小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」~雪色の少女~

お店を出てタキと歩き出したまめみだが、さっき聞こえた声の事が気になっていた。

まめみ「…………。」

あの声…心の中に直接語りかけてきた

まさか…あれは…

タキ「まめみ?」

まめみ「…………。」

タキ「まめみ!」

まめみ「…あっ…ごめんね…。」

タキ「さっきから様子が変だけど、どうしたの?」

まめみ「…タキ君、さっき…」

心配するタキを見て、まめみはさっき聞こえた「声」の事を打ち明けた

タキ「声が…俺には何も聞こえなかったけど、もしかしてそれは…?」

まめみ「ブキの声だった…でも、基本的に自分のブキ以外には触れないと声は聞こえないはずなのに…。」

タキ「ハイドラントの声ではないんだよね?」

まめみ「うん、全然違う声だったよ。」

タキ「その声は何て言ってたの?」

まめみ「突然『…助けて…』って聞こえて…『私の声が聞こえる者がいるのなら…助けて…この子を…お願い…』って…。」

タキ「助けて…この子を…?」

まめみ「さっきあのお店に居たのはあたし達と…あのパラシェルターソレーラを持ってた女の子…。」

タキ「あの子のブキが助けを求めてたって事…?」

まめみ「分からないけど…それしか考えられないかな…。」

タキ「…あの子、何か事情があるのかもしれないね…。」

まめみ「けど…初対面のあたしには何も…。」

タキ「とりあえず、今は気にしない様にしよう…まめみ?」

まめみ「タキ君…。」

タキ「まめおやツネにも相談してみよう、俺もついてるからね。」

まめみ「うん…。」

タキ「(…こうは言ったけど、まめみは相手の感情に強く影響を受けてしまいがちだからね…怪しまれない様に探りは入れてみるか…。)」

そう思いながら不安な表情のまめみをタキは抱きしめ、まめみもタキの胸に顔を埋めて抱きしめた。

それから数日後…この日は生憎の大雨で…

誰も居ないハイカラスクエアの広場を1人、傘を差しながら歩くルイの姿があった。

ルイ「(雨だから人も居ないし、これなら何とか大丈夫そうだな…。)」

久々にロブのお店で買って帰ろう…そう思って歩いていたルイだが…

謎の声「はぁ…はぁ…!」

激しい雨音の中、微かに誰かの息苦しそうな声が聞こえる…

ルイ「誰だろう…?」

不思議に思ったルイは声のする方…深海メトロの駅がある入り口の方角へ歩いた

すると…

雪色髪のガール「はぁ…はぁ…うっ…!」

胸元を押さえて苦しそうにしているガール…しかも自分が苦手になってしまったイカガールだ…

ルイ「っ………!!」

ドクン…ドクン…!!

激しい動悸がルイを襲い、足は微かに震えていて…

そんな中…ルイの存在に気づいた雪色髪のガールがゆっくりと顔を上げた

雪色髪のガール「…はぁ…はぁ…あっ…!」

ルイ「……………!!」

大雨に打たれて滴り落ちる雪色のインク…

暗い雨の中でも美しく輝く宝石の様な赤い瞳に、ルイは動悸がしつつも魅入っていて…

彼女は苦しそうにしつつも必死に言葉を絞り出してルイに訴えた

雪色髪のガール「お願…い…ロブ…ロブを呼んで…っ……!!」

ルイ「えっ…ちょっと…!」

ドサッ…そう言い残してその場に倒れてしまった雪色髪のガール

ルイはどうしようと頭の中がパニックになってしまった…

怖い…怖い…

激しい動悸と恐怖で混乱していたが……

次の瞬間…そこには傘を閉じて腕に掛け、雪色髪のガールを抱き上げてロブのお店へ走るルイの姿があった。

数時間後…

美味しそうな甘い香りでルイが目を覚ますと、ロブがアゲホイップを作っていて…

ロブ「おや、気がついたかい?」

ルイ「あ…うん…あの…僕は一体…?」

ロブ「君があの子を…アイカを運んできて、そのまま気を失ったんだ。」

まだボーッとする中、あの少女の名前は「アイカ」と言うのか…と考えていたルイだったが…

ルイ「…そうだ、彼女は…大丈夫なの!?」

ふと運ぶ前の記憶が蘇り、口は自然とアイカの容態を心配する言葉が出てきた

ロブ「うん、大丈夫だよ。…あの子は持病を持っていてね、薬を飲ませて休ませてるから発作は治まったよ。」

ルイ「よかった…とはいえ…持病って…ロブはあの子の知り合いなの?」

ロブ「僕がアイカと出会ったのは2週間ちょっと前だったかな…。」

そう言うと、ロブは話し始めた

ある日の夜、お店を終えて帰ろうとしていたロブだったが…ふと見るとアイカが苦しそうに座り込んでいたという…彼女が持っていた薬を飲ませて落ち着いてから事情を聞くと、遠くの街に住んでいたがチームのメンバーから酷い裏切りと仕打ちを受け、逃げる様にこちらへ越してきた事を打ち明けてくれたという…

ルイ「そんな事が…酷い事をする人が居るんだね…。」

ロブ「最初は泣きながら酷く怯えていてね…数日間は僕の家で療養させてたんだ。回復してからは僕のお店を手伝いに通ってくれる様になってね…今日はお休みの日だったんだけど、発作を起こしてるとは…。」

ルイ「そうだったんだ…。」

会話を終えてアイカの方を見ると、彼女は簡易ベッドでぐっすり眠っていたが…

閉じられた瞼からは一筋の涙が零れ落ちて…それを見たルイの心はぎゅっと苦しくなった…。

2日後…

連絡を受けて家に来たツネに、まめみはブキチのお店で聞こえた声の事を話した。

ツネ「他人のブキの声が…しかも助けを求めていたとはね。」

まめお「シンクロの時みたいに、まめみだけに新たな力が目覚めたって事なのか?」

タキ「だとしたら、まめみの体に負担が…。」

ツネ「いや、その可能性は低いと思う…それなら既に色んな者の所持するブキの声が聞こえているだろう。」

まめみ「だとしたら、一体どうして…。」

ツネ「可能性として考えられるのは、僕達ウト族に近い者…かな。」

まめみ「えっ…!?」

まめお「まさか…俺達3人以外にも末裔が居るって事なのか!?」

タキ「それじゃあ、あの女の子はウト族の?」

ツネ「断言は出来ないけど、僕達も知らない所でもしかしたらウト族の生き残りが居たのかもしれないね。それかウト族と深い関わりのあった者か…いずれにしろその「雪色髪のガール」は要注意人物に間違いは無さそうだ…この件は一応お爺様にも報告しておこう、エンやざくろとも協力して僕の方で探りを入れてみるよ。」

まめみ「うん、分かった…でも気をつけてねツっくん。」

ツネ「ありがとう、まめみ。」

タキ「…ツネ、そのガールの事もだけど…。」

ツネ「君の言いたい事は分かっているよ、ヒーロー3号として白の悪魔の事が気になるんだろう?」

まめお「タキ…!」

まめみ「………!!」

タキ「うん、そのガールと何か関わりがあるんじゃないかって気がしてね。」

ツネ「奇遇だね、僕も同じ事を考えていた…そちらも探りは入れるつもりさ。」

まめみ「タキ君…ツっくん…。」

タキ「大丈夫だよまめみ、危険な事はしない。」

ツネ「誰も傷つけないよ、約束する。」

まめお「タキとツネを信じて任せよう、まめみ。」

まめみ「うん、分かった。」

不安がるまめみだったが、タキとツネ、まめおの言葉に安心して任せる事にするのだった。

To be continued…