小説「夢結ぶ星りんご」~お菓子が無いのなら…~

マルクがゆっくりと振り返ってマホロアを見ると、アイシェの首筋を撫でながら自分を見ていて…

マルク「何の事…なのサ?」

それでも何とか笑顔を見せつつ取り繕うマルクだったが、マホロアの黄色い瞳は弓形に細められつつギラギラしていて…

マホロア「アイシェの首筋から、他の男の匂いがするんダヨ…ボクの大事な婚約者に過度なイタズラをしチャッテル……クソピエロの匂いがネェ?

段々と禍々しい声に変わっていくマホロアの声を聞きながら、マルクの表情からはついに笑みが消えた。

マルク「お前…まさか気づいて…!?」

マホロア「サァ…ボクカラは何を返そうカナァ~?キルニードル、レボリューションフレイム、ブラックホール、マホロア砲、ウルトラソード…特別に好きなのをアゲルヨォ…クククッ…クックックックックッ…!」

心底楽しそうに笑いつつ、マホロアの狂気に満ちた笑顔がマルクに向けられていて…背筋をゾクリと悪寒が駆け巡る。

マルク「わ…悪かったのサ…流石に度が過ぎてたのは分かってるって!」

マホロア「ボクは謝罪なんて求めて無いヨ、だってココで今すぐ懲らしめるのハ確定なんだカラ。」

アイシェ「マホロア、やめて…!」

マホロアのマントをぎゅっと握って止めに入るアイシェだが…

マホロア「アイシェ、このド変態道化師ヤロウはボクが完膚なきまで叩きのめしてヤルカラネェ!」

アイシェ「マホロア…!」

当の本人は楽しそうに邪悪な笑みを浮かべ、アイシェの話を聞き入れてくれそうにない…。

マルク「…そもそもお前が簡単にボクの魔法で眠ったのが悪いのサ。」

マホロア「ハァ〜何ボクのせいにしてんダヨ?」

とうとう開き直ったマルクに対して、わざとらしく大きな溜息を吐くマホロアだが…

マルク「「自称一流魔術師」の癖にボクの罠を見抜いてねーのサ!」

そう言って、マルクは意地悪な笑みでマホロアを馬鹿にする…

マホロア「自称ジャネーヨ!ソレとコレは別の話ダロ、回りくどいコトしないデ正攻法で来いヨ!」

マルク「正攻法とか、お前と一番縁が無いのサ!」

マホロア「テメーもダロォ!」

目をつり上げながらマホロアがビッと中指を立てると、マルクは心底イラッとした顔をして…

マルク「この腐れイカサマタマゴが!」

マホロア「ウルセーヨこのクソピエロ!ホンット、テメーの趣味の悪さがその格好カラ分かるヨネェ!」

マルク「お前こそ何なのサ、体から黄身が出てんじゃねーの?」

マホロア「そんなワケネーダロ!どんな目してタラ、そう見えるんダヨ!」

マルク「こんな目してるから見えたのサ!」

マホロア「アイシェとのお揃いダヨ、つまりアイシェのコトも馬鹿にしてるんダヨネェ?……ブッ殺すゾこのクソクソクソピエロ!」

アイシェ「マホロア、落ち着いて!」

マルク「アイシェはよく似合ってるのサ、ボクは最初からお前しか馬鹿にしてないのサ!」

アイシェ「マルクもやめて!」

ヒートアップした2人はとうとう怒り出し…

マルク「やんのかクソ魔術師!」

マホロア「やってヤルヨこのクソ魔法使い!」

マルクはマホロアの顔を靴でグリグリと押し、マホロアもマルクの帽子を掴んでいて…お互いにビキビキしながらいつもの様に喧嘩を始めてしまった。

アイシェ「2人共、喧嘩しないで!」

慌ててアイシェが止めに入って、しばらくして漸く収まり…

マルク「ほら、結んでやるのサ。」

そう言って地面に落ちたアイシェのフード付きマントと通信機チャーム、リボンを拾い上げると…羽織らせて慣れた手つきで丁寧に結んでくれた。

アイシェ「ありがとう。」

マルク「どういたしましてなのサ。じゃあコレは貰ってくぜ?」

アイシェ「あっ!」

マルク「キシシ、それじゃーな!」

鉤爪でバスケットからお菓子を鷲掴みすると、帽子の中にしまいイタズラな笑みを浮かべて浮き上がり…煌めきの羽を広げて夜空を飛んでいってしまった。

アイシェ「マルクが一気に持って行っちゃったから、残りはマホロアの分だけになっちゃった…。」

青い瞳をぱちぱちさせてそう呟いたアイシェに、マホロアは黄色い瞳を弓形に細めつつマフラーの下で舌舐めずりをして…

マホロア「ジャア、イタズラされない様にローアに帰ロウ?」

アイシェ「うん、そうだね。」

マホロア「一気に行くヨォ!」

アイシェ「きゃあっ!」

ひょいとアイシェを抱き上げて、マホロアは勢いよく空に飛び上がり…そのまま夜空を飛び始めた。

マホロア「アイシェ、今日の夜空も綺麗ダネェ!」

アイシェ「うん、すごく綺麗!」

嬉しそうに笑うアイシェにマホロアも笑顔を見せているが、マフラーに隠された口元はニヤニヤしていた。

その後、夜空を満喫しつつローアに戻り…

マホロア「フゥ…楽しかったネェ。」

アイシェ「うん。」

マホロア「ネェ…アイシェ?」

お風呂の準備を始めたアイシェに、マホロアは後ろからスススーっと近づき…足から背中にかけてゆっくりと見ながら名前を呼んだ。

アイシェ「どうしたの?」

何も気づいていないアイシェは、相変わらず準備をしたまま返事をしたが…

マホロア「お風呂の前にチョットダケ…ボクの部屋に来て欲しいヨォ。」

アイシェ「え、マホロアのお部屋に?」

マホロア「ボク、アイシェに見せたいのがあるんダ。」

アイシェ「ふふっ、何だろう?」

純真無垢な笑顔を向けるアイシェに、マホロアはこれから彼女に起きる事を想像しつつ、優しく手を引いて自分の部屋に向かう。

その可愛い笑顔が、淫らで色っぽく自分に甘える顔に変わるのを楽しみにしながら…

その後マホロアの部屋に向かったアイシェだが、特に変わった様子は無い。

不思議に思うアイシェに、マホロアはゆっくりと耳元に顔を近づけて…

マホロア「Trick or Treat…ボクへのお菓子はドコ?それともイタズラが欲しいカナァ?」

熱を含んだ声で妖しく囁くマホロアに、アイシェの体は一瞬ビクンッと跳ねた。

アイシェ「ま…マホロアへのお菓子はここに……あれ?」

マホロア「どうしたんダイ?」

アイシェ「お菓子が無い…どうして…!?」

大きなバスケットに1個だけ残っていたお菓子…それは元よりマホロアに渡すはずの物だった。

帰って来た時には確かにあったのに…驚いて辺りをキョロキョロ探すアイシェに、マホロアの瞳は弓形に細められ…クックッと喉を鳴らして笑い…

マホロア「フフ…ならイタズラするしか無いネ?」

アイシェ「えぇ…!?」

マホロア「ハロウィンはお菓子をあげないとイタズラされるんダヨ…仕方無いヨネェ?」

心底楽しそうにイタズラな笑みを浮かべ、マホロアはゆっくりとアイシェに近づく…

一方のアイシェは困った表情で後ずさりするが、程無くして壁に追い詰められて…壁とマホロアの体に挟まれる形で身動きが取れなくなってしまった。

アイシェ「マホ…ロア…!」

困った様子のアイシェの青い瞳は潤んでいて、マホロアの体をゾクゾクと興奮の電流が駆け巡る。

マホロア「フフッ…覚悟しろヨ、アイシェ?」

アイシェの手首を魔法陣で拘束し、優しく顎をクイッとして…

妖しい笑みとは裏腹に…アイシェの小さく震える唇に、甘い口づけを落とした。

To be continued…