小説「夢結ぶ星りんご」~新年の食事会~

翌日…デデデ大王から食事会の招待状が届き、2人は出かける準備をしていた。

マホロアは舞踏会の時に着た衣装に身を包み、アイシェを待っていると…

アイシェ「お待たせ、マホロア。」

クリスマスに置かれていたプレゼント…その中に入っていたドレスを着ているアイシェは、髪もツインテールにして先を巻いておめかししていた。

マホロア「ワァ…よく似合ってるヨォ、アイシェ!」

袖やスカート部分の裾が黒いシースルー生地、首元は紺の生地の青いドレスで、首元とドレスの左右に小さな黄色いリボン、胸元と袖の部分にはパールの飾りが付いている

今までのドレスに比べて露出は少ないが、アイシェの美しさを引き立てる上品なドレスで…マホロアはこのドレスを送ってくれた「サンタさん」に心の底から感謝した。

アイシェ「ふふっ、ありがとうマホロア!」

少し照れつつも嬉しそうに笑うアイシェに、マホロアも嬉しそうに笑う

そして2人はコートを着て外へ出ると、マホロアが抱き上げてデデデ城へ向かった。

お城に到着すると、ワドルディから連絡を受けたバンワドが迎えに来てくれた

バンワド「アイシェ、マホロア、いらっしゃい!」

アイシェ「こんにちは、バンワドくん!」

マホロア「ミンナもう来てるのカナ?」

バンワド「メタナイトとタランザは来てるよ、後はカービィとマルクだけだね。」

アイシェ「もしかしたら、2人で一緒に来るのかな。」

マホロア「あの馬鹿ピエロが道草食わなければネェ~。」

そんな風に言うマホロアだが、耳はパタパタ揺れていて…楽しみにしているのが伝わってきたアイシェはクスッと笑ってしまう。

バンワドに部屋へ案内されると、いつもの大きな部屋でデデデとメタナイト、タランザが話をしていた。

デデデ「お~来たか!」

アイシェ「こんにちは大王さま!」

マホロア「食事会のご招待、アリガトウダヨォ!」

デデデ「やっぱ新年は、こうやってみんなで食った方がいいからな!」

メタナイト「全く…相変わらずの思いつきと行動力だ。」

タランザ「でも、そこが大王様の良い所でもあるのね。」

ほんの少しだけ溜息を吐くメタナイトと褒めるタランザに、デデデは頬杖をついてニカッと笑う。

すると…近くに来たアイシェとマホロアを見て更に嬉しそうに笑いながら口を開いた。

デデデ「それを着てくれたのか、よく似合ってるぞアイシェ!」

ところが、アイシェはキョトンとした表情で青い瞳をぱちぱちさせていて…

アイシェ「えっ、サンタさんからのプレゼントなのに…どうして知ってるの?」

初めて着たのにどうして知ってるのか疑問なアイシェ…実はサンタの正体はデデデ大王で、そのドレスをプレゼントしたのも彼なのだ。

デデデ「あっ…そ、それはだな…えーーと…な、何となーくそんな気がしただけなんだ!」

マホロア「(フフッ…大王は嘘が下手ダネェ~。)」

当然アイシェはそんな事は知らないので、デデデは大慌てで誤魔化していて…マホロアはそんな彼の様子を見てクククと笑う…

メタナイト「(墓穴を掘ったな…。)」

タランザ「(その言い訳は苦しいのね…。)」

心配しつつも、余計に事態を悪化させる恐れを懸念したメタナイトとタランザは黙って紅茶を飲んでいて…見かねたマホロアが口を開いた。

マホロア「アイシェ、きっと大王の直感だったんダヨォ。」

デデデ「そう!それなんだ!何となーく直感でそういうドレスを持ってるんじゃないかって思ったんだよ!」

アイシェ「直感で当てちゃうなんて、大王さますごい!」

デデデ「ま…まぁな、ガッハッハ!(危ねぇ~~~バレる所だったぜ……ありがとな、マホロア!)」

青い瞳をキラキラ輝かせて尊敬の目を向けるアイシェに、デデデは助け船を出してくれたマホロアに感謝しつつも得意げな様子で笑っていて、何とかその場をやり過ごしたのだった。

メタナイト「ん、アイシェ…何を持って来たのだ?」

タランザ「美味しそうな香りがするのね。」

アイシェ「あ、これはね…おせちを作ってきたの。」

そう言って、アイシェはおせちの箱をデデデに渡した。

デデデ「お、これは楽しみだ!ありがとな、アイシェ。」

アイシェ「ふふっ、どういたしまして。」

そう言ってデデデは頭を優しくも少し強めに撫でてくれて…いつもの事だがアイシェにはそれが嬉しくて、満面の笑みで返した。

それから程無くして…バンワドに連れられてカービィとマルクが入ってきた。

カービィ「もーマルクったら全然歩かないんだもん!」

マルク「お前が運んでくれたら歩くって言ったのサ。」

バンワド「もう…さっきからずっとこんな調子なんだから…。」

呆れるバンワドはさっさと席に着いてしまったが、カービィとマルクはまだ歩きながら揉めていて…

カービィ「マルクが楽したいだけでしょー!それに翼があるんだから飛べばいいのに!」

マルク「ボクは1日に使う魔力が限られてるのサ、ノヴァの件でお前に負ける前までは無限に使えてたんだけどな…。」

カービィ「えぇ…そうなの?」

仕方無かった事とはいえ、少しだけ罪悪感に襲われたカービィだったが…真顔でカービィの前に来たマルクは、顔を近づけるとじっと見つめた後にニタァ~と笑って…

マルク「嘘なのサ。」

カービィ「あぁーーーまた嘘吐いた!」

マルク「おっほっほっほっほ!お前も揶揄い甲斐があるからな、許してちょーよ。」

カービィ「もーーーー!!」

爪先立ちしながら両手をブンブン振って抗議するカービィと、それを嬉しそうに笑うマルク…2人の関係は相変わらずの様だ。

デデデ「やれやれ…あいつらも変わんねぇな。」

メタナイト「悪さをしないだけ良いだろう。」

タランザ「イタズラの度が過ぎる事があるのだけは勘弁して欲しいのね。」

マホロア「変わらずカービィにちょっかい出すなんテ…学習能力の無いピエロダヨォ。こうなっタラ、カービィの為にモ薬を開発シテ、この馬鹿がホントに1日に使える魔力を制限してやらないとネェ?」

アイシェ「ま、マホロア…!」

頬杖をつきながら、わざとらしい溜息を吐いて馬鹿にするマホロアだが…マルクは全く気にする様子は無い。

マルク「頭の中身もタマゴと一緒でツルツルなマホロアより、ずーーーっと頭が良いのサ。やれるもんならやってみればいいのサ。」

マホロア「ハァ~~?寝言は寝て言えっテノ。」

マルク「ボクは寝言じゃなくて事実を言ってるのサ。」

アイシェ「もう、やめて2人共…!」

間に入ったアイシェが止めに入り、漸く2人も席に着いた。

デデデ「よし、みんな揃ったな…おーい、持って来てくれ!」

そう言うと、次々とワドルディ達が料理を運んできて…楽しい食事会が始まった。

魚の煮付けやビーフウェリントン、様々な料理が並ぶ中で一際目を輝かせて見ているのはカービィだ。

カービィ「わぁぁ~このお魚美味しい!それにこのお肉も!」

デデデ「アイシェが作ってきてくれたおせちもあるぜ。」

そう言うと、ワドルディが丁寧に包みを開けて蓋を開いた。

カービィ「わぁ~アイシェのおせちもすっごく美味しそう!」

メタナイト「これは立派なおせちだな!」

タランザ「どれから食べるか迷ってしまうのね!」

バンワド「早速食べていい、アイシェ?」

アイシェ「うん、どうぞ。」

バンワド「それじゃあ早速…頂きます!」

昆布巻きを丁寧にお皿に取り、一口サイズにして食べるバンワドを見つつ、デデデ達もお皿に取って口にしていく。

アイシェ「どうかな?」

ドキドキしつつ聞くアイシェ…するとバンワドが口を開いた。

バンワド「すっごく美味しいよ!」

アイシェ「よかった!」

マルク「ボクは昨日、一足早く貰ったのサ。」

カービィ「えぇーーマルク狡いよ!」

マルク「キシシ、のんびりしてるとお前の分も貰うのサ?」

カービィ「絶対ダメー!」

そう言うと、カービィは手でしっかりガードしつつも伊達巻きを頬張った。

マホロア「フフッ、カービィは相変わらずダネェ。」

そんな事を言いつつも、マホロアも栗きんとんをもぐもぐ食べている。

メタナイト「ん、黒豆も程よい甘さでとても美味い。」

タランザ「煮物もよく味が染みてるのね。」

マホロア「当然ダロ~アイシェが心を込めて作ったんダカラ!」

そう話すマホロアは得意げで、メタナイトとタランザも思わず笑ってしまう。

ふと…マホロアの頭の中で1つの出来事が思い出された。

それは自分がこの世界に…ポップスターに戻って来てカービィ達と再会、アイシェに想いを伝えて恋人同士になった日の事。

あの時とは状況も変わりタランザも居るが、こうやってみんなで他愛の無い話をしながら仲良くご飯を食べる…今となってはそれが「日常」だが、かつての自分にとってそれは「非日常」で…

隣で食事をするアイシェを見ると、視線に気づいた彼女が自分を見て優しく笑う。

アイシェ「ふふっ、どうぞ。」

そう言ってアイシェは、お肉を小さく切ったフォークをマホロアの口に運ぶ。

何て温かく大切な事なんだろう…マホロアは今の幸せを噛みしめながら、アイシェが食べさせてくれたお肉を食べると…幸せな味が広がった。

こうして…新年の食事会は楽しく穏やかに過ぎていくのだった。

To be continued…