アイシェ「貴方は…マルク…!」
そう、かつてゲームの世界で見た…月と太陽を大喧嘩させ、カービィを利用して何でも願いを叶えてくれるという銀河の大彗星「ノヴァ」を呼び出させて自分の願いを叶えようとした結果、カービィと激しい戦いを繰り広げたあの道化の魔法使い「マルク」本人であった
マルク「ふーん、噂には聞いてたけど…ボクの事も知ってるんだ。」
美しい羽は月の光で煌びやかに輝き、胸元に付いているリボンは優しい夜風でなびいている…しかし彼の紫の瞳はアイシェだけをしっかりと捕らえていて、舌舐めずりをする口元からは鋭い牙が見えている…
アイシェ「あの…一体何を…しに…?」
背中を嫌な汗が伝う…相手はマルク、彼が少しでも魔法を使えば自分なんてひとたまりもないだろう
そんな怯える様子のアイシェに気づいたのか、マルクはニィッと口角を上げると…突然アイシェを抱き上げた!
マルク「夜の散歩に付き合って貰うのサ!」
アイシェ「え…えぇ!?」
マルク「しっかり捕まってるのサ!」
そう言うと、マルクはアイシェを連れて夜空を飛び立った。
彼の羽に付いている大きくて鋭い鉤爪は彼女をしっかりと抱き留めているが、手加減をしているのか痛みは全く感じない
しばらく飛んでいると、強い突風が襲ってきた!
ビュウゥッーー!!
アイシェ「っ…!」
凄い勢いで襲ってくる風に、アイシェはマルクを抱きしめる手に力が入る
そしてマルクもまた、優しくも力強くアイシェを抱いたまま高度を上げていく
しばらくして突風は止み…
マルク「着いたから目を開けても大丈夫なのサ。」
アイシェ「着いたって…どこに?」
マルク「とにかく目を開けてみるのサ。」
彼の言われたとおりに、ゆっくりと目を開けると…そこには無限に広がる星空と優しく輝く月、月明かりに照らされた海が広がっていた。
アイシェ「すごい…綺麗…!」
青い瞳を輝かせながら景色を見るアイシェに、マルクは満足そうに笑みを浮かべる
マルク「気に入って貰えたのサ?」
アイシェ「うん、ありがとうマルク!」
満面の笑みで彼女がお礼を言うと、マルクは紫の瞳を小さくして驚いた表情をした
マルク「お前…ボクがどんな奴か知ってるんだろ?」
アイシェ「うん。」
マルク「それなのに、こんな警戒心ゼロでお礼なんか言っちゃってサ…今は空の上、ボクがその気になれば…ねぇ?」
鋭い牙を見せながら言うマルクだが、アイシェは優しい笑みを浮かべたまま口を開いて…
アイシェ「もし私に何かするのなら、こんな素敵な場所に連れて来てくれないよ。」
マルク「…なーんだ、アイシェもカービィと一緒でとんだお人良しなのサ!」
はぁーっと盛大なため息を吐くと、マルクは諦めてアイシェを脅すのを止めた。
アイシェ「マルクはいつもここに来るの?」
マルク「いつもって訳じゃないけど、今日は特別なのサ。」
アイシェ「また連れて来てくれる?」
マルク「…気が向いたらな。」
アイシェ「ふふっ、ありがとう。」
マルク「カービィも連れて来てやっても良いけど、アイツ夜はすぐ寝ちゃうからな~。」
アイシェ「マルクったら…。」
夜空の中で楽しく会話するマルクとアイシェ…そんな2人を照らすように星と月は輝いている。
素敵な夜空の散歩を終えた後、マルクはアイシェをカービィの家まで送ってくれた。
マルク「それじゃあ、ボクは帰るのサ。」
アイシェ「あ、マルクちょっと待ってて!」
マルク「ん、何なのサ?」
孵ろうとする彼を呼び止めると、アイシェは家の中に入って行き…少しすると甘い香りのする小さな袋を持ってきた。
アイシェ「これ…昼間カービィと一緒にウィスピーウッズから貰ったりんごで作ったアップルパイなの、今日のお礼に持って行って。」
満面の優しい笑みで渡してくるアイシェに、マルクは鼓動が早くなり頬が熱くなるのを感じて…
マルク「しょ…しょーがないから貰ってやるのサ!」
素直じゃ無いけど優しく袋を受け取ると、羽を広げて再び夜空へ飛び立って行き
アイシェ「おやすみーマルク!」
手を振るアイシェにマルクは振り返る事は無かったが、ヒラヒラと羽を上下に振ってくれた。
その後は再び眠りにつき、一方のマルクは…
マルク「アイシェ…。」
まだ治まらない胸の鼓動と頬の熱に戸惑いつつも、貰ったアップルパイを囓ると…甘い味が口内に広がった。
翌日
カービィ「えっ、マルクとお散歩したの!?」
アイシェ「うん、カービィぐっすり眠ってたから気がつかなかったよね。」
カービィ「うん、全っ然気がつかなかった…。」
アイシェ「マルクがね、カービィも連れて来ていいけど、夜はすぐ寝ちゃうもんなって言ってた。」
カービィ「もーマルクったら!アイシェ、今度はボクも一緒に行きたい!」
アイシェ「もちろんいいけど、カービィ起きてられる?」
カービィ「大丈夫だよ、3人で綺麗なお星様をいっぱい見ようね!」
アイシェ「うん!」
いつになるか分からない次の約束を楽しみにしつつ朝食を楽しむ2人…プププランドは今日も暖かい春風が吹いている。
同じ頃、ここは誰も知らない荒れ果てた地…
吹き荒れる熱風、煮え滾る溶岩と噴火を繰り返す火山…そしてかつて栄えていたであろう文明の名残がある機械だらけの場所に、とある魔術師の姿はあった
???「ヨシ、ローアの準備は完了シタ…アイツさえ倒せばアレはボクのモノ…そしてボクの計画モ…!」
暗闇の中で光る黄色い瞳は、湧き上がる野望で満ちあふれていた。
To be continued…