ポップスターが本格的に夏を迎えた今日この頃…
アイシェ「出来た!後はこれをラッピングして…。」
縫っていた服がついに完成して、事前に準備していたプレゼントの袋に丁寧に入れてラッピングのリボンを結んでいく
ラッピングした袋を大事に抱えてマホロアが居るリビングに行くと、魔術書を読んでいたがアイシェに気がついて顔を上げた。
マホロア「アイシェ、ソノ袋はどうしたノ?」
不思議そうにプレゼントの袋を見ているマホロアに、アイシェは少しだけ頬を赤らめて優しく笑いながらそっと差し出した。
アイシェ「はい、マホロアにプレゼント。」
マホロア「エッ、ボクに……何ダロウ?」
黄色い瞳をパチパチさせながら魔術書を置いて、アイシェからそっと受け取ったマホロアは丁寧にラッピングされたリボンを解いていく
そしてそっと袋を開けると…そこに入っていたのは服だった。
アイシェ「ふふっ、こないだ秘密って言った贈り物だよ。」
マホロア「アイシェ、コレ…もしかシテ…?」
アイシェ「うん、研究の時に着て欲しくて作ったの。マホロアいつもその衣装で作るから、時々焦がしたり薬品が付いちゃうでしょ…それに薄手だからいつも心配だったの。これなら生地も厚めだし、汚れにくい素材だからいいかなって思って。」
それはボタンの付いた布地が厚い白衣で、ベルト部分は茶色い革製でドリンクホルダーが付いている
白衣自身にも丁寧にストライプ模様が付いていて、衣装はいつもより少し薄めの青、フードの耳部分は通気性を考えた粗めの縫い目で、右耳には小さな歯車のチャーム付き
更に手袋もセットになっていて、右手袋には厚手の茶色いベルトが付いていて、マホロアが時間を確認する為の懐中時計がセット出来る様になっていていた。
マホロア「ワァ…すごい、すごいヨォ!!」
驚きと嬉しさで瞳をキラキラ輝かせているマホロアは、早速マフラーを外してマントを脱ぎ、白衣に身を包んだ
アイシェ「どうかな?」
マホロア「アリガトウ、アイシェ…ボクすっごく嬉しいヨォ!!」
アイシェ「ふふっ、どういたしまして。」
マホロア「どうやって作ったんダイ?」
アイシェ「仕立て屋さんにお願いしたら、型紙を起こしてくれてミシンも使わせてくれたの。ボタンと装飾の部分は手縫いだよ。」
マホロア「アノ時にベッドの下に隠したのはコレだったんダネ。ハァ〜ボクすっごく幸せダヨォ…勿体無クテ着れないカモ…。」
アイシェ「えぇーちゃんと着て欲しい!」
マホロア「アハハッ、着るカラ大丈夫ダヨ。」
アイシェ「ふふっ、よかった。」
2人で笑い合い、優しいキスをして抱きしめ合う
今日も1日は平和に過ぎ…夜、優しい月明かりが窓から差してくる中でアイシェはマホロアと共に眠っていた。
しかしアイシェは不思議な夢を見ていて…
平和ないつもの光景が広がる中、どこからか歌声が聞こえる
???『お~……大……ルト……マ……!』
声からして女性の声…しかし辺りを見渡しても誰も居ない
アイシェ『誰が歌っているの?』
そう尋ねても返事が返ってくる事は無く…アイシェが不思議に思っていた次の瞬間!
上空に大きな影がかかり、見上げるとそこには巨大なUFOの様な物が浮かんでいて…
驚いたのも束の間、今度は5本のドリルが現れて地面に刺さり…次々と小さなドリルの付いたオブジェクトの様な物や銀色の丸くて刺々しいロボットの様な物が運び出されていくのが見えて…小さなドリルが地面に刺さった瞬間、美しい緑の大地は機械と化していく!
そして響き渡るあの歌声
???『永遠に~……えよ………』
アイシェ『誰…どうしてこんな事をするの!?』
そう叫ぶが、やはり返事は無く…変わり果てて行く辺りの光景にアイシェは青い瞳を小さくして動揺を隠せない
みんなは…マホロアは!?そう思ったアイシェはローアの姿を探して走り回った!
すると、遠くにローアが横倒しになっているのが見えて…近くには項垂れているマホロアの姿が!
急いで彼の元へ駆け寄ると、マホロアは振り向いて…
マホロア『アイシェ、キミは逃げるんダ!』
アイシェ『どこに…それにマホロアは!?』
マホロア『ボクはココから離れられナイ…キミは必ず守るカラ…ダカラ…!』
アイシェ『嫌っ、マホロアと一緒にいる!』
マホロア『アイシェ!』
強く抱きしめて離さないアイシェを、マホロアも強く抱きしめる
すると、2人の元に人影が…
???『そこの青い貴方、変わった見た目をしてますわね。』
辺りは土埃が舞い上がって相手の姿がぼんやりと映る…スラッとした体付きに長い髪…その中に光るマホロアと似た形の水色の瞳の女性…アイシェはその声で、さっきの歌声の持ち主だと気づいた。
アイシェ『貴女が歌っていたのね…どうしてこんな酷い事を…!』
???『この星は今から我がカンパニーの支配下…野蛮な原住民共は排除して、全て機械化させて頂きますわ!』
マホロア『原住民…支配下ダァ~?ふざけた事言ってくれるネェ。』
そう話すマホロアは左手でアイシェをしっかりと抱きしめつつ、右手から魔力球を出して攻撃態勢に入っている。
???『あら、魔法…というより魔術の使い手なのね。』
マホロア『分かってるナラ、さっさと退けヨ。』
???『うふふ、改造のし甲斐がありますわ。』
マホロア『ハァ?』
???『隣の原住民諸共、改造して差し上げますわ!』
そう言うとその女性が右手を上にバッと上げた直後!
上空のUFOの様な物体からレーザーが放たれて…
アイシェ「きゃあぁぁぁ!!」
マホロア「アイシェ!!」
悲鳴を上げるアイシェをマホロアが庇う様に強く抱きしめた!
そしてレーザーが目の前まで来た瞬間に…アイシェはハッと目を覚ました!
アイシェ「はぁ…はぁ…っ…夢…!?」
額は汗でびっしょり濡れていて、そっと起き上がると隣ではマホロアが規則正しい寝息と共に眠っている…
何て嫌な夢…そう思ったアイシェだが…
???『大な…ト…ン……に……栄えよ……!』
アイシェ「この…声…!?」
夢で見た声が聞こえた気がしたアイシェは、まるで導かれる様に部屋を出て裸足のままローアを飛び出て夜道を走り出した。
一方ローアでは…
ビーッ!!ビーッ!!
異常を知らせる警告音がローア中に響き渡り、マホロアは驚いて飛び起きた!
マホロア「エッ…エッ何、何が起きたノ!?……アレ、アイシェ!?」
隣に寝ていたはずのアイシェの姿も無くて…マホロアは大急ぎでローアの操縦パネルの元へ向かった。
確認すると、ローアはアイシェが出て行ってしまった様子を心配して警告音を出した事が分かり、アイシェの場所を映し出した。
アイシェ「どこで歌ってるの…誰なの…?」
アイシェはフラフラと歩きながら少し離れた丘の上に向かっていて…マホロアは通信機への通信を試みたが…
マホロア「クッ…アイシェ、通信機を置いて行ってル…それにリボンも外したまま…急がなキャ!」
ローアのモニターを消すと、マホロアは着替えもせずそのままローアを飛び出してアイシェを追った!
一方のアイシェは丘の上に辿り着き、辺りを見渡して歌の主を捜していた。
ところが、もう歌声は聞こえなくて優しい風の音がするのみで…
アイシェ「気のせい…だった…の…?」
額に手を当てて夜空を見上げるアイシェ、あの夢が嘘の様に星が輝いていて…
すると後ろから突然誰かに抱きしめられ、アイシェはビクッとしたが…その正体はマホロアだった。
マホロア「アイシェ!」
アイシェ「マホ…ロア…!」
マホロア「突然ローアが警告音を出しテ…ビックリして確認しタラ、アイシェが外に出て行ってるのを教えてくれてタ事が分かったんダ…一体どうしタノ?」
一旦離れてアイシェの正面に回って尋ねるマホロアは心配な様子で、夢で見た光景を思い出したアイシェの青い瞳からは涙が溢れてきて…
アイシェ「マホロア…マホロアぁ…!」
ぎゅっ…アイシェはマホロアの名前を呼んで、彼の胸に顔を埋めて泣き出してしまい…
マホロア「アイシェ…とりあえずローアに帰ろうネ。」
アイシェ「ぐすっ…ひっく…うん…!」
泣いているアイシェを抱き抱えて、マホロアはローアへ帰り…リビングでソファに座らせてホットミルクを作った。
マホロア「ハイ、気持ちが落ち着くヨ。」
アイシェ「ぐすっ…ありがとうマホロア…。」
泣きつつもマホロアからマグカップを受け取り、少しずつ飲むと…ミルクと共に蜂蜜の甘い香りが口内に広がり、アイシェの心は徐々に落ち着きを取り戻した。
マホロア「落ち着いたカイ?」
アイシェ「うん…ありがとう…そしてごめんなさい…。」
マホロア「ウウン、アイシェが無事ナラいいんダ。ケド…何があったんダイ?」
アイシェ「…マホロア…私…」
そう言うとアイシェは夢の内容を話して、起きた後もその歌声に導かれている気がしてあの場所へ向かった事を打ち明けた。
マホロア「ココがソンナ事に…しかもアイシェが起きた後にも聞こえるなんテ…。」
アイシェ「もしかしたら…フロラルドの時みたいに予知夢なのかな…。」
マホロア「宇宙には機械だらけノ星もいくつかあるカラネェ…とはいえ、機械化させるッテいうのは聞いた事が無いナァ…。」
口元に手を当てて考え込むマホロア…様々な星を旅して来た彼でも、思い当たる星は無い様だ。
アイシェ「どうしよう…みんな機械化しちゃったら…マホロアも…!」
マホロア「ボクはソンナ事にならないヨ。どんな敵が来テモ、アイシェの事を必ず守るカラネ。」
アイシェ「マホロア…!」
マホロア「朝になっタラ、カービィ達にも話しておこうネ。」
アイシェ「うん…。」
マホロアは不安な表情のアイシェを抱きしめて、優しくキスをした。
アイシェを不安にさせない様に黙っていたが、マホロアには引っ掛かる事があって……
マホロア「(アイシェが夢で見た、ボクと似た水色の瞳のスラッとした女性……プププ王国で現れたアノ侵略者の女と特徴は似てるんダヨナァ…デモあれはパラレルワールドの話…とはいえ何か引っ掛かるシ、マルクにも協力して貰っテ探りを入れテみるカ。)」
そう思いながら、マホロアがアイシェの背中をトントンしていると…安心した彼女はいつの間にか、腕の中で規則正しい寝息を立てていた。
アイシェが眠った事に安心したマホロアはそのまま抱き上げて自分の部屋に運び、抱きしめながら再び眠りにつくのだった。
To be continued…