小説「Aiming for the ground Octo」~戻る記憶と決意~

夜…まめみはツネと一緒にリビングで温かいココアを飲んでくつろいでいた。

まめみ「最近、昼間は暖かいのに夜は冬みたいに寒くなるよね…温かいココアが美味しくてホッとする…。」

ツネ「もう初夏なのに…何だか最近の気温は変だね…。」

まめみ「徐々に落ち着いてくるといいけど…。」

ツネ「そうだね…。」

飲み物を飲んで歯を磨き、その後もリビングのソファでくつろいでいた2人だが…

まめみ「……………。」

眠くなってきたまめみはうとうとしていて…

ぽふっ…ツネの肩にそっと寄りかかった。

ツネ「………………。」

そっとまめみの方を覗き込むと、まめみは目を瞑っていて…長い睫毛にみずみずしい唇…規則正しい寝息…着ているモコモコのパーカーから覗く豊かな胸の膨らみ…

ツネは内心ドキドキしていて…それでも理性で抑えつつ、まめみを優しく抱き上げて寝室へ運んだ。

まめみ「んっ…すぅ…すぅ…。」

ツネ「(可愛いなぁ…。)」

ぐっすり眠っていて起きないまめみ…ツネはまめみの隣に潜り込んで、彼女の頬をそっと撫でた。

まめみは可愛くて愛おしい…ツネは彼女に対して沸き上がる欲情を理性で抑えていたが…

まめみ「んっ…ん……。」

ぎゅっ…寝ているまめみはあろう事かツネに抱きついて来て…

ツネ「……………!!」

鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい煩くて…同時に呼吸も少し荒くなってしまって…

少しだけ…ほんの少しだけ…

ツネはそっとまめみの首筋を撫でてキスをした…。

まめみ「んぅ…すぅ…すぅ…。」

少しピクッとしたものの、全然起きないまめみ…ツネはまめみを抱きしめながら、鎖骨や首筋に優しく唇を這わせて…

ツネ「はぁ…まめみ…いい匂い…。」

甘くてふんわりした良い香りに包まれて…ツネはまめみに優しく頬ずりをした

そして彼女の指に自身の指を絡ませて…おでこにちゅっとキスをした。

まめみ「すぅ…すぅ…。」

ツネ「(大好きだけど…無防備のまめみを襲う事は出来ない…)おやすみ、まめみ。」

そう言うと、ツネはまめみを抱きしめて…じきに眠りに着いた。

その頃、暗くなったリビングではハイドラントとノーチラスが会話をしていた。

ノーチラス「(タキが任務に向かって以来、まめみはずっと元気が無かったが…ツネが力になってくれた様じゃな。)」

ハイドラント「(一時はまめみを巡って大変な事になったがな…とりあえず今の所は大人しくしている様だし、何よりまめみの事を本当に大切にしてくれている…それだけでも我は安心だ。)」

ノーチラス「(…変わったのう、ハイドラント…昔のお前ならそんな言葉は絶対に出てこなかった。まめみがお前を変えてくれたのじゃな。)」

ハイドラント「(我が唯一認めた主…それがまめみだ、2年前に我を選び…ひたむきに努力を続けて我の力を存分に引き出してくれた…あの娘は我の力を発揮させてくれただけでなく、我の心をも動かしてくれたのだ。)」

ノーチラス「(わらわはまめみと出会ってまだ日は浅いが、あの娘の真っ直ぐな気持ちと包み込む優しさはよく分かっておる…まめみなら、わらわ達も安心して任せられる。)」

ハイドラント「(…もう少し警戒心を持ってくれれば、なおいいのだがな…。まめみは優しすぎてしまう所がある、それで傷つかないか我は心配なのだ…。)」

ノーチラス「(ふふっ、かつては使い手を手こずらせる事で知られていたお前が、逆に使い手に手こずらされているとはのう…そこがまめみの長所であり短所でもある…じゃが、それをタキが補ってくれている…互いにフォローしあえるあの2人なら大丈夫じゃ。)」

ハイドラント「(そうだな…お前のおかげで安心した、感謝するぞノーチラス。)」

ノーチラス「(ふふっ、お前らしくもないのう…。)」

そう言いつつも、ノーチラスは嬉しそうで…2つのブキはその後もしばらく会話に花を咲かせるのだった。

同じ頃…ルイはビック・ラコイ田駅に到着した。

ここでのミッションはインクレールに乗りながら、迫り来るヌリヌリ棒を避けながらゴールする事

ルイは抜群の運動神経でそつなくこなし、無事にクリアしたのだった。

次に向かったのは「ジョーダン・ハ・ヨシ湖駅」で、ミッション内容は時間内に全ての敵を倒す事

支給ブキの中からキャンピングシェルターを選び、改札を飛び出したルイだったが…

ルイ「うわっ…とっと…!」

空中に浮かぶ木箱の上で、出てくる敵を倒していくミッション…しかも足場は脆い木箱がほとんどで、1回攻撃が当たると壊れてしまう…

そこに来て敵はボムを飛ばしてくるボムタコプターも居て…ルイは何度も落ちそうになりつつも応戦して…やっとの思いでクリアしたのだった。

終わってから電車に戻ったルイは青ざめた顔をしていて…

グソクさん「おいおいルイ君…大丈夫かい…?」

ルイ「生きた…心地がしなかった…。」

冷や汗を流すルイだったが、しばしの休憩の後に…新たなチャレンジへ向けて進み始めた。

次に着いた「ジョシリョ区駅」のミッションはエイトカプセルを守り切る事だが…最初にやったのとはまた違う守り方であり、ルイを追い詰めてしまう程の難易度の高いチャレンジであるのをこの時の彼が知る由も無かった…。

他の駅と違い、自由にブキやサブ、スペシャルを選べるシステム…ルイは最初はホクサイとスプラッシュボム、ジェットパックを選んでエイトカプセルに近づいたが…

視線の先にいたのはあの時に相手をしたタコボーイ達と同じ肌と髪の色をしたタコゾネス!

タコゾネス「ターゲットハッケン…ハイジョセヨ!」

ルイ「!?」

2人一組となって襲いかかってくるタコゾネス達…最初は苦戦する事無く相手をするルイであったが…後半に出てきた「デラタコゾネス」達はとても強く、何度やっても上手くいかず失敗してやり直しになってしまう…。

タコゾネス「………………。」

ルイ「はぁ…はぁ…!」

何でこんなにも上手くいかない…何て強さだ…!

息を切らしイライラが募るルイ…チャンスは最後の1回…これを失敗したら自分はどうなるか分からない…

ここで死ぬわけにはいかない、僕は生きて記憶を取り戻すんだ!

強い決意を胸に深呼吸をすると、ルイは再びブキを手に駆け出して行った。

何度もやって相手の手の内は把握した!被弾しつつも素早くかわし、やっとの思いでタコゾネス全員を退けて…

タコゾネス「グッ…ウアァ…!」

体が溶けてインクとなり、地面に消えたタコゾネス達…

その直後にエイトボールを守る制限時間は切れて…チャレンジを無事にクリアしたのだった。

「ホタパーカー」のネリメモリーを手に入れて電車に戻ったルイは、グソクさんに今まで集めてきたネリメモリーを見せた。

グソクさん「ふむ…ルイ君は色んな駅をクリアして、色んな世界を見てきたんだね…。」

その時…ルイの頭の中に、また何かの映像が流れた…

しかし今度は頭痛は無くて…

2人のタコボーイと歩く自分…ゴツゴツした山道の様な場所を歩いて居て…

後輩1『任せて下さいルイ先輩!』

後輩2『俺達どこまでもルイ先輩と一緒に行きますよ!』

ルイ「そう…そうだ…僕は…僕は後輩2人と一緒に…!」

グソクさん「ルイ君、また記憶を取り戻したのかい…?」

ルイ「うん…僕は…僕はオクタリアンの戦闘部隊…後輩2人と共に、行方不明になったタコゾネスの子の調査に来ていて…何者かに連れ去られたんだ…!あぁ…あの時…ハン・パネッ州駅で僕の前に立ち塞がって…倒した…あの2人は…僕の…僕の大切な後輩達…!」

グソクさん「何だって…!?」

ルイ「あぁ…ぁ…僕は…僕は何て事を…!!」

白い瞳からボロボロと大粒の涙を流して悲しむルイに、グソクさんも驚きを隠せなかった…

グソクさん「何て事だ…君の仲間は恐らく…消毒されてしまったのだね…。」

ルイ「消…毒…?」

泣きながらルイはグソクさんに尋ね、彼は深く頷きながら静かに語り始めた…。

グソクさん「オレが昔2つだけクリアしたステージ…そこにはタコの敵が居てね…とても苦戦させられたよ…その時に、こんな噂を聞いた事があるんだ…失敗した者は自我をネリ返されて何もかも忘れてしまう…それを「消毒された者」と呼ばれているとね…。」

ルイ「消毒…僕の…僕の大切な仲間達を…よくも…!」

グソクさん「ルイ君…!」

泣き続けるルイであったが…しばらくした後、ゆっくりと立ち上がって涙を拭い口を開いた。

ルイ「グソクさん…僕、チャレンジを進めて行くよ。」

グソクさん「ルイ君…だが君にも危険が…!」

ルイ「確かに危険だよ…でもこのままずっとここに居るわけにはいかない、僕の大切な仲間達を助けなきゃ…そして、後輩2人の為にも…必ずここを脱出する!」

そう話すルイの白い瞳には強い決意が込められていて…グソクさんはサングラス越しに目を細めた。

グソクさん「とても輝いているよルイ君…分かった、オレは相変わらずここで応援するしか出来ないけど…君なら必ず出来る!」

ルイ「ありがとうグソクさん!」

全ての記憶を取り戻したルイは、新たなる決意を胸に進み続け…次に選択したのは「アン・チエイジン郡駅」

彼を待ち受けているミッションとは…

To be continued…