小説「夢結ぶ星りんご」~不穏な夢と平和の願い~

ローアでマホロアとの新生活を始めたアイシェ

その生活はドキドキする事も多いが、最愛の彼と一緒に居られるのが何よりも嬉しくて、充実した日々を送っていた。

変化があったのはそれだけではなく、マホロアがプププランドの片隅にお試しで小さなチャレンジステージのテーマパークを作り、カービィが遊んでくれるのを見たり一緒にレースで対決しながら、様々な改善点を見つけては新たな構想を練っていた。

そんな穏やかな日々が続き…気がつくと1ヶ月経っていたある日の事、外は生憎の雨だったのでローアの中で洗濯物を干していたアイシェは、テーブルで作業をしているマホロアに気がついた

さっきまでは本を読んでいたのに、何を始めたんだろう?不思議に思ったアイシェがそっと後ろから近づくと…

マホロア「ウーン…行ってみたい星がたくさんあッテ、ドコから行くか迷うナァ…。」

アイシェ「マホロア。」

マホロア「アイシェ、どうしタノ?」

アイシェ「マホロアが悩んでるみたいだから…この紙は何?」

マホロア「コレは行く予定の星を書いたメモダヨ。」

アイシェ「行く予定の星?」

マホロア「チョー楽しいテーマパークを作る為にハ、まず色んな星に行って遊びを研究しないトネ。」

そう言って彼が見せてくれたメモには、アイシェがかつてゲームの世界で見た星の名前もあって…

アイシェ「リップルスター、妖精のリボンちゃんが居る星だね。」

マホロア「知ってるのカイ?」

アイシェ「本人には会った事は無いけど、ゲームで見たの。」

マホロア「というコトは、アイシェはコノ世界の遊びも知ってるヨネ?」

アイシェ「うん、覚えてるよ。」

マホロア「どんな遊びカ、教えてクレル?」

アイシェ「確かこの時は…」

そう言って、アイシェは「星のカービィ64」で遊んだ3種類のミニゲームをマホロアに教えた。

マホロア「フムフム、そんな遊びがあるんダネ。実際に見てみる価値はありそうダナ。」

アイシェ「リップルスターに行くの?」

マホロア「ウン、決定リストに入れておくヨ。」

その後もアイシェは、遊んだ作品とミニゲームをマホロアに教えて、マホロアはそこから決定リストを作成し…

アイシェ「これで全部?」

マホロア「そうダネ、後は準備をシテ少しの間1人デ旅に出るダケダヨ。」

アイシェ「1人で行っちゃうの…?」

マホロア「ホントならアイシェも連れて行きたいケド…巡る星が多いのト、不安定な気候の場所もあるカラネ…今回は待っていて欲しいナ。」

アイシェ「うん、分かった…でもいつか一緒に旅に出たい。」

マホロア「ウン、約束スルヨ。」

それからは時間を見つけては2人で着々と準備を進め、ついに旅に出る前日を迎えた。

アイシェ「いよいよ明日だね。」

マホロア「そうダネ、しばらくアイシェと離ればなれにナル…ウゥッ…寂しいヨォ…。」

アイシェ「私も寂しいよ…でもマホロアの夢の為だもん、我慢出来る。」

マホロア「アイシェ…。」

アイシェ「必ず帰って来てね。」

マホロア「もちろんダヨ、必ずアイシェの所に帰るカラネ。」

ぎゅっ…2人は強く抱きしめ合い、お互いの温もりを感じた

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「愛してるヨ、アイシェ…。」

キスをしてゆっくりとソファに押し倒して、首筋に唇を這わせ…その後はベッドに移動して…熱く甘く愛し合った。

夜、マホロアに抱きしめられて眠っていたアイシェだが…不思議な夢を見ていた

アイシェ『ここは…どこ…?』

周りを見渡すと、青い空と雲が広がっていて…どうやら雲の上に居る様だ。

すると、突然光に包まれて…アイシェは目を瞑った

次に目を開けると、お城の様な場所に居て…

???『…様…ニア…様…。』

誰かの声が聞こえてくる…誰かを呼んでいる様だが、名前までは聞き取れない

すると、奥の方にキラッと光る物が見えて…アイシェはその光に導かれる様にゆっくりと歩いた。

光は段々と大きくなり…それは大きな鏡だと気づいたが…

アイシェ『あれは…ディメンションミラー?』

ディメンションミラー…それは「鏡の大迷宮」という作品で遊んだ時に出てきた「ダークマインド」という闇の者がかけた呪いにより、映した者の心の闇を映し出して具現化する大きくて恐ろしい鏡…メタナイトもその時は自身の影である「ダークメタナイト」によって封印されてしまった程に、強い力を持っている物なのだ。

どうしてそれがここに…不思議に思うアイシェは、その鏡に近づく1つの大きな影に気づいた。

暗闇でその姿は見えないが、悍ましい雰囲気を醸し出しながら鏡を眺めている…

いや、眺めているというよりも「取り憑かれている」という方が正しいかもしれない。

鏡に執着して離れたがらない様にすら見えて…恐怖でゾクッと震えたアイシェの左手首を、何かが掴んだ!

驚いて振り返ると、暗い影が自分を捕まえていて…

大きさはマホロアと同じくらい、どこか似た雰囲気があるが、明らかに彼ではない…

暗闇から覗くのはマホロアの様に大きな黄色い瞳では無く、うっすらピンク色に光る白くて丸い瞳…その更に上からも黄色とオレンジの瞳が覗いている…

マホロアの様に手袋をしているが、暗闇の方で同じ形の物がいくつも蠢いていて…手が複数ある事を示していた。

???『それ以上、行っちゃダメなのね…。』

マホロアと似ているが、彼よりも少し低い声…でもその声音は優しくもどこか悲しげで…

アイシェ『貴方は…誰…ここはどこなの…?』

勇気を振り絞ってアイシェが尋ねると、その影はゆっくりと瞬きをして口を開いた。

???『ここはフ…ル………王…ニア…治める……』

アイシェ『え…?』

その影が質問に答えた瞬間、強いノイズが発生して聞き取れない…

???『キミ…は……』

ぎゅっ…自分の手を強く握って来るその影に、アイシェは恐怖を覚えた…

アイシェ『嫌…やめて……っ…マホロア…マホロアっ!!』

その瞬間、アイシェは目覚めた。

枕元のランプが優しい光で部屋をほんのり照らしていて…ローアが優しい風を送っている。

マホロア「スゥ…スゥ…。」

頭上からはマホロアの規則正しい寝息が聞こえ、その手は自分をしっかり抱きしめている…

アイシェ「(今の夢は…一体…?)」

ドクン…ドクン…

アイシェは胸騒ぎがした…これから何か起きるんじゃないか…マホロアに何か起きる…?

でも、見ていた夢の場所は雲の上…マホロアがこれから巡る予定の場所では無い…

…きっと何か悪い夢を見たんだろう…マホロアなら大丈夫、今回は急遽マルクも付いていく事になったし、2人ならどんな危機でも乗り越えられる

アイシェはそう思い直してマホロアの頬を撫でてキスをした。

マホロア「ンン…アイシェ…大好きダヨォ…。」

寝言でも愛の言葉を囁いてくれるマホロアに、アイシェは安心して優しく笑い…彼を抱きしめて再び眠りについた。

そして翌日…

カービィ「2人共、気をつけてね。」

バンワド「喧嘩しない様にね。」

マルク「マホロアが余計な事をしなければ、喧嘩なんて起きないのサ。」

マホロア「それはコッチが言いたいヨ、余計な事しタラ即ローアから叩き出して置いてくカラネ。」

マルク「同行者に対して、その扱いは無いのサ。」

マホロア「ボクが頼んだんじゃ無いんダケド?」

デデデ「こんな調子で本当に大丈夫なのか…?」

メタナイト「何だかんだ言って仲が良さそうだし、大丈夫だろう。」

マホロア「ダカラ仲良くネーヨ!」

マルク「絶対に無いのサ!」

みんなが騒がしい中、アイシェがマホロアの近くにゆっくりと歩いてきて…

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「アイシェ、ボク2週間後には必ず帰って来るカラネ。」

アイシェ「うん。」

マホロア「泣かないデ、アイシェ…笑って見送って欲しいナ。」

アイシェ「ぐすっ…うん…行ってらっしゃいマホロア。」

マホロアが優しく涙を拭うと、アイシェは優しい笑みを見せて…お互いにぎゅっと抱きしめた。

マホロア「愛してるヨ、アイシェ。」

耳元でそっと囁いて、頬にキスをすると…マホロアはマルクと共にスロープを上り始めた。

マルク「じゃ、行ってくるのサ!」

マホロア「ミンナ、アイシェを頼んダヨ!」

カービィ「うん、任せてマホロア!」

安心した笑みを浮かべて、マホロアはローアへ入って行き…

ローアはゆっくりと浮かび上がってディメンションホールを開いた。

アイシェ「行ってらっしい!」

笑顔でアイシェが手を振ると、ローアはディメンションホールへ突入して…そのまま閉じた。

カービィ「ねぇ、この後どうしようか?」

そう言ったカービィだったが…

グウゥ~と大きな音が響いた。

デデデ「しょうがねぇな、みんなで飯でも食うか!」

カービィ「さんせーい!」

バンワド「さすがです、大王様!」

メタナイト「アイシェ、共に行こう。」

アイシェ「うん。」

優しく差し出されたメタナイトの手を取り、アイシェは歩き出した。

どうかこのまま、平和であります様に…

夢の事を思い出したアイシェはそう願い、みんなと一緒にデデデの城へ向かうのだった。

To be continued…