抱き合っていた2人だが…マホロアがそっと離れてマフラーを少し下げると、アイシェに優しくキスをした。
アイシェ「マホロア…。」
マホロア「ボクと……契約という名の約束をシテくれるカイ、アイシェ?」
アイシェ「うん、でも契約するなら何か条件が必要だよね。」
マホロア「エッ?」
アイシェ「ずっと前にマルクが魔法のお話をしてくれた時に教えてくれたの、契約魔法は「その人の一番大切な物を捧げる」って。」
マホロア「マルクの奴、何てモン教えてるんダヨ……とはいえ、間違ってもいないケドネ。」
アイシェ「どうしよう…一番大切な物、何がいいかな。」
胸に手を当てて、きゅっと口元を結んで考えているアイシェだが…
一生懸命考えているその姿が可愛くて愛おしくて…
マホロア「…フフッ…アハハハハッ!」
彼女に対する愛情が溢れてきたマホロアは、思わず笑ってしまう
アイシェ「えっ…マホロア?」
マホロア「フフッ…アイシェが可愛くテ…。」
アイシェ「もう、一生懸命考えてるのに…!」
マホロア「ゴメンヨ、ケド…そうダネェ…。」
そう言うと、マホロアはアイシェの顔をじっと覗き込み…大きな黄色い瞳は青い瞳をがっちり掴んで離さず…アイシェの頬は真っ赤に染まる。
アイシェ「マホ…ロア…。」
マホロア「ボクとの契約に必要ナノは1つダケ……アイシェ、キミの愛ダヨ。」
アイシェ「私の愛…?」
マホロア「そう、アイシェの愛をボクだけにずっと向けていテ。」
それは即ち、彼女の人生そのものを契約とする意味でもある…端から見たら物騒な内容だが、マホロアをずっと愛し、共に生きていくと決めているアイシェにとって、それはとても幸せに感じる事で…
優しい声でそう囁くマホロアの頬も赤く染まり、頬に添えられた両手は手袋越しでも温かさを感じて…彼の手にそっと手を添えると、優しい笑みと共にアイシェはゆっくりと頷いた。
アイシェ「うん、私の愛はずっと…マホロアだけのものだよ。」
マホロア「ありがトウ、アイシェ…ボクすごく嬉しいヨォ。」
アイシェ「どういたしまして、私も嬉しいよ。」
お互いに優しく笑い合い、再びぎゅっと抱きしめ合うと準備を始め…
マホロア「それジャア、行くヨ。」
アイシェ「うん。」
マホロアが目を閉じ、気を集中させて魔法陣を出すと…アイシェの体から小さな光が少しずつ出てきた。
その光は徐々に1つの大きな光となり、眩く輝きながらマホロアの魔法陣を模した紋章になり…
マホロア「後はコレをココに刻んデ…。」
そう言うと、マホロアはアイシェの通信機チャームを開いて呪文を唱え…蓋の裏に魔術で紋章を刻んだ。
アイシェ「…何も変化は無いよ?」
マホロア「体感的にはネ、ケド魔力は大きく抑えられてるハズダヨ。」
そう言ってマホロアが手を出すと、そこからは紋章と共にキラキラと輝く光が現れた。
アイシェ「これが、抑えられている分の魔力?」
マホロア「ウン、アイシェの魔力が暴走しない様ニ預かっテル…マァ、聞こえは悪いけど契約デ縛っテル状態ダネ。」
アイシェ「残った魔力が暴走する心配は無いのかな。」
マホロア「それ位の魔力ナラ、影響は無いヨ。」
アイシェ「よかった、ありがとうマホロア。」
マホロア「どういたしましテ。」
アイシェ「あっ、妖精族って事は…。」
そう言ってアイシェは目を閉じて気を集中させると、翼が現れた。
マホロア「何するノ、アイシェ?」
アイシェ「翼で私も飛べるよね。」
マホロア「エッ…アイシェそれハ…」
アイシェ「それっ!」
ベッドの上に立ち、思いっきり飛び降りたが…
マホロア「ワーーーー危ないヨォ!」
アイシェ「きゃあっ!?」
翼で飛べる事は無く…マホロアが慌ててアイシェを受け止めた。
マホロア「フゥ…アイシェ、魔力を得たカラっテ、いきなり飛べるワケジャないんダヨ。」
アイシェ「えぇ…そうなの?」
マホロア「アイシェはまだ妖精とシテ覚醒したばかりデ…要するに赤ちゃんみたいなモノなんダヨ、コレからゆっくり馴らして行かないト。」
アイシェ「そうなんだね…。」
青い耳をペタンと垂らしてしょんぼりしてしまったアイシェだが、マホロアは頭を優しく撫でるとそのまま抱き上げた。
マホロア「…いつか飛べる様になったとシテモ、ボクはアイシェをこうシテ抱っこして飛べる方が楽しくてイイヨォ。」
そう言ってマホロアが頬ずりをしてくる度に、彼の柔らかい頬のプニプニした感触が心地良い
アイシェ「ふふっ、マホロアぁ…。」
マホロア「フフフッ。」
こうして…ポップスターの危機は救われ、今度こそ平和が訪れた。
その後もアイシェは翼を出してはちょっとずつ浮かぶ練習をしていて…その甲斐あってか、ほんの少しだけ浮く事が出来る様になった。
アイシェ「んっ…今日はこれくらいにしとこうかな…。」
翼を出して浮かぶのにも魔力を消費する様で、アイシェは少し疲れた様子でクッションにぽふっと座り込んだ。
すると…それをソファで座って見ていたマルクが楽しそうに笑う
マルク「キシシ、まだ飛べないのサ?」
アイシェ「マホロアが、私はまだ妖精としては赤ちゃんみたいなものだって言ってたの…きっとこれから飛べる様になるよ。」
マルク「体は大人に近いのに、中身は赤ちゃんとか意味分かんねーのサ。」
アイシェ「中身じゃないよ、妖精として赤ちゃんなの。」
マルク「キシシ、赤ちゃんなアイシェは無理しない方がイイのサ。」
アイシェ「私は赤ちゃんじゃないもん。」
マルク「じゃあお子様なのサ?」
アイシェ「お子様でもないもん!」
マルク「おっほっほっほ、やっぱりアイシェは揶揄い甲斐があるのサ!」
アイシェ「もーマルクの意地悪!」
頬を少し膨らませて抗議するアイシェを揶揄うマルクだったが…翼を出すと鉤爪で優しく頭を撫でてきて…紫の瞳は優しい眼差しを向けている。
マルク「例え飛べなくたって、アイシェはアイシェなのサ。その時はボクが抱えてやるから、何にも心配する事ないのサ。」
アイシェ「…ふふっ、ありがとうマルク。」
膨らんでいた頬は機嫌と共に元に戻り、嬉しそうな笑みを浮かべるアイシェの姿に、マルクも優しい笑みを浮かべた。
すると、台所でおやつを準備していたマホロアが…
マホロア「アイシェ~ついでにマルク、おやつダヨォ!」
アイシェ「はーい!」
マルク「一言余計なのサ~!」
台所から呼ぶ彼に元気に返事をすると、アイシェはゆっくりと立ち上がり…マルクと共に手を繋いで向かった。
奇跡の星、ポップスターは今日も平和である。
To be continued…