小説「緑髪の少年(出会い編)」~プラべでの対決~(後編)

まめおに背中を押され、まめみはタキの待つハイカラシティへ向かった。

まめみ「えっと、パスワードは…。」

ロビーに入り、まめおに教えられたパスワードを入力すると、タキが待っていた。

タキ「まめみちゃん、来てくれたんだね。」

まめみ「タキ君…あたし…。」

タキ「今は言わないで…プラベで僕にまめみちゃんの実力を見せて欲しいんだ、僕に憧れて使い始めたスピナー…ハイドラントの腕を。」

まめみ「タキ君…うん、分かった。」

最初のステージはヒラメが丘団地、ルールはガチエリア。

ハイドラント「(緊張しているな…大丈夫か、まめみ?)」

まめみ「うん…だ、大丈夫…!」

やや緊張気味のまめみだったが、深く深呼吸をして…ハイドラントを持つ手に力を入れた。

なるべく居場所が探られないよう極力塗らないで移動していたまめみだが、奥の方でゴゴゴゴと音が…

ハイドラント「(む、この音は…。)」

場所はかなり離れていたので大丈夫だったが、奥の方でタキの放ったスペシャル技「トルネード」が一気に地面を染めた。

まめみ「タキ君、トルネード持ちのブキなのね…!」

ハイドラント「(いつも以上に気を付けるのだぞ、まめみ。)」

まめみ「うん!」

とは言いつつ、タキの速い動きに翻弄されて…結果は完敗だった

Bバスパークでは、タキのカーボンローラーの動きに戸惑って見失い…

タキ「ここだよ!」

まめみ「きゃあっ!?…ぷぎゃっ!」

突然目の前に出てきたタキに驚いてやられてしまう事も

そして次のシオノメ油田では…

タキ「今度は僕もスピナーだよ、倒せるかな?」

まめみ「ま…負けないもん…!」

タキ「うん、そのくらいが一番いいよ!」

スプラスピナーコラボを使うタキの、サブであるポイズンボールに苦戦させられるものの…

まめみ「(バレてないかな…?)」

センター手前の物陰に隠れて機会を伺うまめみ

タキ「ここかな!?」

そう言ってまめみのインクを自分のインクで塗りつぶすタキ

しかし…彼は真横を向いていてまめみが隠れているのに気がついておらず、攻撃が止んだその瞬間に飛び出した!

まめみ「あたしはこっちよ、タキ君!」

タキ「そこに…くっ…うわあぁぁ!」

まめみ「やった!」

そう言ってまめみは嬉しそうにピョンピョンとジャンプをした。

そして…次の試合は、モンガラキャンプ場

まめおの時と同じく、まめみにとっても思い出深い…大切な場所

敵に足下を塗られて動けなくて覚悟を決めたその時に、後ろからタキ君が助けてくれたあの時の事、今でも覚えてるよ。

タキのブキは「ハイドラントカスタム」

サブ、スペシャルこそ違うものの…性能はハイドラントと同じ

タキ「行くよ、まめみちゃん!どれだけ腕を上げたのか、僕に見せて!」

まめみ「うん!行くよタキ君!」

かつて…ハイドラントで戦うタキの姿に憧れ、まめみもハイドラントを選んだ

そして今…その磨き上げたハイドラントの腕をタキに示す時が来たのだ。

まめみは全力で挑み、タキもそれに全力で応え…その後タキはバレルスピナーデコに変えて再び試合を開始した

突然ダイオウイカで現れて倒されたりもしたが、先ほどと同様、まめみも全力で立ち向かった。

そしてプラベが終わった後…2人で仲良く座って池を眺めていたタキとまめみ

すっかり日は暮れ夕方になっていて…夕日が沈み始めていた。

タキ「ありがとう、まめみちゃん。僕…とっても楽しかったよ。」

まめみ「あたしこそ、本当にありがとうタキ君。あたしも楽しかったよ。」

タキ「…強くなったね、まめみちゃん。」

まめみ「え…えぇ…!?そ…そうかな…?」

タキ「…ハイドラントの腕は、僕を苦戦させるくらいだったよ。もしかしたら、いつかは僕を凌ぐ強さになってるかもしれないね。」

まめみ「ぽ…タキ君…!…ちょっと恥ずかしいけど…嬉しい…。」

そう言ってはにかむ彼女の頬は、真っ赤に染まっていた。

タキ「まめお君と朝からプラベしたんだ、まめみちゃんへの気持ちが…想いが本気だって認めてもらう為にね。」

まめみ「タキ君…。」

タキ「まだお話してないんだよね?」

まめみ「うん、まめおはヒラメが丘の公園で待ってる。」

タキ「行っておいで、まめみちゃん。」

まめみ「タキ君…!」

タキ「先に家で待ってるから、まめお君とゆっくり話しておいで。」

まめみ「うん、ありがとうタキ君。」

その後タキと別れ、まめみはヒラメが丘の公園へ。

まめお「まめみ。」

まめみ「まめお!ごめんね…遅くなっちゃった…!」

急いで走ってきたのだろう…。息を切らしているまめみに、まめおは優しく笑って頭を撫でた。

まめお「座ろうぜ。」

まめみ「うん…。」

しばらくして彼女の呼吸が整った頃…2人は話を始めた

まめお「俺達さ…ホント今まで1回も離れた事ないよな。」

まめみ「うん。」

まめお「覚えてるか、まめみ?お前が小さい頃、ここで遊びに夢中になりすぎてお漏らししたの。」

まめみ「覚えてる!下着からサンダルまで全部びしょびしょになっちゃって泣いてたっけ。そしたらまめおが着てた上着を脱いであたしの腰に巻いて隠してくれたんだよね。」

まめお「それで帰ってから母さん達に話してすぐに風呂入ったんだよな。」

まめみ「あたしがおねしょしちゃった時も、まめおが自分のパジャマの股をわざと水で濡らして『おれがやったんだ。まめみをおこらないでくれ』って言って…お母さん達笑ってたっけ。」

まめお「……ダイオウイカに襲われたあの日も…背中の激痛と薄れゆく意識の中で、お前の頭を抑えながらしっかりと抱きしめてたの…今でもはっきりと覚えてる。」

まめみ「あたしは…まめおがぎゅって抱きしめてかばってくれた辺りで…恐怖で気絶しちゃったから、その先の記憶はないけど…まめおが温かくて…すごくドキドキしてたのは覚えてるよ。」

まめお「……お前との思い出は、話し出したらキリがねぇな。」

まめみ「ふふっ…うん、そうだね。」

まめお「……これまでも…これからもずっと…お前だけだと思ってたんだ、まめみ。」

まめみ「まめお…。」

まめお「けど…タキはお前に惹かれた、そしてお前もタキに…すげぇショックで…今までの事も全部消えた気がして混乱して…どうしたらいいか分からなかった。」

まめみ「…………。」

まめお「けどな…スルメさんやよっちゃんに説得されて俺は俺で悩んで…タキとプラベで対決して…俺もあいつも全力でぶつかって分かったんだよ、タキの本気が…あいつが俺よりも強くお前を想ってるのが。」

まめみ「まめお…!」

まめお「…タキの事が好きか、まめみ?」

まめみ「…うん。まめおの事は大好きなの…でもその大好きは兄妹…お兄ちゃんへの大好きに近い感覚だって気づいたの。」

まめお「そうか…。」

まめみ「うん…。」

まめお「……俺もな、悩み抜いた末に辿り着いた答えはお前と同じだった。」

まめみ「えっ…?」

まめお「お前が大事な大事な妹みたいな存在で…兄として守ってやりたかったんだ、そしてスルメさんとよっちゃんから聞いたんだ、お前がハイドラントに諭された事…そして…外の世界へ旅立つ時だと。」

まめみ「まめお…!」

まめお「これからも、今までみたいに仲良くやってこうぜ、まめみ。」

まめみ「まめお…まめお…!」

そう言うとまめみは、まめおに飛びついた。

まめお「おわっ!お前…これからはタキがいるんだから、そんな風に飛びつくなよ?」

まめみ「…気をつける。」

まめお「…へへっ。」

まめみ「…ふふっ。」

2人で仲良く笑い合って、おでこをコツンと当てたまめおとまめみ

大きな変化が起きたが、2人の絆はこれからも変わらない。

まめおはあと数日スルメさんのお店で寝泊まりしてから家に戻ると言ってお店へ戻り、まめみは被っていたイカンカンクラシックを外してF-190の帽子を被ると、家に向かって歩き出した。

プラベに行く前に、まめおがまめみの耳元に囁いたある言葉…それは

「俺は…従兄として家族として…これからもお前を守る。」

To be continued…