小説「星夢煌めくPomme d’amour」(スタアラ編)~青薔薇の妖精~

バンワド「ハイネス、元の姿に戻ってる!」

カービィ「どうやって戻ったの?」

パルル「お前達が飛び去った後…小さなフレンズハートがハイネス様に落ちて、元に戻られたのだ。」

そう話すザン・パルルティザーヌの表情は穏やかで、嬉しそうにしているのが伝わって来る。

するとハイネスは、何も言わずにゆっくりとマホロアの元へ向かい…眠るアイシェをじっと見つめていると、ゆっくりと目を覚ました。

アイシェ「ハイ…ネス…。」

ハイネス「ンン……コレはぁ…あの時のワタシが使ったぁ魔力の影響が強過ぎたみたいですねぇ…。」

マホロア「…元に戻せるんダナ?」

ハイネス「これくらいぃ…簡単ですよぉ。」

アイシェを抱きしめる手に力を込め、限界まで気を張り巡らしながらハイネスがおかしな挙動をしないか見張るマホロアの黄色い瞳は鋭く、彼に対する殺意に近い怒りの感情が見えていて…

それはマホロアだけでは無く、マルクの紫の瞳とタランザの白い瞳も鋭く光りながらハイネスをしっかりと捉え、強い魔力の気を張り巡らせていて、カービィ達もアイシェとマホロアを守る様に傍でじっと見つめながら見守っている。

しかしハイネスは全く気にする素振りも無く、再び眠ってしまったアイシェだけを見つめ…彼女のおでこにそっと手を当てると…小さく何かを呟き始めた。

すると…ジャマハルダマークの入った魔法陣が現れ、アイシェの体から小さな光が少しずつ抜けて行く

しばらくして、光がハイネスの魔法陣に吸収されて消えると…

アイシェ「んっ…。」

小さく声を漏らして、アイシェがゆっくりと目を開けたが…その青い瞳はしっかりと開いていて…マホロアの黄色い瞳を映している。

マホロア「アイシェ…眠くナイ?」

アイシェ「うん、全然…全然眠くないよ。」

そう言って嬉しそうに笑うアイシェは、以前の様な元気さを取り戻していて…マホロアも嬉しさから笑みが零れる。

マホロア「ヨカッタ…ヨカッタヨォ、アイシェ!!」

そう言うと、マホロアはアイシェを思いっきり抱きしめた

アイシェ「ふふっ…マホロア、痛い…。」

マホロア「アッ…ゴメン!」

慌てて力を抜いたマホロアだが、お互いに笑っていて…それを見たカービィ達にも安堵の笑顔が浮かぶ。

カービィ「よかったね、アイシェ!」

バンワド「もう眠り続ける心配は、無くなったんだね!」

デデデ「これで一件落着だな。」

メタナイト「あぁ、我々も安心した。」

マルク「これでまた、アイシェと遊べるのサ!」

タランザ「まずは体の回復が先なの、元気になったらまたみんなでお茶したいのね。」

アイシェが元に戻った事を喜ぶ一行、そんな中でハイネスはアイシェをじっと見つめ…

ハイネス「これでぇ、大丈夫ですよぉ。」

そう言うと、ハイネスはそっとアイシェから離れた。

アイシェ「ありがとう……ううん、えっと…ジャマ…カッシャ、ハイネス。」

ハイネス「ンン…何故ジャマハルダ語を話せるのですかぁ?」

慣れないジャマハルダ語でアイシェがハイネスにお礼を伝えると、少し驚いた様子を見せた

アイシェ「キッスが教えてくれたの、ジャマカッシャ…感謝を伝える言葉だって。」

ハイネス「そうですかぁ…とにかく、これでワタシの役目は終わりですぅ。」

マホロア「…ココで消してヤロウと思ってたケド、アイシェに免じテ今回ダケは見逃してヤル…ケド次は無いカラナ!!」

そう言うマホロアの瞳は殺意を隠す事無くハイネスの瞳を捉えていて…そんな彼の様子にハイネスは、大きな鼻をフンと小さく鳴らした。

ハイネス「その子にもう酷い事はぁしませんよぉ…用が済んだならぁ…ここを立ち去りなさいぃ。」

マホロア「…言われなくテモそうスルヨ。」

相変わらず気を張り巡らせて、マホロアはアイシェを抱き上げたまま歩き始めたが…

アイシェ「パルル…キッス…ルージュ…。」

名残惜しそうなアイシェが、3人の名前を呼んだ。

すると3人はそっとアイシェに近づき、ザン・パルルティザーヌは彼女の手を優しく取った。

パルル「アイシェ…ジャマカッシャ。」

ルージュ「アイシェやカービィ達がアタシ達を…ハイネス様を救ってくれたのよ。」

キッス「また会いましょうアイシェ…今度は「大切な友達」として。」

そう言いながら柔らかい笑みを浮かべる3人に、アイシェも嬉しそうに笑う

アイシェ「うん、また会える日を楽しみにしてるよパルル、ルージュ、キッス。」

3人と握手をすると、アイシェはマホロアに連れられてカービィ達と共にローアに乗り込み…祭壇を飛び立ってポップスターへと帰って行った。

パルル「(アイシェ、我らの大切な友よ…お前に絶えず幸せが訪れる様に願っている。)」

去って行ったカービィ達を見送った4人の瞳はキラキラと輝き…そこにはずっと探し求めていた「希望」が満ちていた。

その後…ポップスターに戻るとデデデ城でアイシェが元に戻ったお祝いをして、2人がローアに戻ったのは夜だった

マホロアとアイシェはお風呂に入った後、ソファでホットミルクを飲みながら寛ぎ…

マホロア「ハァ…やっと…やっといつもの日常が戻ったヨォ…。」

ホットミルクを飲んで安堵の溜息を吐くマホロアに、アイシェも一口飲んでそっと彼に体を預けた。

アイシェ「マホロア…私、不思議な感じなの。」

マホロア「エッ?」

アイシェ「いつもの平和に戻った安心はあるんだけど、体の中で不思議な力が巡るのを感じる。」

マホロア「ソレは、アイシェの魔力ダネ。」

アイシェ「これが私の魔力…。」

マホロア「明日こそ魔力を調べヨウネ、暴走しチャウと危険ダシ。」

アイシェ「うん。」

2人でホットミルクを飲み干すと、その日はゆっくりと眠りにつき…

翌日、マホロアはアイシェの翼から体までじっくりと調べ…真剣な表情で、ゆっくりと口を開いた。

マホロア「前にスージーが、アイシェは妖精族に近いっテ言ってたケド……今度は「妖精族として覚醒」したと言えばイイノカナ。」

アイシェ「妖精族として覚醒?」

マホロア「星誕ニルとの戦いで魔力を解放シテ一度命を落としタ…そして息を吹き返したアノ時、アイシェは本格的に「妖精」とシテ力が目覚めたみたいダネ。」

アイシェ「妖精…という事は、リボンちゃんやフロラルドの天空の民と同じ存在という事になるの…?」

マホロア「そうなるネ、寧ろ天空の民に近いのカモ。」

アイシェ「私もお花の妖精なの?」

マホロア「ウン、アイシェは「青薔薇の妖精」なんダ。」

アイシェ「青薔薇の妖精…どんな事が出来るの?」

マホロア「アイシェは「癒やしの力」を持っていて、傷や心を癒す力を持つんダケド…すごく力が強いせいデ、感情に影響されるト暴走しチャウ傾向があるみたいダヨ。」

アイシェ「そう言えば…ハイネスに催眠術をかけられる直前…パルルとビートを助けようとした時に無自覚に魔力を使っちゃって…その後はすごく息が切れちゃって体が動かなかったの。」

マホロア「それナラ…魔力が暴走しない様ニ、ボクが魔術デ抑えるのが一番イイネ。」

アイシェ「でも…マホロアに負担がかかっちゃうんじゃ…?」

心配するアイシェだが、マホロアは優しい笑みを浮かべながら頭を撫でてくれて…

マホロア「ボクは大丈夫ダヨ、チョー強い魔術師ダカラネェ。」

アイシェ「ふふっ…うん、そうだね。」

得意気な様子で言うマホロアに、アイシェは思わず笑ってしまったが…その言葉に偽りが無い事も分かっていて、安心感に包まれた。

マホロア「早速その為の準備に入るケド……アイシェ?」

アイシェ「どうしたの?」

少し心配な表情をしたマホロアがじっと見ていて…アイシェは青い瞳をぱちぱちさせている。

マホロア「ソノ…コレからするコトは、所謂「契約」になるんダヨネ…。」

アイシェ「契約?」

マホロア「ボクとアイシェが契約をするコトによって契約の印を作り出しテ、刻印するんダ。」

アイシェ「刻印…私の体のどこかに入れるの?」

マホロア「ウウン、そうジャないケド……契約って響きが嫌カナ…って思ったノ…。」

目を伏せて少し眉間に皺を寄せているマホロアに、その心境を察したアイシェがそっと手を握った。

アイシェ「嫌じゃないよ、だってマホロアとの「大切な約束」だもの。」

マホロア「アイシェ…!」

アイシェ「形では契約だとしても、マホロアと私の約束だから何も怖くないよ。」

マホロア「アイシェ…ありがトウ…!」

安心したマホロアはアイシェをぎゅっと抱きしめ、アイシェも嬉しそうに笑いつつそっと抱き返した。

To be continued…