まめみと別れてから数分後、まめおはスルメさん達のお店に全力疾走で戻ってきた。
バンッ!
まめお「はぁ…はぁ…スルメさん…よっちゃん…!」
スルメさん「まめお、どないしたの…ビックリしたわ…。」
ちょうどお客さんもいなくなったタイミングでゆったりしていたので、スルメさんは驚いてしまったが…
よっちゃん「まめお君…!?」
まめお「タキが休憩もしねぇで水分も摂らずにナワバリを続けて…倒れたんだ…!」
スルメさん「何やて!?」
よっちゃん「タキ君が!?」
まめお「息切らして少しつらそうだったから、休憩する様に言ったけど…タキがどうしてもやりたいってロビーに1人で行っちまって…。」
よっちゃん「まめみちゃんは、タキ君と一緒にいるのね?」
まめお「あぁ…まめみはタキを家に連れて行ったよ。」
スルメさん「そうと分かればすぐに行くで、お店は臨時休業や!」
そう言うとスルメさんはお店の前に臨時休業の札をかけて、準備をしてまめおとよっちゃんと共に3人で家に向かった。
それからしばらくして…家に着いた3人
まめお「まめみ!タキ!」
急いで家に入ると2人の姿は無く、浴室からシャワーの音が聞こえてきた。
まめお「まめみ、タキはどこにいるんだ?」
シャワーを浴びているまめみに、扉越しに声をかけた。
まめみ「まめお?待っててね…。」
すると水の音が消え、お風呂場の扉が少しだけ開いた
まめお「………!」
まさかそのまま出てくるつもりなのか!?内心焦ったまめおだったが…彼女は恥ずかしさからか、顔だけを出した。
まめみ「タキ君はあたしの部屋で寝かせてるよ、まめおの下着とパジャマを貸したから…。」
まめお「あ…あぁ、そうか…分かった…。」
扉越しにうっすらと映る彼女の体のラインと見えている部分に…まめおは顔を赤くして目のやり場に困っていたが…彼女は気づいていない
まめみ「顔が赤いよ、大丈夫?」
まめおの様子に全く気付かず、顔を赤くしている彼を不思議に…そして心配して服も着てないのにお風呂場から出ようと扉を開け始めていた!
まめお「お…おまっ…!」
驚きと恥ずかしさで、更に顔を赤くして目を丸くするまめおだったが…近くにカーテンがある事を思い出して、咄嗟に勢い良く閉めてしまった。
まめみ「きゃあっ!ちょっと…どうしたの!?」
驚いているまめみとは対照的に、まめおは顔を真っ赤にして…気にしている状態では無かった。
よっちゃん「大丈夫、何かあったの…!?」
まめお「いや…まめみがシャワー浴びてて…ちょっと驚いただけなんだ…タキはまめみの部屋にいるって言ってたぜ…。」
カーテンを閉めた音を聞いてよっちゃんが慌てて来てしまい、まめおはゴホンと咳払いをしてから状況報告をした。
数分後、新しい服に着替えて扉から出てきたまめみ
それでも着ていたのはまめおの半袖で大きく、肩ははだけてショートパンツからは白い太ももが露わになっていた。
その後4人でまめみの部屋へ行くと…
タキは桃色のイカクッションを抱きしめてぐっすりと眠っていたが…同時にぐったりもしている様子だった。
まめお達が部屋に残りタキを見守る中、まめみはキッチンでコップに冷たい水を汲んで部屋に戻りベッドの近くにある机に置き…タキの手を優しく握っていた
桃色のイカクッションを抱きしめ眠っているタキの手を握りながら、まめみはそれまでの出来事をまめお達に話した。
よっちゃん「…心配してたの、元気になったとはいえまだ病みあがり…それにタキ君は頑張り屋さんで無理しちゃう子だから…。」
まめお「やっぱりあの時、無理矢理にでも止めれば良かったな…。」
まめみ「うん…そうだね…。」
スルメさん「気にしたらアカンで2人共、今はタキが目覚ますまでついてる方に専念するんや。」
よっちゃん「そうよ2人共、タキ君助かったんだから自分を責めないで。」
すると…
タキ「んっ…。」
まめみ「タキ君!」
まめお「タキ!」
少し声を漏らして、タキがゆっくりと目を開けた。
顔色は良くなったもののまだつらい様で、瞳の色は体調不良を現す「黒」だった。
タキ「まめみちゃん…。」
手を握っているまめみの姿を確認して安堵の表情を浮かべるタキに、まめみも安心して優しく笑った。
まめお「タキ、大丈夫か?」
タキ「まめお君…スルメさんとよっちゃんも来てくれたんだね…うん、大丈夫…。」
スルメさん「タキが倒れたってまめおから聞いて、慌てて飛んできたんや。」
よっちゃん「タキ君、病みあがりなんだから無理しちゃダメじゃない…無事で本当に良かったわ。」
タキ「ごめんなさい、よっちゃん…でも…みんなありがとう…。」
今回タキが倒れた原因は…病み上がりなのに休憩も挟まず、水分も摂らなかった事による脱水症状だった。
まめみ「タキ君、少しでも良いからお水飲もう?」
タキ「うん…そうするよ。」
まめみに優しく支えられながらタキは体を起こし、水を飲んだ。
まめお「タキ、何で無理するんだよ…お前にもしもの事があったら俺達は…!」
タキ「まめお君…本当にごめんね…でも僕、どうしてもナワバリを続けたかったんだ。」
まめみ「でもタキ君…あんなに暑いステージなのに水分も摂らないでいたら危ないよ…!」
スルメさん「そうやでタキ、危うくスルメイカになる所だったんや…スルメだ…」
よっちゃん「スルメさん、ダジャレ言ってる場合じゃないでしょ!」
スルメさん「おぉっ…そ、そうやったな…ゴホン!とにかくタキ、無理だけは絶対にしたらアカン。」
タキ「ありがとうみんな…でも僕…怖いんだ…。」
まめみ「怖い?」
まめお「何が怖いんだ?」
タキ「…僕…今まで家族以外に…こうして誰かに暖かく包まれた事が無くて…いつも独りだったから…みんなに嫌われてまた独りになるのが怖くて…。」
まめみ「タキ君…!」
まめお「タキ…!」
タキ「ごめん…ごめんね…!!」
そう言って俯き体は震えていて…大粒の涙が零れ落ちていく…。
すると…
まめみ「タキ君。」
タキ「っ………!」
一瞬体が強張ったタキだが…まめみが自分を抱きしめてくれていると気づいてすぐに緊張は解けた。
まめみ「タキ君……つらかったね…頑張ったね。」
タキ「…まめ…み…ちゃん…!」
まめみ「もう大丈夫だよ、あたし達はずっと傍にいるからね。」
タキ「………!」
まめみ「だから今は無理でも…少しずつで良いからあたし達を信じてタキ君…!」
そう話すまめみの体も震えていて…タキの肩には温かいものを感じて、それはジワリと濡れていく…
彼女は泣いていた…まめみが自分の事を思って泣いてくれている…タキは心が暖かくなるのを感じた。
この時、タキはまだ涙を流しつつも、まめみの背中に手を回して…彼女を強く抱きしめた。
タキ「まめみちゃん…ありがとう…あり…がと…う…うぅ…うっ…!」
まめみ「ううん…私こそ…ありがとう…タキ君…。」
スルメさん「もう大丈夫そうやな。」
よっちゃん「そうね、安心したわ。」
まめお「あぁ。」
そう言って2人を見守るまめお達の表情は、とても穏やかだった。
その後話し合い、タキはしばらくまめみ達の家に居候する事になった
それから数時間後の夕方…スルメさんとよっちゃんは店に帰り、まめみが夕飯を作り…
その間…まめおとタキはリビングで、2人でゲームをして遊んでいた。
タキ「これでどう!?」
まめお「おっ、やるな!でも負けないぜ…うりゃっ!」
タキ「あっ、そう来るか~ならこれで!」
まめお「あっ!?…あぁー!」
タキ「やったー!」
まめお「負けたー!タキ強いな!」
タキ「えへへ…!」
嬉しそうに笑うタキの瞳は「オレンジ」で、それを見てまめおも嬉しくなって更に笑顔になる。
まめみ「タキ君、まめお!ご飯出来たよ~!」
タキ「あ、うん!」
まめお「今行くぜ~!」
2人が席に座ると、そこにはたくさんの美味しそうな料理が。
タキ「美味しそう…!」
まめお「まめみは料理が上手いんだ。…あいつの母さんが料理上手だったからな、まめみも小さい頃からよく作ってた。」
タキ「そうなんだ…まめみちゃん、良いお嫁さんになれるね。」
ゴフッ!
突然そんな事を言うものだから…水を飲んでいたまめおは盛大にむせてしまった!
まめお「ゲホッ!ゲホッ!」
タキ「ま、まめお君、大丈夫!?」
まめお「あ…あぁ…大丈夫…ゲホッ…ゲホッ…!」
まめみ「何やってんのよ~まめお。」
少し呆れた様に笑いながら、まめみはサラダを置いて台所へ戻る
しかし…
タキ「………!!」
彼女の格好は昼間とはまた違い、薄いピンクのワンピースにエプロン姿。長いゲソは後ろで1つに纏めてポニーテールにしていて…
綺麗なうなじや背中…そして短いワンピースの丈がひらりと舞えば、彼女の白い太ももが見えて…タキにとっては刺激が強すぎる
しかし天然な彼女は全く自覚が無いから困ったもので…
まめみ「どうしたのタキ君、顔が赤いよ?」
タキ「あ…えと…ううん…何でもないよ…!」
まめお「ほら、食べようぜ。」
まめみ「うん、そうだね。」
そう言うとまめみはエプロンを脱ぎ、椅子に座り…
3人「頂きます!」
夕食の会話も弾み、3人は楽しい食事の時間を終えた。
その後…タキは用意された部屋で眠り、まめみも歯を磨き終わって雑誌を読んでいたらリビングに眠そうなまめおが来て…
まめお「まめみ。」
まめみ「あ、まめお。今日はお疲れ様。」
まめお「あぁ…お前もお疲れさん…ふあぁ…俺はもう寝るぜ、おやすみ。」
まめみ「おやすみ。」
挨拶をするとまめおは部屋へ戻り眠りにつき、まめみは雑誌の続きを読んでいた。
数時間後の夜中…タキが目を覚ました
トイレに行き用を足して戻ると…まめみがリビングの床のカーペットでぐっすりと眠っていて…
タキ「まめみちゃん、このままだと風邪引いちゃう。」
寝ているまめみを抱き上げて寝室へ向かい、ベッドに寝かせたタキは彼女の隣に横になると布団をかけ…まめみの頬を優しく撫でた
まめみ「ん…。」
彼女はぐっすりと眠っていて…起きる気配は無い。
トクン…トクン…
まめみの姿を見るタキの胸は高鳴り…その頬は少し赤く染まっていて…
「その意味」をタキは自覚していて…
タキ「まめみちゃん…ありがとう。」
眠っている彼女を見つめて頬を撫で続けながら、感謝の言葉を口にしたタキはそのまま安心感に包まれ再び眠りについた。
To be continued…