小説「夢結ぶ星りんご」~崩れていく想い~

食べ終えた3人は満足げな様子で…

デデデ「アイシェ、すごく美味かったぞ!」

バンワド「マホロア、これを食べたらすごく喜んでくれたと思うよ!」

アイシェ「ありがとう…でも…マホロアはスージーと…。」

じわ…思い出して青い瞳から涙が零れ落ちるアイシェを見て、カービィが優しく寄り添って抱きしめた。

カービィ「アイシェはマホロアが大好きなんだよね?」

アイシェ「うん…。」

カービィ「マホロアが大事な恋人で大好きだから、泣いちゃうくらい悩んじゃったんだね。」

アイシェ「カービィ…!」

カービィ「マホロアも同じ気持ちだし、アイシェの事をすごく心配してるに違いないよ。このおにぎりだってマホロアへの気持ちがいっぱい詰まってたもん。」

バンワド「カービィの言う通りだよ、マホロアはいつもアイシェを見て嬉しそうに笑ってるもの。それって大切な恋人だからだよね。」

デデデ「きっと何かトラブルになってそうなったんだろう、アイツはいつだってアイシェの事を考えてるはずだぜ?」

3人の言葉はとても温かくて、アイシェの傷ついていた心にじんわりと染み渡って癒やしてくれる

アイシェ「バンワドくん…大王さま…ぐすっ…みんなありがとう…。」

まだ泣いているアイシェだが、にっこりと笑っていて…漸く見れた笑顔に3人も安心して優しく笑った。

同じ頃…マホロアはローアに戻って来た。

マホロア「突然すごい雨が降ってビックリしたヨォ…ただいま~アイシェ!」

しかしアイシェの声が帰って来る事は無く…マホロアの声だけがローアに響いた

キッチンからは美味しそうな香りがしてきて…彼女が料理をしていた形跡はあるが、やはり具合が悪くて休んでいるのかも…そう思ったマホロアは彼女の部屋に向かった。

しかし…部屋に入ったマホロアの目に入ってきたのは、ベッドの上に置かれたリボンと通信機チャームで…マホロアは黄色い瞳を小さくして驚いた!

アイシェ『ごめんねマホロア…ちょっと用事があるからお出かけして来るよ。』

マホロア「アイシェ…コノ大雨の中デ…!?」

酷く動揺する中、マホロアはリボンとチャームを持ってローアを飛び出し、傘を差してアイシェを捜し始めた

ウィスピーの森やお気に入りの花畑…彼女の行きそうな場所を巡ってカービィの家にも行ったが、居ない上に彼自身も不在だった。

アイシェ『マホロア!』

マホロアの中では無邪気に笑うアイシェの姿が強く浮かんで…

マホロア「アイシェ…ドコに行ったノ!?」

どこを見渡しても彼女の姿は無く、マホロアの背中を嫌な汗が伝う…

スフィアローパーに襲われた時の様に、どこかで怪我をしていたら…1人で怖い思いをしていたら…考えるだけで胸が張り裂けそうな思いだった。

そんな中、視線の先の大きな木の下で誰かが雨宿りをしていて…

アイシェかもしれない!そう思ってマホロアが近づくと、そこに居たのはマルクだった。

マルク「何だ、マホロアか〜。」

つまらなさそうにジト目で見てくるマルクだが、マホロアは酷く動揺した様子でマルクの翼をガッと掴み…

マホロア「マルク、どうしヨウ!!」

酷く動揺しているマホロアの様子に、マルクは驚いて紫の瞳を小さくした

マルク「お前…どうしたのサ…明日は大雪でも降るのサ…?」

マホロア「ソンナワケネーダロ、呑気なコト言ってんジャネーヨこのクソピエロ!!」

驚いたマルクがそう言うと、今度は怒り出し…彼の情緒が不安定なのは明らかだった。

マルク「何があったのサ?」

マホロア「アイシェが居なくなっチャッタんダヨォ!」

そう言ってマホロアは事情を説明したが、マルクは冷めた目で見ている。

マルク「お前さ、自分自身に心当たりねーの?」

マホロア「ハァ?どういう事ダヨ?」

マルク「最近、ずっとアイシェをほったらかしにしてただろ。」

マホロア「ソンナつもりは無かったヨォ!」

マルク「この前夜空を見に行く時も、スージーとの事を楽しそうに話した上に明日も2人で機械のトークするから楽しみって言ってたらしいじゃん?アイシェはタランザの腕の中で泣いてたのサ。」

マホロア「エッ………!?」

その発言には覚えがある…あの時は完全に浮かれていたが、その言葉でアイシェを深く傷つけていたなんて…それなら彼女は自分の言動で毎日傷ついて…

マホロアの体はガタガタと震え、その黄色い瞳も光を失っていて…

マルク「…あの時アイシェに止められたけどな、ボクはお前をシバき倒そうと思ってたのサ。」

ガッ!!

その様子を見たマルクは、右の鉤爪でマホロアのマフラーを掴んでそのまま木の幹に押しつけ、そのまま左の鉤爪を彼の真横に突き刺した!

マホロア「………ッ………!!」

マルク「アイシェを傷つけておいて、タダで済むと思うなよ?」

薄暗い中でマルクの声は低く、紫の瞳は鋭く光っていて…

マホロア「マル…ク……!!」

ヒューッ…ヒューッ…と過呼吸気味でガタガタ震えているマホロアに、マルクはふぅ…と溜息を吐くと鉤爪を抜いて口を開いた。

マルク「しっかりするのサ、お前がアイシェを守るんだろ?」

マホロア「ウ…ン…!」

マルク「アイシェはきっとメタナイトかデデデ大王の所に居ると思うのサ、ボクも付いてってやるから行くのサ。」

そう言ってマルクはマホロアの背中をポンと叩き、落ち着きを取り戻したマホロアはマルクと共に、まずは戦艦ハルバードへ向かった。

メタナイト「いや、アイシェは来ていないが…恐らく大王の所に行ったのではないか?」

マホロア「大王の所へ行ってみるヨ…アリガトウ、メタナイト。」

メタナイトと別れてデデデ城へ向かうと…そこにはデデデ達と話をするアイシェの姿があった!

デデデ「お、マホロア。」

アイシェ「マホロア…マルクまで…!」

マルク「お、メタナイトの予想が当たったのサ。」

バンワド「心配して来てくれたんだね。」

カービィ「よかったね、アイシェ。」

マホロア「……………。」

アイシェ「う…うん…。」

安心するカービィ達だったが、アイシェは俯いているマホロアの様子がおかしい事に気づいていて…

不安を覚えつつもそっと歩き出すと、マホロアは口を開いた。

マホロア「アイシェ……どうシテ…?」

アイシェ「えっ…?」

マホロア「どうシテ…どうシテ通信機チャームもリボンも置いて行ったんダヨ!?」

アイシェが無事だった安心と、こんなに必死に捜していたのにデデデ達と楽しく話して彼の部屋着やバンダナまで…他の男の服を着ているなんて、マホロアはそれだけでも嫉妬で気が狂いそうだった。

一方のアイシェは、突然顔を上げて声を荒げたマホロアにビクッとして…

アイシェ「マホ…ロア…!?」

マホロア「アイシェ、今すぐローアに帰るヨ!」

そう言ってマホロアは黄色い瞳をつり上げて、アイシェの手首を掴んでグイグイと引っ張り出したが…

アイシェ「や…マホロア…っ…!」

マホロア「何で嫌がるノ、帰るカラ今すぐに着替えてヨ!」

アイシェは怯えて抵抗していて、明らかに様子が違うマホロアにカービィ達も驚いていて…

カービィ「マホロアやめて、アイシェが怖がってるよ!」

マホロア「カービィは黙ってテ、コレはボクとアイシェの問題ダカラ!」

アイシェを捜しに来たはずなのに…見つけたら優しく抱きしめて謝って、一緒に帰るはずだったのに…

他の男の服を着て談笑するアイシェは自分の知らない違う人にすら見えて…ドロドロとした暗い感情をマホロアは抑えきれなかった。

アイシェ「い…や…嫌…!」

精一杯抵抗したアイシェは、マホロアの手が一瞬緩んだ隙に振り払い、カービィの元へ駆け寄った。

カービィ「アイシェ!」

アイシェ「カービィ…怖い…!」

カービィ「大丈夫、ボクがついてるからね。」

ぎゅっ…怯えるアイシェを抱きしめるカービィを見たマホロアは眉間に深い皺を寄せて怒り出し…

マホロア「何デ…ボクよりカービィがイイノ!?」

カービィ「マホロア…!」

アイシェ「違う…そうじゃないよ…!」

マホロア「浮気なんテ絶っ対に許さないヨ!!」

マルク「おい、止めるのサ!」

そう言ってマルクが止めるが、マホロアは怖い顔をしながら見ていて…

アイシェ「違う……そんなんじゃない…………嘘吐きなマホロアとは違うんだからっ!!」

勢い余って、アイシェは心にも無い事を叫んでしまうのだった…。

To be continued…