あれからしばらく経ち、季節は秋から冬に変わり始め…
まめみ達は相変わらず楽しく穏やかな日々を過ごし、ルイも最近はほんの少しの間だけならアイカの顔を見れる様になってきた一方で、アイカもシキや新たに仲良くなったジェレラとの交流も深めていきよく笑う様になった。
ある日、アイカがルイとロブのお店で話していると…
シキ「アイカちゃーん!」
アイカ「あ、シキちゃん。」
声のした方を向くと…遠くからスクリュースロッシャーベッチューを抱え、満面の笑みでブンブンと手を振るシキがいた
シキ「アイカちゃん聞いて聞いてー!今日スクリューベッチューが…」
アイカ「し、シキちゃんそんなに走ったら危な…」
ズデンッ!!
シキ「へぶっ!!」
彼女の予想が的中し、シキはつまずいて転んでしまった…
アイカ「シキちゃん!」
ルイ「シキ、大丈夫!?」
シキ「大丈夫!それよりもね、今日スクリューベッチューがチョーシサイコー!!になったんだよ!」
ルイ「…あははっ。」
アイカ「ふふっ…。」
急いでシキの元へ駆け寄る2人だったが、当の本人は幸い怪我も無くケロッとしていて…それどころかとても嬉しそうに話す彼女の様子に、2人は笑ってしまった。
シキ「えーー何で笑うの!?」
ルイ「ごめんごめん、シキがあまりにも元気だからつい…。」
シキ「むーールイの意地悪!」
アイカ「ごめんねアイカちゃん、ルイ君も私も悪気は無いの…改めておめでとう。」
シキ「アイカちゃん、ありがとーー!!」
そう言ってアイカに飛びつくシキはまるで妹の様で…ルイはその様子を見て優しく笑った
しかし…気になる事もある。
1つはシキが何故か自分の事は呼び捨てな事、そしてもう1つは…何となくアイカの前でのみ自分を試す様な行動をしている気がする…
一瞬だけチラッとこちらを見つつ、アイカに抱きついて胸に顔を埋めているのだ
ルイ「(もしかして好意があると思われてる…?)」
自分にとってアイカは友達だ、それ以上はあり得ない…もう僕は二度と恋をしない…
そう思いつつルイは椅子に座って飲み物を手にしたが…
シキ「えへへ~アイカちゃん。」
アイカ「ふふっ、シキちゃん今日はいつもより甘えんぼさんだね。」
優しく笑いつつ抱きしめて頭を撫でてくれるアイカにシキはとても嬉しそうで…
むにゅっ
顔を埋めるとアイカの胸がむにゅっとなっていて…
ルイ「(いいな~柔らかそう…アイカ意外と大きいよね……って僕は何を考えてるんだ!?)」
アイカ「ルイ君…?」
ルイがう~んと頭を抱えて考え込んでいる姿を見て不思議に思うアイカ、そしてシキはそんなルイの様子をじっと見て何か考えている様子なのだった。
楽しい日々を過ごす中、アイカはまめみ達とシャケト場へもよく遊びに行き…
アイカ「ふふっ、ジェレラと傘のお話をすると終わらないね。」
ジェレラ「えぇ、そうね。」
楽しそうに過ごすアイカとジェレラ、そのうち傘の話からお互いの交流の話になり…
アイカ「…でね、ルイ君はやっと顔を見て話せるようになってきたの。」
ジェレラ「よかったわね、アイカはそのルイ君の事が気になるの?」
アイカ「えぇ!?そ、そんな事ないよ…ルイ君はお友達だもの…。」
そう言いつつ、アイカの頬は真っ赤に染まっていて…ジェレラはそれを見てクスクスと笑う
ジェレラ「だってアイカ、いつもルイ君のお話をする時にとてもキラキラしてるんだもの。」
アイカ「えっ…?」
ジェレラ「ルイ君は、アイカにとって特別な存在なのね。」
アイカ「…そうだね、ルイ君は私をいつも気にかけてくれて助けてくれる。」
ジェレラ「素敵ね…。」
アイカ「そういうジェレラこそ、ザンナさんとはどうなったの?」
ジェレラ「えぇ…ざ、ザンナ隊長とは何も無いわよ…だって…あの方は上司であって…その…」
そう言ってしどろもどろになってしまうジェレラを見て、アイカは優しく笑いつつ…心の中で友人の恋の応援をするのだった。
穏やかな日々を過ごす中…別の日、シャケト場では今日も傷だらけになったザンナが戻ってきた
ザンナ「くっ…!」
とぐろ「ザンナ、お前さんまたやられたのか!?」
ザンナ「あぁ…奴ら日に日に凶暴性が増している…!」
ジェレラ「ザンナ隊長、すぐに手当を…!」
ザンナ「すまないジェレラ…だが一刻も早くおシャケさまにこの事を報告せねば…!」
とぐろ「手当してからでも遅くない、そんな傷で動いたらお前さんの体が持たないぞ!」
ザンナ「俺は…行く……っ………!」
とぐろ「ザンナ!!」
ジェレラ「ザンナ隊長!!」
2匹の声が聞こえる中、ザンナは意識を失い…次に目が覚めた時は木製の天井が見えていて…
ザンナ「うっ…ここは…。」
赤い瞳をゆっくり動かして辺りを見渡すと、編み物で作られた綺麗な飾りが壁にあって…
ジェレラ「あっ…目が覚めましたか?」
ザンナ「ジェレラ…ここは?」
ジェレラ「私の家です、ザンナ隊長あの後すぐに倒れてしまって…。」
ザンナ「そうか…すまなかった…。」
そう言ってゆっくり起き上がったザンナだが、傷のあった場所には丁寧に包帯が巻いてあって…ジェレラが手当してくれたのだとすぐに気づいた。
ジェレラ「傷に響いてしまうので、まだ無理しないで下さい…。」
ザンナ「そうだな…ジェレラ、手当をしてくれてありがとう。」
ジェレラ「どういたしまして。」
頬を赤く染めながらも優しい笑みを浮かべるジェレラに、ザンナの心も暖かくなる。
春にジェレラがやって来て今は秋…彼女は細かい所にまで気が回り、自分も何度も助けられた
…そう言えば、彼女はどこから来たのだろう?
ザンナ「ジェ…」
彼女に聞こうと名前を呼びかけたその時…
コンコン
おシャケさま「私だ、失礼させて貰うよ。」
カチャ…
ジェレラの家の扉が開いておシャケさまが入ってきた。
ザンナ「おシャケさま…!」
ジェレラ「こちらへお座り下さい…!」
そう言って、ジェレラは慌ててクッションを置いて飲み物を用意しようとしたが…
おシャケさま「ありがとうジェレラ、後は大丈夫だからお前も座りなさい。」
ジェレラ「は、はい…!」
相変わらず優しく穏やかに話すおシャケさまに、ジェレラは少し離れた場所にゆっくりと座った。
おシャケさま「とぐろから簡単には聞いたよ、ジェレラの家で手当を受けているというのもね。」
ザンナ「申し訳ありません…またあいつらが…。」
おシャケさま「その様だね…それに今回は前回よりも激しく争ったのだね…こんなに傷だらけになってしまって…。」
そう言ってザンナの背を優しく撫でて労うおシャケさまに、ザンナは感謝の気持ちで頭を深々と下げた。
ジェレラ「おシャケさま…ザンナ隊長は、やはりあの海域の…」
おシャケさま「そうだね…日を追って凶暴性が増しているのならば、別のルートを検討した方が良さそうだ…いずれにしろザンナ、その傷が良くなるまでお前は療養しなさい。」
ザンナ「はい…。」
おシャケさま「ジェレラ、それまではザンナの看護をお願いするよ。」
ジェレラ「はい。」
おシャケさま「それでは私は失礼するよ。」
そう言っておシャケさまは帰って行ったが…去り際にジェレラの耳元で小さく「お前が気に病む事は無いからね、ザンナを頼んだよ。」と伝えた。
その「意味」を理解していたジェレラはおシャケさまの気遣いに心から感謝しつつ、仲間やザンナへの申し訳無さもあってその青い瞳は少し寂しげなのだった…。
To be continued…