小説「Amore eterno」最終話~海へ戻る王女~

船がミラージュアイランドへ向かう中、ガーラスはアクアに対してこれまでの行動を詫び、ガーリルの過去を話す。

そして夜、遂にミラージュアイランドへ帰還した一行は一晩を船で過ごし明日の朝船を降りる事を決意し就寝する。

しかしスマラがアクアを呼び止め、その想いを伝え始める…。

~海へ戻る王女~

スマラ「アクア…俺はお前に隠している事がある。でも…今はそれを話す事が出来ない。その隠し事のせいで気持ちをはっきりと伝える事も今は叶わない…でもアクアを想う気持ちは誰にも負けてないつもりだ!今は無理だけど…解決したらその時は改めて、本当の気持ちを伝えたい…だから待ってて欲しい。」

アクア「…貴方の気持ちは伝わったわ、貴方が話してくれる時が訪れるまで…私はいつまでも待ってる。」

スマラ「ありがとう、アクア。」

アクア「どういたしまして。」

呪われている身のせいで身分を明かす事もはっきり好きとも言わなかったスマラ。しかし気持ちはしっかりとアクアに伝わっていて…優しい笑みと共にずっと待っていると答えてくれた事が、スマラはとても嬉しかった。

そして…次の日の朝。スノウ一族の王宮護衛騎士隊長ジルヴァーと数名の騎士が迎えに来ていた

ジルヴァー「皆様、お帰りなさいませ!ご無事に戻られて本当に良かった…!」

スノウ「心配かけたな、だがもう大丈夫だ。話す事はたくさんあるが、ひとまず皆王宮へ行こう。」

船から降りた一行はスノウの王宮へと向かい、皆にこれまでの事を全て話した。

ジルヴァー「では、ガーリル様は仇討ちの為に…。」

ガーリル「その為とはいえ…本当に迷惑をかけてしまった…すまない。」

ジルヴァー「いいえ…スノウ様はいつもガーリル様の身を案じておられました、ご無事で良かったです。」

昔と変わらず接してくれるジルヴァーに対してガーリルは安堵の笑みを浮かべ、しばらく話しお茶を飲んだ後…別れがやって来た。

スノウ「アクア、元気でな。」

アクア「スノウ…スノウっ!!」

スノウ「いつでも来ていいんだからな、ここはお前のもう1つの故郷なんだから。」

アクア「うん、ありがとうスノウ…もう1人の…お父様。」

ガーリル「アクア、少しいいか?」

アクア「うん。」

帰る前にガーリルはアクアを部屋から連れ出し…

ガーリル「あの時の返事を、聞かせて欲しい。」

廊下から咲き誇る花を見ながら彼女に答えを求めた。

アクア「…ごめんなさい、たくさん悩んだけど…私は気持ちに応える事は出来ない。ガーリルの事は好き、でも…それは恋じゃないの…私には既に想う方がいます。だから…本当にごめんなさい…ごめんなさいガーリル。」

ガーリル「そうか…ありがとうアクア、お前がたくさん悩んで出した結果だ。だが1つだけ言うとしたら…アクアに想われている男が羨ましい、そして悔しいな。」

アクア「ガーリル…私達これからも、ずっと今まで通りでいられる?」

ガーリル「あぁ、もちろんだ。だが…最後に1つだけ、俺の願いを聞いてくれ。」

アクア「えぇ、私に出来る事なら。」

ガーリル「ありがとう…ならば最後にもう一度だけ、お前を愛する言葉を言わせてくれ。」

アクア「はい。」

彼女が返事をすると、ガーリルはアクアを抱き寄せ強く抱きしめた。

そして…何度も耳元で囁いた。

ガーリル「愛している、ずっと愛している…アクア。」

少ししてガーリルはアクアの元から離れ、皆の待つ部屋へと戻り、ガーラスや王家親衛隊員と共に帰って行った。

ラクト「それでは私達も行こう。」

アルマ「皆様、お元気で。」

ペルラ「今度会う時は、ロゼも俺達に懐いてくれると良いんだが…。」

スマラ「アクア…。」

アクア「また、会いに行って良い?」

スマラ「もちろん、いつでも待ってるよ。」

ラクト達も帰って行き…

ブルース「俺達も行こう。」

マリン「えぇ、ブルース。」

アクア「スノウ…元気でね!」

スノウ「あぁ、お前も元気でな!」

ブルース「では行くぞ!」

3人はワニの姿に戻り、海に潜って行き…スノウはしばらくその場を動かなかった。

ジルヴァー「行ってしまわれましたね。」

スノウ「あぁ、でもまたすぐ会えるさ。」

暖かい想いを胸に、スノウはジルヴァーと共に王宮へ戻り…

故郷へ戻る道中のラクト達は…

ラクト「想いを伝えられたのか、スマラ?」

スマラ「はっきりとじゃないけど…でも、いつか呪いが解けたら必ず伝えるんだ。アクアはずっと待っていてくれると言ってくれた。だから…大丈夫。」

いつの日か…彼女に想いを伝えるのを待ち焦がれながら、スマラは優しく笑った。

一方…

ガーラス「アクア様は、他に想い人がいらっしゃったのですか…。」

ガーリル「あそこまで強い決意を見せられたらな…全く感服した。ガーラス、今夜は付き合え…久々にお前と酒を酌み交わしたい。」

ガーラス「仰せの通りに、我が主君ガーリル様。」

一方ブルース達は…。

アクア「お父様、お母様…私、本当に帰っていいの?」

マリン「何を言ってるのアクア、あなたの故郷よ。いいに決まってるじゃない。」

アクア「私は海での生活を殆ど覚えて無いわ…それに私の事みんな覚えてくれてるのかも…私の事も受け入れてくれるのかも分からなくて…それが不安なの…。」

ブルース「大丈夫だアクア。お前が生まれた時、どんなに皆が喜び祝福してくれた事か。お前は俺達の大切な娘だ。さぁ、一緒に帰ろう。私達の王宮へ、皆の元へ。」

マリン「皆、貴女を待っているわ。」

アクア「…うん、ありがとうお父様、お母様。」

両親に連れられてアクアは生まれ故郷、ラグシー一族の国へ戻った。

迎えてくれたのは…王家騎士隊長シャウア率いる王家騎士達。

皆アクアの事を暖かく迎え、王族帰還の知らせはすぐに国中に広まった。

そして…民の歓喜の声が上がる中、海色の髪をおろし白と蒼のドレスに身を包み、

ゆっくりと王宮の外へと向かう王女アクアの姿があった。

こうして…ミラージュアイランドは65年の月日を経て、平和を取り戻したのだった。

~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

オリジナル小説「Amore eterno」はこれにて完結しました!

もう10年以上前に完結済みではあったんですが、以前パソコンを変えた事で2018年を最後になかなか再開出来ずで…漸く残り2話分が再開となりました。

しかも長らくタイトルすら無い状態だったのですが…この再開を機にちゃんと付けようと決意して、この名前にしました!

「Amore eterno」(アモーレ エテルノ)イタリア語で「永遠の愛」という意味です。

実はこの物語は二部制となっており、今回は一部が完結となりましたが、次回からは二部が始まりますので、もしよろしければまたお付き合い頂けると幸いです!

それでは、ここまで読んで頂きありがとうございました!

2024.9.1 海賊ダイル