小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」~偵察~

夕方ツネはざくろと共に地下へ戻り、エンやタコワサに「雪色髪のガール」について報告した。

タコワサ『雪色髪…お前以外にグレー系統の髪を持つ者も珍しいが、まめみが聞いたというブキの声は確かに気になるな。』

エン『地上で最近噂になっているという「白の悪魔」も含め、慎重に調査する必要がありそうですね。』

ざくろ『その雪色髪のガールだけど、ロブのお店で時々お手伝いに来ているって話を聞けたよ。』

ツネ『それなら接触するにはちょうどいいな、早速行ってみるよ。』

タコワサ『こちらでもウト族に関する資料が残ってないか調べてみよう、2人共気をつけるのだぞ。』

ツネ『ありがとう、お爺様。』

ざくろ『将軍もエンも無理しないでね。』

エン『えぇ、ありがとうざくろ。』

2人は地上へ戻り、後日その雪色髪のガールが手伝いに来ている日を狙って訪れた。

ロブ「アイカ、これをあのテーブルのお客さんに届けてね。」

アイカ「うん、分かった。」

その様子を少し離れた物陰から様子を見ていたツネとざくろだが…

ツネ「あれが例の子か…行くよざくろ。」

ざくろ「う…うん…。」

ツネ「…どうかした?」

ざくろ「えぇ…だ…大丈夫……ううん…大丈夫じゃ無い…。」

ツネ「何か心配事…?」

ざくろ「だって…その…恋人…を…演じろなんて…!」

ツネ「怪しまれない様に探るにはそれが一番だろう…何が嫌なんだい?」

ざくろ「い、嫌じゃないの…ただ…。」

ツネ「ただ…?」

ざくろ「…どう振る舞えばいいのか…分からなくて…。」

そう言って頬を真っ赤に染めたまま俯いてしまったざくろに、ツネはふぅ…とため息を吐くとざくろの頭を優しく撫でた。

ツネ「そのままでいい。」

ざくろ「え…?」

ツネ「ざくろはいつも通りに接していいんだよ、僕がもう少し恋人っぽい振る舞いをするからね…だから気負わないで。」

間近にあるツネの顔、彼の黄色い瞳はざくろの顔を映していて…頬は更に赤みを帯びて胸は煩いくらいに高鳴って…

ざくろ「…うん、分かった。」

ツネ「それじゃあ行くよ。」

そう言うとツネは優しく笑い、ざくろと共にお店へ向かって歩き出した。

ロブ「いらっしゃい!」

ツネ「ざくろ、何を食べたい?」

ざくろ「あたしはロブサンドがいいなぁ。」

ツネ「分かった、ロブサンドどアゲホイップをそれぞれ1つずつお願いするよ。」

ロブ「それじゃあ作るから待っててね。」

ツネ「あそこで座って待ってよう。」

彼がキッチンへ向かったのを見届けて、2人は近くのパラソル付きテーブルへ向かって椅子に座った。

ざくろ「あの子、一見普通の女の子に見えるけど…。」

ツネ「僕にはウト族を見つける力があるけど、あの子からは何も感じない…それなら何故まめみは彼女のブキの声が…?」

ざくろ「あ、こっちに来るよ…!」

アイカ「お待たせしました…ロブサンドとアゲホイップです。」

ツネ「ありがとう。…バイトさんかい?」

アイカ「あ、いえ…個人的にお世話になったんでお手伝いさせて頂いてるんです。」

ツネ「そうか…あ、引き留めてごめんね。」

アイカ「いえ…それでは。」

ペコッと頭を下げると「雪色髪のガール」ことアイカはお店へ戻って行き、ツネとざくろはそれぞれ食べ始めた。

ざくろ「個人的にお世話に…一体何があったんだろう。」

ツネ「表情や仕草を見た感じ、嘘は吐いて無さそうだね…ただ、彼女の赤い瞳は怯えている。」

ざくろ「怯えてる?」

ツネ「平然を装ってるけど、怯えた感情が見えていた…過去に何かあったのかもしれないね。」

そんな話をしながら様子を伺っていた2人だが…ここである人物がお店を訪れた!

ルイ「ロブ、いつものお願い。」

ロブ「いらっしゃいルイ、ちょっと待っててね。」

ツネ「ルイ!?」

ざくろ「ど、どうしてここに!?」

驚きつつも小声で話す2人だが、ルイ自身は気づいていない様で…少し離れたテーブルに座ってタコスマホを見始めた。

ルイ「(あの子は…居なさそうだな…。)」

イカガールが怖いルイ、アイカの姿が見えない事にほんの少しだけ安心したが…

何故か安心よりも、居なくて「寂しい」感情が勝っていて…しかしルイ自身にその自覚は無くて複雑な心境になってしまっていた。

一方ツネとざくろは…

ツネ「ルイには今回の事を伝えていない…今日はオフとはいえ、どうしてこのタイミングで…。」

ざくろ「とにかくバレない様に様子を伺うしか…。」

そんな話をしていた2人だが、アイカがルイの元へ向かった事で更に驚く事になった…

アイカ「お待たせしました、アゲホイップです。」

ガタッ!!

ルイ「っ……!!」

彼女の声が聞こえて顔を上げた瞬間、ルイは白い目を見開いて椅子から転げ落ちそうになってしまった!

アイカ「だ、大丈夫ですか…!?」

驚いたアイカはルイに近づいたが…

ルイ「だ、大丈夫…だから…ごめん…これ以上は近づかないで…!」

アイカ「え……。」

ルイ「あ、いや…違うんだ…君がダメなんじゃなくて……その……」

アイカ「…………………。」

ルイ「…少し前に、好きな人を病気で亡くして…ガールが苦手になってしまって…ごめん………。」

アイカ「そう…だったんですね…私こそごめんなさい…。あ、これアゲホイップ…ここに置いておきますね。」

ルイ「…ありがとう…。」

アイカ「…あの…この前…私を助けてくれましたよね…苦手なのに本当にごめんなさい…ありがとう…ルイ…さん…。」

そう言うとアゲホイップをそっとテーブルに置いてアイカはお店へ戻って行った。

ルイ「……………!!」

覚えていたのか…それに名前も…ロブから聞いたんだな…

苦手なイカガール…それなのに彼女の…アイカの赤い瞳はとても綺麗で…最後に消え入りそうな声で名前を呼ばれた時も不思議な気持ちで…

それが何かは分からない…モヤモヤは残っていたが、ルイはアゲホイップを食べ始めた。

それを見ていたツネとざくろは…

ツネ「ルイ、あの子と面識があるのか?」

ざくろ「助けてくれたって言ってたね。」

ツネ「ただ今回の事はウト族に関わる事だからね、ルイには気づかれない様に進めよう。」

ざくろ「うん、分かった。」

話し終えると2人は再び食べ始めたが…

ツネ「……………!」

ロブサンドを頬張るざくろの姿…

まめみにお願いして選んで貰っていたデート用の服はよく似合っていて…

更に少しナチュラルメイクも施して貰った様で、彼女の唇もいつも以上にみずみずしく色っぽくて…

どんどん綺麗になっていくざくろに、ツネの胸の鼓動は速くなり…

同時にざくろが「いつか誰か」と恋を育んでいく…そう考えると激しい嫉妬が込み上げてきて…

ざくろ「ツネ…どうかした?」

ツネ「…あ、いや…何でも無いよ。」

そう言って再びツネはアゲホイップを食べ出して…

ざくろは頬を赤く染めたまま、ロブサンドを再び頬張るのだった。

To be continued…