小説「夢結ぶ星りんご」~涙は雨となって…~

体勢的にマホロアがスージーを押し倒している形になっていて…

スージー「うぅ……ちょっ…離れてよ!」

マホロア「言われ無くテモ退くヨ!」

アイシェ「あ、マホロ……」

一方で何も知らないアイシェは、遠くからマホロアの背中を見つけて駆け出したが…離れた場所から偶然見てしまったのは、マホロアがスージーを押し倒している様子だった。

スージー「全く…アイシェが居ないからよかったけど、こんなの見られてたら誤解されるわよ!」

マホロア「ソンナのボクダッテ嫌ダヨォ!」

喧嘩をしている2人だが、そのやりとりは遠くに居るアイシェに聞こえるはずも無く…

アイシェ「………………。」

俯いてぎゅっとお弁当箱を強く抱きしめると、来た道を逃げる様に戻って行ってしまった…。

どうしてあんな事を…

マホロア…スージーに気持ちが行っちゃったの…?

頭の中がグルグルするアイシェは、そのままローアに帰るとお弁当を置いてソファに倒れ込み…

心配したローアの優しい風がアイシェを撫でているが、アイシェはクッションに顔を埋めたまま泣いていて…しばらくすると眠ってしまった。

あれから時間が過ぎ、おやつの時間を迎えた頃…アイシェの身に付けている通信機チャームから音がして、ゆっくりと目を覚ましてボタンを押すと…

マホロア『アイシェ?』

アイシェ「マホロア…。」

いつもなら嬉しい彼の声も今はつらくて、なるべく聞きたくない…

マホロア『アイシェ、具合はどうダイ?』

アイシェ「うん…だいぶ良くなったよ。」

ズキン…ズキン…

胸が痛くてぎゅっとして…涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら元気なフリをするアイシェだが、マホロアは心配していて…

マホロア『無理シテそうダネ…今カラ帰るヨ。』

アイシェ「ううん、そんな事無いから大丈夫だよ。」

マホロア『デモ…!』

スージー『アイシェはどうなの?』

マホロア『無理してる気がするんダケド、大丈夫っテ…。』

ズキン…

スージーとのやりとりが聞こえてきて…アイシェは更に苦しくなり…

アイシェ「ごめんねマホロア…ちょっと用事があるからお出かけして来るよ。」

プツッ…そう言うとアイシェは一方的に切ってしまい…

マホロア「アイシェ!…切れチャッタ…。」

スージー「アイシェが大丈夫って言うなら、本当に大丈夫なんじゃない?」

マホロア「アイシェ、ああ言って無理スル時があるカラ心配デ…。」

しょんぼりしつつ、マフラーを下げて紅茶を飲み始めたマホロアだったが…

スージー「ねぇ、マホロア?」

マホロア「ン…?」

スージー「貴方、アイシェと家族にならないの?」

マホロア「ブーーーーーッ!!」

驚いたマホロアはそのまま飲んでいた紅茶を思いっきり吹き出してしまった。

スージー「ちょっと、汚いわよ!!」

マホロア「ゲホッ…ゴホッ…キミが急に変な事言うカラダロォ!!」

咽せつつ怒るマホロアだが、スージーはキョトンとした様子で…

スージー「何も変な事は言って無いじゃない。」

そんな風に言うものだから、マホロアは盛大に溜息を吐いた。

マホロア「あのネェ…いきなりソンナ事聞かれタラ驚くヨォ。」

スージー「貴方…まさかアイシェとずっと恋人のままで居るつもりなの?」

マホロア「ソンナ訳無いジャン、ボクは最初カラお嫁さんになって貰うつもりデ告白したんダケド?」

スージー「アイシェとその話をした事は?」

マホロア「無いヨ、ダッテ話さなくテモ同じ気持ちデショ?」

スージー「マホロア、そうとは限らないわよ。」

マホロア「エッ?」

スージー「前にアイシェにも同じ事を聞いたけど、頬を真っ赤にして言葉に詰まっていたわ。」

マホロア「アイシェ…まさか違う気持ちナノ!?」

スージー「そうじゃなくて、アイシェは貴方がそこまで考えてるのか分からなくて、不安なんじゃないの?」

マホロア「……………!!」

思い返せば、アイシェが行為を拒む様になったのもあの件以来…昨日も鏡の前でショールを被って何か呟いていたし、その後も自分の前で慌てた様子だった…

アイシェ、キミは1人で抱えて悩んでいたノカ…

そう思ったマホロアの心はぎゅっとして、同時にもっと彼女と話さなければと強く思った。

スージー「貴方かなり強引だけど、アイシェの事を本当に大事にしてるみたいだし…彼女を幸せに出来ると思ってるわ。」

マホロア「スージー、ボク帰っタラ、アイシェとよく話し合うヨ。」

スージー「えぇ、しっかりねマホロア。」

そう話すマホロアの瞳は強い決意を秘めていて、それを見たスージーもホッとして穏やかな笑顔を見せた。

同じ頃…アイシェは部屋のベッドに居た

アイシェ「……………。」

無言で耳元のリボンをスルッと解き、通信機チャームも置いて…マホロアに渡すはずだったお弁当を持ってローアを飛び出した!

あんなに晴れていたのが嘘の様に、厚い雨雲が空を覆い始めていて…

ポツッ…ポツッ…ザアァァァーーー!!

打ち付ける様な強い雨が降り出した!

カービィ「わぁ~すごい雨だね…。」

バンワド「もっと酷くならない内に、お城に帰らなきゃ…。」

2人は外に出て傘を差し、デデデ城へ向かって歩き出した一方、アイシェはお弁当箱を抱き抱えたまま雨宿り出来そうな場所を探して走っていたが…

アイシェ「きゃあっ!」

足元にあった石ころに気づかずに躓いてしまい、その場に転んでしまった…。

体は泥だらけになってしまい、お弁当箱は無事だがきっと中身はぐちゃぐちゃになってしまっている…

マホロア『とっても美味しいヨ、アイシェ!』

脳裏にはいつも食事の時に嬉しそうに言ってくれるマホロアの姿が浮かんで…

アイシェ「ひっく…ひっく…マホ…ロア…マホロアぁ……っ……!!」

小さなお弁当箱を抱きしめたまま泣き始めてしまったアイシェにも、雨は容赦無く降り注いでいく…

すると、泣いているアイシェの前に2つの影がかかり…ゆっくりと顔を上げるとカービィとバンワドの姿があった。

カービィ「アイシェ、どうしたの!?」

バンワド「ビショビショだよ、それに泥だらけ…転んじゃったの?怪我してない?」

心配しながら傘に自分を入れてくれる2人に、アイシェの冷たくなった体に対して心はじんわりと暖かくなり…頬を伝う大粒の涙も温かい…

アイシェ「カー…ビィ…バン…ワド…く…うっ…うぅ…あぁぁぁぁん!!」

カービィ「わぁっ!?」

アイシェはカービィに抱きついて泣いていて…その勢いで傘が手から離れて転がってしまった…

それでもカービィは何も言わずにぎゅっと抱き返し…傘を拾ってくれたバンワドも2つの傘を差しながら心配する

バンワド「アイシェ、ボク達と一緒にお城に行こうね。」

アイシェ「ぐすっ…ひっく……う…ん…。」

その後カービィがワープスターを呼んでデデデ城へ向かい…

デデデ「どうしたお前ら、それにアイシェは泥だらけじゃねぇか…おい、急いで風呂の準備をしろ!」

他のワドルディ達に命じてお風呂の準備が整い…アイシェは1人でゆっくりとお風呂に浸かり、カービィとバンワドはデデデと一緒に入った。

その後は部屋着のパーカーを借りたがサイズが大きすぎる為、ずり落ちない様にバンワドの替えのバンダナも借りて首元で結び、温かいホットミルクが用意された。

バンワド「少し落ち着いた、アイシェ?」

アイシェ「うん…ありがとう…。」

デデデ「何があったのか話せそうか?」

アイシェ「…マホ…ロアが…っ…!」

カービィ「アイシェ、無理しなくていいからね。」

ぎゅっと手を握るカービィと背中を撫でてくれるバンワドに、アイシェは涙を流しつつも頷き、少しずつ話し始めた

マホロアが疲れた様子だったのでお弁当を作って行った事…遠くから彼の背中を見つけたから向かっていたらスージーを押し倒していた事…そのまま帰って来てしまった事…全てを話した。

デデデ「アイツ、一体何を考えてるんだ!?」

バンワド「マホロアはあんなにアイシェの事が大好きなのに、そんな急にスージーに気持ちが行くかなぁ…。」

カービィ「それは無いと思うけど…。」

アイシェ「スージーは美人で綺麗で…素敵な女性だから……もしかしたらマホロアも…。」

デデデ「アイシェ…。」

カービィ「ねぇ、これアイシェが作ったんだよね?」

アイシェ「うん…。」

カービィ「ボク達が食べてもいい?」

アイシェ「うん…食べて貰えたら嬉しい…。」

カービィ「ありがとう、いただきます!」

そう言うとカービィはマホロアの形をしたおにぎりを頬張った

バンワド「それじゃあボクも。」

デデデ「俺様も貰うぜ。」

続けてバンワドとデデデもおにぎりを頬張り、おかずも次々と食べてあっという間に完食した。

To be continued…