小説「夢結ぶ星りんご」~お風呂でのイタズラ合戦~

しばらくして…アイシェがお風呂から上がって来た。

マホロア「アイシェ、よく温まったカイ?」

アイシェ「うん、それに薔薇の花びらが浮いててすごく良い香りだよ。」

タオルで髪を丁寧に拭きながら話すアイシェからは、確かにほんのりと甘い薔薇の香りが漂ってきて…彼女の頬も温まった事によって薔薇色に染まっている。

マホロア「ソレはヨカッタヨォ~ボクも入って来るネェ~!」

そう言ってタオルと着替えを持って浴室へ消えたマホロアを見送り、アイシェは鞄からドライヤーを取り出したが…

マルク「アイシェ、ボクが乾かしてやるのサ。」

アイシェ「え、いいのマルク?」

マルク「もちろんなのサ。」

アイシェ「ふふっ、ありがとう。」

嬉しそうに笑うと、アイシェはドライヤーを渡してソファにちょこんと座り…マルクは鉤爪でアイシェの髪を優しく掬うとドライヤーの温風を丁寧に当てて乾かし始めた。

マルク「熱くないのサ?」

アイシェ「うん、ちょうどいいよ。」

マルク「よかったのサ。」

和やかな雰囲気だが、マルクは乾かしつつニヤニヤとイタズラな笑みを浮かべている。

すると…

マホロア「ヒャアアァァァァァァーーーーーー!?」

浴室からマホロアの声にならない叫び声が聞こえてきた!

アイシェ「え、マホロア!?」

驚いたアイシェだが、マルクは全く気にする様子も無く乾かしている…

マルク「間違えて水でも出したんじゃねーの?」

キシシと笑いながら乾かしているマルクだが…浴室からバタバタと音が聞こえてきて…

マホロア「マルクゥゥゥゥゥゥゥーーーーー!!」

タオルで全身を包んだマホロアが、目をつり上げながらカンカンに怒ってやって来た!

アイシェ「マホロア、どうしたの!?」

マホロア「このクソピエロ、ボクがお風呂に浸かった瞬間に魔法で氷水に変えやがったヨォ!!」

アイシェ「えぇっ、そんな事したの!?」

驚くアイシェとガタガタと震えながら怒るマホロアだが、マルクは相変わらずドライヤーを止めずに乾かしながら口を開いて…

マルク「ボクは何もしてないのサ、ずっとここでアイシェの髪を乾かしてたんだからな。」

マホロア「遠隔魔法デやったダロ!バレないと思っタラ大間違いなんダヨ!!」

マルク「気づいたか…キシシ、いい反応だったのサ。」

そう言って意地悪な笑みを浮かべながら髪を乾かすマルクに、マホロアはビキビキしていて…

マホロア「このクソクソピエロ!!」

アイシェ「マホロア、落ち着いて…!」

そう言ってアイシェはそっとマホロアの頬に両手を添えると、マホロアはその温もりにうっとりしていて…

マホロア「ハァ~温かいヨォ…ありがトウ、アイシェ。」

アイシェ「どういたしまして。」

マルク「ほら、戻してやったからちゃんと浸かるのサ。」

マホロア「誰のせいだと思ってんダヨ!」

そう言って怒りつつもマホロアは戻って行き…

今度こそ温まって戻って来た頃には、ちょうどアイシェの髪を乾かし終えた所だった。

アイシェ「お帰りなさい、マホロア。」

マホロア「ただいま~アイシェ。」

そう言ってぎゅっとアイシェを抱きしめるマホロアからは、薔薇の香りと温もりを感じる。

アイシェ「ふふっ、マホロアもほかほかしてる。」

マルク「じゃあボクも入るのサー。」

アイシェ「うん、行ってらっしゃい。」

マルク「マホロア、2人きりだからって人ん家でヤるなよー。」

アイシェ「ま、マルク…!」

マホロア「流石にヤらネーヨ!」

頬を真っ赤に染める2人をイタズラな笑みで見ながら、マルクは浴室へと消えて行った。

その後、アイシェが今度は髪を梳かそうとブラシを出すと…

マホロア「アイシェ、ボクがやってアゲル。」

アイシェ「ふふっ、お願いします。」

嬉しそうにしつつ、アイシェは再びソファにちょこんと座ると…マホロアは彼女の髪を掬って丁寧にゆっくりと梳かし始めた。

マホロア「アイシェの髪はホントに柔らかくて綺麗ダネェ~、ずっと触っていたくなっチャウヨォ。」

アイシェ「ありがとう、マホロア。」

嬉しそうにはにかむアイシェに、マホロアはご機嫌で雲の夢を口ずさみながら時間をかけてじっくりと梳かしていく…

すると…

マルク「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

今度はマルクの叫び声が浴室から響いた!

アイシェ「マルク!?」

マホロア「全ク、煩いピエロダネェ~。」

髪を梳かしながらわざとらしく溜息を吐くマホロアだが、その目は弓形に細められていて…

バタバタと足音を響かせてマルクが出て来た!

マルク「おまっ…流石に沸騰させるのはどうかと思うのサ!」

アイシェ「えぇっ!?」

マホロア「エェ~ボクがそんな酷いコトするワケないジャン!ボタン間違えたんジャないノォ?」

マルク「浴槽の底にお前の魔法陣が見えたのサ!」

マホロア「クククッ、お返しダヨォ。」

アイシェ「マホロア…!」

意地悪な笑みを浮かべながら反撃が成功した事を喜ぶマホロアに、マルクもビキビキしていて…

マルク「風呂があんなにボコボコ沸騰してたら入れないのサ!」

マホロア「…ホラ、戻してやったカラ入りなヨ。」

マルク「……本当に戻したんだな?」

マホロア「こんなコトで嘘吐いてもしょうがネーダロ。」

アイシェ「もう…2人共やりすぎだよ。」

マホロア「先にやったのはマルクだモーン。」

アイシェ「確かにマルクが最初にしたのが悪いけど、やり返すのもダメだよマホロア。」

マホロア「ムゥ…!」

マルク「まぁ…ちょっとイタズラが過ぎたのサ。」

マホロア「アイシェに免じて許してヤルヨ…ボクもやり過ぎタヨ。」

珍しくお互いに謝り、マルクはその後すっかり元通りになった浴槽で温まり…

その後は3人で晩ご飯を作って食べて盛り上がった。

To be continued…