小説「星夢煌めくPomme d’amour」(スタアラ編)~黄泉帰る青薔薇の姫~

アイシェは気がつくと、真っ白な空間に居た。

キョロキョロと辺りを見渡しても、自分以外は誰も居ない…

アイシェ「マホロア…みんな…どこ…?」

マホロア達の姿を捜すが、ずっと真っ白な世界が広がるのみで誰も居ない…

すると微かに音が聞こえてきて、頭の中に1つの映像が流れてきた

知らない部屋に居るプラチナブロンドの人間の少女……頭には自分のケープと同じ青いリボンを付けていて、その瞳の色も同じ…

その少女は両親や使用人らしき人物達と共に居て、カービィWiiのソフトを手に喜んでいる…

あれは「生前の自分の姿」アイシェはボーッとする意識の中、そう気づいた。

生前の私は……優しい両親達とカービィのゲームで遊んで…とても愛されていたのね…でも…その世界ではカービィ達にも…愛するマホロアにもゲームでしか会えない…

生前の記憶に思いを馳せつつ、マホロア達が居ない寂しさを実感するアイシェ、すると目の前に炎の様な1匹の蝶がふわふわと飛んで来て、自分を見つめている。

眠く無いのに意識は少しずつ薄れて瞼が重くなる中、蝶は大きく羽を広げてアイシェを包み込んでいき、体は徐々に透けていく…

もう…このまま会えないのかな…アイシェの意識が完全に消えようとしていたその時!

シェ…アイシェ…

マホロア『アイシェ、コッチダヨ!』

どこからかマホロアが自分を呼ぶ声が聞こえ、アイシェの意識は少しはっきりして…ゆっくりと目を開けた。

アイシェ「マホロア…?」

マホロア『アイシェ、行っちゃダメダヨ!』

アイシェ「えっ…?」

マホロア『ボク達は一緒に生きテ、夢を叶えるんダロ?』

アイシェ「そう…そうだよマホロア…私は貴方と夢を叶えて…ずっと一緒に生きていくと決めたの!」

マホロア『おいデ、ボクと一緒に生きよう…アイシェ!!』

真っ白な空間の中、うっすらとマホロアの姿が浮かび…自分に手を差し伸べていて…

アイシェ「マホロア!!」

マホロアの声で意識を完全に取り戻したアイシェの体は元に戻り、自分を包み込もうとする蝶の羽を振り払ってマホロアの手をしっかり握ると、光に包まれて…そのまま意識を失った。

一方…悲しむマホロアの頬を伝って零れ落ちた一粒の涙がアイシェの頬に落ちた瞬間…

パアァァァ…涙は光り出して、1つの小さなハートになった。

マホロア「コレは…何が起きたノ…?」

小さなハートを見つめるマホロア…するとカービィの方にも変化が起きて…

カービィ「フレンズハートが…マホロアの涙で出来たハートと共鳴してる…!」

トクン…トクン…小さく鼓動を刻む様に動く小さなハートを、マホロアがカービィの方へそっと差し出すと…カービィはそこにフレンズハートを当てた。

すると…アイシェの体が光りながらふわっと浮き上がり、フレンズハートは小さなハートに吸収されてアイシェの中へと消えた

バンワド「ハートが…アイシェの中に…。」

何が起きたのか分からないまま見守るマホロア達…その視線の先では、アイシェが光に包まれて…次の瞬間

ふわっ…彼女の背中から翼が現れた!

マルク「アイシェの背中から翼が…一体どういう事なのサ…?」

タランザ「アイシェの体に…何が起きたのね…?」

スージー「あの翼…まるで…花弁の様な…?」

皆が不思議に思う中、翼は少しずつ薄くなって消え、アイシェは再びマホロアの腕の中にふわりと落ちた。

マホロア「アイシェ…?」

再びマホロアがアイシェの手を握ると、温かくて頬はうっすらピンクに染まっていく…

そして…口元は微かに動き、呼吸音が聞こえてくる

メタナイト「アイシェ!」

デデデ「息をしてるぞ!」

タランザ「でも…目を覚まさないのね!」

マホロア「アイシェ…。」

ゆっくりと何度も頬を優しく撫でて、マホロアはマフラーを下げると…そっとアイシェに口づけた。

すると…アイシェの唇がピクッと動いて、マホロアがそっと口を離して目を開けると…

閉じていた瞼がゆっくりと開き、美しい青の瞳が自分を見ていた。

アイシェ「マホ…ロア…?」

小さくもしっかりと自分を呼ぶアイシェに、マホロアの瞳からは再び大粒の涙が溢れたが…優しい笑みを浮かべるとゆっくりと頷いた。

マホロア「お帰り…アイシェ。」

アイシェ「ただいま…マホロア。」

マホロア「…ッ…アイシェ…アイシェ…ェ…ヨカッタ…ヨカッタヨォ…アァァァァ…ッ!!」

泣きながらマホロアはアイシェを強く抱きしめ、カービィ達も再び泣き出してしまった。

アイシェ「マホロアの声が聞こえたの…一緒に夢を叶えよう…生きようって…蝶も…振り払って…。」

マホロア「グスッ……後でゆっくり…聞かせテ…!」

アイシェ「うん…。」

スージー「アイシェ…あぁぁぁぁんっ!!」

アイシェ「スージー…来てくれてありがとう…。」

スージー「ぐすっ…えぇ…えぇ…っ…!」

泣きながらも返事をするスージーに、アイシェはそっと彼女の手を握った

マルク「アイシェ…ぐすっ…!」

アイシェ「マルク…泣いてる…。」

マルク「ひっく…泣いてなんか…ない…のサ…!」

ボロボロと流れる涙を拭いながら意地を張るマルクに、アイシェはクスッと笑ってしまう

タランザ「あぁぁぁぁ…よかったのねぇアイシェーーー!」

大泣きするタランザは6つの手で涙を拭うが、それでもボロボロと零れ落ちている

アイシェ「タランザ…マルクと一緒に私を守ってくれてありがとう…。」

バンワド「アイシェ…どこも痛くない…?」

カービィ「気分は悪くない…無理してない…?」

アイシェ「バンワドくん、カービィ…うん、痛くないし無理してないよ…。」

メタナイト「アイシェ…こちらへ戻って来てくれてよかった…。」

デデデ「もうこんな心配させんなよ…。」

アイシェ「メタさん、大王さま…心配かけてごめんなさい…そして…ありがとう…。」

皆が息を吹き返したアイシェを喜んでいると、ドロッチェ達が光になって駆けつけた。

ドロッチェ「遅れてすまない…が、無事に解決したようだな。」

アドレーヌ「みんな泣いてる…一体何があったの?」

デデデ「ぐすっ…それについては後で詳しく話すぜ…。」

しかし、全員が集結したのも束の間…

ゴゴゴゴゴゴゴ…!!

轟音と共に地響きが起き、星が崩れ始めた!

カービィ「何が起きたの!?」

メタナイト「ニルとの戦いを終えて、この星が消滅しようとしているのかもしれない!」

ドロッチェ「このままではオレ達も巻き込まれる!」

デデデ「急いで脱出するぞ!」

カービィ達はティンクルスターアライズに乗り、マホロアはアイシェを抱き抱えたまま、マルク達と共にローアに乗って飛び上がり…大爆発を起こし星が砕け散っていく中、カービィ達は脱出した。

カービィ「んっ…。」

気がつくとティンクルスターアライズは消えていて、バンワド達がゆっくりと近づいて来た。

バンワド「カービィ。」

デデデ「気がついたみてぇだな。」

メタナイト「あの星は完全に消滅したが、全員無事だ。」

カービィ「よかった。」

すると眩い光が差してきて、見上げた先にはポップスターが美しく輝いていて…ワープスターが飛んで来た。

バンワド「帰ろう、カービィ。」

デデデ「帰ってみんなで一緒に飯にするぞ。」

メタナイト「そうだな、今日はゆっくりと過ごしたい。」

カービィ「うん。」

4人はワープスターに乗り、ローアと共にポップスターへ帰還した。

To be continued…