何も知らないアイシェがフロラルドを出発した頃には、夕陽が沈み始めていて…
タランザ「本当に大丈夫?送って行くのね?」
アイシェ「ううん、大丈夫だよ。」
タランザ「分かったの、気をつけてねアイシェ。」
アイシェ「うん、ありがとうタランザ。」
ワールドツリーの根元でタランザと別れ、ゆっくりとローアへ戻って行くアイシェの姿を、またもや飛んでいたマルクが見つけて…
マルク「またタランザの所に行ってたのサ?最近アイシェずっとアイツと遊んでるな…マホロアはどうしたのサ?」
気になったマルクはローアへ向かい、中へ入ったがマホロアの姿が無い…
不思議に思ったマルクだが、奥からマホロアの声が微かに聞こえてくるのに気づいて…ゆっくりと向かうと彼の部屋から声が聞こえてきて…
マホロア「フフッ…フフフフフ…アイシェェ…た~~っぷり可愛がってアゲルヨォ…。」
いつものマホロアとは明らかに違う、とてつもなくドス黒い笑い声が聞こえて…マルクは本能的にマズイと感じた!
マルク「アイツ、かなりヤベーのサ…これはアイシェに言った方がいいのサ…!」
気づかれない様にマルクはそっとローアを去り、アイシェの元へ飛んで行った。
アイシェ「遅くなっちゃった…マホロアすごく心配しちゃってるよね…!」
すっかり辺りが暗くなり、星空が輝いている夜空を見ながら急ぐアイシェだったが…
マルク「アイシェ!」
アイシェ「マルク、どうしたの?」
少し険しい表情のマルクは、ゆっくり近づくと口を開いた。
マルク「アイシェ、マホロアに気をつけた方がいいのサ!」
アイシェ「えっ?」
マルク「アイツ、嫉妬で狂ってるぞ…何をしでかすか分からないのサ!」
そう言って心配するマルクだが、アイシェはキョトンとしていて…
アイシェ「マホロアは笑顔で送り出してくれたよ、それに明日は2人で過ごすって約束したもの。」
マルク「そうなのサ?それならボクの考えすぎだったのサ…?」
アイシェ「もしかしたら遅くなっちゃったから怒ってるのかな…でも、ちゃんと謝れば大丈夫だよ。」
全く気にしていない様子のアイシェだが、マルクは先程のマホロアの様子からとても嫌な予感がしていて…
マルク「(明らかにヤベー雰囲気だったんだけどな…。)分かったのサ…けどアイシェ、これだけは教えておくのサ。」
アイシェ「え、何を教えてくれるの?」
マルク「…万が一、アイシェが嫌がってるのにマホロアに迫られた時の護身術なのサ。」
そう言ってマルクはアイシェの耳元でそれを教えて、聞いたアイシェは頬を真っ赤に染めた。
アイシェ「そんな…いいの…?」
マルク「アイシェが助かる為にはそれしかないのサ、やったらその隙にカービィの所にでも逃げるのサ。」
アイシェ「う…うん、分かった…。」
マルク「それじゃーな。」
煌めきの翼を広げてマルクは飛んで行き、アイシェはまだ頬を赤く染めつつも…マホロアの為に作ったクッキーの袋と、タランザから貰ったお土産を優しく抱きしめて帰路を急いだ。
その後ローアに到着したアイシェだったが、マホロアの姿が無い…
アイシェ「マホロア…お部屋に居るのかな。」
彼も気になったが、アイシェはまずクッキーとタランザから貰ったお土産を冷蔵庫にしまった。
すると…
マホロア「お帰り、アイシェ。」
背後から突然マホロアの声が聞こえて、アイシェの体は一瞬ビクッとしたが…振り返るといつもの笑顔だった。
アイシェ「ただいま、マホロア…遅くなってごめんなさい…。」
マホロア「ウウン、大丈夫ダヨ。」
心配とは裏腹に全く怒っている様子の無いマホロアに、アイシェは安心した。
アイシェ「お風呂に入ってからご飯にしようね、それとマホロアに渡し…」
ガシッ!
言い終わる前に、マホロアの手がアイシェの右手首を掴んだ!
マホロア「チョット来て欲しいナ。」
アイシェ「えっ…マホロア…?」
突然の事に少し戸惑うアイシェにお構いなく、マホロアは自分の部屋にアイシェを連れて行き…
マホロア「……………。」
そのままベッドにやや乱暴にアイシェを投げた!
アイシェ「きゃあっ!」
ギシッ…ベッドに投げ出されたアイシェの上に、マホロアが迫り…
マホロア「随分と楽しかったみたいダネェ?」
何も点いてない暗闇の部屋の中でマホロアの黄色い瞳だけが光っていて…アイシェは驚きと同時に少し恐怖を覚えた
アイシェ「マホロア…何…を…。」
マホロア「キミのお花の香り…イヤ、タランザの香りをボクの香りに染め直してアゲルヨォ。」
アイシェ「んっ……!」
枕元のランプが点いたと思ったのも束の間、アイシェが口を開く間もなくかぶりつくように甘いキスをするマホロア…しかし突然激しいキスに変わり、噛みつくように角度を変えながら何度も何度も深く口づけていく…
苦しがるアイシェがマホロアの胸を強く叩き、彼が漸く口を離すと…アイシェは深く息を吸い、2人の間には銀の糸が長く繋がってプツリと切れた。
マホロア「モウ絶対ニ離さナイ、離れナイ…愛してるヨ、アイシェ。」
マホロアの手が体を強く撫で回し、いつもとは明らかに違う様子に、アイシェは強い恐怖に包まれた。
アイシェ「マホロア…やめ…て…嫌…!」
マホロア「何で嫌がるノ?いつも通りダヨ?」
そう言って笑うマホロアだが、明らかに雰囲気が違っていて…愛されている所か逆に狂気すら感じて…
アイシェ「(どうしよう…確かマルクが教えてくれた方法は……あっ…力加減は教えて貰ってない…!)」
マルクに教えて貰った方法を試すか躊躇するアイシェに対して、何も知らないマホロアは胸を掴みだして…
マホロア「お風呂に入る前に、たっぷり可愛がってアゲルヨォ。」
弓形の黄色い瞳は恐ろしく、ただただ恐怖でしかない…
もうダメ、やるしかない!
アイシェはぎゅっと目を瞑って…
アイシェ「ごめんなさい…マホロアっ!!」
ギイィィィン!!
マルクに教えて貰った護身術、それは下半身…つまり男の急所を蹴り上げる事だった。
確かに身を守る術にはなるが、どれくらいの力加減でやればいいのかは分からず…結果的にアイシェはマホロアに謝りつつも、全力で蹴り上げてしまった…。
マホロア「グホオォォォォォーーーーーーーッ!?」
声にならない叫びを上げて、マホロアは顔を真っ青にして、涙を流しながらアイシェから離れてベッドから転げ落ちた!
そのままその場でうつ伏せになり…下半身を両手でぐっと押さえてガクガクと震えながら時折ビックンビックン痙攣を起こして悶絶している…。
アイシェ「ま…マホロア…!」
マホロア「オォ…ォ……アァァ…オォ………グゥ…ッ……!!」
ビクビクしながら悶絶するマホロアを心配しつつ、アイシェは部屋から逃げようと扉に向かって走った!
マルクに言われた通りまずカービィの所へ逃げよう、そう思っていたが扉は開かない…
アイシェ「開かない…どうして…!」
扉が開かない事に困惑するアイシェだが、後ろからはマホロアの呻き声が聞こえて…
マホロア「アイ……シェェェ……グッ……アッ…アァッ……!」
アイシェの名前を呼ぶマホロアだが、まだ痛みは続いている様で悶絶している…。
このままではマホロアが動ける様になってしまう…
アイシェ「ローア、開けて…!」
ローアに呼びかけるアイシェだが、ローアから返事は無く…それもそのはず、マホロアが部屋全体を魔法空間で包んでいるのだから。
どうしよう…困っている間にマホロアは動き始めて…
マホロア「ハァ…アァァ…随分と酷いコトをシテくれたネェ?」
両手で下半身を押さえつつゆっくり起き上がったマホロアは、まだ残る痛みで青い顔をしているものの右手で押さえながら左手で這って来て…
アイシェ「嫌…来ないで…!」
恐怖のあまり拒絶の言葉を口にして逃げようとしたアイシェだが、魔法で手足を拘束された。
その間にマホロアはだいぶ回復した様で、まだ右手で撫でつつも近寄ってきて…
マホロア「ハァ…ハァ…アァ…やっと痛みが落ち着いてきたヨォ…!」
アイシェ「マホロア…離して…!」
しかしマホロアはアイシェの言葉に耳を貸す事も無く…そのまま近づいて抱き上げた。
To be continued…