小説「巡る虹色四季模様(日常編)」~力の発動~

ある日の事…

ツネ『僕は地下へ戻るけど、何かあったら連絡してね。』

ざくろ『うん、分かった。』

この日ざくろはまめみとタキと共にプラベをする約束をしていたので、ツネと途中で別れて2人の元へ向かった。

まめみ「ざくろちゃん!」

ざくろ「まめみ、タキ!」

タキ「ざくろ、またイカの言葉が上手になったね。」

ざくろ「うん、もうほとんど詰ま…らない。」

まめみ「よかった、それじゃあ行こ…」

そう言った直後…

ぐうぅ…ざくろのお腹が鳴った。

ざくろ「朝ご飯食べたのに、またお腹空いちゃ…た…。」

タキ「それなら、ロブのお店で少し腹ごしらえしてから行こうか。」

まめみ「そうだね。」

ざくろ「ありがと、2人共。」

3人がロブのお店で食事を始めたのと同じ頃…ツネは地下でエンと話をしていた。

ツネ『それじゃあ、これがサマーニャの…。』

エン『えぇ、サマーニャの身につけていたサングラスやプロテクターから僅かな遺伝子を取り出せたんです。』

ツネ『このまま冷凍保存に?』

エン『その予定です。』

ツネ『いつか…もしかしたら彼女の遺伝子を持った新たな命が生まれて来る日が…出来ればその時が来ず、穏やかにいられればいいけどね。』

エン『えぇ、私も同感ですよ。』

一方、3人は食事を終えてプラベの準備を終えていた。

タキ「それじゃあ俺がここで見てるから、まずはまめみとざくろで手合わせしていいよ。」

まめみ「ありがとうタキ君。」

ざくろ「あたし、2人と手合わせするのは初め…て…だからすごく嬉しい。」

まめみ「あたしも嬉しいよ。」

ステージはムツゴ楼、まめみはパブロでざくろはスプラスコープコラボを装備してスタート地点に立った。

タキ「試合スタート!」

掛け声と共に試合が始まった…が!

まめみ「ここを塗っておいて…あっ!」

ズドンッ!!

間一髪で気づいてかわしたまめみだが、ざくろの斜線は既に彼女を狙っていて…かわしていくのがやっとの状態だ。

ざくろ「……………。」

赤い瞳はスコープを覗き、無駄の無い動きでまめみを探すざくろ

まめみ「さすがタコワサの護衛部隊…すごく強い…!」

だけど自分もヒーロー4号、負けない…負けたくない…!

そう強く思った瞬間、まめみはパブロをぎゅっと握りしめて地を蹴って駆け出した!

ざくろ「見つけた!」

タキ「まめみ…!!」

彼女の姿を見た瞬間、タキは観客席から立ち上がって走り出した。

一方まめみはパブロで素早く動きながら、ざくろの攻撃をかわして距離を詰めていく…

ざくろ「速い…!」

しっかり狙って的確に撃っても、まめみは直前で素早くかわしてしまう…

そして…

まめみ「行くよっ!」

そう言ってまめみは突っ込んで来てパブロを振り…

ざくろ「ぎゃんっ!」

彼女のパブロによってざくろはその場に倒れた。

タキ「まめみ、ざくろ!!」

遠くでタキが自分達を呼ぶ声が聞こえて、ざくろはゆっくりと起き上がった。

ざくろ「ふぅ…まめみ、すごく強…かた。」

まめみ「……………!」

ざくろ「まめみ顔色が悪いよ、それにまだ髪の色が試合時の黄色のまま戻ってない…大…丈夫…?」

まめみ「……っ………!!」

タキ「まめみっ!!」

ざくろ「まめみ!?」

ドサッ…その場に倒れ込んだまめみを、タキは直前で受け止めて抱きかかえた。

タキ「まめみ、やっぱりあの時に…!」

ざくろ「タキ…まめみ、どうしたの…!?」

タキ「詳しい事は後で話すけど…とにかくツネに連絡を…!」

そう言ってタキはイカスマホを手に取ってツネに電話をしたが…

プルルルル…

ツネ『ん?』

エン『ざくろですか?』

ツネ『………チッ。』

舌打ちをすると、ツネはそのまま拒否を押してしまった。

ツー、ツー…

タキ「あの野郎…!」

イラっとしたタキだが、気を取り直して再びかけた…

プルルルル…

エン『またかかってきましたよ。』

ツネ『…くそっ…タキめ。』

そう毒づいて、ツネは渋々通話ボタンを押した。

タキ『いきなり切らなくてもいいだろ。』

電話の向こうからはイライラしたタキの声が聞こえてきて…ツネは眉間に皺を寄せつつ口を開いた。

ツネ「開幕からいきなりそれかい…用事が無いなら切るよ。」

タキ『あるから電話してるんだ!』

ツネ「なら早く言ってくれ。」

タキ『まめみが倒れたんだ!』

ツネ「まめみが!?何でそれを早く言わない!」

タキ『そっちが切ったんだろ!』

ツネ「とにかくすぐに向かうから待ってろ、場所は?」

タキ『ムツゴ楼だ、まめみの家に連れて行くからそっちに来てくれ。』

ツネ「分かった。」

ピッ…

エン『まめみさんに何かあった様ですね。』

ツネ『ごめん、地上に戻るよ。』

エン『大丈夫です、早く行ってあげて下さい。』

ツネ『ありがとう、エン。』

そう言うとツネは急いで地上へ…まめみの家へ向かった。

しばらくして…ツネがまめみの家に着くと、ベッドに眠るまめみと傍で彼女の手を握って心配するタキ、ざくろの姿があった。

ざくろ「ツネ…!」

ツネ「一体何が…それにこの髪の色は一体…!?」

タキ「…例の力、シンクロを起こしたんだ。」

ツネ「シンクロ…?」

ざくろ「どういう事、タキ?」

タキ「知っての通り、まめみはウト族…ブキと心を通わせて会話する力を持っている…けど特に強い力を持ってるが故に、たまにこうやってブキとのシンクロを起こして精神力を使い果たしてしまうんだ…2年前に突然この力を発症して以来、まめみは少しだけ体が弱くなってしまった…。」

ざくろ「そんな…まめみ…!それじゃあ、さっき髪の色が黄色…ままだったのは…!?」

タキ「よっちゃんの遺伝なんだ、彼も気が昂ると髪が黄色に変化して…まめみの場合はシンクロ時にそうなる。一見普通の黄色と変わらないけど、まめみが力を発動した場合ゲソの先の模様が濃いピンクになるから俺はそれですぐに気づいた。」

ツネ「そういえば…ブキとのシンクロは母様から昔聞いた事がある、ウト族の中でも希に…特に強い力を持つ者が居たと。」

タキ「その力を持つ者は、まめみと同じ様に精神力を消耗していたの?」

ツネ「母様からはそう聞いている…本人も無自覚な故にコントロールするのが難しいとも…中には制御出来る者も居たらしいが、それはとても屈強な精神の持ち主でないと無理だと…。」

タキ「そうか…。」

ざくろ「ツネ…どうにかならないの!?」

ツネ「…………。」

ざくろ「ツネ!」

ツネ「エンに相談してみよう。」

ざくろ「エンなら…どうにか出来る…?」

ツネ「確証は無いけど、エンなら何かいい案があるかもしれない。」

タキ「ツネ…彼は来てくれるのかい?」

ツネ「僕から頼めばきっと力を貸してくれるだろう。それにオクタリアンの技術は地上の15年先を行っている…シンクロの事についても何か分かるかもしれない。」

タキ「分かった…頼んだよツネ。」

ツネ「君に言われなくてもそうするさ。」

憎まれ口を叩きつつも、ツネはイカスマホを取り出してエンに連絡をした…

夕方…夕暮れに照らされた地上を歩く1人のタコボーイ

黄色のアフロ頭が揺れて、紫の瞳が薄暗い暗闇で妖艶に光る…

エン「突然電話が来たと思ったら地上へ呼び出しなんて…急過ぎますよ、ツネ。」

そう呟くと、エンはツネとの待ち合わせ場所へと向かうのだった。

To be continued…