タランザとお茶をしつつ、アイシェは夢の話をした
最初は不思議そうに聞いていたタランザだったが、鏡の話になるとその表情は曇った。
アイシェ「タランザ、あの鏡はどうしてここに?」
タランザ「…あの鏡は、ボクがセクトニア様にプレゼントした物なのね。」
アイシェ「タランザがプレゼントした物…どうして?」
タランザ「セクトニア様は綺麗な物が好きなのね、だからプレゼントしたの…でもあの鏡をプレゼントして以来、どんどん様子がおかしくなってしまった…。」
アイシェ「(やっぱりあれはディメンションミラー…きっと彼女の心の闇を…。)」
タランザ「…昔はこんなんじゃなかったのに…。」
アイシェ「えっ…?」
タランザ「彼女はボクの幼馴染…種族もボクと同じで、元々の姿も似ていた……でも今は誰よりも強く美しい女王様。」
アイシェ「姿を変えているって事…?どうしてそんな事をする必要が…。」
タランザ「ボク達の種族は操りの術を使うの、彼女は操りの秘術を使う事で代々栄えてきた…そうして1000年以上、姿を変えて来たのね。」
アイシェ「1000年以上…!?そんな気の遠くなる様な時を……タランザはどうしてそれでも彼女の傍を離れないの…?」
どんどん蝕まれていく彼女によって虐げられているにも関わらず、傍でずっと仕え続けてきた…アイシェはその理由が分からなかったが、タランザは悲しげに笑うと口を開いた。
タランザ「離れられない…ずっと一緒にいたあの人を、ボクの唯一愛する女性を見捨てるなんて出来なかったのね…。」
アイシェ「っ……!!」
ズキン…アイシェの心は痛んだ…
タランザの悲しげな表情、もう届く事の無いその一途な想い…
まるで1年前の自分達の様で…あのままずっとマホロアと再会出来ていなかったら…そう考えただけで希望を失ってしまいそうになる
こんな苦しい思いを、タランザは長い間ずっと1人で抱えているんだ…アイシェの心は苦しみでぎゅっとなり、その青い瞳からは涙がポロポロと零れ落ちた…。
タランザ「…ボクの為に泣いてくれるの?」
アイシェ「だって…タランザ…ずっと1人でこんなつらい思いを…私がマホロアとこんなだったら…耐え…られない…っ…!」
両手で顔を覆って更に泣き出してしまったアイシェに、タランザはそっと寄り添って優しく頭を撫でた。
タランザ「アイシェ…キミはとっても優しい女の子なのね。」
アイシェ「タラ…ンザ…っ…!」
タランザ「力を感じると言ったけど、それはアイシェの優しさだったのね…現にキミから悪い気持ちは全く感じないのね。」
そう言うとタランザはアイシェの手を取り、優しくキスをした。
アイシェ「タランザ…何を…。」
タランザ「お話をしてくれて…聞いてくれて…心配してくれてありがとうなのね、アイシェ…これはそのお礼なのね。」
何て紳士的なのだろう…アイシェは思わず頬を赤く染めたが…コンコンと扉の叩かれる音がした。
アイシェ「誰か来たの?」
タランザ「アイシェはそこに居てね。」
そう言い残してタランザは扉に向かい、誰かと話をした後に再び戻って来た。
タランザ「女王様がボクをお呼びなのね…行かなきゃ。」
アイシェ「タランザ…!」
タランザ「…キミを仲間の元に返してあげるのね。」
ふわっ…タランザはアイシェを優しく抱き上げた。
アイシェ「きゃあっ!」
タランザ「しっかり掴まってるのね。」
そう言うとタランザはふわふわと飛んで行き…
バンワド「アイシェ!」
アイシェ「バンワドくん!」
バンワド「よかった、アイシェ…!」
お互いに抱き合って再会を喜ぶ2人を見て、寂しげに笑うタランザ…
タランザ「ボクはもう行くのね、さよならアイシェ。」
アイシェ「待って、タランザ…!」
彼女の制止も虚しくタランザは飛び去ってしまい…
バンワド「アイシェ、あの男は一体何を…?」
アイシェ「彼の名前はタランザ、操りの魔術師でマホロアとも知り合いだったの。そしてタランザは悪い人じゃない…早く彼を止めないと…!」
バンワド「えっ…あっ、待ってよアイシェ!」
タランザの飛んで行った方向へ向かってアイシェは走って行き、それを追ってバンワドも走り出した。
その後、2人はカービィに追いついたが…既に玉座の間でタランザとカービィが対峙していた!
タランザ「まさかここまで辿り着くなんて、キミもしつこいねぇ。しかし、全ての世界を治めんとする…女王セクトニア様の邪魔は、このタランザがさせないのね。」
アイシェ「タランザ、もうやめて!」
カービィ「アイシェ、無事だったんだね!」
追いついたアイシェがタランザに呼びかけ、カービィは彼女が無事だった事に安堵したが…タランザはアイシェの方を見ると悲しげに笑った。
タランザ「アイシェ、キミは優しいのね…マホロアにはもったいないくらいに。」
そう言うと、タランザは再びカービィの方へ向き直し…捕らえられたデデデを連れてきた
カービィ「デデデ!」
タランザ「キミはコイツを…「下界の勇者」を助けたいんだろぉ?…天空の民達がワールドツリーを使って下界に助けを求めたなんて、そんなのお見通しなんだよねっ。」
アイシェ「タランザ…!」
ニヤニヤと笑うタランザだが、アイシェは彼の本心では無い事に気づいていた…彼は心では泣いている…ただ1人の愛する人の為だけに自分を偽っている…と。
タランザ「クフフ…キミにはここまで来たご褒美に、この勇者様と存分に戦わせてあげるのねっ!」
そう言うとデデデは掴まっていた網から解放されたが、様子がおかしくて…目は虚ろで鋼鉄のマスクを付け、同じく鋼鉄で彩られたハンマーをブンブン降っている…。
バンワド「大王様!?」
アイシェ「タランザが糸で大王さまを操ってる!」
カービィ「デデデ…ごめん!」
やむを得ない…カービィはデデデをタランザの操りから解放する為に、戦い始めた!
タランザに操られているデデデは強力な攻撃をしてきたが、カービィはそれらをかわしてダメージを与えていく
ある程度ダメージを与えると、デデデはその場に倒れてハンマーも消滅したが…
タランザ「なっ…勇者様、しっかりするのね!」
そう言ってタランザが魔法で更にデデデを洗脳すると…
デデデ「ぐっ…うぅ…うおあぁぁーーーー!!」
大きな叫び声と共にガウンや帽子の色が紫に変化して、飾ってあったハルバードを掴むと、片手で軽々と振り回して飾り台ごと破壊してしまった!
アイシェ「大王さま…!」
バンワド「アイシェ、危険だからもっと下がろう!」
アイシェ「うん…!」
驚きつつもアイシェはバンワドと共に更に避難し、カービィは再びデデデと戦闘を開始した。
ハルバードで衝撃波を起こしたり、タランザが投げた球を打ってぶつけてくる連携技をしてきたりと強力な攻撃が続く中、カービィはデデデと激闘を繰り広げた末に…
カービィ「戻って来て、デデデー!」
ついにデデデを倒して、彼はそのまま気絶した。
一方タランザは気絶したデデデを揺すりながら焦っていて…
タランザ「な…何という事でしょう!?女王様の命によりこの勇者を操り、下界を征服するはずが…!」
そう言ったタランザはカービィをじっと見て…
カービィ「征服だなんて、そんな事は許さないよ!」
タランザ「まさか…キミが本物の勇者なのね!?」
アイシェ「夢で見た勇者…やっぱりカービィの事だったのね…!」
タランザ「くそぉ…こうなればっ!女王様、女王セクトニア様ぁ~!」
後ずさりしたタランザは手を上にかざして叫ぶと、魔方陣が出現して…そこから姿を現したのは巨大な蜂の様な姿の女性…
カービィ「あれが…クィン・セクトニア…!」
アイシェ「あの手袋と羽…やっぱり夢で鏡を見ていた人…!」
バンワド「じゃあ、あの人がディメンションミラーを…!」
タランザ「おぉ、麗しきセクトニア様っ!お助け下…」
しかし、女王セクトニアは無言で杖を振りかざし…
ボンッ!!
アイシェ「タランザっ!!」
タランザ「ぐふぁぁっ!!な…ぜえぇ………」
杖の先から放たれた眩しい光はタランザを襲い、大きな爆発音と共にタランザは吹っ飛ばされて落ちて行った!
To be continued…