小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~ドスコイまるの危機~

あれから数日…ザンナはジェレラの家で看護を受ける日々が続いていた

体は動ける様になったので、家の外で軽い運動くらいはするものの…基本的にはのんびり過ごしていて、それは今までの自分の中ではあり得ない事だった。

しかしそれがとても心地良く思えるのは、ジェレラが献身的に看てくれているのが大きいのだとザンナは感じていた

部屋に飾られている美しく綺麗な編み物はジェレラの自作で、そのクオリティにザンナは驚くばかり…そして彼女の手料理もとても美味しくて、体だけではなく心も元気になる

気がつくと自分の視線はいつもジェレラを追っていて…しかしそれが何故なのか分からなくて…

ただ、彼女は時折寂しそうな瞳をする時があり…それを見るとザンナは心の奥がギュッと締め付けられる感じがしていた

そんなある日の事…

ドスコイまる「キュッ!キュッ!」

ジェレラ「ドスコイまるちゃん、危ないからこっちで遊ぼうね。」

シャケ子からドスコイまるを預かっていたジェレラは、シャケト場から少しだけ離れた海でドスコイまると遊んでいたが…

バシャンッ!!

かなり遠くの方で海面を叩く音が聞こえ、ジェレラはその音と微かに漂ってきた匂いで正体に気づいた

ドスコイまる「キュッ?」

ジェレラ「(この匂いはあの場所の…もうこんな近くにまで範囲を広げて居るなんて…!)ドスコイまるちゃん、ここは危ないからお家に帰ろう…おやつ食べようね。」

そう言ってドスコイまるを背中に乗せて早々にその場を泳ぎ去ったジェレラだったが…

ポロッ…

ドスコイまる「キュッ!」

まめみがくれた、お気に入りの小さなボールが手から離れて海に落ちてしまい…ドスコイまるはそれを取りにジェレラから降りて泳いで行ってしまった!

しかしジェレラは気づかずにシャケト場へ向かって泳いで行ってしまい…

どんどん流れて行くボールを追いかけて泳いで行くドスコイまる…しばらくして漸く追いついたが、気がつくと自分の知らない場所に居て……

少し先には大きな塔の様な物がそびえ立つ謎の場所があり、らせん状に道が出来ている

よく見ると遠くの方ではシャケの姿もあり…

「仲間」が居る…そう認識したドスコイまるはそちらへ向かって泳いで行ってしまった。

一方同じ頃、シャケト場では…

とぐろ「ドスコイまる!!」

ジェレラ「ドスコイまるちゃん、どこに居るの!?」

シャケ子「あぁ…ドスコイまるちゃん!!」

驚いたジェレラがドスコイまるを探し回るものの、どこにも姿は無く…すぐにとぐろとシャケ子にも知らせて皆で捜し回っていた。

一方、ここはNew!カラストンビ隊の観察所の1つ…

タキはまめみと共に今回の任務の舞台「ポラリス」のシャケの動向を観察していた

「朽ちた方舟」とも呼ばれているこの場所のシャケは凶暴性が他の海域より増していて、悪影響が無いかと心配したアタリメ司令の任務によりタキとまめみの2人で来ていたのだ。

タキ「アタリメ司令は心配してたけど、全く動きも無いし杞憂だったかな?」

まめみ「かもしれないね、このまま何も無ければ報告して……あ、シャケの動きが変わった。」

タキ「本当だ、何かを見つけたみたいだね…建物側に向かって泳いでいる。」

まめみ「今は干潮…本来なら建物側には何も無いはずなのに…。」

タキ「フライパンも持って警戒態勢に入ってるし、侵入者か…?」

不思議に思って様子を伺っていた2人だったが…その視線の先に居たシャケを見て驚いた!

まめみ「あれは…ドスコイまる!?」

タキ「どうして1匹で…それにシャケト場からはかなり離れているのに!?」

ドスコイまるは何も疑う様子も無く、どんどんポラリスへ近づいて行って…とうとう陸へ上がってシャケ達の前に行ってしまった。

ドスコイまる「キュッ!キュッ!」

シャケ1「何だお前は?」

シャケ2「こいつ、シャケト場の奴だな?」

シャケ3「なるほど…迷い込んだか。」

ドスコイまる「キュッ…?」

明らかに様子が違うシャケ達に、ドスコイまるは不信感を抱き始めたが…

シャケ1「俺達は子ジャケだろうと容赦しない、シャケト場の奴らにはいい見せしめになるだろう。」

そう言ってフライパンをクルクル回しながらゆっくりとドスコイまるに近づいて行く…

まめみ「危ない…ドスコイまる!!」

タキ「まめみ、待って…司令に伝えてから……!!」

危険を察したまめみは急いで飛び降りて行ってしまい、タキは止めたがもう手遅れで…大慌てでアタリメ司令に事を伝え、急いで後を追った!

シャケ1「お前の亡骸を奴らへの手土産にしてやるよ!」

ドスコイまる「キュッ!!」

そう言ってドスコイまるの目の前でフライパンを振りかざしたシャケだったが…

まめみ「ドスコイまる!!」

ズザアァァーーーーー!!

ガキンッ!!

間一髪の所でまめみがドスコイまるを抱きしめて転がり、振り下ろされたフライパンは地面にめり込んだ!

シャケ1「何だ!?」

まめみ「この子はあたしが守る!」

シャケ2「イカ…シャケト場の奴ら、イカと仲良くしてやがるのか!?」

シャケ3「気に入らねぇ…纏めて始末してやる!」

そう言って向かってきたのでまめみは応戦しようとしたが…

ズキン…!さっきドスコイまるを庇った時に足を痛めていたらしく、鋭い痛みが走った!

まめみは逃げようとするが足が痛んで動けず、ゆっくりと近づいてくるシャケ達…

ドスコイまる「キュッ…!」

まめみ「っ……!!」

ドスコイまるをギュッと抱きしめるまめみ…シャケがフライパンを振り下ろそうとした次の瞬間!

バシュッ!

シャケ1「ぐっ!!」

タキ「まめみ、ドスコイまる!」

間一髪でタキがヒーローシューターでシャケを撃ったので間に合ったが…

シャケ1「くっ…まだ仲間が居たか…!」

シャケ2「だが…たった1人で俺達に敵うのかな?」

シャケ3「覚悟しろ、お前達を喰い殺してくれる!」

そう言うと、海から次々とシャケ達が上がって来て…

まめみ「タキ…く…!」

タキ「何て数だ…!」

たくさんのシャケがフライパンを手に赤い瞳をギラギラと光らせてこちらを見ている…

タキのヒーローシューターだけではとても対応しきれる数では無く、状況は極めて絶望的だ…

シャケ1「今度こそ仕留めてやる!」

まめみ「っ……!」

タキ「まめみ!」

そう言ってフライパンを手に飛び上がってフライパンを振り下ろすシャケに、ドスコイまるを抱くまめみをタキは庇うように抱きしめた

もうダメだと覚悟したその時!

ザバアァァッ!!ガキンッ!!

大きな水音と共に金属を弾くような音が響き…

2人が目を開けるとそこには大きな黒い塊があって、顔を上げるとそこにはザンナの姿が…

シャケ1「こいつ…シャケト場の隻眼ザンナ!?」

シャケ2「どうしてここに…!?」

まめみ「ザンナ…さん…どうして…?」

ザンナ「ドスコイまるが居なくなったという知らせを聞いて探していた…匂いを辿ったらここに居ると分かって、お前達も居たんだ。」

タキ「そうか、ドスコイまるの匂いで…!」

シャケ3「何故イカの味方をしているんだ…?」

ザンナ「この2人はおシャケさまが認められたイカ…色々とあったが今は俺にとっても大事な仲間だ、その「仲間」に手出ししようと言うのなら…俺が許さん!!」

まめみ「ザンナさん…!」

タキ「ザンナ…!」

そう話すザンナの鋭く光る赤い瞳は、対峙する「ポラリスのシャケ達」を睨み付けていた。

To be continued…