小説「夢結ぶ星りんご」~自然が魅せるドキドキとワクワク~

それからしばらくしてアイシェが上がり、マホロアとタランザも続けて入っていき…

晩ご飯は3人で仲良く作ったスペアリブにコーンスープ、野菜を花に見立てたフラワーサラダ、デザートには甘いカットメロンを準備して、楽しい食事の時間が始まった。

アイシェ「わぁ…いい香り!」

スペアリブを口に運ぶと肉は溶ける様に消え、煮込んだ時のワインの芳醇な香りとハーブの上品な香りが広がり…アイシェの目はキラキラと輝いた。

マホロア「ン、コレは美味しいネェ!」

続いて口にしたマホロアも、その柔らかい食感と香りに満足気だ

タランザ「ボクの一族の作り方なの、そう言って貰えて嬉しいのね!」

アイシェ「これがタランザの家庭の味、とっても美味しくて素敵な味だね。」

タランザ「アイシェ…そう言われると照れちゃうけど、ボクも嬉しいの…ありがとうなのね。」

アイシェ「どういしたしまして。」

マホロア「(家庭の味カァ…ジャア、ボクが毎日食べているノモ…アイシェの家庭の味なんダネ………フフッ、嬉しいナァ。)」

2人の会話を聞きながら食事を楽しむマホロアだったが、同時にアイシェの家庭の味をこうして毎日食べられるのも自分の特権である事に喜びが溢れ、自然と口角は上がって頬はほんのり赤く染まった。

夜、タランザは寝る前に窓から外へ向かって蜘蛛の糸を張っていて…

アイシェ「タランザ、どうして蜘蛛の糸を張ってるの?」

タランザ「これは明日の朝の為に仕掛けをしたのね。」

アイシェ「明日の朝の仕掛け?」

タランザ「答えは明日の朝に分かるのね。」

アイシェ「ふふっ、楽しみ。」

タランザ「それじゃあ…眠る前にある景色を見せてあげるのね。」

そう言うとタランザは2人を連れだし…扉の前で立ち止まった。

マホロア「何が起きるんダイ?」

タランザ「今、分かるのね。」

不思議に思う2人を見つつ、タランザはそっと扉を開けると…そこにはたくさんの白い蕾を付けた花があった!

アイシェ「これは…月下美人?」

タランザ「うん、ここは月下美人を育てている庭なの…満月の夜に、一気に咲いてくれるのね。」

月下美人をじっと見つめる3人…すると夜空に浮かぶ大きな満月の青白い月光を浴びて、蕾がゆっくりと開き始めた。

アイシェ「あ、咲き始めた!」

あっという間に開花すると、一面は蕾から花で埋め尽くされた!

咲き誇る月下美人はキラキラと輝いていて…儚くも美しいその花弁を大きく広げている

マホロア「星だけジャなくテ、花でもこうシテ魅せるコトが出来るんダネ…。」

そう呟くマホロアは息を飲んで魅入っていて、タランザはゆっくりと頷いた。

タランザ「花は色んな種類があって、季節や時間によって色んな表情をする…ボク達と一緒で生きているから、様々な一面を見せてくれるのね。」

マホロア「(テーマパークにも自然を取り入れたら…アトラクションとは別の楽しさも提供出来るのカナ…。)」

そう考えていたマホロアはふと…自分がハルカンドラに長く滞在していた時の事を思い出した。

話せる相手は誰も居ない…毎日ローアを修理しながら過ごす孤独な日々…

自然と言えば熱く滾る溶岩のみ…咲き誇る花やどこまでも広がる草原、青く生い茂る木々なんて物は無く、どこまでも続く灼熱と岩の世界…ここやプププランドとは遙かに違う、とても住める様な世界では無かったのだ。

色んな仕掛けやアトラクションで楽しませる事が出来れば…そう考えていたマホロアだったが、この前のマルクの家で見せて貰った仕掛け…そしてタランザが見せてくれた目の前の景色…

そうか…豊かな自然は心も豊かにしてくれるんだ…マホロアはそう思いながら、目の前の景色を眺めた。

タランザ「冷えるから、そろそろ戻るのね…よく眠れるカモミールティーを作ってあげる。」

その後部屋に戻り、タランザの作ったカモミールティーを飲むと…体はポカポカと温まり、自然と眠気が襲ってきて…目がトロンとしているアイシェをマホロアがそっと抱き上げて、ベッドに運んだ。

マホロア「フアァ…このカモミールティー、よく利くネェ…ボクも眠くなってきたヨォ…。」

今すぐ眠ってしまいそうなアイシェをそっとベッドに寝かせ、マホロアは大きなあくびをした。

タランザ「安眠に効果があるの、寝付きが悪い日も、これを飲めばよく眠れるのね。」

そう言いながらタランザはパジャマに着替え、この前と同じ様にアイシェを挟んでマホロアとタランザが横になり…そっと彼女の手を握った。

アイシェ「おやすみ…マホロア…タランザ…。」

そう言った直後、アイシェは眠ってしまい…規則正しい寝息が聞こえてくる

マホロア「フフッ…マルクの家デモこんな感じだったネ。」

タランザ「安心しきった顔をしてるの…ボク達を信頼してくれてるのが分かるのね。」

マホロア「おやすみ、アイシェ…大好きダヨ。タランザもおやすみ…。」

眠気が限界だったらしく、最後は声も小さくなりながらもマホロアは挨拶をして…そのまま眠ってしまった。

タランザ「おやすみアイシェ、マホロア…良い夢を。」

アイシェにピッタリと寄り添って眠るマホロアと、うっすら笑みを浮かべて眠るアイシェにタランザは優しい笑みを浮かべ、2人にしっかりと毛布をかけると自身もじきに眠りについた。

翌朝…温かい日差しでマホロアとアイシェが目を覚ますと、タランザは既に起きていた。

マホロア「フアァ…おはようタランザ…。」

アイシェ「おはよう、タランザ…。」

タランザ「おはようマホロア、アイシェ。早速だけど見せてあげるのね。」

マホロア「ン…アァ、昨夜の蜘蛛の糸のコト?」

アイシェ「ふふっ、どんな景色が見えるのかな?」

タランザ「見てのお楽しみなの、それじゃあ行くのね。」

着替えた後にタランザに手を引かれ、庭へ向かうと…

アイシェ「わぁ…蜘蛛の巣が…!」

マホロア「コレは…花の上に巣を張っているのカイ…?」

驚く2人の視線の先には、花畑の上に張られた巨大な蜘蛛の巣…朝陽で朝露が光り、まるで星の様に虹色にキラキラと輝いている。

タランザ「そうなのね、時々こうして巣を張ってるの。そして…こうなのねっ!」

そう言ってタランザがパチンと指を鳴らすと、巣は小さく下に動いた後に上に跳ね上がり…そのまま消えた

すると残された朝露がキラキラと輝きながら花に落ちていき、濡れた花弁からポタッと雫が落ちた。

アイシェ「綺麗…お花も嬉しそう…!」

マホロア「凄い…コレも自然が魅せてくれる光景ダネ…!」

マルクが見せてくれたサーカスのショーや仕掛け…タランザが見せてくれた自然を生かした美しい光景…それらも組み合わせればもっと…マホロアの黄色い瞳はキラキラと輝き、鼓動は大きく高鳴った

タランザ「キミの夢の役に立てると良いのね。」

マホロア「ウン、参考にさせテ貰うヨ…ホントにありがとう、タランザ…!」

タランザ「どういたしまして。」

目をキラキラ輝かせながらお礼を言うマホロアに、返事をするタランザも嬉しそうで…少しだけ頬も赤く染まっていた。

その後…朝食を終えた後にタランザに別れを告げ、ローアに乗ってプププランドへ帰って来た。

アイシェ「楽しかったね、マホロア!」

マホロア「ウン、とっても楽しかったヨォ!それデネ、アイシェ…新しいテーマパークの案を思いついたんダ。」

アイシェ「ふふっ、どんな案が思いついたの?」

優しい笑みで聞くアイシェに、マホロアも穏やかな笑みを浮かべ…

マホロア「テーマパークの入り口に、小さな木や色とりどりの花を植えたいんダ。」

アイシェ「素敵…たくさんのお花や木々を見ながら、マホロアの作ったテーマパークの中へ入って行くんだね。」

マホロア「ウン、機械ダケじゃなく自然も取り入れテ…全宇宙のミンナが魅入っチャウ様な素敵なテーマパークにしていくヨォ。」

アイシェ「うん、マホロアなら絶対に作れるよ。私もたくさんお手伝いするね。」

マホロア「ありがトウ、アイシェ。」

アイシェ「どういたしまして。」

2人はほんのり頬を赤く染めて笑い合い…そのままぎゅっと抱きしめ合った。

To be continued…