小説「Aiming for the ground Octo」~地上の変化~

朝…まめみが目を覚ます前にツネは起きてリビングへ行き、テレビをつけた。

テレビでは天気予報がやっていて、最近の寒さについて話していたが原因不明との事だった…。

ツネはソファに横になってくつろいでいたが…しばらくして眠ってしまい…

まめみ「ふあぁ…おはよ…ってあれ、ツっくん…。」

ツネ「すぅ…すぅ…。」

まめみ「(もう少し寝かしておいた方がいいかな。)」

寝室から毛布を持ってきて、そっとツネにかけたまめみ…すると、ピロンとまめみのイカスマホが鳴った。

まめみ「(タキ君!?…あ…まめお…。)」

ほんの少しだけがっかりしたまめみったが…まめおから長袖の服を持ってきて欲しいという内容だった為、着替えてF-190を羽織ってまめおの長袖を袋に入れた

そしてテーブルにメモを置くと、そっとスルメさんのお店に出かけて行った。

しばらく歩いてお店に着き…

まめお「ありがとな、助かったぜ…ふぇ…ぶえっくしゅん!」

まめみ「わぁぁ…大丈夫!?」

まめお「あぁ…それにしても初夏なのにこの寒さは異常だな…。」

まめみ「うん、ほんとだね…みんなコート着てるし…。」

まめお「少し温まってから帰れよ。」

まめみ「うん、そうする。」

2人でお店の中に入り、まめおが準備を手伝う中…まめみは椅子に座ってお茶を飲んでいた。

イカスマホを見ても、相変わらずタキからの連絡は無くて…まめみは寂しさを少しでも和らげるかの様に深いため息を吐いた…

すると…

よっちゃん「まめみちゃん。」

まめみ「よっちゃん…。」

よっちゃん「元気がないわね。」

まめみ「そ…そんな事無いよ…。」

よっちゃん「隠さないの。…タキ君の事かしら?」

まめみ「あ…。」

よっちゃん「最近2人で来てないものね…喧嘩でもしちゃったの?」

まめみ「ううん、喧嘩はしてない…ただ…事情があって…今は会えなくて…。」

よっちゃん「事情…?」

まめみ「うん…詳しくは…話せないんだけど…ね…。」

そう話すまめみの桃色の瞳は寂しそうに揺れていて…彼女の気持ちを察したよっちゃんはまめみを優しく抱きしめて背中を撫でた。

よっちゃん「タキ君は、きっと大事な用事があるのね…まめみちゃんは、帰りを待っているんでしょう?」

まめみ「…うん…。」

よっちゃん「それなら、タキ君が帰ってきたら最高の笑顔で迎えてあげましょう?」

まめみ「よっちゃん…。」

よっちゃん「まめみちゃんは笑顔が一番よ、悲しい顔してたら…タキ君びっくりしちゃうわ。」

まめみ「…うん、そうだよね。」

そう言って、まめみは涙を拭って笑顔を見せた。

よっちゃん「やっぱりまめみちゃんの笑顔は最高だわ。」

まめみ「ありがとう、よっちゃん。」

2人は優しく抱き合い、その後まめみは帰って行った。

よっちゃん「(数日前、タキ君とまめみちゃんをハイカラシティのマンホール付近で見かけたわ…タキ君…彼はきっと何か大きな使命を背負っているのね。)」

そう思いつつ、よっちゃんは2人の身を案じるのだった。

まめみが家に向かって歩いて居ると、ツネが歩いて来た。

ツネ「まめみ。」

まめみ「ツっくん、どうしたの?」

ツネ「起きたらまめみが居なくて、メモが置いてあったから迎えに来たんだ。」

まめみ「ありがとう。」

ツネ「どういたしまして、せっかくだからこのままどこかで朝ご飯食べようか。」

まめみ「あ、それだったらスルメさんのお店で食べようよ!」

ツネ「うん、いいよ。」

まめみはツネを連れてスルメさんのお店に戻り、2人で朝ご飯を食べ街をぶらぶらと歩いた…すると、お店で売られていたマッチャライトダウンが目に入った。

まめみ「あ、このダウン…ツっくんに似合いそうだね。」

ツネ「ん、そうかな?」

服を持って試着したツネ…抹茶色のダウンは温かく、彼の細身の体にもフィットしていてよく似合っている。

まめみ「素敵だよツっくん、すごく似合ってる!」

ツネ「ありがとう、温かいし動きやすい…すごくいいねこれ。」

まめみ「ちょっと待っててね。」

ツネ「ん、分かった。」

そう言うとまめみはマッチャライトダウンを持って店の奥へ行き…少ししてから戻って来てツネに大きな袋を渡した。

まめみ「あたしからのプレゼントだよ、これで寒くないね。」

ツネ「まめみ…ありがとう、大事にするよ…!」

大好きなまめみからのプレゼントに、ツネは心が暖かくなり…袋を抱きしめる手にも力が入った。

同じ頃、ここは海上集落シャケト場…

とぐろ「ただいま。」

シャケ子「お帰りなさいダーリン。」

ドスコイまる「キュッキュッ!」

とぐろ「うぅ…寒い…。」

シャケ子「もう初夏なのに、最近海中の温度が下がって寒いわね…。」

とぐろ「あぁ、まるで真冬みたいな寒さだな…。」

シャケ子「すぐにお風呂を沸かすわ。」

とぐろ「頼む…。」

床に丸まって寒さに耐えるとぐろに、ドスコイまるが心配して傍に寄り添っていたが…

コンコン…扉を叩く音が聞こえた。

シャケ子「あら、誰かしら?」

不思議に思いつつ扉を開けると、そこに立っていたのはオオモノシャケのコウモリ「ジェレラ」だった

通常のコウモリと違って青い瞳で…扇形の黄色いトサカと尻尾がゆらゆらと揺れている。

ジェレラ「こんにちはシャケ子、お願いされてたのが出来たから持ってきたわ。」

シャケ子「ありがとうジェレラ、上がってちょうだい。」

ジェレラ「お邪魔します。」

大きな傘を閉じて家の中へ入ったジェレラは、リビングに来て座った。

とぐろ「おうジェレラ…こんな姿で悪いな…。」

ジェレラ「とぐろ隊長、どうしたんですか…!?」

とぐろ「仕事に行ってきたんだが…すごい寒くてな…風呂が沸くまで待ってる所で…。」

ジェレラ「そうだったんですね、お疲れ様です…。」

シャケ子「もうすぐ沸くから待っててね。」

とぐろ「あぁ、助かる…。」

ジェレラ「あ、シャケ子…作ったの渡すわね。」

そう言ってジェレラは袋から編み物で出来た綺麗な鍋敷きを取り出して、シャケ子に渡した。

シャケ子「まぁ、今回もとっても綺麗で素敵!」

ジェレラ「ちょっと複雑な模様だから編むのは大変だけど、自信作なのよ。」

とぐろ「ほぉ…これはまた大したもんだな。」

シャケ子「早速今夜の晩ごはんで使わせて貰うわ。」

ジェレラ「ふふっ、使って貰えて私も嬉しい。」

そう言って彼女は嬉しそうに笑うのだった。

話をしている内にお風呂が沸き…

とぐろ「お、沸いたみたいだな…入ってくる。」

シャケ子「えぇ、行ってらっしゃい。」

ドスコイまる「キュッキュッ!」

とぐろはドスコイまるを連れて浴室へ消えた。

シャケ子「ジェレラ…ここ最近、本当に冷えるわね…。」

ジェレラ「それもここ数日で急だものね…原因不明の異常気象だって話だけど…何か悪い予兆じゃないといいわね…。」

シャケ子「そうね…。」

そう話すシャケ子とジェレラは、窓の外から海を眺めて心配するのだった…。

To be continued…