小説「夢結ぶ星りんご」~キミと同じ世界デ生きタイ~

マホロア「アイシェ、一緒に帰ろう!」

続けて声をかけるマホロアだが、やはりアイシェから反応は無い。

アイシェ「………………。」

カービィ「アイシェ、どうしたの!?」

メタナイト「アイシェの意識はきっと、あの者に囚われているのだ!」

バンワド「そんな…どうしたらいいの!?」

マルク「なら力尽くで取り返すのサ!」

そう言うとマルクは地を蹴って煌めきの翼を出して飛び上がり、そのまま鉤爪で切り裂こうとしたが…

闇の魔術師『これでも傷つけられるのですか?』

マルク「くっ…アイシェ!」

アイシェを盾にされ、マルクは攻撃出来ずにその場に降りた。

デデデ「アイシェを盾にされてる以上、手を出せねぇ…!」

突破口を見い出せず困るカービィ達だったが…

アイシェ「………い……。」

マホロア「アイシェ…?」

アイシェ「私はこの世界に居てはいけない。」

カービィ「アイシェ!?」

マホロア「ッ………!!」

虚ろな表情のアイシェはそう呟き、光を失った青い瞳からは涙が零れ落ちた

メタナイト「貴様、アイシェを操るのを止めろ!」

闇の魔術師『今のはこの少女自身が思って言葉にした事…ワタクシの意志ではありません。』

メタナイト「何だと!?」

闇の魔術師『愛する者を傷つけ、傷つけられ…己を恥じて全てに絶望した瞬間を察知したワタクシは、この少女の中に入り込んだのです。さぁ…この闇の中でずっと眠りなさい。』

そう言うとドロドロとした大きな手がアイシェを抱き上げ、下には暗い闇の沼が広がった!

デデデ「何をする気だ!」

そう叫ぶも闇の魔術師は答えず、アイシェをそのまま落として…

ドプンッ…!

アイシェはそのまま闇の沼の中へと沈んでいった。

マホロア「アイシェ!!」

彼女の名前を叫ぶとマホロアは闇の沼の中へと飛び込んで行き、残されたカービィ達は…

カービィ「マホロアは必ずアイシェを助け出してくれるよ、ボク達はここで闇の魔術師を止めよう!」

デデデ「そうだな、アイシェを目覚めさせる事が出来るのはマホロアだけだ!」

闇の魔術師『ワタクシに刃向かうのですか…愚かですねぇ。』

バンワド「ボク達は今までだって色んな冒険をしてきた…仲間達と一緒に戦ってきたんだ!」

メタナイト「大切な友を救う為に我々は来たのだ、もう貴様の思い通りにはさせない!」

マルク「好き勝手してくれたツケを、ここで払って貰うのサ!」

闇の魔術師『哀れな愚か者共め…ならば、お相手致しましょう!』

こうしてカービィ達と名も無き闇の魔術師との戦いが始まった!

同じ頃、現実の方では…

アイシェ「うっ…あぁぁぁぁ……!」

魘されるアイシェの手を握ったタランザは、手が冷たくなってきている事に気がついた。

タランザ「闇の魔術師の影響でアイシェの体が、このままだと命の危険も…急ぐのねマホロア!!」

一方マホロアは、辺り一面に真っ暗な闇が広がる中でアイシェを追って深く潜って行く

マホロア「(アイシェ、必ず助けるカラ!!)」

どんどん沈んでいくアイシェに泳ぐスピードを速め、その距離は縮まっていき…

ぎゅっ…マホロアの手がアイシェの左手首を掴み、そのまま強く抱き寄せた!

アイシェ「…マホ………ロ……ア………。」

閉じていた瞼を開き、虚ろな目でマホロアを見るアイシェ…

マホロア「アイシェ、ボクと一緒に帰ろう!」

アイシェ「…もう…戻…れない……私は…もう……帰れない……。」

マホロア「そんなコト無いヨ、ボクもミンナも心配してるんダカラ!」

アイシェ「私は…元々この世界に居なかった…から…もう…居場所は…無い…よ…。」

マホロア「…ッ……!!」

アイシェの絶望に言葉を失うマホロア…一方でカービィ達も苦戦を強いられていた!

闇の魔術師『諦めなさい、あの少女の絶望が続く限り…お前達は勝てません。』

カービィ「マホロアが必ずアイシェを助けだしてくれる、だからボク達も絶対に諦めないよ!」

不利な状況でも友を信じて戦い続けるカービィに、デデデ達も希望と勇気を貰っていて…

デデデ「こんな所で、負ける俺様達じゃねぇぞ!」

バンワド「ボク達は、最後まで戦う!」

メタナイト「我々は決して、闇に屈したりなどしない!」

マルク「ボクも諦めが悪いのサ、覚悟してちょーよ!」

誰一人として諦めず戦う中、闇の沼の中でマホロアの説得は続いた。

マホロア「そんなコト言わないデ、アイシェ…!」

アイシェ「もう…マホロアの…傍に…居られ……。」

ゆっくりと瞼が閉じられていくアイシェに、マホロアはさっきよりも更に強く抱きしめ…彼女の目を真っ直ぐ捉えて口を開いた。

マホロア「ボクにこんなコト言う資格は無いケド…アイシェが大事なんダ!ボクを許さなくてもイイ…戻って来てアイシェ、キミの世界はココダヨ!!」

アイシェ「私の…世…界…?」

マホロア「ウン、キミの世界ダ…ボク達と共に居るコノ世界がキミの生きる場所ダヨ、アイシェ。」

アイシェ「私…居て…いいの…?」

マホロア「当たり前ダロ、アイシェが居なかっタラ…コノ世界は色が失われてしまうヨ。ソレにボクはまだキミに伝えてないコトがたくさんあるんダ。」

アイシェ「伝えて…ない…事…?」

マホロア「ボクの気持ち…2人の未来…まだまだ伝えたいコト、知って欲しいコトがたくさんあるんダヨ。」

アイシェ「2人の…未来…。」

マホロア「アイシェ、キミはボクにこう言ってくれタ「一緒に夢を叶えよう」っテ…ダカラ一緒に帰ろう…2人で夢を叶えよう、アイシェ。」

アイシェ「マホ…ロ…ア……!」

青い瞳から涙が溢れて闇の沼に消えていき、マホロアはマフラーを下げるとアイシェの顔に自身の顔を更に近づけて…

マホロア「愛してるヨ、アイシェ…ずっと…ずっと愛してる。」

彼女の唇に口づけると、閉じたアイシェの瞳からは更に涙が溢れて…

アイシェ「マホロア……帰りたい…私をここから連れ出して…!」

その瞳には光が戻っていて…マホロアの黄色い瞳からも涙が滲む

マホロア「ウン、一緒に行こう…アイシェ。」

アイシェ「マホロア…あった…か…い…。」

安心した表情と笑みを見せると、アイシェはマホロアの腕の中で意識を失い…

バシャアッ!!

大きな音と共にマホロアがアイシェを抱き上げて姿を現し、それを見たカービィ達にも安堵の笑みが零れる。

カービィ「マホロア!」

マホロア「モウ大丈夫ダヨ。」

闇の魔術師『馬鹿な…ぐっ…力が弱まっていく……!』

先程まで押されていたカービィ達だったが、マホロアの説得によってアイシェが解放された事で力を失い…徐々にカービィ達に押され始めた!

マルク「観念するのサ!」

闇の魔術師『おのれ…ならばこうしてくれるっ!!』

先程までとは口調も変わり、更に鋭く光る瞳で睨み付けると、自身の体から大量の闇の塊を飛ばし…それらは蠢く小さな怪物となって襲いかかって来た!

メタナイト「ここは我々が引き受けた!」

マホロア「分かっタ、マルク…アイシェを頼んだヨ!」

マルク「任せてちょーよ!」

デデデとバンワド、メタナイトが敵を抑えて、マルクがアイシェを守る中…

マホロア「行くヨ、カービィ!」

カービィ「うん!」

ここは夢の世界…カービィが目を閉じて念じると、スーパーコピー能力「ウルトラソード」姿になった!

そしてマホロアも目を閉じて魔力を集中させると、彼の目の前に色違いのマホロア専用「ウルトラソード」が姿を現した!

カービィ「まさかマホロアがウルトラソードを使える様になるなんてね!」

マホロア「アノ1年間…ボクもずっと彷徨っていたばかりジャナイんダヨ!」

お互いに顔を見合わせて頷くと、同時に飛び上がり…

カービィ「アイシェを苦しめる奴は、ボク達が許さないんだから!!」

マホロア「ボッコボコにしてヤルヨォ!!」

振り下ろしたウルトラソードを、闇の魔術師は両手で押さえているが…

闇の魔術師『ぐっ…おぉぉぉぉ…何という…力…だ……!!』

カービィ「はぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」

マホロア「ウォォォォォォーーーーーーー!!」

2人のウルトラソードはどんどん闇の魔術師の抵抗する力を弾き返していき…

カービィ「とりゃあぁぁーーーーーーー!!」

マホロア「滅びろヨォォーーーーーーー!!」

ズバアッ!!

闇の魔術師を斬り裂いた!

闇の魔術師『お…のれ…おのれぇぇ………!!』

そう叫ぶと、闇の魔術師の体の中から光が溢れ出してドロドロと溶けていき…そのまま消え去った!

するとアイシェの夢の中の世界は真っ白な光り輝く世界に変わり、現実の世界のアイシェは穏やかな寝顔でその手は温もりが戻り…タランザは安堵した。

タランザ『やったのねマホロア、みんな!』

マホロア「タランザ!」

タランザ『いつまでも長居は出来ないの、早く戻ってくるのね。』

マルク「ほら、マホロア。」

マホロア「アリガトウ、マルク。」

マルク「お礼なんてお前らしくねーのサ!」

アイシェを受け取ったマホロアがお礼を言うと、悪態を吐くマルクだがその頬は赤く染まっていて…イタズラっぽくニカッと笑う

マホロア「アイシェ…目を覚ましタラ、たくさんお話しようネ。」

そう言ってアイシェ抱きしめると、そのまま暖かい光に包まれて消え…マホロア達は夢の世界を去った。

戻って来て魔法陣を解除し、眠るアイシェの左手を握りながら頬を優しく撫でていると…

アイシェ「ん……。」

小さく声が漏れて…アイシェはゆっくりと目を覚ました。

マホロア「アイシェ。」

アイシェ「マホロア…みんな……ありがとう。」

そう話すアイシェの表情はとても穏やかな笑みを浮かべていて…マホロアは黄色い瞳に涙を浮かべ、何も言わずに優しく笑って頷いた。

To be continued…