小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~ポラリスのシャケ~

おシャケさま「ポラリスのシャケ達…彼らはね、我々の群れからはぐれた者達の集まりなのだよ。」

まめみ「群れからはぐれた者…?」

タキ「はぐれても、匂いで戻れるんじゃ…?」

おシャケさま「彼らの意思で戻る事をしない…と言えば良いかな。」

タキ「自らの意思ではぐれていると…?」

おシャケさま「そういう事だね。」

まめみ「どうしてそんな事を…。」

おシャケさま「我々の中には命を省みない者も居る…そういうシャケがはぐれてポラリスに集い、あの場所の厳しい環境で鍛えられた結果…結束力を持たず凶暴化する者が多いのだよ。」

とぐろ「…お前さん達、今まで何度かグリルに遭遇した事があるだろう?」

まめみ「うん。」

タキ「もしかしてそれも…?」

とぐろ「全てがそうでは無いが、グリルに派生しやすいのはポラリスのシャケだ。」

まめみ「そっか…だからポラリスのグリルはあんなに動きが速いのね。」

アタリメ「ふむ、お前さん達の中で争いが起きている状況とな…。」

おシャケさま「恥ずかしながらその通りだね…。」

まめみ「おシャケさま、何か力になれませんか?」

タキ「住んでる場所や考えの違いとは言え、同じシャケ同士だし…俺達に出来る事があるなら手伝います。」

おシャケさま「ありがとう2人共…けどね、この問題は根強く簡単に解決出来る事でも無いのだよ…2人の気持ちは大変嬉しいけど、今回ばかりはどうにも…。」

まめみ「おシャケさま…。」

おシャケさま「…そろそろ夜になる…とぐろ、モグモグに頼んで皆さんを送ってあげなさい。」

とぐろ「はい。」

何も出来ないモヤモヤを抱えつつ、まめみ達はモグモグに乗って家へ戻り…

おシャケさま「(すまない2人共…。)」

そんなまめみ達の姿を見送りつつ、おシャケさまは心の中で謝罪するのだった…。

しばらくして、まめみ達は家に着き…

とぐろ「後はご老人を近くまで送っていくよ。」

まめみ「分かった…ありがとうとぐろさん、モグモグ。」

タキ「司令をお願いするよ。」

とぐろ「任せてくれ。…そして今回の件、巻き込んでしまって本当にすまなかった…。」

まめみ「ううん、そんな事無いよ…あたし達こそ力になれなくてごめんね…。」

とぐろ「まめみが気にする事は無いし、気持ちは本当に嬉しい…後はあっしらで何とかするからゆっくり治してくれ。」

そう言うと、とぐろはアタリメ司令を乗せたモグモグと共に水路を戻って行った。

タキ「1日も早く良い方向に行くといいね…。」

まめみ「うん…。」

タキに抱きかかえられているまめみは彼の胸に顔を埋め、タキも彼女を支える手に更に力を入れた。

夜、シャケト場では…

ジェレラ「……………。」

眠るザンナを見ながら、ジェレラの青い瞳は悲しげに揺れた

ドスコイまるは無事に戻ってきた

とぐろもシャケ子も自分を責める事は一切無かった、それどころか謝られてしまった

しかし、今回の事態を招いてしまったのは紛れも無い自分…

もうここには居られない…居てはいけない…

ジェレラはそっと家を抜け出そうと玄関に向かって歩き出したその時

ザンナ「んっ…ジェレ…ラ……」

ジェレラ「ザンナ隊長…?」

起こしてしまったかと驚いたが、どうやら寝言だったらしく…ザンナはぐっすりと眠っている

ジェレラは筆を手に取ると手紙を書き始めた

そして書き終えるとテーブルにそっと置き、ザンナの傍へ行き…

ザンナ「すぅ…すぅ…。」

ジェレラ「ザンナ隊長…今までありがとうございました…そして…ずっと……貴方をお慕いしていました…ごめんなさい…さようなら…。」

そう囁くと、家を出て行ってシャケト場を去って行ってしまった…。

数日後…

とぐろ「よぉ、まめみ。」

まめみ「あ、とぐろさんにシャケ子さん…ドスコイまるはどう?」

シャケ子「おかげ様で元気よ、それよりもまめみちゃん…足の具合はどうかしら…?」

まめみ「うん、痛みも引いたしもう大丈夫。」

シャケ子「よかったわ。」

まめみ「ありがとう。」

シャケ子「どういたしまして…。」

まめみ「とぐろさんもシャケ子さんも、何かあったの?」

どこか元気の無いとぐろとシャケ子に心配になったまめみは質問をぶつけた…すると、リビングの方から遊びに来ていたタキとアイカが来た。

タキ「あ、2人共来てたんだね。」

とぐろ「おう…。」

シャケ子「こんにちは…。」

アイカ「まめみちゃん…とぐろさんとシャケ子さん、どうかしたの?」

まめみ「あたしにも分からないの…今ちょうど聞いたところで…。」

タキ「俺達に力になれる事なら、協力するよ。」

そう言ったタキだったが、申し訳無さそうな表情のとぐろから語られたのは、衝撃の一言だった…

とぐろ「……実は、ジェレラがシャケト場から去ったんだ…。」

まめみ「えっ!?」

タキ「ジェレラが!?」

アイカ「そんな…どうして…!?」

まめみ「まさか…こないだの件で…?」

アイカ「まめみちゃん、ジェレラに何かあったの?」

シャケ子「…こないだ、ジェレラにドスコイまるちゃんを預かってもらってたの…そしたら私達が対立しているポラリスのシャケに襲われて…偶然居合わせたまめみちゃんとタキ君、ザンナさんが助けてくれたからよかったけど…ジェレラはシャケト場から少し離れた場所に連れて行ったからだと自分を責めていて…。」

とぐろ「ジェレラが責任を感じる事は全く無かったんだ、あっしらもそれは話したんだが…あの日の晩の内に置き手紙を残してどこかへ行っちまった…。」

まめみ「そんな…!」

タキ「何でそこまで責任を…!」

アイカ「ジェレラ…!」

とぐろ「朝起きた時には既に匂いが消えていて、追う事も困難でな…諦めずに探し続けてはいるが、見つかるかどうか……それと実はそれだけじゃ無い、今回はおシャケさまからお呼び出しがかかっていてな…お前さん達を連れてきて欲しいとの事だ。」

まめみ「あたし達を…うん、分かった。」

タキ「俺も大丈夫、すぐに行けるよ。」

シャケ子「アイカちゃんも一緒に連れて行きましょう、ダーリン。」

とぐろ「そうだな、大丈夫かアイカ?」

アイカ「うん、私も大丈夫。」

こうして…とぐろがタキとまめみを、シャケ子がアイカを背中に乗せてシャケト場へと向かうのだった。

To be continued…