小説「夢結ぶ星りんご」~夢の中へ!~

真っ黒な空間を見て、マホロアは思わず息を飲んだ

マホロア「この先ニ、アイシェに悪夢を見せてる奴ガ…!」

湧きあがる恐怖が体を支配しそうになるが、マホロアはもう迷わなかった

愛する人を救う為、大切な友達と一緒に夢の世界へ飛び込む覚悟を決めていた!

タランザ「ボクはここに残って、結界を張りながらアイシェの様子を見てるのね。」

マホロア「頼んダヨ、タランザ。」

そう言うとマホロア達は夢の世界へと入って行った。

彼女の夢の中の世界は夜の様に真っ暗で…辺りを見渡しても何も無い

カービィ「一体どこに…?」

敵の姿を捜すカービィだったが、次の瞬間…背後から光が現れて…振り返るとまるで大きなスクリーンの様に、不思議な光景が流れ始めた。

それは白黒の光景で…無表情のカービィがワドルディを吸い込んだり吐き出したりしている…

バンワド「これは…!?」

次に映し出されたのは夢の泉…デデデと激しい戦いを繰り広げた末に彼の制止を振り切ってスターロッドを戻してしまった瞬間…

デデデ「これは夢の泉…ナイトメアの時の戦いじゃねぇか…!」

その後も仲間達と協力して虹の島々を解放したり、メタナイトのプププランド侵略を止めていたり…

メタナイト「これは私がプププランドを変えようとして、カービィと激闘した時の…!」

ノヴァを止めた後にマルクと戦っている光景も映し出された…

カービィ「ボクとマルクの戦い…!」

マルク「どういう事なのサ…!?」

リボンの星を救う為の戦いや、ドロッチェとのお宝争奪戦…カービィが10人に別れてしまった事件…そして最後に映し出されたのはマホロアの姿で…激しい戦いの末にカービィにクラウンを破壊された後にそのまま光の彼方へ消え去って消滅した光景が流れて、それを見たマホロアは何かに気づいた様でハッとした!

マホロア「コレ…アイシェが生前見ていた光景なんジャ…!?」

言われてみれば、今までの光景は全ての風景やカービィ達の見た目が違っていて…彼女がいつの日か話してくれた事と内容も一致していた。

メタナイト「そうか…ここはアイシェの夢の世界、生前の記憶を我々に見せているのだな…!」

カービィ「これがアイシェの見てきた生前のボク達…こんな風に見えていたんだ…!」

驚きを隠せないカービィ達だったが…マホロアが消滅した後からは風景が変わり…

それは紛れも無い「今のアイシェの記憶」で…カービィ達の姿やマルク、タランザ…スージー……そして何よりもマホロア自身の姿がよく映し出されていて…

マホロア「アイシェ…こんなにもボクのコトを…!!」

彼女がそこまで自分の事を想ってくれていたのだと改めて痛感するマホロア

すると映像は消えて再び真っ暗な空間になり…カービィ達の前に現れたのは…マホロアソウル!

カービィ「そんな…だってマホロアはここに…!」

マホロア「どういうコトダヨ…クラウンだってアノ時にボクが今度こそ破壊したハズ…ソレなのニ…!」

驚きを隠せないカービィ達だったが…今度はアイシェが現れた!

アイシェ「マホロア…マホロアぁ…!!」

マホロア「アイシェ!」

彼女の名前を叫んで向かうマホロアだが、見えない壁の様な物に阻まれて行く事が叶わず、アイシェにも声が聞こえていない様だ

マホロアソウル『アイ…シェ……。』

クラウンはマホロアの魂を啜り…徐々にクラウンの宝石は光を増していく

アイシェ「ダメ…やめて……私から彼を奪わないで………いやあぁぁぁ!!」

マホロア「ボクはココに居るヨ、アイシェ!」

そう叫ぶも、やはり彼女には聞こえていないようで…

アイシェ「マホロア……マホロアぁ……!!」

頬を真っ赤に染め、青い瞳からは大粒の涙を流しながら、その場に崩れ落ちて名前を呼び続けるアイシェ…

すると、マホロアソウルが赤い果実の樹に取り憑いたマスタークラウンに姿を変え、枝を差し伸べて…

クラウン『娘よ…この者に会いたいのか?』

アイシェ「ひっく…ひっく…マホ…ロア…を…返して…返して…ぇ……っ……!!」

泣きながら懇願するアイシェに、マスタークラウンの瞳はニタリと厭らしい笑みを浮かべ…

クラウン『お前の魂を我に捧げよ…我の中であの者と永遠に一緒にさせてやろう。』

そう言うと、アイシェの前にマスタークラウンを被ったマホロアが姿を現した!

マホロア『アイシェ。』

アイシェ「ひっく…ひっく…マホロア…ぁ…!!」

マホロア『おいで、ボクの大切な宝物…コレからはずっとボクだけの傍に居てネ。』

アイシェ「マ…ホロ…ア…もう…離さない…で…!」

マホロア『離さないヨ…キミはずーっと永遠にボクダケの……モノダカラネェ!』

アイシェ「マホ…ロア…。」

そう言ってマホロアは意識を失ったアイシェを抱きしめた直後にスゥッと消え、クラウンの大きな手がアイシェを掴んでいて…

マホロア「ア…アァァ…ヤメ…ロ…ヤメロヨォォッ!!」

そのままアイシェは闇に包まれて彼の手の中に消え…魂が光となってマスタークラウンに吸い込まれていき、瞳は光り輝いた。

クラウン『愚かな傀儡とそれを愛した娘よ…我の中で永遠に2人で魂を啜られ続けるが良い……フフ…フフフフフ…フハハハハハハハァッ!!』

悍ましい笑い声が響き渡り、阻まれていた見えない壁の様な物は消えて…カービィ達はその場に解放されたが…

マホロア「ウワァァァァァッ!!」

混乱するマホロアは叫んでいて…

カービィ「マホロア、マホロア落ち着いて!!」

マホロア「カービィ、アイシェが…アイシェがクラウンに食べられチャッタヨォ!!」

メタナイト「あれは幻影だ、騙されるな!」

マホロア「幻…影……!?」

ヒューッ、ヒューッと過呼吸を起こすマホロアを落ち着かせているカービィとメタナイト、するとマスタークラウンがこちらをギョロリと見つめてきたが…

タランザ『マホロア!』

魔法陣を通じて、タランザが声をかけてきた!

マホロア「タラ…ンザ…!」

タランザ『マホロア、しっかりするのね!それは作り出された幻…キミが惑わされたらアイシェの体にも影響が出る恐れがあるの、集中力を切らさないでっ!』

マホロア「ハァ…ハァ…ッ…!」

デデデ「マホロア、お前がアイシェを救うんだろ?」

バンワド「アイシェをここから救い出せるのは、マホロアにしか出来ない事だよ。」

マホロア「ハァ…ハァ…大王…バンワド…!」

優しく諭すデデデとバンワド、そしてマルクも…

マルク「いつもの神経が図太いお前はどうしたのサ、こんな幻影ブッ飛ばしてやるのサ!」

マホロア「マルク…!」

アイシェ『マホロア!』

脳裏に浮かんだアイシェの笑顔…

そうダ…ボクはキミを…たった1人の愛するキミを助け出す為にココに来たんダ!!

マホロア「ボクに幻を見せたのが間違いダネ…そんなのは通じないヨッ!!」

徐々に落ち着きを取り戻したマホロアは、両手を構えて魔力を集中させ…マホロア砲を撃った!

ズバアァァァァーーーーーーー!!

攻撃を受けたマスタークラウンはそのままドロドロと溶けてフッと消え…そのまま再び暗闇の空間が広がった。

バンワド「すごい、一瞬で消えた!」

カービィ「やったね、マホロア。」

マホロア「アリガトウ、カービィやミンナのお陰ダヨ。」

そう話すマホロアの表情は落ち着いていて、カービィ達も安堵するが…

ズゴゴゴゴゴゴ…!!

地響きの様な音が響き、カービィ達の前に鋭く光る黄色い瞳が現れた!

その鋭い瞳はカービィ達を眺め、みるみる内に暗い霧の様な空間で包んでいき、闇の中からズルズルと姿を現した。

金のティアラの様な飾りが額の辺りに付いている赤い頭巾の様な物を被り、両サイドは金の細い管の様な物から胸の辺りまで生地が伸びていて、上下が金で縁取られた水晶玉の様な物に黒い炎が燃えていて…大きく伸びた白黒の2本の角はぐにゃりと曲がり、その先には黒い炎を灯していて、首元には金で縁取られた黒いブローチが付いたジャボを着けている

黒い炎の様な霧の様な丸い闇の体を持ち、後ろには10枚の鋭い刃先の様な形のグレーのマントを着けていて、その先にも黒い炎を灯しており、真ん中の部分に11枚目となる炎を灯さない小さなマントが覗き…中央部分のみは遠目からみると逆さまの王冠の様なデザインだ

真っ暗な闇の世界に似つかわしくない純白の手、手の甲に装着したプロテクターと同じ色をした赤く鋭い爪が並び、まるでマホロアの手の様に宙に浮いていて…その手首にはリング状をした2本の金のブレスレットが付いている

しかし手の白さと相反してその顔は闇そのもので、黄色く光る鋭い瞳はカービィ達を見下ろして弓形に細められた。

影『ククク…侵入者の皆様、ようこそワタクシの世界へ。』

カービィ「これがアイシェに取り憑いている者の正体!?」

デデデ「その姿…闇の一族ではなさそうだな!」

闇の魔術師『ワタクシは名も無き者、それとも「闇の魔術師」…とでも名乗っておきましょうか?』

マルク「アイシェから出て行くのサ!」

闇の魔術師『この少女は世界に絶望していた、なのでワタクシがその絶望を増幅させたのです。』                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

メタナイト「何だと!?」

バンワド「何て酷い事を!」

闇の魔術師『それだけではありません、少女はこの世界から消える事を望んでいた…今はワタクシの宿り主となっていますが、徐々に一体となるのですよ。』

そう言うと、目の前に闇の塊が現れて…ドロドロと周りの闇が溶けていくと姿を現したのはアイシェ!

マホロア「アイシェ!!」

アイシェ「…………………。」

呼びかけるものの、アイシェの青い瞳は光が無くて虚ろな表情をしていた…。

To be continued…