ある日の事、アイシェは部屋で服を縫っていた
服を作るのは初めてだが、アイシェが自分で作りたい意思を仕立屋ワドルディに相談すると、快く型紙を起こしてくれた上にミシンで縫わせてくれたのだ。
お陰で大半は既に完成していて、後は細かい装飾を縫い付けるだけ…
アイシェ「ふふっ、マホロア喜んでくれるといいなぁ。」
楽しみにしつつボタンを縫い終えて裁縫道具を片付けると、マホロアが部屋に来た
マホロア「アイシェ~何してるんダイ?」
アイシェ「マホロア…!」
サッと縫っていた物をベッドの下に隠したアイシェに、マホロアは眉間に皺を寄せながら来て…
マホロア「ンン…隠し事ナノ?」
アイシェ「隠し事というか…その…。」
歯切れの悪いアイシェに、マホロアは更に迫る
マホロア「ボクに隠し事は無しダヨォ?」
彼の黄色い瞳が自分を真っ直ぐ捉えていて…アイシェはドキドキしてしまう
アイシェ「マホ…ロア…。」
マホロア「…何を隠してるんダイ?」
そう言ってマフラーを下げるとアイシェの手首を優しく掴み、深いキスをするマホロア…
口を離すと観念したアイシェは頬を真っ赤に染めつつも、優しい笑みで口を開いた
アイシェ「マホロアへの贈り物だよ。」
マホロア「ン、ボクに贈り物カァ…何だロウ?」
アイシェ「今はまだ秘密、完成するまで待っててね。」
マホロア「フフッ、楽しみダヨ。」
ちゅっと優しいキスをすると、しばらく2人で抱きしめ合ってお互いの温もりを感じた。
いつもと同じ仲良しな光景、穏やかな日になる……はずだった。
その後2人はリビングへ移動し、ソファに座って寛ぎ始めた
マホロアは魔術書を読み始め、アイシェはアップルティーを飲みながらのんびりしていて…今の2人の間に会話は無いが、マホロアの本を捲る音が響いて心地良い
すると、アイシェがふと何かを思い出した様子で口を開いた。
アイシェ「マホロア。」
マホロア「ン~?」
魔術書を読みながら返事をしたマホロアに、アイシェは続けて言葉を紡ぐ
アイシェ「この前マルクから、明日の夜お散歩に行こうって誘われたの…行っていい?」
マルク
その名前を聞いた瞬間、マホロアの耳はピクッと反応した…しかも一緒に「夜の散歩」に行きたいなんて言われたものだから、読んでいた魔術書から目を離すとアイシェの顔を見て…
マホロア「ダメダヨ。」
怒る訳でも無く真顔でそう言って再び魔術書に視線を戻して読み始めたマホロアに、アイシェは少し驚いてしまった。
アイシェ「えぇ…どうして?」
マホロア「答えは1つ、マルクダカラダヨ。」
アイシェ「どうしてマルクだとダメなの?」
マホロア「マルクダカラっテ言ったダロ。」
魔術書を読みながら答えたマホロアにアイシェは更に聞いたが、その視線は魔術書から離れる事は無くて…淡々とした様子で返事が返ってくるのみ
マホロアはマルクの事になると敏感に反応する…少なくとも2人が対面したのを初めて見た時に比べれば格段に関係は良くなったが、それでも未だに張り合う事は多くて…
寧ろ最近のマルク自身はマホロアと張り合おうとはせず、マホロアが一方的にマルクに対してライバル心を向けている部分がある…気もする
アイシェ「(マホロアは、マルクと一緒に星を巡ってたのに…。)」
遊びの研究で一緒に行って星を巡ったりしていたのに、どうして自分の時には怒るんだろう…アイシェは悲しげな表情で黙り込んでしまい、俯いてソファに置いてある星形のクッションを抱きしめた。
するとマホロアが魔術書を読んだまま、右手を伸ばしてアイシェの頭を優しく撫でた。
マホロア「カービィとか他の人ならイイヨ。」
アイシェ「……マルクと行きたい…。」
ポツリ…とそう呟けば、マホロアの耳はまたピクリと反応した
マホロア「あのクソピエロと行くのダケは許さないヨ。」
アイシェ「マホロアはマルクと一緒に星を巡ったよ、どうして私はダメなの…?」
マホロア「アレはアイツがほぼ強引に付いて来たんダヨ、それにアイシェの事を諦めて無いカモしれないダロ。スカート覗いてたシ、抑えてたとはいえ媚薬の効果でアンナ事しチャウんだカラ。」
アイシェ「そんな…マルクはもう友達に戻ったよ。」
マホロア「アイシェ…アイツは嘘吐き道化師ダヨ、ボクみたいに優しくもピュアでも無いんだカラ。」
アイシェ「…マホロアも最初は嘘吐いてたよ…。」
マホロア「クラウンの件は反省してるヨ。」
アイシェ「マルクと2人がダメならマホロアも一緒に行こうよ、カービィも誘ってみんなで夜空を見るの綺麗で楽しいよ…?」
すると、ずっと魔術書から目を離さなかったマホロアが、バタンとやや大きな音を立てて魔術書を閉じ…アイシェの方を真っ直ぐ向いた。
マホロア「マルクと一緒なのが嫌ナノ、空のお散歩はボクが連れてってアゲルヨォ。」
アイシェ「……………。」
マホロア「キミが心配ダカラ言ってるんダヨ、アイシェ?」
アイシェ「……行きたい…マルクとも行きたいし…みんなで行きたい……。」
するとマホロアは溜息を吐いて、アイシェの肩を優しく掴んだ
マホロア「…今日はやけに駄々こねるネェ……あんまり言ってると、お仕置きしちゃうヨォ?」
少しだけ楽しそうな声音とは真逆に目は全く笑っていなくて…大きな黄色い瞳がアイシェをガッチリと捉えている
アイシェ「…意地悪…。」
青い瞳を伏せて、アイシェは不満そうにそう呟いた
すると肩を掴むマホロアの手にグッと力が入り…そのままソファに押し倒された。
マホロア「…お仕置きしないと分からないみたいダネェ。」
そう言うとマフラーを下げて、アイシェに噛みつく様な激しいキスをした
アイシェ「んっ…ふぅ…ぅ…!」
口を離してもほとんど息を吸う暇も無く、マホロアの激しいキスは続く…
抵抗しようにも両手は上げられてマホロアの左手で拘束され、足をモゾモゾと動かすくらいしか出来ない
マホロア「足をモゾモゾさせちゃっテ…誘ってるノ?」
若干荒い呼吸のマホロアの、熱い吐息混じりな声が耳元で囁かれ…アイシェはビクリと反応する
アイシェ「っ…違う…マホロアは意地悪だよ…私の気持ちを分かってくれない…!」
マホロア「キミの気持ちを分かった上デ言ってるんダ。…アイシェ、マルクだって男なんダヨ?友達だったとしても夜空で2人きりなんテ…雲の上で何をされてもおかしくないんダカラ。」
アイシェ「マルクはそんな事…しないもん…!」
マホロア「どうシテ今日はソンナに聞かないんダイ?」
アイシェ「マホロアはいつもマルクの事になると怒る…私をマルクと一緒に行かせないようにする…。」
マホロア「当然ダロ、あのピエロに取られたんジャ堪んネーモン。」
アイシェ「マホロアの意地悪…。」
マホロア「意地悪じゃないヨ、心配してるんダヨ。」
アイシェ「心配じゃなくて意地悪だもん…!」
マホロア「どうして分かってくれないんダヨォ!」
とうとう怒りだしたマホロアは、アイシェの着ていたシャーリングワンピースの胸元を右手で少し下げて吸い付いた!
アイシェ「っ……!」
いつもよりも長く強めに吸って赤い花を咲かせたマホロアは、そのままアイシェの胸に顔を埋めた
マホロア「とにかくボクは許さないヨ、そしてコノ話はもうお終イ…本当はコンナ手荒な事はしたくないんダカラ。」
そう言ってマホロアはアイシェから離れて再び魔術書を開いたが…起き上がった彼女はそのまま俯いて震えていて…
アイシェ「…もう…やだ…。」
マホロア「…何が嫌ナノ。」
アイシェ「マホロアの分からず屋…!」
そう言うとアイシェはパタパタと自分の部屋へ行ってしまい、そのまま鍵を掛けて閉じ籠もってしまい…
マホロア「ハァ……分からず屋なのはどっちダヨ。」
そう言って再び魔術書を読み始めたマホロアだが、その黄色い瞳はどことなく悲しげなのだった…。
To be continued…