小説「Amore eterno」~帰還~

アクア「朝になったわね…島が消えて、たくさんの光が昇っていくのが見えたけど…何だったのかしら?でも今までずっと哀しい気持ちになっていたのが嘘のように消えたわ。」

ガーラス「私もアクア様と同じです。同時にエメラ様に似た気配も消えました…一体あれは何だったのか…皆様に何も無ければ良いのですが…。」

スマラ「…あれは!」

視線の先に見えたのは…ボロボロになりながらも、こちらへ向かって歩いてくるブルース達の姿であった。

船へ戻った後、アンデッド·クロンの事、島の内部で見た事、エメラの事…これまであった事を全て話した。

ガーラス「それでは…私が感じたエメラ様の気配とはその事だったのですね…。」

アクア「何か強い悲しみの感情がこみ上げてきたの。そしてずっとそういう気持ちだったのに…さっき島が消えて光が昇っていくのを見た時に、スッと無くなったわ。」

スノウ「あまりにも長い間アンデッド·クロンという悪魔に捕まっていたからな…きっと彷徨い続けていた魂が、助けを求めていたんだろう…。」

ブルース「だが、奴はもう滅んだ。これでもう悲しい犠牲が生まれる事もない。」

話が終わり一段落した後、今日1日はゆっくり休み、明日の朝ミラージュアイランドへ帰還する為出航する事になった。

ガーリル「ふぁぁ…仇討ちも終わったし…一眠りするか…。」

スノウ「そうだな、出航も明日だし。今日は1日ゆっくり過ごすとしよう。」

皆はそれぞれの時を過ごし…マリンは自分の部屋でアクアの髪を梳かしていた

セイレーン·ケイヴで再会してから今まであまり話す機会が無かった為、2人はとても嬉しそうだった。

マリン「ふふっ…今のアクアは昔の私に良く似てるわ。」

アクア「みんな口を揃えて『お前はマリンに瓜二つだ』って言うの、お母様も昔こんな感じだったの?」

マリン「えぇ、そうよ。王宮に写真が残っているはずだから帰ったら見せてあげるわ。」

アクア「うん、楽しみにしてるね。」

何気ない母と娘の会話は恋の事になり…

マリン「ガーリルから聞いたわ。プロポーズされたらしいわね?」

アクア「…うん。」

マリン「迷っているのね、アクア。スマラとの事で…でしょう?」

アクア「…スマラの事は好きよ。でも…ガーリルの事も…好きなの。自分でもどうしたら良いのか分からなくて…答えを出そうとすればするほど頭の中でモヤモヤして…。」

マリン「今すぐに出さなくても良いのよアクア。誰も急かさないし、これは時間をかけてたくさん悩めんでいいの…そうすれば、いつか自然と答えは出るわ。」

アクア「お母様もそうだったの?」

マリン「えぇ、色んな殿方から求婚されたし…でもたくさん悩んだ末に私は私はこの人を愛しているって想いが強くなって、ブルースのプロポーズを受けたの。」

アクア「私もいつか…答えが出るかしら?」

マリン「出るわよ、必ず。だから今はたくさん悩みなさい。私は応援するわ!」

アクア「ありがとう、お母様。」

こうしてお風呂での会話は終わり、その後マリンも休む為に部屋へ戻ったのだった。

一方…甲板ではスノウとブルースがアクアの話をしていた。

ブルース「65年間の間に…アクアは大人の女性になりかけている。月日が流れるのは長い様で短いな…。俺がアクアと一緒にいた時間は僅か10年。だが牙から見せられたビジョンでいつもあの娘の成長を見守っていた…。スノウ、俺が居ない間のマリンとアクアの保護、本当に感謝している。」

スノウ「何堅苦しい挨拶してんだよブルース。それに俺だけじゃない、マリンとラクトの助けもあったからこそここまで来れたんだ。…アクアとは血の繋がりは全く無いが…俺にとってあの娘はもう自分の子供同然なんだ。これからも…ずっと護ってやりたい、もう1人の『父親』として。」

ブルース「勿論だスノウ。これからも宜しくな!」

スノウ「こちらこそ!」

そう言ってブルースとスノウは互いに手を堅く握り、強い決意を確かめ合うのだった。

その頃…アクアの部屋にスマラが訪れた。

アクア「スマラ、どうしたの?」

スマラ「少しそこら辺を散歩しようと思ってな。…一緒に行かないか?」

アクア「えぇ、喜んで。」

嬉しそうに船から降りていく2人を、ブルースとスノウが見ていた。

スノウ「アクアも大変だな…ガーリルとスマラの2人に好意を寄せられて。」

ブルース「やっぱりマリンの娘だな、ミラージュアイランド随一の美しさと称えられるザフィーア王族の血を引いているだけある。だが、やっぱり父親としては…娘が他の男に取られるのは…複雑な思いだな。」

スノウ「ははっ、親バカだなブルース…なーんて俺もだけど。幸せになって欲しいと思いつつ内心はやっぱり複雑だよ、でも…それが父親ってもんなんだろうな。」

一方そんな2人の思いを知る由もなく、スマラとアクアは砂浜を歩いていた。

彼女を散歩に誘った訳…それは自分の気持ちをアクアに伝える事だったが…そんな事も知らずに散歩を楽しみながら笑う彼女を見て、スマラは笑みを浮かべつつも少し複雑な心境になるのだった。

スマラ「アクア、あのな…俺…大事な話が…」

その時!「クゥー」という不思議な鳴き声が響いた。

アクア「何…今の声?」

2人は不思議に思いつつ、声が聞こえた方向へと向かった。

To be continued…