小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~両親の思い出~

一週間後、エンの作った薬が完成したとの連絡が入り…まめみ達はハイカラシティの広場で待ち合わせをしていた。

タキ「スルメさんとよっちゃんには話してある?」

まめみ「うん、まめおと2人でお願いしてあるから大丈夫だよ。」

まめお「スーとフー兄、ペコにも同席して貰う事にした。」

タキ「姉さん達とも情報は共有しておいた方がいいからね。」

まめみ「うん。」

3人がやや緊張した様子で待っていると、一足早くざくろがやって来た。

ざくろ「お待たせ。」

まめみ「ざくろちゃん、ツっくん達は?」

ざくろ「もうじき着くよ、将軍……じゃなくてお爺ちゃんヒトの姿は久々だから歩く感覚を取り戻すのがちょっと大変で…一応数日前から試作品でヒト化しながら練習はしてたんだけどね。」

まめお「そっか…あいつも大変だな…。」

ざくろ「でも地上の世界が見れて嬉しそうだよ…あ、来た。」

遠くからツネ、エンと共にゆっくりと歩いてきた長身の老人…着流しに身を包み、少し長い髪を後ろで緩やかに1つに纏めたその姿は一見するとどこにでも居る普通の年老いた男性で…まめみ達は少し驚いた様子で見ていた。

タコワサ「待たせたな。」

まめみ「あれ、イカの言葉を…?」

タコワサ「ヒトの姿になればイカの言葉も簡単に話せるわ、どれ…早速だが案内しろ。」

偉そうな口ぶりはいつものタコワサで…しかしそんな様子にまめみ達はどこか安心感も覚えていて…

まめお「こっちだ。」

3人の案内でタコワサ達はお店へ向かい、お店の前に着くと深呼吸をした。

エン「ご連絡頂いた通り、少し人数は多いですが…将軍の薬の時間も考えながら皆さんには簡単に説明させて頂きますね。」

まめみ「分かった、それじゃあ入るね。」

そう言うと、まめみ達は先に入り…タコワサ達も続いてゆっくりと入っていった。

奥の席にはスルメさんとよっちゃん…スーとフー、ペコが座っていて…

まめお「みんな、朝早くにごめんな。」

まめみ「大事な話の前に紹介するね、ツっくんのお爺ちゃんのタコワサさんだよ。」

スルメさん「おぉ、よう来て下さいましたわ。」

よっちゃん「いつも娘達がお世話になってます。」

タコワサ「こちらこそ、孫のツネがお世話になっていてありがとうございます。」

お互いに軽く挨拶した所で、話は本題へ…

まめみ「あたし達のお母さんの一族について話しておきたいの。」

スルメさん「お前達の母親…ナデシコとさくらについてかいな?」

まめみ「うん。」

よっちゃん「一族って…どういう事?」

タコワサ「それについてはワシが説明しよう。」

そう言うと、タコワサはウト族の事について説明した

かつて迫害され、とある隠れ里に移り住んだ事…タコ達と共に生きる道を選んだ事…

そしてその末裔がツネとまめみ、まめおの3人のみという事…ウト族の厄介な体質について…全てを話した。

スルメさん「まめおとまめみ…そしてツネが…奇跡の子…!」

よっちゃん「それじゃあ…ナデシコとさくらはそれを知っていて…?」

スー「(だからこの前、まめおはあんな事を…!)」

全てを説明した後…スルメさん達は深刻な表情で言葉を失ったが、しばらくして口を開いた

スルメさん「ツネはタコワサさんの孫と言うてたけど、という事は…?」

タコワサ「ツネはタコとのハーフだが、ワシとは血の繋がりは無く母親から生前に後見人を任されましてな…だがワシにとってはかけがえの無い大事な孫なのです。」

ツネ「お爺様…。」

そう言ってタコワサは大きな手でツネの頭をわしゃわしゃと撫で、ツネは少し照れつつもその表情は嬉しそうに笑みを浮かべている

フー「ツネもウト族だと言っていたな…という事は…?」

ツネ「いや、僕はブキと会話する力は受け継がなかった…。」

ペコ「そうなのね…。」

ツネ「けど、まめみやまめおを見た瞬間に同族だと気づいた…これもウト族が持つ力の1つだ。」

スルメさん「タコワサさん、隠れ里と言うくらいやから場所は明かす事が出来ないんやろうけど…わざわざ来て頂いてウト族の事を教えて下さってありがとうございます。」

よっちゃん「この子達の体質はよく理解出来ました、後はこの子達に託したい…まめお君はスーちゃんと、まめみちゃんはタキ君と共に生きたいという強い気持ちがお互いにあるのなら、それを尊重して見守っていきたい。」

まめみ「お父さん、ありがとう…!」

よっちゃん「その代わり…もし奇跡的に授かって生まれてきてくれた時は…みんな私達の大事な孫としてう~んと可愛がっちゃうんだから!」

まめみ「ふふっ…うん!」

そう話すよっちゃんはとても優しく暖かい笑顔で、まめみの笑顔と同じで…

そうか…まめみの広い心と暖かい笑顔は父親である彼から引き継がれているのだな…タコワサ達はそう気づき、つられて穏やかな笑みを浮かべた。

タキ「あ…まめみ、お母さん達の事を聞くんだったよね?」

まめみ「そうだった、あのね…お母さん達の事…2人が知ってる限りでいいから教えて欲しいの。」

スルメさん「そういや、話した事が無かったな。」

よっちゃん「そうね、せっかくだから話しましょうか。」

そう言うと、2人は話し始めた

スルメさん「あれはボクらが19歳の時、ボクがよっちゃんとナワバリ行こうとしてた時や。春で桜がえらい綺麗でな…一段と大きな桜の木があって、その木の下にお前達の母さんが居て…ガラの悪い奴にナンパされてたんやわ。」

まめお「えっ!?」

スルメさん「それをボクとよっちゃんが追い払って助けて、向こうからお礼にお茶でもって言うてな…綺麗な可愛いガールにそこまで言われたら断るのも悪いと思って…」

よっちゃん「スルメさん、記憶の捏造は良くないわよ。それを助けた後に、お礼を言って立ち去ろうとした2人をスルメさんが「お茶でもどうでしょ?」ってナンパしたの。」

まめみ「えぇっ…スルメさんが…!?」

まめお「マジかよ…。」

スルメさん「あわわ、よっちゃん…まめおが居る前でそれは堪忍やで…!」

よっちゃん「スルメさんが変な見栄を張るからでしょ。」

スルメさん「うっ…痛い所を突くなぁ…。」

そう言ってちょっと頬を赤らめて恥ずかしそうにポリポリする彼に対して、よっちゃんはほんの少しだけ呆れた様にため息も吐きつつその口元は笑みを浮かべていて…幼馴染み故の気心しれた相手にしか見せないその表情は見ていて心地良い。

まめみ「どこから来たとか、そういうのは話したの?」

スルメさん「聞いたけど、そこら辺の事は話したく無さそうでな…だからそれ以上は聞かなかったんや。」

よっちゃん「でも2人共、私達が話すハイカラシティの出来事に興味津々で…そこから連絡先を交換してよく会うようになったのよ。」

スルメさん「ボクはよくナデシコをナワバリバトルに連れて行って、あいつはいつも観客席からボクを応援してくれてたわ。」

よっちゃん「私はさくらが見たいと言った場所へたくさん連れて行ったわね、海…山…あの子は自然の風景がとても好きだった。」

スルメさん「そうしてる内に、お互いに惹かれあったんや…そしてまめお、お前を授かった。」

まめお「そうだったのか。」

よっちゃん「まめお君がもうすぐ生まれる頃だったわ、さくらのお腹にまめみちゃんが居る事が分かったのは。」

まめみ「それでまめおと1歳違いだったのね。」

スルメさん「けど…その頃に一時的な景気の悪化でナワバリバトルが廃止になってな、ショッツル鉱山へ1年出稼ぎに出る事になったんや。」

よっちゃん「ナデシコもさくらも身重だったから連れて行く事が出来なかった…けど、2人は待っていると約束してくれたわ。」

スルメさん「今でも覚えてるわ『1年後の春…出会った桜の木の下で待っている』と言っててな…けど、それが最後だった。」

よっちゃん「待てども待てども、2人が姿を見せる事は無かったわ…もしかしたら他の人と一緒になったのかも…それでもどこかで幸せに暮らしていてくれるのなら…そう願っていた。」

まめお「…そうなのか…。」

まめみ「…お母さん…。」

スルメさん「既に2人が亡くなって居たのはショックやったけど…お前達が居る、それがボク達の今の幸せや。」

よっちゃん「ブキチ君が2年前に調べてくれたから、2人が私達の子供だって分かった…本当に嬉しかったのよ。」

まめお「俺達も同じだ、そうだろまめみ?」

まめみ「うん、こんな近くに居たスルメさんとよっちゃんがお父さんだったんだもの。」

スルメさん「お前達が優しく真っ直ぐに育ってくれて、これ程嬉しい事は無いで。」

よっちゃん「私達が知ってるのはこれくらいだけど、話せてよかったわ。」

そう話すスルメさんとよっちゃんはとても穏やかな表情だった。

タキ「よかったね、2人共。」

まめお「あぁ。」

まめみ「うん。」

タコワサ「話が一段落した所で、まめみのシンクロについて説明をしたい…頼んだぞ、エン。」

エン「はい、それではここからは私がまめみさんのシンクロ制御装置についてお話をさせて頂きます。」

そう言うと、エンは小さなパソコンを取り出して話し始めた。

To be continued…