マルクの家にお泊まりした数日後、ローアに遊びに来たタランザとお茶をしながら、アイシェはその出来事を話した。
タランザ「それはよかったの、マホロアにとってもいい刺激になったでしょ?」
マホロア「マルクの癖にやるとは思ったヨ?」
アイシェ「ふふっ、マホロアも目がキラキラしてたよ。」
マホロア「ソレはアイシェに見蕩れてたカラダヨォ~。」
タランザ「素直じゃないのね。」
素直じゃないマホロアの反応にほんの少しだけ困った様子で笑いつつ、楽しいお茶の時間は終わったが…
マホロア「…ネェ、タランザ?」
タランザ「どうしたのね?」
アイシェがティーポットやカップを洗っているのを見ながら、マホロアがタランザに声をかけた。
マホロア「ボク、キミにお願いがあるんダケド…。」
タランザ「キミの頼みは碌な事じゃないのね。」
マホロア「マルクと同じコト言うなヨォ!」
タランザ「本当の事なのね、どれだけ付き合いがあると思ってるの?」
マホロア「グッ…!」
渋い顔をするマホロアに、タランザはふぅ…と溜息を吐くと再び口を開いた。
タランザ「で、お願いは何なのね?」
マホロア「魔術の強化をしたいカラ、魔術書を読ませテ欲しいんダ。」
タランザ「魔術の強化…でもマホロア、キミは充分に強い魔術を会得してるのね。」
マホロア「攻撃とかに関してはネ…今回は守護の魔術ダヨ。」
タランザ「という事は、アイシェにかけてるのを強化したいのね?」
マホロア「ウン、星の歯車の冒険デモ役には立ったケド…アイシェを守る為にモット強化しタイからキミに協力シテ欲しいんダヨォ。」
タランザ「分かったの、それならアイシェと一緒にボクの部屋に泊まりに来るといいのね。」
マホロア「エッ…というコトは、あのお城にカイ?」
タランザ「お城だけじゃなくて、フロラルドから繰り出される自然の美しさを見せてあげるのね。」
マホロア「自然の美しさ…ウン、見てみたいナァ。」
タランザ「決まりなの、来るのを楽しみにしてるのね。」
マホロア「ありがトウ、タランザ。」
タランザ「フフッ、どういたしまして。」
そう言って優しく笑うタランザは、とても嬉しそうなのだった。
3日後…お泊まりの準備を終えた2人は、ローアに乗ってフロラルドへと向かった
船首部分に出て空を飛ぶツイジー達を眺め、ワープスターに乗ってお散歩していたカービィとバンワドに手を振り…しばしの空の旅を楽しんだ後に、フロラルドにあるお城が見えてきた
ローアは雲の上にゆっくりと降り、手続きを終えたマホロアがアイシェと共に外へ出ると、タランザが出迎えてくれた。
タランザ「マホロア、アイシェ、ようこそなのね!」
アイシェ「タランザ、お世話になります!」
マホロア「ヨロシクネェ~!」
タランザ「任せてなのね!まずは荷物を運んで、お茶にするのね。」
2人は荷物を持ち、タランザの案内で彼の部屋へ向かい…その後は彼の準備してくれた紅茶とクッキーで楽しいお茶の時間が始まった。
アイシェ「タランザのお部屋に来るのは久しぶりだね。」
タランザ「そうだね。…最初に出会った時は不思議な力を感じる厄介な子だと思ったけど、今ではボクの大切な友達の1人…縁って不思議なのね。」
アイシェ「ふふっ、うん。」
マホロア「アイシェがコノ世界に生まれ変わって来なかっタラ、ボク達が今ココでお茶をするコトも無かったカラネ…キミが繋いでクレタお陰デ今のボク達が居るんダヨ、アイシェ。」
タランザ「マホロアの言う通りなの、アイシェが居なかったら今でも仲が悪いままだったし、あの人の悲しみもずっと引きずったまま孤独だったと思うの…ありがとう、アイシェ。」
アイシェ「マホロア、タランザ……私こそありがとう、今こうして幸せな毎日を送れるのはみんなのお陰だもの。」
頬を赤く染めて嬉しそうに笑うアイシェに、マホロアとタランザも穏やかな優しい笑みを浮かべた。
その後はタランザの案内で城の中を見せて貰ったり、庭に咲く花畑を眺めたり、天空の民やセクトルディ達と交流した後…
アイシェが天空の民とお花の世話をしている間、マホロアは城の一室でタランザと2人きりになった。
タランザ「はい、これが魔術書なのね。」
マホロア「ありがトウ。」
タランザから魔術書を受け取り、彼が挟んでいてくれた栞のページを開くと…そこには守護の魔術を強化する術が書かれていた
古代文字で書かれた文字を丁寧に読み、その術を頭に叩き込むと…マホロアはゆっくりと魔術書を閉じた。
タランザ「早速強化をするのね?」
マホロア「ウン、しっかり覚えたカラすぐに取りかかるヨォ。」
タランザ「分かったの、じゃあ結界を張るのね。」
そう言うと、タランザは魔力を注いで強力な結界を張り…
マホロア「(アイシェの為ニ必ず会得シテみせル!)」
強い決意と共に、マホロアはゆっくりと目を閉じて集中し…
ブワッ!足下には魔法陣が出現して、マホロアの体を強力な魔力のオーラが包み込んだ。
小さく呪文を呟き、魔術書に書いてあった通りの手の動きで目の前に魔法陣を描くと、アイシェのリボンを取り出して魔法陣の中に浮かせ…ゆっくりと呪文を唱えつつ、少しずつ自身の魔力をリボンに注いでいく
魔力を注いでいく事で体力も精神も消費する為、あまり時間を掛ける訳にはいかず…集中するマホロアの頬を伝って汗が流れては雫となって床に落ちていく…
タランザ「(元々の魔力の才に加えて魔力を増強する薬を飲んだ事で、更に強い力になってるのね…!とはいえ、自身の魔力を全部注がないと守護の魔術の強化は不可能…頑張るのねマホロア!)」
マホロア「ハァ…ハァ…クッ…モウ…少し…モウ少しデ…!!」
息を切らし始めたマホロアだが、グッと堪えて残りの魔力を注ぎ込み…漸く全ての魔力をリボンに注ぎ終えた
タランザ「終わったのね…お疲れ様マホロア。」
マホロア「ハァ…ハァ……!」
タランザ「マホロア!」
ふらついて倒れそうになったマホロアをタランザが慌てて駆け寄って受け止めると、ゆっくりと瞬きをして呼吸を整えた。
マホロア「フゥ…ありがトウ、タランザ…アァ…疲れたヨォ…。」
タランザ「よく頑張ったのね、無事に成功したの。」
マホロア「ヨカッタ…コレでアイシェをモット守れるネ…。」
タランザ「魔力を回復しないとね、美味しいおやつを作ってあげる。」
マホロア「フフッ…楽しみダヨ…。」
タランザはまだ動けないマホロアを抱き上げると結界を消し、魔術書を本棚に戻して部屋を後にした。
その後、マホロアを部屋のソファに座らせてアイシェを迎えに行き…
アイシェ「マホロア!」
タランザから事情を聞いたアイシェは、とても心配した様子でマホロアの元へ駆け寄って来た。
マホロア「アイシェ、お帰り~楽しかったカイ?」
アイシェ「うん……でもマホロア、私の為に魔力を…!」
マホロア「モウ大丈夫ダヨ、魔力が回復すれバまた動けるカラネ。」
今にも泣きそうなアイシェを、マホロアは優しい笑みを浮かべてぎゅっと抱きしめ頭を撫でると、漸く安心した様子で抱き返してきた。
タランザ「それじゃあ、ボクはお菓子を作って来るのね。」
アイシェ「私もお手伝いするよ、タランザ。」
タランザ「ありがとう、アイシェ。」
2人がキッチンへ向かったのを見届けて、マホロアはしばらくソファから窓の外を眺め…いつの間にか眠ってしまった
あれからどれだけ経ったのだろう…マホロアが目を覚ますと、ちょうど2人が美味しそうな苺のカップケーキを持って来た所だった
楽しい時間は過ぎていき、夕陽が沈んで月が出てくるのを眺めた後に、お風呂の時間を迎え…アイシェが浴室に向かったのを見届けて、マホロアはタランザとのんびり過ごしていた。
マホロア「ココはホントに美しい場所ダネ、プププランドとはまた違う美しさがあるヨォ。」
タランザ「フロラルドは美しい植物や装飾がある…けど美味しい果物や優しい春風とかはプププランドでしか味わえないからね、それぞれの良さがあるから楽しめるのね。」
マホロア「ホントにそうダネェ。」
優しい風が窓から入って来てはカーテンがふわりと浮かび、傍のミニテーブルに置かれた本がパラパラと捲れ…外から運ばれてくる花の良い香りが鼻腔をくすぐる
何も音は無いが、とても心地良くて…マホロアはふぅ…と溜息を吐くと体の力がスゥーッと抜けてリラックスしていくのを感じた。
To be continued…