小説「緑髪の少年(再会編)」~語る思い、秘めた想い~

まめおとまめみの決意を打ち明けられた次の日の早朝…

タキはハイカラシティの広場にあるベンチに座り、1人俯いていた。

まめみへのこの気持ち…彼女を失いたくないと強く願う思い…

そして…怒りの感情が昂ぶった時に強制的にダイオウイカになってしまう悩み…様々な思いが複雑に絡み合い、苦しんでいた。

まめみへの想いを伝えようかとも思ったが、仮に恋人同士になっても…もし彼女が長く生きられないなら…

彼女の事だ、自分を置いて先立ってしまう事を申し訳無く感じてしまうだろう…それならこの想いを伝えずに秘めたままでいた方がいいんじゃないか…何度も心の中で問いかけるものの、答えは出ない。

彼女を失うかもしれない…突然居なくなってしまうかもしれない…そう考えただけでタキは気が狂いそうになってしまう…。

すると…俯いているタキの足下に人影が…

顔を上げると、そこには3Kスコープを担いだフーがいた。

フー「どうしたんだタキ、何か悩んでるみたいだな。」

タキ「…………………。」

何も言わずに再び俯いてしまったタキだが、フーは突然驚くべき行動に出た!

フー「そらっ!」

タキ「!!」

突然フーが3Kスコープをタキの方へ向かって軽く振り、その隙に彼の腕を掴もうとしたのだ。

タキは間一髪の所でかわしたがフーは不敵な笑みを浮かべている

フー「ほう…考え事をしていてもその洞察力…やるな。」

タキ「……何のつもりだ。」

フー「タキ、俺とプラベで対決してくれないか?」

タキ「対決…?」

フー「お前とは1度手合わせしたいと思ってたんだ。最初は3Kスコープ同士の戦いでどうだ?」

タキ「リッター同士…。」

フー「俺の3Kスコープの腕に気後れしたか?」

ほんの少し渋り気味のタキだったが…フーはわざと挑発をした。それは彼の思惑通り、彼の闘争心に触れた様で…

タキ「…僕は負けない…そのプラベ、受けてやる。」

今も残る強い不安と、フーに対する若干の苛立ちでタキの表情は険しいが、フーは満足そうに口角を上げた。

フー「そう来ねぇとな。よし、行くぞ。」

場所はマサバ海峡大橋で、フーもタキも共に3Kスコープ。

タキ「(あいつは…あそこか!)」

姿を捉えたので3Kスコープを構えたタキだが…

ズドン!!

フー「それで俺を撃ち抜くつもりか?」

タキ「くっ…!(僅かな隙間から狙ってるのか…!?)」

壁の裏でチャージし、ゆっくり出てきて撃とうとしたタキだが…

フー「遅いぞ!」

ドォン!!

タキ「くっ…うあぁ…!」

さすが3Kスコープ使いのフー。素早い動きでタキを撃ち抜き隙がない。

その後もフーがどんどん足場を塗り進めて行き、タキは動きが制限されてしまう。

フー「どうした!お前の実力はそんなものか!?」

タキ「くっ…!」

残り時間はあと僅か…攻撃のチャンスはこれで最後だろう…

…負けない…

負けたくない…!

負けるものか!

タキは再び3Kスコープを構えてチャージを始めた。

そして…

フー「行くぞ!」

タキ「僕は…お前に勝つんだあぁぁぁ!!」

ドゴオォン!!

フー「ぐっ…あぁぁ…!」

結果は…相撃ちだった。

そして試合は終了。

次のステージはキンメダイ美術館。

お互いに装備を変えて来たが…先程とは違い、少し緊張した様子のフー。

伝説の帽子を被り、タイシャツに身を包んだその姿は…ある職業を思わせる様な格好だ。

一方タキはいつの間にか悩む事を止めていた。

ハイドラントを担いでただひたすらに…全力でフーに立ち向かっていく。

立ち回りも先程とは違いとても素早く、フーが翻弄されるほどだ。

タキ「ここだ!」

フー「くっ…うわぁっ!」

タキ「…ふぅ…。」

その後も何度か手合わせをしたが、試合は互角どころか、タキが段々と優勢になってきたくらいで…

タキ、さすがだな…

あの時に見た…怒りによって繰り出されるお前の動き…

それだけじゃない、お前は洞察力にとても優れている

俺でさえ…鍛えていないとすぐにお前に追い抜かれそうだ…

今まで…ここまで俺を追い詰めた奴はいなかった

タキ…お前は俺を超える可能性を秘めている…

俺が焦りと畏怖に近い感情を覚える位にな

2人は互いの力を出し切った。

そして…試合は終了。フーは深呼吸をして呼吸を落ち着けているタキの横に座り、静かに口を開いた。

フー「やっぱり、俺の目に間違いは無かったな。」

タキ「どういう事…?」

フー「…お前を挑発したのは悪かった。あれはわざとなんだ。」

タキ「えっ…!?」

フー「お前は記憶を失くしてるから覚えてないが、あの一件の時…怒り状態のお前の動きは、俺ですらも読めなかった。」

タキ「そうなの…?」

フー「お前は洞察力の高さもそうだが、状況判断にも優れている。それはきっと…お前があいつを…まめみを強く思う時に強く発揮されるのかもしれないな。」

タキ「……………!」

そう言われて、タキの頬は赤く染まった。

フー「ははっ…分かりやすいなお前は。…まめみが好きなんだろう?」

タキ「……好きだよ。…けど…けどまめみは…あの運命が…。それに…僕は怒ると強制的にダイオウイカになってしまう…それで彼女に迷惑が…。」

フー「…タキ、まめみがもしも短命なら…それだけで、お前の気持ちは変わってしまうのか?」

タキ「…そんな事は無い…あるはずが無い…!」

フー「ならそれで十分じゃないか。」

タキ「え…?」

フー「お前がまめみを想う…その強い気持ちがあれば、それだけで十分だろう。ダイオウイカの事だって、まめみがそれで迷惑に感じてると思うか?もし迷惑に感じてたら…ダイオウイカになった時…あいつが必死に呼びかけて止めないだろ。」

タキ「フー…。」

フー「…自分の気持ちを抑えるな、タキ。まめみもまめおも強い決意をしてる。けどな…それでも不安に感じてるはずだ。俺達が支えてやらないでどうする。…まめみを支えてやれ、俺達が支えきれない分お前があいつの力になってやるんだ。それはお前にしか出来ない事だ、そうだろう?」

タキ「僕にしか出来ない事…。」

フー「…やれやれ、俺もいつの間にかお節介焼きになってるな。」

そう言うとフーは伝説の帽子を取って、タイシャツのネクタイを緩めた。

タキ「…ありがとう、フー。…僕の中で答えが出たよ。」

フー「お、そうか。それならよかった。」

タキ「…それと、その格好…もしかして…?」

フー「お、気づいたか?…へへっ、警察官みたいだろ?」

夢の警察官に向かって日々努力しているフー。

彼の今の格好は、その憧れを彼なりに表現したものでもあったようで、フーの緑色の瞳はキラキラと輝いていた。

タキ「うん、見えるよ。」

そう話すタキも、どこか嬉しそうで…ターコイズブルーの瞳には強い光が宿っていた。

ありがとう…フー

まめみ…僕…まめみが好きだよ

怒るとダイオウイカになっちゃったりするけど…

それでも…ずっとまめみの傍にいて守りたいんだ

To be continued…