小説「星夢煌めくPomme d’amour」(スタアラ編)~それぞれの思い~

マルク「何するのサ!」

2人はお互いに掴み合ったまま、地面を転がった。

マホロア「ボクがアイシェを守れなかっタ?傍に居れば守れたに決まってんダロ!!」

マルク「それをしなかったのはお前なのサ!!」

マホロア「テメーらを信用したボクが馬鹿だったヨ!!」

マルク「お前に言われたくないのサ!!」

マホロア「コノ…クソピエロガァッ!!」

そう言うとマホロアは拳を振り上げて…

バキッ!!マルクの左頬を殴った!

マルク「ぐっ…がはぁ…!」

マホロア「テメーらのせいでアイシェが…コノッ!!」

カービィ「マホロア、落ち着いて!」

バンワド「喧嘩してる場合じゃないよ!」

怒り狂うマホロアは何度もマルクを殴り、カービィとバンワドが再びマホロアを止めようとしたが…

マルク「いつまでもボク達のせいに…してんじゃねぇのサ!!」

ザシュッ!!マルクの鉤爪がマホロアの口元に当たり、マフラーごと斬り裂いた!

マホロア「グッ…何するんダヨッ!!」

マフラーは切れてマホロアの口が露わになり、ボタボタと赤い血が零れ落ちる…

しかしマホロアはそんな事はお構いなしに、マルクと殴り合いを始めてしまった!

カービィ「マルク、マホロア!」

バンワド「2人共やめて!」

何とか喧嘩を止めようとするカービィとバンワドだが、2人の間には凄まじい魔力が渦巻き、勢いが凄くて近寄る事が出来ない…

メタナイト「今はあの2人を誰も止める事は出来ない…!」

デデデ「俺様達が何を言っても、あの2人には聞こえてねぇ…!」

静観する事しか出来ないメタナイトとデデデは拳を握り締めて俯き、ひたすらにお互いを殴り合う音が響く…

タランザ「止めるのね…マルク…マホロア…!!」

バンワド「ダメだよタランザ、そんな体で動いたら…!」

タランザ「けど…早く止めないと…!」

マホロア「コノ場デ今すぐ消してヤル!!」

マルク「こっちこそ、もう我慢ならないのサ!!」

2人は一旦距離を置くと力を溜めて…最大限の魔力を拳と鉤爪に込めてお互いに突っ込んでいく!

バンワド「マルク、マホロア!!」

メタナイト「このままでは共倒れになるぞ!」

デデデ「おい、やめろ!」

2人はどんどん勢いを増して、ぶつかり合う寸前…

パシッ!

光の速さでカービィが間に入り…左手でマホロアの拳を受け止め、右手でマルクの鉤爪を掴んでいた。

マルク「っ……………!!」

マホロア「カー……ビィ……!!」

カービィ「…今は喧嘩してる場合じゃないよ、こんなの見たらアイシェは悲しんじゃう………そうでしょ?」

そう話すカービィの青い瞳に、2人は全てを見透かされている様な気がして…

あれだけの力を片手で止めてしまうなんて…2人は彼の強さを改めて思い知ると同時に、この時だけは畏怖に近い感情も覚えた。

そのまま2人はその場に静かに座り込み、ひとまず喧嘩は収まったが…

マホロア「………ゴメン、チョットダケ休ませテ。」

それだけ言うと、マホロアはローアの中へ入って行ってしまった。

カービィ「マホロア…!」

デデデ「…今は1人にしてやろう。」

メタナイト「いずれにしろ、今すぐ出発するのは無理だ…策を練ってからにしよう。」

バンワド「うん、そうだね…。」

マルク「クソ魔術師め……ぐっ…!」

カービィ「マルク!」

悪態を吐いたマルクはそのまま意識を失い、タランザと共に客人用の部屋へと運ばれて手当てを受けた。

一方マホロアはアイシェの部屋に居て…

アイシェ『ぬいぐるみを縫ってるの。』

枕元に飾られている自分のぬいぐるみを見て、縫っていた時のアイシェを思い出した

少し前の出来事だったはずなのに、アイシェが居ない今の時間が酷く長く感じて…マホロアは魔法で口元の傷を治してマフラーとマントを床に脱ぎ捨てると、アイシェのベッドに倒れ込んだ。

ふわっ…ベッドや枕からはアイシェの香りがして…マホロアの黄色い瞳からはボロボロと大粒の涙が流れた…

マホロア「アイシェ…アイシェ……ッ……!!」

アイシェの枕に顔を埋め、声を上げて泣くマホロアだったが…

ふわっ…アイシェとは違う香りがマホロアの鼻腔をくすぐった

ゆっくりと起き上がって辺りを見渡すと、テーブルの方から香りがして…それは置かれている香水では無く、星の歯車の冒険であの商人から譲り受けた苗からだった。

少しずつ成長していた苗だが、よく見ると小さな薔薇の蕾が出来ていて…青い色が見える

アイシェ『マホロア!』

マホロア「奇跡の青い薔薇……アイシェ…ボク、キミを守れなかっタ…傍に居れなかっタ…。」

泣きながらそう呟いたマホロアだったが…

『アイシェは貴方を待っています。』

マホロア「エッ…!?」

驚いて辺りを見渡すマホロアだが、誰も居なくて…

それでも確かに誰かの声が聞こえた、そう確信したマホロアは脱ぎ捨てたマフラーとマントを拾って部屋を出た。

一方…

デデデ「マルクはしばらく動けそうにねぇな。」

バンワド「タランザ以上に深手を負ってましたからね…相当無理をしたんだと思います。」

メタナイト「カービィ、それは?」

カービィ「アイシェの持ってたドリームロッドだよ、マルクから預かったんだ。」

メタナイト「アイシェがマルクに預けていたのか?」

カービィ「ううん、連れ去られる直前にローアの陰に置いて行って、それをボクに伝えて欲しいって頼まれてたんだって。」

メタナイト「そうだったのか、アイシェ…。」

バンワド「怖い思いをしてるのに、ボク達の為に…。」

デデデ「もうすぐ夕方になっちまう、そろそろ出発するしかねぇな…。」

カービィ「でも、マホロアが…。」

デデデ「もう俺様達で行くしかねぇ、それに今の状況ではマホロア自身もつらいだけだろう…。」

カービィ「……うん…。」

寂しげな顔で俯くカービィだったが、いつまでもそうしてる訳にはいかないと無理矢理気持ちを切り替えて準備を始めた。

その頃…タランザは城を抜け出してワールドツリーの元に居た。

タランザ「アイシェが攫われてしまったの…ボクはもう大切な人を失いたくないのね……キミの力をボクに貸して、愛しい人。」

ワールドツリーを優しく撫でながら話しかけるタランザ…花は春風に揺れて優しい香りが漂ってきて、まるで彼を応援しているかの様で…タランザは抱きしめておでこをそっと当てると、決意を新たに城へと戻った。

同じ頃…マホロアは操縦室に居た。

マホロア「さっきの声は…まさかローア…それとも気のせいだったノ?」

操縦席をそっと撫でながら呟くマホロアだったが…

『私の声が聞こえていますね?』

再び聞こえてきた不思議な声…それは頭の中に直接聞こえてくると気づいたマホロアはモニターを見た。

マホロア「ローア…ローアの声ナノ…?」

するとモニターの電源が勝手に入り…

『はい、私ですマスター。』

マホロア「……………!!」

驚きのあまり言葉を失うマホロアに、ローアは優しい風で彼の頬を撫でるのだった。

To be continued…