あれからもアイカはバイトに行ってはポラリスでジェレラを探す日々が続いていたが、見つける事は叶わないまま1週間が過ぎていて…
アイカ「ジェレラ…会いたいよ…。」
ポロッ…頬を伝って涙が零れ落ちて、地面に消えていった。
ツネ「アイカ…?」
声が聞こえたのでふと顔を上げると、そこにはツネが居て…
アイカ「ツネ君…。」
ツネ「何か嫌な事があったのかい?」
アイカ「う…ううん、大丈夫。」
ゴシゴシと涙を拭って僅かばかりの微笑みを見せたアイカだが、ツネは心配していて…
ツネ「暗いから家まで送るよ。」
アイカ「ありがとう。」
そう言うとツネはアイカに寄り添い、2人は家へ向かって歩き始めた。
しばらく歩いてアイカの家に着き…
ツネ「それじゃあ僕はこれで…」
無事に送り届けたので帰ろうとしたツネだが…
アイカ「ツネ君、せっかくだからお礼させて。」
ツネ「ん、分かった。」
彼女の申し出で、ツネは家に上がってお茶を頂く事にした。
アイカ「コーヒーで大丈夫かな?」
ツネ「うん。」
アイカ「準備するから、座っててね。」
ツネ「ありがとう。」
優しい笑顔を見せるとアイカは台所へ向かい…ツネはリビングで椅子に座ろうとしたが…
ふと飾られている写真が目に入った
そこには幼い頃のアイカと両親と思わしき人物…そして、年老いた女性が写っていて…それを見たツネは驚いて目を見開いた。
何故ここに…どうしてアイカと一緒に写っているんだ…
そう思った時…
アイカ「お待たせ、コーヒー出来たよ。」
ツネ「あ、ありがとう…。」
アイカ「どういたしまして。」
ツネ「あの…この写真…。」
アイカ「あ、それ?私の両親とお婆ちゃんなの。」
ツネ「お婆ちゃん…。」
アイカ「うん。……前の白の悪魔の件で気づいてたけど、ツネ君も私と同じイカとタコのハーフだよね。私…お母さんがタコだったの、今は両親もお婆ちゃんも亡くなってしまったけどね。」
ツネ「そうなのか…僕と同じだね。」
アイカ「ツネ君も両親を…?」
ツネ「うん、早くに亡くしたよ。」
アイカ「そうなんだ…。」
ツネ「君とは共通点が多いね…でもだからかな、どことなく安心する。」
アイカ「私も不思議と同じだよ、ツネ君が居ると昔から知ってるみたいな懐かしい気持ちになって…ホッとするの。」
2人はお互いを見て優しく笑い…ツネはコーヒーを、アイカはミルクティーを口にした。
同じ頃、地下では自主訓練を終えたルイが地上へ戻る準備をしていたが…
ツミ『ルイ。』
ルイ『ツミ、どうしたの?』
アミの件以来、全く話す機会が無かった2人だが…ツミが声をかけてきた。
ツミ『ずっと謝りたかったんだ…その…私があの時に金の爪楊枝の話をしたからあんな事になってしまったんではないかと…本当にすまなかった…。』
ルイ『ツミ…僕はその件を乗り越えた、だからもう大丈夫だよ。それに、君が謝る必要は全く無い。』
謝罪したツミだったが、ルイからは逆の答えが返ってきて…ツミは驚いた表情をした
ツミ『私を恨んでいないのか…?』
ルイ『恨むはずが無いよ、あの件が無くてもアミは亡くなっていた…それに後からとはいえ彼女の気持ちも知る事が出来た。色々とあったけど、それらを乗り越えて今の僕があるんだ。』
そう話すルイの瞳は光に満ちていて…ツミは優しく笑うと口を開いた
ツミ『よかった…ルイ、強くなったな。』
ルイ『ツミだって強いよ、また手合わせしようね。それじゃあ僕は地上へ戻るからこれで。』
そう言うとルイは、ツミに手を振って地上へ戻って行き…
ツミ『…よかった。』
安堵したツミはエンの元へ向かった。
少し歩くと見慣れた彼の部屋に着き、静かで…でも落ち着いた雰囲気に安心感を覚える
しかし、肝心のエンの姿は無く…
どこかへ出かけているのか…そう思ったツミはそっとソファに座った。
エンがよく使っているこのソファは柔らかくふかふかで…ツミはしばらく座っている内にうとうとしてきて…
エン「ふぅ…薬品の後始末は終わったのでこれでゆっくり出来そうですね…あれ、ツミさん?」
彼が戻って来た時には、既にツミは夢の世界へ旅立っていた
ツミ『すぅ…すぅ…。』
エン『ふふっ…心地良かったですかね、おやすみツミさん。』
無防備に眠るツミに優しく笑うエン、そのまま来ていた白衣を脱ぎ…そっとツミに掛けてあげて、その後は椅子に座って本を読み始めた
数時間後…
ツミ『んっ…寝てしまってたか…。』
起きてゴシゴシと目を擦るツミ…するとパサッと音を立てて白衣が太ももまで落ちて…
エン『すぅ…すぅ…。』
驚いて見ると、視線の先ではエンが机に寄りかかって眠っていて…
掛けてくれたんだ…そう思ってツミはそっと白衣を持ち上げた。
ふわっ…白衣からは薬品の独特な匂いと共にエンの香りがして…
とても安心すると同時に、胸は煩いくらいに高鳴り…
ツミ『エン…。』
今まで感じた事の無かった気持ち…この感覚…
エンの事を考えるとドキドキして…もっと見ていたい、ずっと傍を離れたくない気持ちに駆られる
色々と疎い私だが、やっと気がついた
エン…私はエンの事が…
To be continued…