それだけでも幻想的な気持ちにさせてくれる
2人がじっと見ていると、マルクは翼からキラキラと光を出しながら天井へ向かい…
さっきマホロアが聞いた「天井の扉」をそっと鉤爪で開いた。
すると天井が徐々に透けていき…そこに広がるのは美しい夜空
アイシェ「わぁ…綺麗!」
色とりどりの星が輝き、まるでプラネタリウムの様だ。
マホロア「マルク…コレもキミの魔法ナノ…?」
驚いたマホロアがポツリとそう呟くと、マルクは天井で浮いたまま口を開き…
マルク「これは魔法じゃ無くて、ボクの家の仕掛けなのサ。」
マホロア「マルクの家の仕掛け…魔法が無くテモ…こんな素敵なコトが出来るんダ…。」
マホロアの目の前はパチパチと小さな星が瞬き、心はワクワクする気持ちがどんどん湧き上がり、心臓は煩いくらいに高鳴っている。
マルク「お前の夢に少しは役立つのサ?」
そう言ってイタズラっぽく笑うマルクだが、マホロアはドキドキしたまま星空を眺めていて…
マホロア「(凄い…ボクもこんな風にミンナをドキドキさせタイ…そんな驚きと楽しさがたくさん詰まっタ…夢を届けられるテーマパークにしタイ…!!)」
アイシェ「素敵…。」
頬を赤く染めて見蕩れているアイシェに、マルクも満足げな様子で降り立ち…しばらく3人で星空を眺めた。
その後、徐々に天井を元に戻しながら枕元に座ったが…
マホロア「アイシェ、コッチに来てヨォ。」
マルク「マホロアと隣は嫌なのサ!」
マホロア「マルクはソファで寝ればイイデショ!」
マルク「何で家主がソファなのサ!」
マホロア「コッチはお客様ダヨ、当然ダロ!」
アイシェ「2人共やめて…!」
いつもの様にギャアギャアと騒ぎ始めてしまい、アイシェが仲裁に入った。
マホロア「ボクの可愛いアイシェをマルクと一緒になんて寝かせらんネーヨ!」
マルク「ボクをケダモノみたいに言うんじゃねーのサ!」
マホロア「ホントのコトダロ!」
マルク「それはお前なのサ!」
アイシェ「もう…喧嘩しないで、みんなで一緒に寝ようよ。」
そう言って、アイシェはマホロアのマルクの間に入ってクッションに頭を乗せた。
マホロア「アイシェ…!」
マルク「これなら一番イイのサ。」
マホロア「テメー、寝てるアイシェに手出しタラ処刑するカラナ!」
マルク「手出さねーよ!」
その後も2人はしばらくアイシェを挟んで軽く言い争いをしていたが…
アイシェ「すぅ…すぅ…。」
いつの間にかアイシェは夢の世界へ旅立っていて、規則正しい寝息が聞こえてくる
その表情は安心しきっていて…マホロアの手とマルクの鉤爪をしっかり握っていた。
マルク「寝ちゃってるのサ。」
マホロア「フフッ…ホントに可愛いナァ。」
そう言ってアイシェの前髪を少し避けて、おでこにキスをするマホロアは、そのままじっとアイシェを見ながら横になり毛布を掛けた。
マルク「全く…アイシェはマイペースなのサ。」
そう言いつつもマルクは嬉しそうで、鉤爪でアイシェの頭を優しく撫でながら横になった。
アイシェ「ん…すぅ…すぅ…。」
ぐっすり眠るアイシェを見て2人は穏やかな笑みを浮かべていて…
2人「おやすみ、アイシェ。」
そう囁くと、アイシェを眺めながら2人もじきに眠りについたが…その手は朝まで決して離される事は無かった。
To be continued…