ポップスターに逃げ着いた時から、「ただ1つの出会い」を除けば、全てはマホロアの思い通りに進んでいた
ハルドラボ火山、死闘の末にカービィ達は四つ首のドラゴン「ランディア」を倒す事に成功し、分裂した4匹の内リーダー格と思われる1匹の頭に乗っていた王冠が外れて転がった。
カービィ「やった…ランディアを倒したよ!」
デデデ「手強い奴だったな。」
バンワド「でもこれで、ここに平和が戻るかな?」
メタナイト「マホロアも安心するだろう、早くローアに戻って報告して…ん?」
地上に映る影に先に気づいたのはメタナイト、続けてカービィ達も気づいて上空を見上げると…ゆっくりと拍手をしながら降りてきたマホロアの姿があった。
マホロア「ブラボー、ブラボー、流石は星のカービィ…よく邪魔なドラゴン「ランディア」を倒してくれたネェ。」
そう言うと、マホロアは落ちていた王冠をサッと拾い上げ…それをじっと見つめている…
カービィ「マホロア、どうしてここに…アイシェはまだ眠ってるの?」
疑問をぶつけたカービィだが、マホロアは全く聞いてる様子は無く…続けて話し始めた。
マホロア「オォ…ついに手に入れタゾ…!」
バンワド「マホロア…?」
メタナイト「様子がおかしいぞ…!」
デデデ「おい、どうしたんだよ…それを知ってるのか?」
マホロア「コレぞ無限の力を持つ「マスタークラウン」!」
光り輝く王冠「マスタークラウン」を頭に乗せたマホロアが、ぐぐぐっと力を込めると…
パアァァァ…!!マホロアは白い光に包まれて、みるみる内に体が大きくなり…全く違う姿に変身した!
バンワド「わ…わわわわわっ!!」
デデデ「な…ななな…!!」
驚いたバンワドは後ろに転がり、言葉にならないデデデは大きな口をあんぐりと開けていて…
メタナイト「マホロア、まさか…!」
危険を察知したメタナイトは剣を抜き戦闘態勢に…
しかしカービィだけは状況を飲み込めずに、キョトンとした表情のまま彼を見上げていた。
マホロア「ソウさ!狙いは初めカラこのクラウンだったんダヨ!」
カービィ「え…マホロア?」
マホロア「な~んて顔してるんダイ?じゃあ全部、教えてヤルヨ。ランディアとの戦いニ負ケ、逃げた先がポップスター…そこでボクは考えタ…あのランディアを、キミらに倒してもらおうトネッ!」
メタナイト「なっ…!」
マホロア「オマケに船まで直して貰えテ…ホ~ント、感謝するヨォ。」
デデデ「マホロアお前…!!」
マホロア「クックク…コレでボクはコノ星ノ…イヤ、全宇宙の支配者とナルのダ!」
そう言いながらマホロアの両手からビリビリと電気の様な物が走ると、白い光を放ちながら彼の頭上に集まりディメンションホールが開かれ、その先に映っているのは…
バンワド「あれは…ポップスター!」
メタナイト「貴様、何をするつもりだ!」
マホロア「まずハ、手始めにキミらの星「ポップスター」から支配してアゲルヨォ!」
メタナイト「そんな事はさせない!マホロア、アイシェはどうした!!」
バンワド「そうだ、アイシェはローアに!」
カービィ「マホロア、ボクがスフィアを届けに行った時には「アイシェは疲れてたから休ませた」って言ってたよね?」
マホロア「…アァ、言ったネェ。」
デデデ「アイシェに酷い事してねぇだろうな!?」
ハンマーを片手にデデデはマホロアを睨み付けるが、マホロアはフン…と鼻で笑うと口を開いた。
マホロア「ボクがアイシェにそんな事ヲする訳無いダロォ…コレからは「2人きりの時間」が始まるんだカラ。」
デデデ「なっ…!?」
マホロア「彼女はボクのモノ…誰にも渡さずにずーーーっと永遠にボクだけの傍に居るんダ…クククッ…想像したダケで最高の気分ダヨォ。」
そう言って赤く変化した瞳を弓なりに細めて肩を揺らして笑うマホロア…その表情こそ今までのマホロアそのものだったが、今の彼は邪悪そのもので…全員の背筋は凍り付いた。
メタナイト「アイシェには指一本触れさせない!」
そう言ってメタナイトは地を蹴って斬りかかったが…
マホロア「リフバリア。」
カキンッ!!
メタナイトの攻撃はあっさりと防がれ、弾き返された彼は地面に叩き付けられた!
メタナイト「ぐっ…!」
デデデ「メタナイト!」
バンワド「大丈夫!?」
メタナイト「あぁ…だがアイシェが…!」
カービィ「ダメだよマホロア、そんな事したらアイシェは悲しんじゃう…!」
マホロア「ハァ~………こんな所デいつまでも話してルのも時間の無駄ダヨ、ボクは早くポップスターを支配シテ、アイシェと2人きりノ時間を作らないトネッ!」
そう言うと、マホロアは開いたディメンションホールに飛び込んで行ってしまった!
バンワド「どうしよう!?」
メタナイト「マホロアを追いかけて止めるしか無い!」
デデデ「どうやって追いかけるんだよ!」
困り果てているデデデ達だったが…
カービィ「マホロア…アイシェ…!」
彼の去って行ったディメンションホールを見つめるカービィ…すると、ズンズンと後ろから足音が聞こえて…
バンワド「わぁっ!?」
デデデ「お、おい…!」
パクッ…歩いてきた1匹のランディアが、カービィの頭を咥えて放り投げ…そのままランディアの背中にスポッと収まった
カービィ「ランディア?」
ランディア「ギャオッ。」
カービィの方を見ると小さく鳴いて頷き、カービィもランディアの意思を察して笑顔になる。
カービィ「ありがとうランディア、マホロアを…大事な友達を止めなきゃ!」
デデデ「…全く、お前は本当に…騙されてたのにまだそんな風にアイツの事を呼べるんだもんな。」
バンワド「でも、それがカービィの良い所だよね。」
メタナイト「バンワドの言う通りだ、頼んだぞランディア。」
他の3匹もバンワド、デデデ、メタナイトを乗せて…
カービィ「しゅっぱーつ!」
ランディア「ギャオオーッ!!」
大きな咆哮を上げると、ランディア達は飛び立ってディメンションホールへ飛び込んで行き…そのまま閉じた。
同じ頃…ローアの中ではアイシェが目をさました
アイシェ「んっ……私…マホロアに眠り薬を……マホロア!」
どれくらい眠っていたのか分からないが、まだ夢現だったアイシェはマホロアの事を思い出して一気に覚醒した。
まだ間に合うかもしれない、急いで止めなきゃ!しかしアイシェが急いで部屋から出てローアの操縦室へ向かうと…パネルの前に居たのはいつものマホロアでは無く、ゲームの中で見た禍々しいあの姿…
マホロア「ヤァ、目が覚めたんダネ。」
アイシェ「マホ…ロア…!!」
間に合わなかった…現実を突きつけられた彼女は膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪えていて…
マホロア「アイシェ、ボクの姿はどうダイ?」
アイシェ「……っ………!!」
マホロア「驚き過ぎテ声も出ないカナ?」
アイシェ「マホロ…ア…それ…その王冠…」
マホロア「コレかい?ボクによく似合ってるダロォ?」
そう言ってアイシェに近づくマホロア…彼の頭上でマスタークラウンは蠢いていて、それはクラウン自体に「自我」がある事を示していた。
アイシェ「マホロア…それ…外して…。」
マホロア「可笑しな事を言うネェ…今のボクは王様ダ、キミという最高のお姫様を迎えに来たんダヨ?」
心底嬉しそうなマホロアの赤い瞳は弓なりに細められ、5本指に分かれた手袋はアイシェの美しく柔らかい銀髪を優しく拾い上げて、愛おしそうに触りながら手櫛でサラサラと梳いていく
アイシェ「っ……!」
マホロア「キミはボクと永遠に一緒ダ、アイシェは大切な宝物ダカラ、ボクの傍に大事に置イテおかないトネッ!」
アイシェ「っ…い…や…!」
マホロア「ドウシテ怖がってるんダイ?」
アイシェ「違う…こんなの違う…私の知ってるマホロアじゃない…!」
泣きそうな顔で震えながら話すアイシェだが、マホロアはクックックと笑うばかりでまるで話が通じていない…
マホロア「キミの知らないボクもたくさん居るんだヨォ…コレからじっくりと教えてアゲルヨ?」
そう言ってマホロアはアイシェの体に手を伸ばしたが…
アイシェ「嫌っ…!」
パシッ!彼の手を振り払い、アイシェは部屋へ逃げ込んだ!
マホロア「…反抗的なアイシェには、チョットばかりお仕置きが必要カナ?」
弓なりになった赤い瞳を更に細め肩を揺らして笑うマホロアは、ゆっくりと彼女の逃げていった部屋に向かった…。
To be continued…