「魔術師の嘘と真」(マホロア)

彼方からの旅人と夢色金平糖〜夢結ぶ星りんごまでの、マホロアの心境を綴ったお話

灼熱のマグマが滾るハルドラボ火山…その麓で発掘して修理と少しだけ改造を施したローアに乗り、己が欲する物を頭に乗せたランディアに戦いを挑んだが…

その強大な力に敗れ、ポップスターに不時着…ローアはランディアからのダメージを抑えきれずに全てのパーツとエナジースフィアを失い、動かぬ本体のみが残った。

カービィ「マホロア、ボク達が船を直すのを手伝ってあげるよ!」

この星に住む食いしん坊なみんなのヒーロー「星のカービィ」

…いつの日か、知り合いのアイツに聞いた通りのお人良しで人を疑う事を知らない奴……これを利用しない手は無い。

得意な偽りの笑顔と愛想を振りまきながら皆に感謝し、ローアのパーツがある場所へと送り出したが…その時に見かけた人影が彼等を追いかけていく

どうやら知り合いの様だ…このままでは邪魔をされかねないので追いかけ…

マホロア「カービィ達の助けニなれる様ニ、サポートの提案をしに来たんダケド…キミは誰カナ?」

アイシェ「わ…私はアイシェ…。」

「サポート」を約束する事でその場を収めたが…この「アイシェ」という少女…戦う力も持たない

だが、アイシェを一目見た瞬間…その青い瞳に不思議な感情を覚えた。

マホロア「(…青い瞳にフワフワの銀髪…今まで会ったコトがナイ姿の女の子ダナ…。)」

感情の正体は分からないが、まずはこの少女を探る所から始めよう……もし自分の計画を邪魔する様ならその時は…

そう思っていたが、彼女は意外にもその思惑が掴めず…ただ1つ分かったのは、カービィと同じくらいお人良しだと言う事。

優しいフリをしながらもてなし、彼女は帰って行ったが…奴が現れて家に送って行くその様子を見てモヤモヤして…とにかく「気に入らない」感情が芽生えた

その後も…

アイシェ「みんなで食べると美味しいよ、それにマホロアも友達だもの。」

友達…そんな言葉は自分には無縁だ、それなのにどうしてこんなにも不思議な感覚になるんだ…

戸惑いつつもそっと囓った「手作りのアップルパイ」は、とても甘くて美味しかった。

彼女は戦えない癖に、自分の為にと見落としていたスフィアを見つけ、結果スフィアローパーに襲われて大怪我を負った。

傷だらけになりながらも蹲ってスフィアを庇う彼女の姿が目に入った瞬間、考えるよりも先に行動を起こしていたと同時に、目の前のスフィアローパーに強い怒りと殺意を覚えた。

彼女の治療を理由に傍に置いて監視する事にしたが…過ごす内に気づいたのは、彼女の弱点…

どうやら耳が弱いらしく、傷に薬を塗る為に触ると…頬を赤らめて必死に声を抑えているその姿にドキドキしてしまう

マホロア「(何テ悩ましい声を出すんダヨォ…。)」

そう思いつつ毎日怪我の治療を続け、アイシェに対してドキドキする事が増えてきたある日、カービィの歌を初めて聞いて気絶した。

アイシェ「カービィは酷い音痴なの、本人は自覚してないからあんな風に歌っちゃうんだけどね…。」

何て破壊力なんだ…生きているだけでも奇跡かもしれない…マホロアは内心そう思った。

その後、気分転換に2人で海へ出かけ2人で水遊びをして…

マホロア「(ビックリした…ケドこれはチョーラッキーダナァ。)」

夕陽に照らされた彼女はとても美しくて、気づかれない様にしつつチラチラと見てしまう…

夕陽に照らされて透けているドレスの中…濡れて張り付いている事で下着も体のラインもしっかり見えてしまい…普段ケープの下に隠された胸元も意外と豊かなのを知った

長い銀髪も夕陽でキラキラと輝き、より一層彼女の美しさを引き立てている。

脱いで置いていた為に唯一濡れなかった手袋を見て、笑い合った瞬間…

ボク……アイシェのコトが好きなんダ…

今まで感じていた感情は「恋」だと気づいた。

自分の気持ちを自覚して以来、アイシェの事を目で追う事が増え、彼女の事をどんどん知る度に夢中になり…自分の傍に置いておきたいと強く思う様になった。

アイシェを確実に手に入れる方法…それは「アレ」を入手する事

アレさえ手に入れば彼女は自分のモノ…そう思う度に、マホロアは1人静かに笑った

カービィ達は順調にパーツとスフィアを集め、元通りになったローアと共にハルカンドラへ戻るも再びランディアによって襲撃されて不時着したが、ここでもカービィ達は自分の思惑通りに動いてくれてアレは目前だ。

アイシェとお茶をしつつ、自分が昔叶えたかった夢を語り……ついにこの瞬間が来た

アイシェ「マホロア…私、伝えたい事があるの。」

マホロア「…奇遇ダネェ、ボクもアイシェに伝えたいコトがあるんダ。」

アイシェ「え、何…を………!?」

少し時間はかかったが、彼女は自分が用意したアップルティーを口にしてくれた。

そう、それには…

マホロア「ボク、コレから大事な用事があってネ…アイシェにはアップルティーに入れたこの眠り薬デ、しばらく眠っててもらうヨ。」

アイシェ「マホ…ロ…ア…!」

強い眠気に襲われたアイシェはそのまま眠り…

マホロア「次に目を覚ました時には、キミはボクの……少しの間おやすみ、アイシェ。」

抱き上げたアイシェを部屋に連れて行き、ベッドに寝かせると部屋を後にした。

その後、カービィがローアを訪れて最後のスフィアを受け取り…

カービィ「あれ、アイシェは?」

マホロア「疲れが出てたカラ、休ませたヨ。」

カービィ「そっか、ボク達が戻る頃には起きてるかな。」

マホロア「…きっと起きてると思うヨォ。」

カービィ「分かった、それじゃあデデデ達が先に待ってるから…行ってくるねマホロア!」

カービィ…キミはホント~に「利用価値がある奴」だったヨォ

心の中でそう思うマホロアだったが、チクリ…とほんの少し痛みを感じた

マホロア「行ってらっシャイ!…ア、カービィ。」

カービィ「ん、どうしたの?」

友達……キミとだったら友達になっても………イヤ、そんなモノは必要ナイ…だってボクはアレを手に入れテ…

マホロア「コレからも、ずーーっと友達で居てね、星のカービィ!」

カービィ「うん、もちろんだよ!」

「仮初めの」友情確認をするといつも通りの満面の笑みを見せ、ワープスターに乗って飛んで行く彼を見送り、ローアに戻ると再びアイシェの部屋に向かった。

マホロアがそっとベッドに座るとベッドは小さく軋み、手をゆっくりと彼女の頬に近づけ優しく撫でた

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

撫でられても起きる事は無く、深い眠りについたまま規則正しい寝息のみが聞こえて来る

マホロア「アイシェ……もうすぐキミはボクのモノになるヨォ。」

そう呟いた瞬間…マホロアはある事を思い出した

マルク「ボクはアイシェが好きなのサ。」

マホロア「ククク…アイツは昔から変わらないネェ…「本当に欲しいモノ」はこうやって確実に準備をしておかないト手に入らないのサ。」

彼の口癖を真似しながら鼻で笑うマホロアは、再びアイシェの頬を撫でて…手袋を脱ぐとその小さな唇を指でなぞった。

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

彼女の唇越しに感じる熱が、マホロアの前身をゾクゾクと強い電流となって駆け巡り、今度は彼女の首筋に顔を近づけると甘くて良い香りが鼻腔をくすぐり…感嘆の溜息を吐いて優越感に浸る

もっと触れて撫で回したい…何なら今すぐにでも身ぐるみを剥がし、その体を貪る様に愛したい…だがそれは「最初の目的」を果たしてから…全てを手に入れた時、最高のご褒美として彼女を自分のモノにするのだ。

マホロア「…コレで準備は整ったヨ、後はあの邪魔なドラゴンをカービィ達が倒すダケ。」

瞳は弓形に細められ、マフラーの下で口は大きく弧を描く…

楽しみにしつつ部屋を出て、操縦室のパネルを操作しながらモニターでカービィ達の動向を確認すると、デデデ達と合流してランディアの元へと向かい始めた。

マホロア「全てボクの思い通りニ進んでるヨォ、もうすぐダ…もうすぐアレはボクが手に入れテ、アイシェはボクのモノ……サイコーの幸せが待ってるんダヨォ!ククク…ククッ………フフフフフ…ハハッ………ハハハハハハハッ………アーッハッハッハッハッハ!!

ローアの操縦室を始め、船内に心底愉快そうな自分の笑い声が響く

その後カービィ達の元へ向かうと…ちょうどカービィがランディアを倒した瞬間だった。

カービィ「マホロア、どうしてここに…アイシェはまだ眠ってるの?」

彼の問いかけなど気にもせず、マホロアは落ちている「王冠」を拾い上げた。

マホロア「オォ…ついに手に入れタゾ…!」

バンワド「マホロア…?」

メタナイト「様子がおかしいぞ…!」

デデデ「おい、どうしたんだよ…それを知ってるのか?」

マホロア「コレぞ無限の力を持つ「マスタークラウン」!」

ついに手に入れた「アレ」を自分の頭に被ると、全身を強いエネルギーか駆け巡り、魔力が増幅されていくのを感じる

その莫大なエネルギーは体の中だけで止めておけるはずは無く、自分の体はどんどん大きくなっていく

マホロア「ソウさ!狙いは初めカラこのクラウンだったんダヨ!」

カービィ「え…マホロア?」

目の前の自分の変わり様に驚いたり戦闘態勢に入る3人をよそに、カービィだけはキョトンとしている…

だがもうマホロアにはそんな事は気にならなかった

次々と頭の中に流れてくる強いエネルギー…まるで「自分では無い」様だ

自分の目的は「全宇宙のみんながキャーキャー言………イヤ、全宇宙の支配」ダ

正体を明かしたマホロアは、アイシェへの危害を恐れるメタナイト達の問いに時間の無駄だと思いつつも答える

マホロア「彼女はボクのモノ…誰にも渡さずにずーーーっと永遠にボクだけの傍に居るんダ…クククッ…想像したダケで最高の気分ダヨォ。」

カービィ「ダメだよマホロア、そんな事したらアイシェは悲しんじゃう…!」

自分に楯突く3人と、まだ友達だと思い込んでいるカービィがそう言うが…そんな事はどうでも良い

マホロア「ハァ~………こんな所デいつまでも話してルのも時間の無駄ダヨ、ボクは早くポップスターを支配シテ、アイシェと2人きりノ時間を作らないトネッ!」

ディメンションホールを開き、まずはローアの元へ移動して…自分の魔力で完全に支配に成功した。

支配したローアのパネル越しにポップスターへ近づくのを心待ちにしていると…目が覚めたアイシェがやって来た

アイシェ「マホロア…それ…外して…。」

姿の変わった自分に驚いて言葉を失う中、そんな可笑しな事を言うから笑いが止まらない

マホロア「可笑しなコトを言うネェ…今のボクは王様ダ、キミという最高のお姫様を迎えに来たんダヨ?」

今すぐにでも貪りたいのを抑えつつも、ゆっくりと近づいてその美しい銀髪を手櫛で梳かしながら愛おしさを感じていると…

アイシェ「違う…こんなの違う…私の知ってるマホロアじゃない…!」

今度は泣きそうな顔でそう言う…だが自分にとってはどんな表情も愛おしくて仕方が無い

マホロア「キミの知らないボクもたくさん居るんだヨォ…コレからじっくりと教えてアゲルヨ?」

アイシェ「嫌っ…!」

マホロアの我慢は限界だった…彼女の体に直接触れようとしたが、その手を振り払って部屋へ逃げて行く…

マホロア「…反抗的なアイシェには、チョットばかりお仕置きが必要カナ?」

わざわざ部屋へ逃げて行くなんて…無自覚で誘う様な事をしてくれると思うマホロアは、赤い瞳を弓形にして肩を揺らしながら笑う

アイシェ「メタさん!」

メタナイト『無事…か…アイシェ!?』

アイシェ「うん…でもローアの中にマホロアが…!」

メタナイト『何…だと!?』

彼女を追いかけて部屋へ向かうと、メタナイトと話しているのが聞こえた…どうやら彼がプレゼントしたチャームは通信機だったらしい。

その瞬間、体中をとても不快な感情が駆け巡るのを感じた…同時に強い魔力が体中を巡り、頭の中に自分では無い声が聞こえてくる…

『彼女を我が物にしろ…体も心も支配するのだ。』

マホロア「メタナイトがプレゼントしてたヤツ…通信機だったんダネェ…余計なコトをするナ。」

アイシェ「あ…あぁ…!」

通信機越しに聞こえる煩わしい声を通信機ごと潰しすと、アイシェは震えながら恐怖の表情で自分を見ている

マホロア「ボク以外ノ男と喋るナ。」

アイシェ「男……そんなつもり…は…。」

咎めてもそんな事を言うアイシェ…限界を迎えていたマホロアはそのまま魔法で彼女を浮かせると、そのままベッドに押さえつけた

アイシェ「きゃあっ!」

マホロア「悪い子なアイシェにハ、お仕置きしなキャネ。」

誰も居ない2人きりの空間…マホロアは欲望のままにアイシェに迫る

アイシェ「っ…んっ…マホロア…やめて…!」

マホロア「止めるワケ無いダロ、そんな声出しちゃってサァ…ボクを誘ってるのカイ?」

アイシェ「違っ…やっあぁん…!」

体を撫で、耳を舐めたり吸ったりすれば甘い声を漏らし…自分しか知らないアイシェの顔…この体も自分だけのモノ…心も後から支配してしまえば、永遠に2人きりで居られる…

溢れ出す自分の欲にマホロアは強い満足感と興奮を得て、その息遣いも荒くなる

体格差が大きすぎるので、一時的とは言え元の大きさに戻して彼女の体を…そう思って居ると、頭の中にカービィ達が追いつく様子が流れてきた。

せっかくのお楽しみなのにと残念がるマホロアだが、彼等を始末すれば今度こそ2人きりに…

マホロア「アイシェはコノ中デ大人しくしてテネ、全てが終わっタラ…キミは今度こそ、身も心も全てボクのモノダヨ。」

怯えるアイシェの左耳に自分の証であるリボンを結び、ランディアに乗って追って来たカービィ達と対峙した。

カービィ「マホロア、待って!」

マホロア「ボクをわざわざ追いかけて来るなんてネェ………出でよ、ローア!」

支配されたローアは自分の思うがままに動き、激しく強力な攻撃でカービィ達を襲う

自分達が直した船に襲われる気持ちは如何なる物かと心の中で嘲笑いつつ、マホロアは容赦無い攻撃を仕掛けるが…

激しい戦いの末、ローアは彼等に敗れた。

その後も自分を追いかけるカービィ達を魔力球でランディアから落とし、近くの空間で自ら戦う事にした。

カービィ「マホロア、もうこんな事止めよう!アイシェだってこんなの望んでないよ!」

自分だけのアイシェの名を気安く口にするカービィに、激しい怒りを覚えたマホロアは魔力球をぶつけたが、それでも諦めずに立ち向かってくる

マホロア「ボクの…邪魔をするナァァァァーーーー!!」

段々と苛立ちを覚えたマホロアはついに本気を出し、魔法陣から巨大なブラックホールを召喚した

マルクと比較して驚く彼等だが、あんな奴と比較されたくない…そう、自分はアイツ以上…この全宇宙の支配者となるのだから!!

しかし激しい攻防戦の途中、ローブの中に隠していたアイシェが衝撃で出てきてしまい…

アイシェ「カービィお願い、マホロアを止めて!」

必死にそう懇願する彼女に近づけない様に、カービィ達に激しい攻撃を続けたが、強大な力を持つマスタークラウンでさえも彼のウルトラソードの前に破れた。

悔しい…こんなトコで終わりたくナイ…!!

そう思ったその時!

愚かな傀儡よ…我の器となり、その力で破壊の限りを尽くすが良い!

禍々しい何かの声が聞こえた直後…ボクの意識は乗っ取られた

アイシェを手に入れる事も、願いを叶える事も出来ない…

アァ…何てモノに手を出してしまったんダ……

僅かに残る自我で、譫言の様に言葉を紡ぎ出していると…アイシェやカービィ達の声が聞こえてきた。

もう遅い…そう思っていたが…

アイシェ「カービィを信じて、絶対に助けてくれるから!」

あんな酷い事をしたのに、彼女はまだそんな優しさを向けてくれるのか…

しかし、その直後に頭の中に再び禍々しいクラウンの声が聞こえて来て…

クラウン「お前が欲したその娘の清らかな魂も喰らってやる、お前が絶望の底に墜ちて憎悪を増幅させた時こそ…我への最高の捧げ物になるのだ。」

そう言って、自分の意志に関係無くアイシェに手を伸ばす

マホロア「アイシェ…ニ…テヲダス…ナ…!!」

魂を支配されていても、僅かに残る自我で必死にそれを抑え、アイシェを守ろうとした

アイシェ「一緒に夢を叶えようよ…マホロア!」

その言葉で自我はより強く戻り…同時に「アイシェと生きたい」「カービィと本当の友達になりたい」そう強く思った。

マホロア「何度もキミに頼るのは癪だケド、もう…イイヤ。星のカービィ、頭のコレを早くぶっ壊してヨ…そしたら…マタ…クックックッ…揶揄ってやるヨォ!」

素直になれない自分なりの「助けて」を伝えれば、カービィはそれを汲んで助けようとしてくれた。

カービィはクラウンを叩き割り、魂は解放されたが…

マホロア「アイ…シェ…ゴメ…ンネ……ボク…キミのコト…が…」

「好き」と言えないまま…この世界から消滅した。

次に気づいた時はアナザーディメンションに迷い込み、魔力はほぼ失われて絶望的な状況にあった。

そんな時…マフラーの間にしまっていた通信機チャームの欠片が落ちて…アイシェの言葉を思い出した。

彼女は何かを伝えようとしていた…もしかしたらこうなる事を知っていた…?

理由は分からないが、アイシェがつらい気持ちを1人で抱えていた事に気づいたと同時に、必ずここを脱出して元の世界へ戻り、また会いたい…強い想いは決意となり、過酷なアナザーディメンションでの戦いと魔力を取り戻す日々を過ごした。

クラウン「なっ…馬鹿な!」

マホロア「愚かな呪いの王冠…今度こそ滅びロッ!!」

激しい戦いの末にマスタークラウンを今度こそ滅ぼし、開いたディメンションホールに飛び込んだ先で彼を待ち受けていたのは…

元の世界とは違う世界だった。

傍に一緒に落ちていた苗を「ジェムリンゴ」と名付けて植え、万屋の店主を名乗ってこの「プププ王国」の戦いをサポートしながら過ごした。

カービィ「キミにも大切な人がいるんだね。」

この世界のカービィと話しながら夜空を見上げていると、彼にそう聞かれ…マホロアはゆっくりと頷いた。

マホロア「ウン、とても大切な人ダヨ……まだ気持ちを伝えてナイケド…元の世界に戻っタラ、今度こそ伝えるんダ。」

カービィ「キミの気持ちがその子…アイシェに届くといいね。」

マホロア「ウン…ありがトウ、カービィ。」

戦いは終わり平和を取り戻した時には、1年の時が経っていた。

相変わらず戻る方法は分からないままだが、もうしばらくこの世界で過ごしながら戻れる方法を探そう…カービィとそんな会話をしていた矢先、ローアが現れた!

ローアはそのままスロープを出現させ、自分が乗るのを待っている

カービィ「キミに乗って欲しそうだね。」

マホロア「…ローア、キミもとんだお人良しダネ…………カービィ、ボクもう行くヨ。」

カービィ「うん、元気でねマホロア!」

マホロア「ありがトウ、星のカービィ!」

荷物を持ってローアに乗り込むと、船内を優しく撫でて…

行き先を「ポップスター」と入力した。

ローアが時空を超える間、マホロアが簡単に船内を見て回ると…

家具から何から全て当時のままで…アイシェが使っていた部屋もあの時から変わっておらず、クシャクシャになったベッドシーツは自分が無理矢理迫った時の記憶を蘇らせた。

酷いコトをシテしまっタ…そう思いながらマホロアはシーツを外して洗濯にかけ、台所へ行ってコーヒーの準備をしていると…今度は棚に置かれたマグカップが目に入った。

アイシェがいつも使っていた物…カービィ達が使っていた物…

あの日々は間違い無く「楽しかった思い出」になっていて…黄色い瞳からはじんわりと熱い感覚がして、頬を伝って涙が零れていくのを感じる

ポップスターに近づくにつれて胸は高鳴り、到着してローアから降りると目の前の4人は驚いた表情をしていて…

マホロア「エット…ただ…いまっテ言ってイイの…カナァ。」

再会出来た喜びと今までの事からの不安…恥ずかしさもあって目を合わせられず、ポリポリと頭を掻いていると…

カービィ「お帰りマホロア!」

満面の笑みを浮かべた彼が自分に飛びついてきて…その瞬間に不安な感情は全て吹き飛んでしまった。

マホロア「…モウ一度、ボクと友達になってくれる…カナ。」

謝罪をして仲直りした後、勇気を出してそう言うも…

カービィ「あははっ、何言ってるのマホロア~!ボク達もうとっくに友達じゃん!」

マホロア「カービィ…!」

デデデ「そういう事だ、もう何も心配すんな。」

バンワド「マホロア、これからはここで暮らすの?」

マホロア「ウン、そのつもりダヨ。デモ夢の実現の為二、チョット旅に出たりするコトはあるケドネ。」

メタナイト「テーマパークを作りたいと言ってたな、くれぐれも人々を操ったりするなよ?」

マホロア「酷いナァ~メタナイト、そんなコトしないヨォ!」

メタナイト「ははっ、冗談だ。」

暖かく迎え入れてくれた4人に感謝しつつ、マホロアは友達の暖かさを実感した。

その後、アイシェが居なくて探していた事を知り…

彼女の気配を辿りながら探していくと、夢の泉で眠るアイシェを見つけた。

マホロア「アイシェ、あの時のリボンをずっと付けてくれてタノ…?」

眠ってしまう直前まで泣いていた様で…その睫毛は濡れている

そして左耳に着けていたのはあの時のリボン…

期待してもイイのカナ……僅かな期待を胸にマホロアがアイシェを優しく起こすと、彼女はとても驚いていて…

アイシェ「マホロア……今まで…どこに…。」

マホロア「それについては後でゆっくりトネ…アイシェに会いたくテ…コノ気持ちを伝えたくテ…。」

アイシェ「気持ち…?」

深呼吸をしながら今までの思い出を振り返るマホロア…

あの時からずっと…ずっとアイシェだけを見ていた

野望を抱える日々の中、歪んだ形とはいえアイシェを心から愛していた

方法を間違えたが、今度こそ…ちゃんと正面から正直に伝えよう

マホロア「アイシェ、ボク……アイシェのコトが好きなんダ。」

そう決意していたマホロアが、まっすぐ見ながら自分の気持ちを伝えると、アイシェは泣き出してしまったが…

アイシェ「マホロア…私も大好きだよ。」

彼女も自分を想い続けていてくれた事を知り、今度こそ2人の気持ちは通じ合った

その後、飛んで来たメタナイトにマフラーを斬られつつも約束を交わし…

アイシェ「マホロア…約束だよ、もう離さないで。」

マホロア「約束するヨ、絶対に離さナイ。」

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「愛してるヨ、アイシェ…。」

これからはずっと共に生きていける、アイシェをお嫁さんに迎えられるんダ…湧き上がる喜びを感じつつ、そっと目を閉じた彼女にマホロアはゆっくりと顔を近づけて…

初めてかわした口づけは、熱く甘い愛の味がした。

デデデ大王がお祝いのパーティーを開いてくれたり、アップルパイを食べて今までの事を思いだして泣き出してしまったり…

アイシェやカービィ達の優しさに触れ、プププランドでの穏やかで平和な日々を送る幸せを感じる一方で、アイシェへの想いは更に強くなり…

マホロア「ッ…ハァ……アッ…アイシェ……ンッ…ハァ…!」

毎日会う度に、帰った後にアイシェへの愛が溢れ出し…いつもの甘い香りやデデデ大王の城で寝ている彼女を見た時の綺麗な胸元、柔らかい感触を思い出して…抑えきれない興奮は荒い息と共に欲となって吐き出された。

早くアイシェと一緒にローアで暮らしたい…傍で笑い合い、食事をしたり散歩したり…色んな事を一緒にして幸せな日々を送りたいと願うマホロアだが、毎日その事を提案するもアイシェは首を縦に振ってくれない…

まだ心の準備が出来ていないとか、恋人同士になったばかりだとか…頬を真っ赤に染めながらそんな可愛い事を言ってくれるが、他にも何か悩んでいる様子で……それが何かは分からないが、自分としては1日でも早く共に暮らして安らぎと更なる幸せを感じたい

懲りずに猛アタックしていたある日、スカートの中を覗いてマルクと喧嘩になって部屋をぐちゃぐちゃにしてしまい、泣いて怒るアイシェに追い出されて落ち込むも無事に仲直りして…

それから数日後、アイシェがローアに泊まりに来る事になり…

その日の夜…ついにアイシェと体も結ばれた。

何度も肌を重ね、気づいた時には明け方で…

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

自分の腕の中で眠るアイシェの頬をそっと撫でながら、その喜びや幸せを噛みしめた

マホロア「(今思えバ……1年前のあの時、クラウンに支配されるマデよく手を出さずにいられたヨォ。)」

1年前の自分を思い出して小さく溜息を吐きつつ、眠るアイシェに触れるだけのキスをするとマホロアもゆっくりと瞼を閉じて眠りについた。

1週間後にアイシェをローアに迎え、2人で暮らし始め…

夢のテーマパーク実現の為に旅に出てしばしの間離ればなれになったり、イタズラしたりドロッチェに取られそうになったり、時には衝突したり…仲直りの度に2人の絆は深まっていく

そして今回…すれ違いの結果2人にとって最大の危機を迎え、アイシェの中に取り憑いた闇の魔術師を倒した。

高熱と闇の魔術師の影響で弱っていたアイシェも、看病の甲斐あって何とか自力で起き上がれるくらいには回復して、2人でたくさん話をした後に一番大切な約束をした。

「夢を叶えたらお嫁さんに迎える」

最初からそのつもりでいたが、ちゃんと話さなかったばかりに彼女は不安を感じていて…それが原因の1つですれ違いも起きてしまった

もう大丈夫…将来を誓い合った2人には、もう何も恐れる事は無い

そのまま彼女と愛し合い……無理をさせない様にしつつ、夜も再び愛し合った。

安心しきった表情で眠るアイシェのおでこにキスを落とすと…

アイシェ「ん…マホ…ロア……大好き…。」

小さくもぞもぞと動き、そんな可愛い寝言を言ってくれるアイシェに、マホロアは黄色い瞳を細めて優しい笑みを浮かべ…

マホロア「フフッ…ボクも大好きダヨ。」

眠るアイシェの唇にキスを落とし頬ずりをすると、抱き寄せてその温もりに安心した。

歩ける様になったアイシェとお散歩に出かけたり、みんなで海遊びしたり…

初めての2人きりの旅行では、気に入った服を買ってあげたらアイシェはとても喜び、マホロアも嬉しくなった。

旅行の最中に迷い込んだ別世界…行方不明になったローアの歯車を探しつつ、この世界のカービィ達と共に星の歯車という秘宝を探す旅に出て…最終的にこの騒動の黒幕である「別世界のマホロア」との激闘の末、アイシェの子守歌によって魂が救われ、最後のローアの歯車と共に星の歯車も見つけた。

元の世界へ戻り、旅行を終えた後も平和な日々を過ごし…

初めての「果物狩り」やアイシェと再び「雪遊び」も楽しみ…楽しいクリスマスや年明けを迎えた。

アイシェから初めての「バレンタインデー」のチョコも貰い、自分からも初めての「ホワイトデー」でりんごの飴をプレゼントして…その後は心も体も愛し合った。

気づくと自分がこの世界へ帰って来てカービィ達と仲直りし、アイシェと恋人同士になってから1年が経っていた

2人でお祝いして、改めて再会出来た喜びを分かち合い…これからもずっと色んな事をしていこうと約束のキスをして…

月と星が輝く夜空…これからの幸せを願い、明日を楽しみにしながら2人で抱きしめ合い、ローアの優しい風に包まれながら眠りについた。

アイシェ…キミに出会えてヨカッタ

コレからもずっと、キミを愛する…守り続けるカラネ