小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~誓い~

タコワサから預かった書物を手に地上へ戻ったツネとざくろだったが…

ざくろ「……………。」

ぎゅっ…何も言わず、ざくろはツネの服をぎゅっと掴んだ。

ツネ「ざくろ…僕も同じだよ。」

ざくろ「ツネ…。」

ツネ「でも僕は諦めない、可能性が低いだけなんだ…絶対に君を1人にはしない…愛してるよ。」

そう言うと、ざくろの揺れる赤い瞳を見つめて…その唇にキスをした。

その後…まずツネはまめみに連絡を取り、彼女の家に向かった。

まめみ「いらっしゃいツっくん、ざくろちゃん。」

ツネ「まめおとタキは?」

まめみ「リビングに居るよ。」

ツネ「ありがとう、それじゃあお邪魔するよ。」

ざくろ「お邪魔します。」

2人が上がり、まめみと共にリビングへ向かうと、ソファに座るまめおとタキが居た。

まめお「話ってなんだツネ?」

タキ「俺達を呼んだって事は、何か深刻な内容なんだよね?」

ツネ「…うん、ウト族の事でちょっとね…。」

ざくろ「……………。」

3人もソファに座り、ツネはテーブルの上に持ってきた書物を置いた。

まめみ「ツっくん、これは?」

ツネ「まず…僕とざくろの事をお爺様に報告してきた。お爺様はとても喜んでくれたよ…けど、ウト族の事で調べていた時にこの書物が見つかったらしくてね…。」

タキ「何かおかしな事が書かれているの?」

そう言って飲み物を飲み出したタキだったが…

ツネ「……突然だけどタキ、君はまめみとの子供は望むかい?」

まめみ「えぇっ!?」

ゴフッ!!驚きのあまりにタキは盛大に吹き出して咽せてしまった…

タキ「ゲホッ…ゴホッゴホッ…うぅ…ゴホッ…!」

まめみ「タキ君、大丈夫!?」

まめお「おいツネ…タイミング悪過ぎんだろ…。」

驚いて背中をさするまめみと、心配しつつも若干引き気味にツネにツッコミを入れるまめお…しかしツネは表情を変えずにじっとタキを見ていて…

何故そんな事を急に聞いた!?相変わらず考えの読めないこの友人にタキは驚きつつも、呼吸を整えると口を開いた。

タキ「そりゃあ…まめみとならね…でもどうして急にそんな事を?」

ツネ「答える前にまめおにも聞きたい…君もスーとの間に子供は望むかい?」

まめお「あぁ…そりゃあ俺だって欲しいと思う。」

まめみ「ツっくん…一体どうしたの…どうしてそんな事を…?」

明らかに様子のおかしいツネとざくろに、まめみも不安を抱きつつ聞いた

すると…ツネは真剣な表情のままこう答えた。

ツネ「…最悪の場合、子は諦める覚悟でいた方がいい。」

タキ「なっ…!?」

まめお「ツネ…お前何を言って…!?」

まめみ「ツっくん…!?」

ツネ「…僕は意地悪で言ってるんじゃ無い、まめみもスーも…君達自身も傷つかない為の忠告だ。」

タキ「忠告…どういう事なんだ…。」

ツネ「…ウト族であるが故の理由だよ…。」

そう言うとツネはテーブルに置かれた書物…付箋を貼ってあるページを開き、それを見たまめみ達は目を見開いて驚いた!

そこに書かれていたのは…ウト族の交配について…

ウト族はブキと心を通わせ会話をする特別な力を持つ一族

特別な力を持つのと共にその血もとても繊細で、他の種族と交わると極端に子を授かりにくいという厄介な体質を持つのだ

全く授からない訳では無いが、その確立は奇跡に近く…諦めて同族同士での交わりを選ぶ者が多かった

迫害されて同族同士での繁栄をするしかなかったのもあるが、それだけでは無く特殊な体質もその血を濃くして寿命を縮めてしまう原因を作っていたのだ。

それを知った3人は言葉を失い…まめみは青ざめた顔でふらつき、タキがしっかりと力強く支えて抱き留めた。

まめみ「タキ…く…!」

タキ「まめみ…!」

まめお「そんな…それじゃあ…俺達3人がこうして居ることすら…奇跡だったのかよ…!」

ツネ「…僕達は血が薄れて短命では無い…けれど、生殖能力は相変わらず低い…僕達の次の世代に血を残せるかは正直分からないのが現状だ…。」

まめみ「他の種族との間でダメなら…ウト族同士だと…必ず生まれてたって事…?」

ツネ「そういう事みたいだね…同族同士では必ずと言って良い程に子は生まれていた様だ…けど寿命は縮む…いずれにしろ、このウト族は非常に厄介な体質を持っているって事は分かったよ…。」

まめみ「ツっくん…ざくろちゃんは…。」

ざくろ「…あたしもいつかはツネとの間に欲しいよ…でも、もしそれが叶わなくても…あたしはずっと一緒に生きていくって決めた。」

まめみ「ざくろちゃん…!」

ツネ「ざくろもショックを受けているよ…もちろん僕もね…けどそれを知った上で僕を受け入れて、生涯を共に生きると誓ってくれた。…さっきはあんな事を言ったけど…僕は諦めてないよ、ざくろとの間にいつかは…そう思ってる。」

まめみ「ツっくん…。」

2人の決意を知ったまめみ達は、ショックの中でも希望を捨てずに共に生きる強い想いに少なからず励まされた

その後ツネとざくろは帰り、まめおも気持ちの整理をする為に外出して…家にはタキとまめみの2人だけになった。

タキ「まめみ…。」

まめみ「…結婚とか、子供が居るのが全てじゃない…みんな幸せの形は違う…それは分かってるけど…でも…でもそれでもあたし…」

ぎゅっ…泣きそうになっているまめみを、タキは何も言わずに強く抱きしめた

タキ「俺も同じだよ、ツネが言ってた様に俺も諦めないし何度だって愛し合いたい…例え生涯2人きりだったとしても、俺はまめみと共に生きて幸せを築いていけるなら悔いは無い。」

まめみ「タキ君…!」

タキ「まめみ、大好きだ…生涯、君だけを愛するよ。」

そう言うと、タキはまめみの涙を拭い…彼女に熱く深い口づけをした。

To be continued…