65年の時を経て…遂に憎き仇、アンデット・クロンを倒したブルース達。
エメラは許された僅かな時間に息子ラクト、ガーリルに母としての慈愛と思いを伝え、天へと昇っていった。
島を出た後に同じく救われた魂達が天へ昇って行くのを見届けると…大切な者達が待つミーティア号へ向け歩き出すのだった…。
~帰還~
アクア「朝になったわね…島が消えて、たくさんの光が昇っていくのが見えたけど…何だったのかしら?でも今までずっと哀しい気持ちになっていたのが嘘のように消えたわ。」
ガーラス「私もアクア様と同じです。同時にエメラ様に似た気配も消えました…一体あれは何だったのか…皆様に何も無ければ良いのですが…。」
スマラ「…あれは!」
視線の先に見えたのは…ボロボロになりながらも、こちらへ向かって歩いてくるブルース達の姿であった。
そして船へ戻った後、これまであった事を全て話した。
アンデット・クロンの事、島の内部で見た事、エメラの事…。
ガーラス「それでは…私が感じたエメラ様の気配とはその事だったのですね…。」
アクア「何か強い悲しみの感情がこみ上げてきたの。そしてずっとそういう気持ちだったのに…さっき島が消えて光が昇っていくのを見た時に、スッと無くなったわ。」
スノウ「あまりにも長い間アンデット・クロンという悪魔に捕まっていたからな…きっと彷徨い続けていた魂が、助けを求めていたんだろう…。」
ブルース「だが、奴はもう滅んだ。これでもう悲しい犠牲が生まれる事もない。」
話が終わり一段落した後、今日1日はゆっくり休み、明日の朝ミラージュアイランドへ帰還する為出航する事になった。
ガーリル「ふぁぁ…仇討ちも終わったし…一眠りするか…。」
スノウ「そうだな、出航も明日だし。今日は1日ゆっくり過ごすとしよう。」
マリン「ねぇアクア、一緒にお風呂入らない?」
アクア「うん、いいよ。」
セイレーン・ケイヴで再会してから今まであまり話す機会が無かった為、2人はとても嬉しそうだった。そして…。
マリン「アクア、いつのまにかすっかり大人の体つきになったわね。」
アクア「ママは…昔から全然変わらないよね、抜群のプロポーションだし。」
マリン「成人になると老化が止まるからね。でも結構このスタイルを保つ為に努力はしてるわよ。ふふっ。」
アクア「みんな言うわ、『お前はマリンに瓜二つだ』って。ママも昔こんな感じだったの?」
マリン「えぇ、そうよ。王宮に写真が残っているはずだから…帰ったら見せてあげるわ。」
アクア「うん、楽しみにしてるね!」
何気ない母と娘の会話。
そして…話は恋の事に。
マリン「ガーリルから聞いたわ。プロポーズされたらしいわね?」
アクア「…うん。」
マリン「迷っているのね、アクア。スマラとの事で…でしょう?」
アクア「…スマラの事は好きよ。でも…ガーリルの事も…好きなの。自分でもどうしたら良いのか分からなくて…答えを出そうとすればするほど頭の中でモヤモヤして…。」
マリン「今すぐに出さなくても良いのよアクア。誰も急かさないし、これは時間をかけてたくさん悩めんでいいの…そうすれば、いつか自然と答えは出るわ。」
アクア「ママもそうだったの?」
マリン「えぇ、ブルースにプロポーズされた時は随分と迷ったわ…色んな殿方から求婚されたし…でもブルースの気持ちも嬉しいし…ってね。たくさん悩んだ末に私は私はこの人を愛しているって想いが強くなって、ブルースのプロポーズを受けたの。」
アクア「私もいつか…答えが出るかしら?」
マリン「出るわよ、必ず。だから今はたくさん悩みなさい。ママは応援するわ!」
アクア「ありがとう、ママ。」
こうしてお風呂での会話は終わり、その後マリンも休む為に部屋へ戻ったのだった。
一方…甲板ではスノウとブルースがアクアの話をしていた。
ブルース「65年間の間に…アクアは大人の女性になりかけている。月日が流れるのは長い様で短いな…。俺がアクアと一緒にいた時間は僅か10年。だが牙から見せられたビジョンでいつもあの娘の成長を見守っていた…。スノウ、俺が居ない間のマリンとアクアの保護、本当に感謝している。」
スノウ「何堅苦しい挨拶してんだよブルース。それに俺だけじゃない、マリンとラクトの助けもあったからこそここまで来れたんだ。…アクアとは血の繋がりは全く無いが…俺にとってあの娘はもう自分の子供同然なんだ。これからも…ずっと護ってやりたい、もう1人の『父親』として。」
ブルース「勿論だスノウ。これからも宜しくな!」
スノウ「こちらこそ!」
そう言ってブルースとスノウは互いに手を堅く握り、強い決意を確かめ合うのだった。
その頃…アクアの部屋にスマラが訪れた。
アクア「スマラ、どうしたの?」
スマラ「少しそこら辺を散歩しようと思ってな。…一緒に行かないか?」
アクア「えぇ、喜んで。」
嬉しそうに船から降りていく2人を、ブルースとスノウが見ていた。
スノウ「アクアも大変だな…ガーリルとスマラの2人に好意を寄せられて。」
ブルース「やっぱりマリンの娘だな、ミラージュアイランド随一の美しさと称えられるザフィーア王族の血を引いているだけある。だが、やっぱり父親としては…娘が他の男に取られるのは…複雑な思いだな。」
スノウ「ははっ、親バカだなブルース…なーんて俺もだけど。幸せになって欲しいと思いつつ内心はやっぱり複雑だよ、でも…それが父親ってもんなんだろうな。」
一方そんな2人の思いを知るよしもなく、スマラとアクアは砂浜を歩いていた。
スマラ「今日は晴れてて良い日だな。海も昨日と違って穏やかだ。」
アクア「見てみてスマラ、ワカメ!」
スマラ「…ナマコ。」
アクア「あははっ!あ、あっちにあるの何だろー!」
彼女を散歩に誘った訳…それは自分の気持ちをアクアに伝える事だった。
しかし…そんな事も知らずに無邪気に笑う彼女を見て、スマラは笑みを浮かべながらも、少し複雑な心境になるのだった。
スマラ「アクア、あのな…俺…大事な話が…」
その時!「クゥー」という不思議な鳴き声が響いた。
アクア「何…今の声?」
声のする方へ向かった2人、その先に見たものとは!?
~To be continued…~