小説「夢結ぶ星りんご」~賑やかな元日~

マホロアは部屋に着くと、アイシェを床に置かれたクッションの上に下ろして…そのままゆっくりと押し倒していく。

アイシェ「マホロア…。」

頬を真っ赤に染めながら自分を見るアイシェが可愛くて、もっとイタズラをしたくなってしまう衝動を抑えつつも、ちゅっとキスをするとその頬は更に熱を帯びる。

マホロア「アイシェ…愛してるヨ。」

耳元で熱い吐息と共に囁き、首筋に唇を這わせながらそっとパジャマのボタンに手を掛けたマホロアだが…

アイシェ「ん…初日の出…見たい…。」

彼女の口から突然「初日の出」という言葉が出てきたので、マホロアは少し驚いてそのまま口を離すと、アイシェの顔を見た。

マホロア「初日の出っテ…コノ後見れるアレ?」

アイシェ「うん…。」

マホロア「…アハハッ、寝るのが遅くなっチャウから不安なんダネ?」

アイシェ「うん…ごめんなさいマホロア…。」

申し訳無さそうにするアイシェのおでこにキスを落とすと、マホロアはぎゅっと優しくもしっかり抱きしめた。

マホロア「気にしないデ、アイシェと一緒に初日の出を見れるナラ、ボクもそれが一番嬉しいモン。」

アイシェ「マホロア…ありがとう。」

マホロア「どういたしましテ。(お楽しみは後にとって置いた方がイイカラネェ…。)」

何か企んでいるとは知る由も無く、アイシェは嬉しそうな笑みを浮かべてマホロアをぎゅっと抱きしめた。

アイシェ「初日の出、一緒に見ようね。」

マホロア「ウン。」

優しく甘いキスを交わすと、マホロアは再びアイシェを抱き上げてベッドに向かい…抱きしめ合いながらじきに眠りについた。

数時間後…目を覚ましたマホロアは、カーテンを開けてまだ夜が明けていない事を確認して、そっとアイシェにキスをすると…小さく身じろぎしてゆっくりと目を覚ました。

アイシェ「おはよう、マホロア…。」

マホロア「おはよう、アイシェ。もうすぐ初日の出の時間を迎えそうダヨ。」

準備をするとローアから出て、水平線がよく見える近くの大きな木に移動して待っていると…

薄明の水平線の向こうから、太陽が顔を出し始めた。

アイシェ「あ、見えた!」

マホロア「ワァ…綺麗ダネェ!」

アイシェ「うん!」

海は太陽を映してキラキラと輝き、暗かった空は夜明けの薄い青とオレンジが混ざり、幻想的な世界を創り出して2人を魅了する。

マホロア「ホントに綺麗……こんなに綺麗な夜明けヲ見たのハ初めてダヨ。」

アイシェ「ポップスターは、どの景色も本当に美しいね。」

マホロア「奇跡の星…っテ呼ばれてるケド、ホントにその通りなんダネ。」

そう言ってマホロアはアイシェを抱き寄せる手に力を入れ、出会いと今この星に暮らせている幸せを改めて実感した。

その後も眺めていると、陽はあっという間に昇って空も明るくなり…

アイシェ「ふあぁ…。」

あくびをするアイシェを優しい眼差しで見たマホロアは、そっと抱き上げた。

マホロア「モウ少しダケ休もうネ。」

アイシェ「うん。」

2人はローアに戻ると、温かいベッドで再び眠りにつき…

起きた後はお雑煮やおせちを作り始めた。

マホロア「ンン~イイ香りダネ、楽しみダヨォ。」

アイシェ「ふふっ、もう少しで出来るからね。」

料理するアイシェを手伝いつつも、マホロアはお鍋の中や丁寧に詰められていくおせちを眺めて、黄色い瞳はキラキラ輝いている

それから少しして…おせちが完成したその時!

マホロア「…来たナ!!」

突然マホロアがそう叫ぶと、魔力球を出して玄関の方へ向かって投げた!

すると入って来た「何者」かによってそれはあっさりと弾かれて…ポシュンと消えた。

マルク「新年早々、酷い扱いなのサ!」

入って来たのはマルクで、いつもの様に牙を光らせて笑っている

アイシェ「あ、マルクいらっしゃい。」

マルク「キシシ、美味そうな匂いで来ちゃったのサ。」

マホロア「ホ~~~ント、食べ物の匂いと面白そうなコトダケは敏感ダヨネェ!」

椅子に座り、頬杖をつきながら盛大に溜息を吐いてジト目を向けるマホロアにお構いなく、マルクはアイシェの傍に来て鍋を覗き込んだ。

アイシェ「ふふっ、マルクも食べる?」

マルク「貰うのサ。」

マホロア「アイシェ、こんなのに食わせる必要なんか無いヨォ!おいマルク、テメーサッサと出てけヨ!」

マルク「ボクは食べたいなんて言ってないのサ、アイシェに聞かれたから食べるって答えただけなのに、追い出すのかよ?」

マホロア「グッ…!」

アイシェからの厚意を強調するマルクに、返す言葉が見つからず…

マルク「と、いうワケだから…ありがたーく頂くのサ。」

そう言って向かい合わせに椅子に座り、イタズラな笑みを浮かべるマルクにマホロアは眉間に皺を寄せて渋い顔をした。

マホロア「(この…クソピエロがヨォ!!)」

マルク「ん、どうしたのサ~?」

相変わらず頬杖をつきながらビキビキするマホロアを、ニヤニヤと笑みを浮かべて煽るマルク…

そんな2人の様子を見守りつつも、アイシェは手際よく準備をしていき…お雑煮も完成した。

アイシェ「お雑煮も出来たよ、2人はお餅いくつ食べる?」

マホロア「ボクは2個お願いするヨォ。」

マルク「3個食べるのサ。」

アイシェ「今持っていくね。」

お雑煮をお椀によそったアイシェは、2人の元に丁寧に置くと…マホロアとマルクはその瞳をキラキラと輝かせた。

マホロア「ワァ…すっごく美味しソウ!」

マルク「頂くのサ!」

そう言うと、マルクは早速お雑煮を頬張った。

マホロア「ボクも頂きマス。」

静かに両手を合わせると、マホロアもお雑煮を食べ始めた。

アイシェ「どうかな?」

2人が食べる様子を見ながらアイシェが尋ねると、満面の笑みが返って来て…

マホロア「とーっても美味しいヨォ、アイシェ!」

マルク「いくらでも食べれるのサ!」

ガツガツと食べるマルクとゆっくり食べるマホロア…対象的な2人だが、美味しいと思って居るのは事実で…2人共手が止まらない。

アイシェ「ふふっ、よかった。」

嬉しそうな笑みを浮かべると、アイシェも自分の分を用意して…おせちもテーブルに並べて食べ始めた。

マルク「おせちも貰うのサ!」

マホロア「アッ、ボクが先に食べるヨォ!」

アイシェ「たくさん作ったから、仲良く食べてね。」

お雑煮を食べつつ、おせちも食べていた2人だったが…

マホロア「チョット、ボクが先に目を付けてたんダケド!」

マルク「順番なんて関係ないのサ、先に手を付けた方が食べれるのサ!」

マホロアとマルクが、伊達巻きを巡って喧嘩を始めてしまった。

マホロア「そもそも2人きりで食べるハズだったノニ、図々しくコレまで奪う気かヨ!」

マルク「早い者勝ちなのサ!」

マホロア「アッ!マルク、テメー!!」

一瞬の隙にマルクが食べてしまい、マホロアは湯気を出しながらカンカンに怒っているが…

アイシェ「新年から喧嘩しないで…はい、マホロア。」

怒るマホロアの口に、アイシェが伊達巻きを小さく切って入れると…一転してニコーッと満足げな笑みを浮かべながらもぐもぐと食べ始めた。

マホロア「ンン~~アイシェが食べさせテくれたカラ、更に美味しいヨォ!」

マルク「単純なのサ。」

キシシと笑いながらマルクは黒豆を頬張り、すっかり機嫌が治ったマホロアも再び伊達巻きを頬張り…アイシェもそんな2人の様子を見て優しく笑いつつ、栗きんとんを口にした。

こうして賑やかな食事の時間は終わり、ソファで寛ぎ始め…

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

マホロア「フゥ…大満足ダヨォ。」

星型のクッションに身を預けて眠るアイシェを抱きしめつつ、外を眺めていたマホロアだが、マルクがストンと降りると伸びをしながら口を開いた。

マルク「なー、カービィや大王の所にイタズラしに行こうぜ!」

マホロア「1人で行けヨ、馬鹿ピエロ。」

マルク「ノリが悪いのサー。」

マホロア「新年なんだカラ、のんびりさせろっテノ。」

マルク「それなら…外で遊ぶのサ!」

マホロア「話聞いてネーノカヨ?ボクはココでのんび…」

マルク「聞いてるから、行くって行ってるのサ。」

マホロア「アーモウ…ホント調子狂うヨォ…。」

相変わらずマイペースなマルクにマホロアは溜息を吐きつつも折れ、アイシェを起こさない様にブランケットを掛けて外に出たのだった。

To be continued…