小説「星夢煌めくPomme d’amour」(スタアラ編)~業火のフラン・ルージュ~

カービィ達は外壁を通って、要塞の中央へと侵入した。

入り組んだ地形や、強い電気を放つ丸いノコギリの様な歯車等のトラップ地帯を抜けつつ進むカービィ達…

一方、アイシェは部屋の隅でじっと縮こまっていたが…いつの間にか眠っていたようで、目を覚ますとゆっくりと起き上がった。

アイシェ「ん……私こんな所で…。」

目を擦り辺りを見渡すが、相変わらず部屋に閉じ込められたままで…しょんぼりして俯くと、扉が開いてフラン・ルージュが部下と共に入って来た。

ルージュ「食事よ、食べなさい。」

そう言うと、部下が美味しそうに焼けた肉や野菜、パンとミルクが置かれたお皿を持って来た。

アイシェ「……………。」

テーブルにそっと置かれたが、その場で動かないアイシェをルージュはじっと見ていて…

ルージュ「キッスちゃんから聞いたけど、どうやら近づけない様ね。」

そう言いつつ、ルージュがアイシェの顔に手を近づけると…

バチッ!

フラン・キッスの時と同じく魔法陣が出現して、アイシェを守っている。

アイシェ「……………!!」

ルージュ「かなり強いわね…さすがは強い魔力の持ち主だわ。とはいえ…キッスちゃんに傷1つでも付けてみなさい、地獄の業火よりも熱い炎で焼き尽くしてやるからね!」

アイシェ「っ………!!」

激しい口調でそう言うとルージュは部屋を出て行ってしまい、怯えているアイシェだったが…

???「あの…ルージュ様は気性が荒い御方なので、どうかお気になさらず…。」

まだ部屋に残っていた部下が、アイシェにそっと声をかけてきた。

アイシェ「あ…ありがとう……あの…貴方は?」

大きさはカービィやバンワドと同じくらい…背中に棒を背負っているその部下は、アイシェをじっと見ていて…再び口を開いた。

ビート「ボクはジャハルビートの「ビート」です。フラン・キッス様より貴女のお世話係に任命されました。」

アイシェ「私の…お世話係…?」

ビート「この部屋から出す事は出来ませんが、何かあれば私に言って下さい。」

アイシェ「うん…分かった…。」

ビート「それではこれで…また後で、お食事を回収しに来ますね。」

そう言うとビートは出て行ってしまった。

アイシェ「…マホロア…みんな…。」

ぎゅっ…両手を握り締めて無事を祈るアイシェは、そのまま膝を抱いて蹲った。

同じ頃…カービィ達はジャマハルダの深部まで進んでいた。

マホロア「さっきまた守護の魔術が発動しテ…アイシェはだいぶ近くに居るのが分かったケド…この先カラ強い力を感じるヨ…!」

メタナイト「この感じは、先程の者と同じか…?」

デデデ「仲間かもしれねぇな、気を引き締めていくぞ!」

カービィ「うん!」

準備を整えたカービィ達が扉を潜ると…

???「オイッ!そこの~ずんぐりピンク!」

カービィ「えっ?」

声のした方を見上げると、そこにはフラン・キッスと似た衣装を着た別の人物がいて…彼女の後ろにはジャマハートが浮いている。

???「お前だよ、オ・マ・エーー!!」

カービィ「えっ…ボク?」

???「よくも、よくも、よくもアタシのフラン・キッスちゃんを苛めてくれたわね!可愛いお顔に傷でも付いたらど~すんのよ!ジャマッデム……許せないわっ!」

デデデ「何だ…さっきの奴の仲間みてぇだが。」

メタナイト「かなり怒っている様だな。」

マホロア「というコトは…テメーもアイシェを攫った奴ダナ!」

ルージュ「お前…あの子の仲間なのね?キッスちゃんが気に入ってるから手出ししていないけど…今はそんな事はどうでもいいわ!この業火の三魔官…フラン・ルージュ様が、地獄の業火が生ぬる~く思えちゃうくらい恐ろしい目に遭わせてやるんだから!」

かなり怒っているフラン・ルージュだが、その実力は確かなもので…火の玉を飛ばしたり高速突きをしたり、近づいても炎を纏う剣で振り払ってきて距離を詰めるのは容易では無い…。

デデデ「くそっ…キリがねぇな!」

マホロア「こうなっタラ…メタナイト!」

メタナイト「分かった!」

合図でメタナイトがギャラクシアを掲げ、マホロアがマホロアストームを当てて風属性の剣「ウィンガソード」に変えた。

そして2人で連携しながらフラン・ルージュを撹乱する!

カービィ「アイシェを返して!」

デデデ「これ以上お前らを野放しには出来ねぇぞ!」

ルージュ「くっ…ちょこまかと…!」

更に怒ったフラン・ルージュは剣を4本に増やして地面に刺し、激しい火柱が上がる中…僅かな隙間から攻撃を続ける!

すると、フラン・ルージュは大きな大砲を取り出して着火した!

ルージュ「アイシェの傍に居たジャマッデムな奴等と同じ様に、焼き尽くしてあげる!」

マホロア「ッ……ソノ大砲デ…マルクとタランザに深手を負わせたノカ!!

怒りを滲ませるマホロアの視線の先で、導火線は大砲に近づいて行ったが…

メタナイト「そうは行かない!」

素早く背後に回り込み、導火線を斬り落とすと…大砲はそのまま暴発して砕け散った!

ルージュ「ぐあっ!?」

マホロア「アイシェを返セ!!」

ルージュ「うあぁぁぁぁぁ!!」

爆発で目を回すフラン・ルージュに、マホロアがレボリューションボウルを当てると…その場に倒れてジャマハートも放り出された!

デデデ「今度こそ壊させて貰うぜ!」

そう言ってジャマハートにハンマーをかざしたデデデだったが、再び浮き上がり…

ルージュ「ぐっ…!」

そのまま起き上がったフラン・ルージュはジャマハートを奪い取って飛び去った!

メタナイト「待て…くっ、また逃げられたか…!」

マホロア「クソッ!」

苛立ちを隠せないマホロアだったが、カービィが背中を優しくポンと叩いた。

カービィ「行こうマホロア、きっともうすぐアイシェに会えるよ!」

マホロア「カービィ……ウン、そうダネ!」

カービィの言葉で落ち着いたマホロアは、逃げて行ったフラン・ルージュを追った。

一方…アイシェの閉じ込められている部屋に、ビートが入って来た。

テーブルの食事は手を付けた形跡が無く、アイシェは最初に入ってきた場所で小さく縮こまって眠っていて、閉じられた瞳からは涙が零れている…

ビートがそっと頬に触れると、少しだけ身じろぎして…

アイシェ「マホロア…。」

小さく呟いて再び涙を流すアイシェに、胸の奥が締めつけられる様な苦しさを覚えたビートは戸惑いつつも、眠る彼女をそっと抱き上げてベッドに運び、優しく布団を掛けた。

そして手つかずの食事の皿を持つと、少しだけ溜息を吐きつつ…お皿を持って出ていった。

To be continued…