小説「星夢煌めくPomme d’amour」(スタアラ編)~仲直りと迫り来る危機~

大きな砂煙が舞う中、バラバラに砕けた茨が散乱し、薔薇の花弁がヒラヒラと辺りを舞い…

その中で光るマルクの紫の瞳は鋭く、狂気的な笑い声が響き渡る

タランザ「ま…マルク…。」

スージー「貴方、容赦ないのね…。」

ドロッチェ「敵に回したくない相手だ…。」

メタナイト「(相当怒りを溜めていたのだな…。)」

驚きを隠せないメタナイト達だが、振り返ったマルクは気が済んだ様子で、表情も落ち着きを取り戻していた。

マルク「何ボーッとしてるのサ、さっさとカービィ達と合流するのサ。」

メタナイト「あ…あぁ、行こう。」

まだ少し戸惑いつつも、マルクと共に宇宙へ飛び立つと…カービィ達と合流した。

カービィ「みんな、バリアを解除出来たんだね。」

マルク「楽勝なのサ。」

タランザ「いよいよ乗り込むのね。」

マホロア「ミンナが大丈夫ナラ、すぐ行こうヨ。」

そう言ったマホロアだが、カービィが手をぎゅっと握った。

カービィ「……待ってマホロア、このまま乗り込むのは危険だから、少しだけ休んでいこう。」

マホロア「カービィ………分かっタ。」

そう話すカービィにはある思惑があった…自分をじっと見つめる彼の表情からそれを汲み取ったマホロアは、一旦ローアを呼んで皆を中へと招き入れた。

しばしの休憩の間、食事や作戦を練るカービィ達…

その中で、マホロアはマルクを半ば強引に自分の部屋に連れて来た。

マルク「いきなり何なのサ!」

自分に対してまだ苛立ちを見せるマルクに、マホロアはそっと近づいて…

マホロア「…傷を見せテ。」

マルク「そんなの無いの…」

マホロア「ボクを騙せると思ってるのカイ?」

そう言うと、マホロアはマルクの煌めきの翼をグイッと引っ張った。

すると、魔法が解けて…そこにはボロボロの鉤爪と傷だらけの翼が露わに…

マルク「っ………!!」

マホロア「ホラ、こんなに酷い怪我してるジャン。」

マルク「ぐっ…うっ…!」

マホロア「また岩を何度も引っ掻いたんダロ、悔しいコトがあるとすぐヤル……ホント、キミは昔カラその癖は抜けないネェ。」

呆れた様子で言いつつも、マホロアは呪文を唱えて怪我を治していく。

しかしマルクはマホロアを睨んでいて…

マルク「お前の情けなんかいらないのサ!」

そう言い放ち、マホロアの手を振り払った。

マホロア「マルク、ボクは…」

マルク「アイシェを守れなかった事くらい分かってるんだよ!お前の助けが無くたって構わないのサ、だからボクの事はほっとけ…」

マホロア「喧嘩しに来たんジャネーンダヨ!」

その言葉にマルクはピタッと硬直して…紫の瞳は驚きの感情でマホロアを見ている

マルク「なっ……!?」

マホロア「…ローアの声が聞こえる様になったんダ…それデ教えて貰ったヨ……キミもタランザもアイシェを命懸けで守ってくれたっテネ…なのにボクはあんな言い方をしテ…悪かったと思ってるヨ。」

マルク「マホロア…お前…。」

マホロア「ケド、今はこうシテ喧嘩してる場合じゃナイ…アイシェの為にも協力していきタイんダ。」

マルク「……………。」

マホロア「お願いダヨ、マルク…。」

マルク「………虚言の魔術師も、すっかり丸くなったのサ。」

マホロア「エッ…?」

マルク「ほら、他も治せよ…アイシェの為にも協力してやるのサ。」

そう話しながら翼を預けたマルクの表情はいつも通りで、何ならほんの少し意地悪な笑みを浮かべていて…元通りに戻れた安心から、自然とマホロアの表情も緩む

マホロア「悪態吐いてんジャネーヨ馬鹿ピエロ、こんな無茶しやがっテ。」

そう言いつつも、マホロアはマルクの怪我を治していった。

その後、2人が部屋から出てきて操縦室へ戻ると…カービィ達が準備を終えて待っていた

カービィ「無事に仲直り出来たんだね。」

マホロア「ウン、ありがトウ…カービィ。」

カービィ「どういたしまして。」

そう話す2人はお互いに笑い、手をぎゅっと握り合う

マルク「行くのサ、アイシェを助けに。」

マホロア「ウン、必ず助け出すヨ。」

改めて決意をすると、カービィ達はバリアが解けた星へと向かった。

同じ頃…アイシェが閉じ込められている部屋では、ビートとザン・パルルティザーヌが来たが…

アイシェ「私を帰してくれるの…?」

パルル「あぁ、アイシェをあの者達に渡してそのまま帰って貰える様に説得しよう。…とにかく一刻も早くここを出ねばならない。」

ビート「パルル様、一体どうされたのですか…?」

パルル「…この行動はハイネス様の命に背く事にはなるが、このままだとあの御方はアイシェを……それだけは避けたいのだ。」

アイシェ「パルル…?」

パルル「アイシェ、お前は不思議な娘だ…我々を癒やし、心の温もりを思い出させてくれた。」

そう話しながら、頬を何度も優しく撫でる彼女は寂しげな笑みを浮かべていて、アイシェは心がぎゅっと苦しくなった…

アイシェ「もし…もし私が帰ったらパルルは…どうなってしまうの…?」

パルル「…何も気にするなアイシェ、早速だが道を案内しよう。」

そう言ってアイシェを連れて部屋を出ようとしたその時!

バンッ!!

やや乱暴に扉が開き、白い衣装に身を包んだ人物が入って来た!

ビート「は…ハイネス様!!」

アイシェ「ハイ…ネス……貴方が……!」

驚を隠せないアイシェに対し、ビートとザン・パルルティザーヌはその場に跪いている…。

ハイネス「…あぁ~貴女がぁ~強い魔力を持つ娘ですねぇ~?」

アイシェ「っ……!」

ローブの中から見える瞳はギョロリと動き、アイシェは恐怖で震える…

ハイネス「ところでぇ~パルル、貴女ぁ…この娘を逃がそうとしましたねぇ~?」

パルル「っ……恐れながらハイネス様、この娘は…」

バシッ!!

言い終わる前にハイネスは頬を叩き、彼女はその衝撃で床に叩き付けられた!

アイシェ「パルル!!」

ハイネス「ワタシの言う事がぁ~聞けない様ですねぇ~もう一度分からせてあげますよぉ~。」

そう言うと、ハイネスは呪文を唱えて…そこから繰り出される炎や氷、雷でザン・パルルティザーヌを痛めつける!

パルル「ぐっあぁぁ……あぁぁぁぁっ…!!」

アイシェ「きゃあぁぁぁ……!!」

ビート「お止め下さいハイネス様…!!」

悲痛な声を上げるザン・パルルティザーヌに悲鳴を上げるアイシェ…ビートはハイネスを止めようとしたが…

ハイネス「貴方如きがワタシに指図するのですかぁ~?」

バシッ!

ハイネスは腕を振り、ビートは吹き飛ばされて壁に叩きつけられ気を失った。

アイシェ「ビート!!」

パルル「う…ぐぅ…ハイ…ネ…ス…様…!」

ハイネス「まだ終わっていませんよぉ〜。」

ローブ越しに光る不気味な瞳が、ギョロギョロと動きながら振り上げた腕と共に再び彼女へと向けられたが…

アイシェ「いやぁぁぁ…やめて…お願い!!」

ハイネスの目の前で倒れているザン・パルルティザーヌを、アイシェは覆い被さる様に庇った。

ハイネス「こんな木偶共をぉ~庇うのですかぁ~?」

アイシェ「パルルもビートも大切な友達だよ…それなのに…!」

パルル「あ…アイシェ…!」

ハイネス「下らない者はぁ~要らないのですよぉ~。」

アイシェ「そんな事ないっ!!」

ハイネス「どうやら貴女もぉ~分からせないとですねぇ~?」

アイシェ「っ………!!」

そう言ってハイネスが手を振り上げたその時!

パアァァァ…アイシェの体が強く輝き、ザン・パルルティザーヌの傷がみるみる癒えていく…

パルル「アイシェ…何を…!?」

ハイネス「おぉぉ…何と強いぃ…!」

光はじきに消え、ザン・パルルティザーヌは完全に傷が消えていたが…そこには息を切らすアイシェの姿が…

パルル「アイシェ…まさか魔力を使って…!?」

アイシェ「はぁ……はぁ………。」

苦しそうに息を切らすアイシェは返事が出来ずにいたが…ハイネスが突然抱き上げた。

ハイネス「素晴らしい魔力ですねぇ…貴女こそ相応しいぃ~。」

アイシェ「はぁ………はぁ……や…だ……。」

ハイネス「少しの間ぁ…眠ってて貰いますよぉ~。」

そう言うと、ハイネスはアイシェの目の前に小さな魔法陣をかざし…小さな光がキラキラと降りかかると、強い眠気に襲われて…

アイシェの青い瞳は、ゆっくりと閉じられた。

パルル「ハイネス様…!」

彼は返事をしない代わりに、ザン・パルルティザーヌの前に魔法陣を出し…その直後、彼女の瞳は一瞬だけ怪しく輝いた。

ハイネス「パルル、そこの裏切り者を始末して下さいぃ~。」

パルル「………ジャイ。」

ハイネスはアイシェを抱き上げたまま部屋を出て行き、ザン・パルルティザーヌはビートを拾い上げて部屋を後にした。

To be continued…