マホロアに付けられているとは知らず、マルクとアイシェは家に到着した。
アイシェ「ウィスピーに分けてもらったりんごがまだ余ってるから、これでアップルパイが作れるね。」
マルク「このりんご、他のより大きいのサ。」
アイシェ「ほんとだ。」
マルク「食いしん坊のアイシェにぴったりなのサ!」
アイシェ「食いしん坊じゃないもん!」
マルク「おっほっほっほっほっ、ま、せいぜいボクの為にお菓子作りを頑張ってちょーよ。」
アイシェ「マルクの為だけに作ってるんじゃありませーん。」
揶揄うマルクにアイシェは抗議しつつも、手際良く準備していき…
マルク「これでいいのサ?」
アイシェ「うん、これで後は焼くだけ。」
オーブンにパイ生地をセットして、焼けるまでの間に2人は仲良く話していて…マホロアは異空間バニシュで姿を消しながらそっと2人の様子を伺っていたが、普段のイタズラ好きな彼とは思えないくらいの穏やかな表情を浮かべるマルクの姿が滑稽で…アイシェが彼にとって「特別な存在」であるのは見て分かる
マホロア「マルクのヤツ鼻の下伸ばしちゃってサ、いつからアイシェとあんなに仲良くなったんダロ…………ま、イッカ。」
まだモヤモヤは残りつつも、マホロアはローアへと帰って行った。
その後、アップルパイが無事に完成した頃には既におやつの時間を迎えていた。
アイシェ「後はこれを包んで、ローアに持ってかなきゃ。」
マルク「わざわざまたローアに行くのサ?」
アイシェ「カービィ達はローアに戻ってくるから、みんなに渡したら帰ってくるよ。」
マルク「何も起こらないといいけどな。」
アイシェ「きっと大丈夫だよ。」
マルク「アイシェもほ~んとお気楽なのサ。」
アイシェ「マルクが心配してくれてるのも分かってるよ、アップルパイ食べる?」
マルク「食べるのサ。」
欲には正直なマルク…それはカービィ程では無いが食に関しても同じな様で、アイシェが作った物だからなおさらだろう。
アイシェ「ここで食べてく?」
マルク「いや、ローアに送って行ってやるからその後で貰うのサ。」
アイシェ「えっ、いいよ歩いて行くから…」
マルク「いいから行くのサ!」
そう言ってマルクは翼を出してアイシェを抱えて外に出ると、空へ飛び立った。
程なくしてローアに到着し…
アイシェ「ありがとうマルク。」
マルク「どういたしましてなのサ。…アイシェ。」
アイシェ「ん、どうしたの?」
マルク「何度も言ってるけど、マホロアには本当に気をつけるのサ。」
アイシェ「うん、でもマルク…どうしてそこまで私を心配してくれるの?」
マルク「…それは…ボクはアイ…」
そこまで言いかけたその時、ローアからマホロアが降りてきた!
マホロア「ヤァ、また来てくれたんダネ〜アイシェ!」
アイシェ「マホロア。」
マルク「(コイツ知っててわざと…!!)」
マホロア「アレェ~誰かと思っタラ、マルクじゃないカ!元気だったカイ?」
マルク「…何、猫被ってんだよ。」
マホロア「ヤダナァ~そんな事無いヨォ。」
マルク「お前がボクの心配をする奴なんて、微塵も思ってないのサ。」
マホロア「酷い言い様ダネェ〜。」
マルク「本当の事だろ、このイカサマ魔術師が。」
マホロア「ヤレヤレ、随分と言ってくれるよネェ…このクソ道化師ヤロウが。」
マルク「その減らず口、今すぐ閉じてやってもいいんだぜ?」
マホロア「いい度胸だネェ、返り討ちにしてヤルヨ。」
バチバチと火花を散らす両者に危険を感じたアイシェは、慌てて間に入った
アイシェ「えっ…と、アップルパイを作ったから持ってきたの…マルク、送ってくれてありがとう!」
マルク「ん、あぁ…どういたしましてなのサ。」
アイシェ「マホロア、もうすぐカービィ達が戻って来ると思うから…ね!」
マホロア「…そうだネェ、それじゃあアイシェも中にドウゾ!」
アイシェ「う、うん…またね、マルク。」
そう言ってアイシェはマルクを心配しつつもマホロアと共にローアへ入って行き…
マホロアは入り際に振り返り、マルクを見て目を弓なりに細めてクックと笑ったのだった。
マルク「クソッ…マホロアの奴…!」
悔しそうにギリ…と歯を食い縛り、握りしめたアップルパイの入った袋は小さくクシャッと音がした…。
アイシェ「(マルク大丈夫かな、今度またお菓子を持ってこう…。)」
そんな事を考えていたアイシェだったが…
マホロア「マルクと仲が良いんダ?」
アイシェ「うん、友達だよ。」
マホロア「ヘェ~てっきり恋人なのかと思ったヨ。」
アイシェ「えぇ!?そんな事無いよ、考えた事も無いもの…。」
そう言って驚いたアイシェは、頬を真っ赤に染めていて…マホロアの中でイタズラ心が膨れ上がった
マホロア「じゃあ、メタナイト?」
アイシェ「えぇっ…どうして…!?」
マホロア「だってアップルパイの約束してたデショ?あの時の雰囲気がそれっぽかったカラ。」
アイシェ「め、メタさんも友達だよ…。」
頬を真っ赤に染めたまま困ってしまうアイシェを見て、マホロアはちょっと意地悪そうに笑う。
マホロア「クックック…アイシェって揶揄い甲斐があるネェ!」
アイシェ「えぇ…もう…マホロアの意地悪…!」
相変わらず頬を赤く染めたまま、伏せられた青い瞳はちょっと潤んでいて…それを見たマホロアの中でゾクゾクとした不思議な感情が湧きあがった
マホロア「(何だコレ…変な感ジ…。)ゴメンネ、アイシェ…お詫びにもう一度お茶をご馳走するヨ。」
アイシェ「う、うん…。」
その後、マホロアはお詫びに甘いミルクティーを作ってくれた。
マホロア「これで許してくれるカイ?」
アイシェ「うん。」
マホロア「ヨカッタ!」
そう言って優しい笑みを浮かべるマホロアに、アイシェは少しドキッとしてしまった。
すると…
カービィ「マホロア~スフィアとパーツを集めて来たよ!」
マホロア「お帰りカービィ、これで船のオールが戻ったヨ!」
エナジースフィアを受け取りつつマホロアは喜び、一方のアイシェは包みを開いてアップルパイをテーブルに並べた。
アイシェ「みんなお疲れ様、アップルパイをどうぞ。」
カービィ「わーい、アイシェのアップルパイだ!」
バンワド「良い香り~!」
デデデ「お~今日も美味そうだな!」
メタナイト「ありがとうアイシェ、早速頂くとしよう。」
そう言って4人は席に着き、食べ始めた。
カービィ「美味しい!」
バンワド「はぁ~生き返る!」
デデデ「疲れた体にこの甘さが染みてくぜ。」
メタナイト「アイシェのアップルパイは絶品だな、元気が出てくる。」
アイシェ「ふふっ、ありがとう。」
マホロア「コレをセットして…ヨシ!」
4人が食事している様子が背後から聞こえてくる中、マホロアはエナジースフィアを設置していき、作業を終えて戻ってくると…
アイシェ「はい、マホロアもどうぞ。」
目の前に出されたアップルパイのお皿に、マホロアは黄色い瞳をパチパチさせて…
マホロア「エ…ボクニ?」
アイシェ「うん。」
マホロア「どうシテ…?」
アイシェ「みんなで食べると美味しいよ、それにマホロアも友達だもの。」
友達…
その言葉に、マホロアはくすぐったい様なドキドキする様な…何とも言えない不思議な感覚に襲われた。
マホロア「アリガトウ…アイシェ。」
高鳴る胸の鼓動に戸惑いつつも…アップルパイを受け取り、少しだけ口元を隠すマフラーを下げて囓ると…
ふわっ…りんごの甘い香りが口内に広がった。
To be continued…