2人が夢を叶えたら結婚する約束をしてから3日後の朝、スージーが帰る前にローアに挨拶に来た。
スージー「話はマホロアから聞いたわ、気づけなくてアイシェにつらい思いをさせた上に危険な目に…本当にごめんなさい…!」
アイシェ「ううん、もう大丈夫だよスージー、それにマホロアとちゃんとお話出来たもの。」
そう話すアイシェは穏やかな笑みを浮かべていて、スージーは安心した。
スージー「ありがとうアイシェ…でも足の方は?」
アイシェ「昨日からローアの中だけで少し歩き始めたの、明日からは外も歩いて少しずつ馴らしていく予定だよ。」
スージー「よかった、アタシはもう帰らなきゃいけないから見届けられないけど…また今度来た時は、2人で一緒にこの国を巡りたいわ。」
アイシェ「うん、スージーに見せたい場所がたくさんあるから楽しみにしてるね。」
スージー「ふふっ、アタシも楽しみよ。」
時間の許す限り、2人はたくさん話をした。
そしてお昼過ぎ…スージーはマホロアに抱き上げられたアイシェに見送られ、ローアの前からリレインバーに乗って旅立って行った。
マホロア「ハァ~やっと平和が戻って来た感じがするヨォ。」
アイシェ「ふふっ、この星はいつも通りのんびり過ごすのが一番だね。」
久々に外に出れたアイシェは、優しく頬を撫でる夏の風に気持ちよさそうにしている。
マホロア「ボクはこうしテ、アイシェを傍で抱きしめてるのが一番ダヨォ~。」
そう話すマホロアは嬉しそうで、そのままローアの中へと戻った。
ソファにアイシェを座らせて、冷たいミルクティーを作りながら雲の夢を口ずさんでいると…
タランザ「アイシェ~お見舞いに来たのねっ!」
ニコニコ笑顔のタランザが、フロラルドから摘んできた色とりどりの花束を持ってローアに入って来た。
アイシェ「いらっしゃいタランザ、わぁ~綺麗!」
マホロア「チョット、何勝手に入ってきてるのサ。」
タランザ「ちゃんとノックはしたのね、それにローアが開けてくれたの。」
マホロア「ローア、勝手に入れるなヨォ…。」
アイシェ「…え?ふふっ…。」
ローアの声を聞いたアイシェは思わず笑ってしまい、それを見たマホロアは何となくその内容を察した。
マホロア「タランザは安全とか、そういう理由デショ?」
アイシェ「うん、タランザは大切な友達だから大丈夫って言ってるよ。それにマホロアが敵意を向けていないとも。」
タランザ「ローアはアイシェと一緒で本当にいい子なのね、主とは正反対なの。」
マホロア「どういう意味ダヨ!?」
タランザ「そのままの意味なのね。」
マホロア「ローア、今すぐコイツを叩き出してヨ!」
しかし、ローアは何もせず…その場には優しい風が吹く音のみが聞こえる
アイシェ「ローアは『大事なお客様を手荒に扱う事は出来ません。』って言ってるよ。」
マホロア「グッ…!(ローア、ご主人様であるボクに対して、生意気な態度を見せる様になっテきたネェ…まるでマルクみたいダヨ!)」
その言葉にマホロアは苦い顔をしながら、ローアが自分に対して少しずつ悪知恵を働かせる様になってきたと思いつつ、心の中で毒づいた。
ローアは基本的にはマホロアに従順だが、彼が何かを企む時は、大抵アイシェを助ける為に勝手な行動を起こすのだ
そう、暴走するマホロアを止めるストッパーがローアの役目なのである
それでも前の様に、マホロアが自分の部屋の中に魔法空間を作ってしまうとどうにも出来ないのだが。
その後タランザが花束を花瓶に生けて飾ってくれて、彼の焼いてきたクッキーを食べながらお茶会をした。
アイシェ「わぁっ、ひまわりの形が可愛い!」
マホロア「へぇ~凝ってるジャン。」
タランザ「アイシェが色んな型で作ってたのを参考にしたの、フロラルドでも人気なのね。」
アイシェ「歩ける様になったら、またフロラルドに遊びに行っていい?」
タランザ「いつでも大歓迎なのね!」
アイシェ「ありがとう!」
嬉しそうに話す2人を見つつ、マホロアはクッキーを食べて口を開いた。
マホロア「思えば…こんな風にお茶を楽しむのも、久しぶりダネェ。」
タランザ「侵略されたり、アイシェが闇の魔術師に囚われたりで、ゆっくり過ごす時間が無かったからね。」
マホロア「マァ…結果的にアイシェとちゃんと話をシテ将来の約束も出来たカラ、ヨカッタケドネ。」
タランザ「アイシェ、本当にマホロアでいいの?」
アイシェ「えっ?」
マホロア「どういう意味ダヨ!」
タランザ「紳士の嗜みも無いし、場所問わずにすぐ手を出すド変態だし…アイシェが心配なのね。」
マホロア「ボクを煩悩の塊みたいに言わないデ欲しいヨ!」
タランザ「その通りなの、少しは自重を覚えるのね。」
マホロア「自重くらいしてるヨォ!」
タランザ「それと、アイシェの気持ちもちゃんと尊重するのね。あと意地悪やイタズラも程々にし…」
マホロア「いちいちうるセーヨ、このズランザ!!」
とうとうマホロアは舌打ちをして怒り出し…
タランザ「ズラじゃないのねっ、心配してるのにその態度はなんなのね!!」
そんな彼の態度にタランザも怒り、お互いにビキビキしながら喧嘩になってしまった…。
アイシェ「2人共やめて…!私はマホロアがいいの、だって私をここまで大切に想ってくれてるもの…彼以外はありえないよ。」
マホロア「アイシェ……そんなコト言われタラ、ボク照れちゃうヨォ…。」
アイシェ「ふふっ。」
ポンポンと湯気を出しながら頬を真っ赤に染めて照れてしまうマホロアに、アイシェも頬を真っ赤に染めつつも笑う。
そしてそれを見たタランザも穏やかな笑みを浮かべていて…
タランザ「2人なら大丈夫なのね、マホロア…アイシェをちゃんと幸せにするのね。」
マホロア「そ……そんなの当たり前ダロォ!」
まだ頬を真っ赤にして照れ隠しの様に取り繕うマホロアは、いつものペースを乱されていて…彼の「素顔」である事は一目瞭然だった。
その後タランザが帰り、2人でお昼ご飯を食べていると…
マルク「マルク様が遊びに来たのサ〜開けてちょーよ!」
そう言いながらマルクは堂々とローアの中に入ってきた。
マホロア「部外者ダヨ~叩き出してローア。」
マルク「部外者じゃないのサ、お客様なのサ。」
マホロア「コンナ如何にも馬鹿そうなお客様は知らないネェ、サッサとサーカスに帰ればイイと思うヨ。」
そう言いながらシッシッと手で追い払うマホロアだが、マルクは全く気にもせずにズカズカと歩いてくる
マルク「ほら、アイシェの好きなケーキなのサ。」
そう言うと、マルクはカワサキの所で貰ってきたケーキの箱を手渡した。
アイシェ「ありがとうマルク、後で一緒に食べようよ。」
マルク「賛成なのサ。あ、ボクもお昼貰うのサ~。」
マホロア「ハァ~?テメーに食わせるモンなんかネーヨ!」
わざとらしく溜息を吐いてるマホロアだが、そう言いつつもキッチンへ向かって何か準備している様子だ。
マルク「目玉焼きは2つなのサ~あとパンもセットで頼んだのサ!」
マホロア「ホンット図々しいヨネェ~馬鹿ピエロ!」
目をつり上げて怒りながら文句を言いつつも、手際よくタマゴを片手で割って焼いていくマホロア
そう、マルクは一度来て要求すれば最後…どんな手を使っても帰らない事をマホロアは知っているのだ。
それならさっさと満腹にさせて帰らせよう…そう思ったマホロアはマルクの要求通りに2つの目玉焼きとパン、そして余っていた昼食のパスタに夏野菜をトッピングしたナポリタンソースを絡めて差し出した。
マルク「お、美味そうじゃ~ん!」
マホロア「当たり前ダロ、ボクが作ったんダカラ。」
マルク「キシシ、早速頂くのサ。」
嬉しそうに笑って舌舐めずりをすると、マルクは翼を出して鉤爪で器用にフォークを持ち、パスタをグルグルと豪快に巻いて頬張った。
アイシェ「…ふふっ。」
そんなマルクの姿を見て、アイシェが笑い…マルクは口にソースを付けながらもキョトンとした様子で見ている。
マルク「何がおかしいのサ?」
アイシェ「おかしくないよ、こうやってみんなで一緒に食べれるのが嬉しいの。」
そう言って自身も丁寧にパスタを巻いて食べるアイシェに、マルクは頬を赤く染めて…
マルク「…しょ、しょーがないからこれからも時々付き合ってやるのサ!」
マホロア「別に付き合っテ貰う必要なんテないケドネェ~。」
照れ隠しで目玉焼きをのせたパンをガブッと囓るマルクに、悪態を吐きつつクルクルとパスタを回して食べるマホロア
何も無い平和で穏やかな日々、アイシェはそれがとても嬉しくて幸せで…
この世界に生まれ変われて本当によかった
そう思うアイシェの青い瞳は希望に満ちていて、キラキラと輝くのだった。
To be continued…