小説「夢結ぶ星りんご」(夢幻の歯車編)~幻に堕ちる前に~

その場には2人が身に付けていた外套とマホロアのショルダーバッグのみが残されていて、驚いたカービィ達は辺りを捜し回ったが2人は見つからず…

メタナイト「マホロアとアイシェだけが、ローアの歯車に導かれたというのか…!?」

ドロッチェ「何故そんな事を…!」

バンワド「マホロア、アイシェ…!」

デデデ「今は2人を信じて、ここで待つしかねぇな…!」

カービィ「そうだね……マホロア、アイシェ、無事でいて…!」

2人が無事に戻る事を願い、その場から動かず待つ事にしたカービィ達

一方…

マホロア「ンッ…アイ…シェ……アイシェ、ドコに居るノ!?」

気を失っていたマホロアは目を覚ましたが、アイシェの姿はどこにも無くて…目の前に広がるのは古い遺跡の跡の様な場所だった

マホロアは歩きながらアイシェの気配を探るも、やはり彼女は見つからない…

さっきの光に飲み込まれた後に、それぞれ別の場所に飛ばされた…そう察したマホロアは、強い不安に襲われた。

このままアイシェと会えなかったら…元の世界に戻れなかったら…まるで力を失い彷徨っていたあの時の様で、背中を嫌な汗が伝う

とにかく早く見つけなければ…そう思いながら不安を拭う様に頭を振り、マホロアはアイシェの姿を捜して歩いた。

アイシェ『マホロア。』

脳裏には優しく笑いながら自分を呼ぶアイシェの姿が浮かび…

マホロア「アイシェーーー!!」

彼女の名前を呼びながら、マホロアは捜し続けた。

すると…

アイシェ「…ロア…マホ…ロア…!」

マホロア「アイシェ!!」

奥の通路からアイシェがふらつきながら歩いて来た!

アイシェ「マホロア…!」

マホロア「ヨカッタ…すごく捜したんダヨォ!!」

アイシェ「マホロア…必ず見つけてくれるって信じてたよ…!」

マホロア「アイシェ…!」

自分の腕の中で胸に顔を埋めるアイシェを抱きしめ、安心したマホロア…

しかし、アイシェの口角はニッと上がり…マホロアを抱きしめる手にも力が入る。

アイシェ「マホロア…少し疲れちゃったから…休みたい…。」

そう言われたマホロアが辺りを見渡すと、倒れた遺跡の間から隙間が覗き、部屋が見えた

マホロア「アノ隙間から中に入れそうダネ、行こうアイシェ。」

そう言ってマホロアはアイシェを連れて、壊れた遺跡の中に入った。

中には比較的綺麗なベッドがあり、2人はそこに座った。

アイシェ「長く使われて無さそうなのに、綺麗だね。」

マホロア「隙間くらいしか無かったカラ、砂の侵入を防いでくれたんダネ。」

すると、アイシェはそっとマホロアに抱きついた。

アイシェ「…………。」

マホロア「アイシェ、どうしたノ?」

アイシェ「怖いの…。」

マホロア「大丈夫ダヨ、ボクが居るカラネ。」

アイシェ「マホロア…。」

潤んだ瞳で自分を見つめるアイシェ…いつもなら可愛くて愛おしい気持ちが溢れてくるのに、何故かそう思えない

不思議に思うマホロアだが、アイシェは更に密着してきて…

マホロア「アイシェ…?」

アイシェ「マホロア…いっぱい愛して…お願い…。」

マホロア「気持ちは嬉しいケド、こんな場所では流石にダヨォ…。」

いつもより大胆な言動にマホロアは更に違和感を感じていたが、アイシェは頬を赤く染めつつも上目遣いで見つめていて…

アイシェ「マホロアに触れられたいの…。」

そう言いながら、アイシェは人差し指でマホロアの胸にクルクルと円を描く。

マホロア「アイシェ…。」

アイシェ「マホロア…私ね、本当はずっとこうしたかったの…。」

マホロア「エッ…?」

アイシェ「2人だけの世界…誰も居ないの、マホロアと私だけ…誰にも邪魔されなくて、ずっと永遠に2人で愛し合う世界…素敵だよね。」

マホロア「………………。」

アイシェ「クラウンを欲しがった気持ち、今なら分かる…私もマホロアを独り占めしたいもの。」

そう言ってアイシェはマホロアのマフラーをそっと下げて顔を近づけ…もう少しで2人の唇が触れそうになったその時!

マホロア「アイシェ。」

少し離れてマフラーを上げると、マホロアはアイシェの口を指で優しく封じた。

アイシェ「マホロア…?」

マホロア「アイシェ、ボクの「好きなモノ」は分かるヨネ?」

アイシェ「マホロアが好きなモノは「私」に決まってるじゃない…突然どうしたの?」

マホロア「……………。」

アイシェ「私はマホロアだけのモノ、私だって「マホロアだけが居ればいい」の…だから私を愛し…」

マホロア「ククク…。」

アイシェ「マホロア…?」

マホロア「クックックックック……アーーーッハッハッハッハッハッ!!」

突然笑い出したマホロアに、アイシェは青い瞳をぱちぱちさせている…。

アイシェ「ど、どうしたの…?」

マホロア「アイシェ…ボクの愛しいお姫様…完璧ダヨォ、その「見た目」ダケはネ!」

そう言うとマホロアはアイシェをドンッと突き放した!

アイシェ「痛っ……何するのマホロア…!」

突き放されたアイシェは床に倒れ込んだが、マホロアは瞳を弓形に細めて笑うばかりで…

マホロア「ボクを欺こうとしテモ無駄ダヨ、キミ「アイシェじゃない」モンネェ?」

アイシェ「そんな…私は…」

マホロア「さっき「ボクの好きなモノは」っテ聞いたヨネ?答えが全然違うんダヨォ。」

アイシェ「え……?」

マホロア「2人で決めた「合言葉」デモ無いし、今のボクはアイシェのコトを「モノ」なんて思って無いヨ。」

アイシェ「…………!?」

マホロア「キミを消しテ、本物のアイシェを捜さないトネッ!」

そう言うとマホロアは目の前に魔法陣を出して…

彼の手から強力な「レボリューションフレイム」が炸裂した!

『ぐっ…あぁぁぁぁ………!!』

パチパチパチ…

炎は一瞬でアイシェの「幻」を包み込み、そのまま消滅した。

マホロア「アイシェ、すぐに行くカラネ。」

気を集中させてアイシェの気配を探すと、僅かな時空の歪みと共にその先から微かに彼女の気配を感じて…マホロアはその方向へと走り出した!

To be continued…