夜…みんなで賑やかに食事をして枕投げを楽しんだアイシェは、客人用の部屋でカービィとバンワドの3人で大きくふかふかなベッドにダイブして横になった
窓から差す月明かりは優しくて、アイシェはしばらく眺めていたがカービィとバンワドは一足早く眠りについていて、規則正しい寝息が聞こえてくる。
カービィ「すぅ…すぅ…。」
バンワド「むにゃ…むにゃ…。」
カービィはお気に入りのナイトキャップ、バンワドはいつもの青いバンダナを外していて…端から見れば他のワドルディと変わらない
そんな2人の様子を見てアイシェはくすっと笑うと、そっとリボンを外して枕元に置いた。
アイシェ「(マホロア…明日の夜、無事に仲直り出来たらいいな…。)」
そう願いつつアイシェも眠りについたのと同じ頃、マホロアは自分の部屋で枕元のランプを点けて本を読んでいた。
いつもはアイシェと一緒の楽しい食事も1人で黙々と食べたのみ…味なんてちっとも感じなくて、ただただ虚無な時間が過ぎた
少しでも気を紛らわせようと本を読み始めたものの、やっぱり集中出来なくて…パタンと閉じるとそのままランプを消して目を閉じた。
マホロア「(アイシェ……早く戻っておいでヨ…。)」
明日の朝にアイシェが戻ってくる事を願い、マホロアは眠りについた
しかし…翌朝になってもアイシェが帰って来る事は無く、何なら昼や夕方にもマホロアはローアの前でウロウロしながら待ったが帰って来る事は無かった。
半ばヤケクソになったマホロアはそのままフロラルドへ向かい…突然タランザを連れ去った!
タランザ「ちょっ…いきなり来て何をするのね!?」
マホロア「イイカラこのまま一緒に来てヨ!」
何も言わずにローアへ連れて来られたタランザは、そのまま彼の用意したアップルティーを飲んで口を開いた。
タランザ「アイシェの姿も無いし、一体何があったの…?」
マホロア「…喧嘩したんダヨォ…。」
そう呟いて、マホロアは事の経緯を説明した
タランザ「そうだったのね…マホロアの気持ちは分かるけど、その対応はアイシェが可哀想なのね。」
マホロア「キミまでそう言うのカヨ…。」
タランザ「心配なのは分かるの、けどもう少しアイシェを信じてあげるべきなのね。」
マホロア「……………。」
無言のマホロアはバツが悪そうな顔をしてマントをギュッと握っていて、タランザはハァ…と溜息を吐いた。
タランザ「ボクをここに呼んだって事は、無理矢理でも泊まらせるつもりだったんでしょ?」
マホロア「察しがイイジャン…。」
タランザ「仕方無いから今夜は泊まってあげる、でもちゃんとアイシェに謝って仲直りするのね?」
マホロア「アイシェが戻って来ればネェ…。」
タランザ「迎えに行ってあげればいいのね。」
マホロア「少なくとも昨日の時点でアイシェは気にしてなかっタ…それに今日だって帰って来ナイ、ダカラ絶対ボクの方から迎えなんテ行かないヨ!」
タランザ「意外と頑固者なのね…。」
そう呟いたタランザ、するとローアの出入り口から音が聞こえて…
マホロア「アイシェ!?」
そう言って視線を向けたマホロアだったが、そこに居たのはマルクだった!
マルク「アイシェ~迎えに来たのサ……ってアレ?」
マホロア「マルク…!」
マルク「アイシェ、どっかに出かけてるのサ?」
マホロア「……アイシェは家出したカラ居ないヨ。」
そう言ってそっぽを向いてしまったマホロアに、マルクは紫の瞳を小さくして驚いた
マルク「家出!?何でそんな事になったのサ…というかお前は何で捜しに行かねーの!?」
マホロア「…アイシェの居場所は分かってるヨ、ボクが迎えに行く必要を感じないダケ。」
マルク「タランザ、一体何があったのサ…?」
タランザ「アイシェと喧嘩したみたいなのね。」
状況を飲み込めないマルクは、近くに居たタランザにそっと訪ねて事のいきさつを聞いた
マルク「…で、お前はアイシェを追いかけなかったと……馬鹿なのサ?」
マホロア「テメー喧嘩売ってんのカヨ!」
タランザ「止めるのねマホロア!」
怒ってテーブルをバンッと叩くマホロアにタランザが慌てて制止に入るも、マルクはジト目で見ていて…
マルク「マホロア、お前いつまでも引きずり過ぎなのサ。」
マホロア「何をダヨ。」
マルク「ボクが今更、お前からアイシェを奪い取ると思うのサ?」
マホロア「…キミダカラ不安なんダヨ…アイシェはチョー可愛くテ優しいし、マルクも前はアイシェの事が好きデ…無理矢理押し倒して迫ってタ…。」
マルク「温泉でも言っただろ、あれはもう終わった事なのサ。」
マホロア「……そもそもコンナ事になったのハ、マルクが2人きりで夜空の散歩に誘うカラダロォ!」
マルク「お前もカービィも来ればいいのサ。」
ただの八つ当たりだが、マルクは全く気にせずアイシェと同じ事を言ってきて…
マホロア「キミはどうシテそうやっテ……アァ~~モウやってらんネー!!こうなっタラお酒飲むヨォ!」
完全にペースを崩されたマホロアはヤケクソになり、倉庫へ向かってお酒のボトルを手に取り始めた!
タランザ「落ち着くのねマホロア、それに今の状態で飲むとロクな事にならないのね!」
マホロア「こういう時ダカラ飲むんダロ!」
一生懸命マホロアを止めているタランザだが、マルクは紫の瞳をキラキラ輝かせながら寄って来て…
マルク「どんな酒があるのサ?」
タランザ「マルクはちょっと黙ってるのね!」
ワクワクした様子で聞いてくるマルクにタランザは怒ったが、全く聞く耳を持たずに棚に並ぶお酒のラベルを眺めて嬉しそうにしている彼の様子に、ハァ〜と盛大に諦めの溜息を吐いた。
マルク「おー、結構揃ってるじゃん。」
マホロア「りんごのワインからリキュール、カクテル…マルクの好きなシャンパンもあるヨ。」
タランザ「…キミ、ワインなんて飲んでたのね?」
マホロア「ボクだってワインくらい飲むヨ。」
タランザ「もう…こうなったら付き合うけど、酔い潰れても介抱しないのね。」
マホロア「ボクは酔ってモ潰れないカラ大丈夫ダヨ、マルクは潰れるマデ飲むケドネ。」
タランザ「そこまで飲ませちゃダメなのね!」
こうしてマホロア達はお酒を飲み始めたが…
マルク「ただ飲むだけじゃつまんないのサー。」
マホロア「何か見ながら飲むのが一番ダヨネェ。」
マルク「じゃあエロでも見よーぜ!」
そう言ってマルクは帽子の中に鉤爪を入れてゴソゴソすると、小さなディスクを取り出した。
タランザ「そんなの見ないのね!というか何で持ち歩いてるのね!?」
マルク「別の星に散歩に行った時に拝借してきたのサ。」
マホロア「要するに盗んで来たんダナ。」
マルク「人聞きが悪いのサ、ボクの魔法でしっかりコピーして来たからオリジナルの方はその場にあるし問題ないのサ。」
そう言ってマルクはマホロアにディスクを渡し、マホロアはそれを大きなスクリーンに映し出した。
マホロア「……このタイトル、かなり過激な言葉ダケド…キミこういうのが好きなのカイ?」
マルク「タイトルで何となく気に入ったのを持って来ただけだから、中身は知らないのサ。」
3人はドキドキしつつ見始めたが…
タランザ「…ボクはこんなの見たくないの、ワイン貰うのね。」
見始めてすぐに頬を真っ赤に染めたタランザはそう言うと、ワインを一本手に取りそそくさと客室へ行って1人で静かに飲み始めた。
一方でマルクとマホロアは映像に釘付けで…
マホロア「オォ…コレはイイネェ…!」
マルク「思ったより内容が濃いのサ…!」
ゴクリと生唾を飲んで映像を食い入る様に見る2人…同じ頃、アイシェはデデデ城で晩ご飯を食べ終えていた。
アイシェ「ごちそう様でした!」
バンワド「やっぱりみんなで食べると美味しいね!」
アイシェ「うん!」
デデデ「今度はマホロアも連れて来いよ、そしたらまたみんなで上手い飯食って枕投げしようぜ。」
アイシェ「ありがとう大王さま、早くローアに帰ってマホロアと仲直りしなきゃ。」
デデデ「マホロアも気持ちが落ち着いただろうしな。」
バンワド「大丈夫、ちゃんと仲直り出来るよ。」
アイシェ「ありがとう、バンワドくん。」
優しい笑みで言葉をかけてくれるデデデとバンワドに、アイシェも感謝しつつ優しく笑う
すると一足先に外に出てワープスターを呼んでいたカービィがやって来た。
カービィ「アイシェ、ワープスターが来たよ!」
アイシェ「うん、今行くね!」
鞄を持ったアイシェはカービィと共にワープスターに乗り…
デデデ「またいつでも来いよ。」
バンワド「帰り気をつけてね。」
アイシェ「うん、ありがとう大王さま、バンワドくん。」
見送りに来たデデデとバンワドに挨拶をすると、2人を乗せたワープスターは夜空でキラキラと輝きながら、ローアへと向かうのだった。
To be continued…