小説「緑髪の少年(再会編)」~想い、再び結び合う~

フーとのプラベを通じて、まめみに想いを伝える事を決意したタキ。

一方まめみは…

まめみ「……っ……。」

まめおに告げられた悲しき運命…

もしかしたらすぐにでも命を落としてしまうかもしれない恐怖…

それでも、その運命を受け入れた上で精一杯生きると決めた。

しかし…それでも不安がよぎる事はあって…

でも、まめおは強くいる

みんなも支えてくれる。

まめみはみんなに気づかれないように、夜…こっそり部屋で黄緑のイカクッションを抱きしめて泣いている日が増えていた…。

ハイドラント「(…………。)」

我が唯一、主と認めた娘…それがまめみだ

店で飾られていた我をいつも見ていた桃色の瞳は輝いていて…

我を使いこなそうと…心を通わせようと努力するその姿…

その真っ直ぐな心に…我は心を打たれ

お前を「唯一の主」に選んだのだ。

まめみ…1人で抱え込むな…

お前は1人ではない…甘えていいのだ…

………………

別の日、タキとまめみはナワバリに出かけたが…

タキ「まめみ…最近ずっとタコマスクを付けてるね…何かあったの…?」

まめみ「え…あぁ…何でも無いよ。」

タキ「……何だか元気が無いよ。」

まめみ「本当に大丈夫…行こうタキ君。」

基本的に顔を隠すギアを付ける事が無いまめみ。

しかしここ数日はずっと「タコマスク」を付けているのだ。

マスクの目の部分から僅かに見える瞳はどこか虚ろで…ナワバリをしている最中も、まめみは何か焦っているようにも感じて…いつもの立ち回りとは明らかに違い、自ら戦陣に突っ込んで行ってしまう事が多い…。

そんなまめみが、タキは心配でたまらなかった。

タキは試合終了後、まめみをスルメさんのお店に先に向かわせて…ブキチの所へ行った。

ブキチ「タキ君、どうしたんでしか?」

タキ「…ブキチ、あの装置を貸して欲しいんだ。」

ブキチ「構わないでしが、あのデメリットだけはどうにもならないでしよ…?」

タキ「それでもいいんだ、今日だけ貸してくれないかな?」

ブキチ「それは構わないでしが…どうかしたんでしか?」

タキ「ありがとう…うん、どうしても今日聞きたいブキがあるんだ。」

そう言ってタキはブキチから装置の入った袋を受け取り、店を出た。

そして夜…タキはまめみ達が眠った後にリビングへ来て、置かれているハイドラントにそっと声をかけた。

ハイドラント「(…タキ…?)」

タキ「…ハイドラント、君の声を聞かせてくれないかな。僕は会話は出来ない、でもこの装置でハイドラントの声を聞きたい。まめみの事を教えて…何を隠しているのか知りたいんだ、僕は彼女を助けたい…だからお願い。」

そう言ってタキが装置を頭にセットしてスイッチを入れると…少ししてハイドラントの声が聞こえてきた。

ハイドラント「(…我の声が聞こえているか、タキ…?もし聞こえているなら…まめみを助けてやって欲しい。あの娘は……運命の恐怖を1人で我慢しているのだ…。まめおや皆に心配をかけまいと…明るく振る舞っているが、夜は1人で泣いている…。そしてタコマスクの下でも…あの娘は静かに涙を流しているのだ…。タキ、まめみを頼んだぞ。)」

そう言うとハイドラントは静かになり、タキは装置のスイッチを切った。

タキ「うっ…くっ…!」

強い頭痛に襲われるタキだが、その脳裏にはハイドラントの声が…言葉が強く残っていて…

まめみ…1人で抱えないで…

みんなを…僕を頼ってよ…

夜が明けて…次の日。

まめお「んじゃ、行ってくる。」

まめみ「うん、行ってらっしゃい。」

この日はまめおは先に朝ご飯を終えて、スルメさんのお店の手伝いへ出かけ、タキはまめみと朝食を食べた後…彼女にこう告げた。

タキ「まめみ、今日は僕とプラベで勝負してくれないかな?」

まめみ「タキ君と…?うん、いいよ。」

タキ「ありがとう、それじゃあ行こうか。」

まめみ「うん。」

2人はハイカラシティへ向かい、プラベの準備をした。

最初のステージはアロワナモール

まめみはタコマスク、イカライダーBLACK、タコゾネスブーツと全身が真っ黒な装備…

対してタキの装備は

タキ「…手加減はしないよ。」

まめみ「……………!」

タコマスクの下で、桃色の瞳が大きく開かれた。

クロブチレトロにイカノメTブルー…ウミウシイエロー

その格好は……モンガラであたしを助けてくれた…あの時の…!

ハイドラントカスタムを持ちながら震える手に力を込めてまめみは立ち向かったが…タキは素早く立ち回り、まめみを翻弄した。

まめみ…

タコマスクの下で…きっと今も泣いているんだよね…?

僕に全てぶつけて…委ねて…

その不安を…隠さないで…まめみ…

1キル出来たものの、タキに翻弄されたまま試合は終了。

そして次のステージは…モンガラキャンプ場。

お互いに着替えてブキを変えて来たが…

タキ「…僕はこれで行くよ。」

まめみ「……………!」

ブキは同じハイドラント。

そして装備は…

まめみはタコマスク、F-190、タコゾネスブーツ

そしてタキは…同じタコマスク、F-190、モトクロスソリッドブルーだった。

タキ君…どうして…同じ…F-190を…

この…思い出の場所で…!

試合が開始して…まめみは全力で立ち向かった。

しかし…タキもそれは同じ。

そして…やはりタキの立ち回りが素早く…まめみは気づかぬ内に後ろを取られている事も多くて…

タキ「こっちだよ!」

まめみ「いつの間に後ろに…きゃあっ!」

僕はまめみを守りたい…例え長く一緒にいられなくても、僕はまめみの傍にいたいんだ

一緒に生きよう…まめみ

結局ほとんど倒せないまま…試合は終了。

するとタキはまめみに近づいて、自身のタコマスクを外した。

タキ「まめみ、もう1人で抱えないで。」

まめみ「タキ君…?」

タキ「昨日、ブキチから装置を借りてきてハイドラントの声を聞いて…教えてもらったんだ。まめみがずっと1人で苦しんでいるのを…夜も試合中もマスクの下で泣いている事も。」

まめみ「ハイドラントが…。」

タキ「まめみ、1人で全部抱えないで…もっと頼ってよ。」

まめみ「タキ…君…。」

タキ「僕がいる…僕がずっと傍にいるよ。」

そう言うとタキはまめみの顔に触れて彼女のタコマスクを外して抱きしめ、まめみは桃色の瞳に涙を溜めたまま…驚きで目を見開いた。

まめみ「…ポ…ナ…君…?」

タキ「…まめみ、僕…まめみが好きなんだ。」

まめみ「……………!!」

タキ「怒るとダイオウイカになっちゃうし、迷惑かけちゃう事も多いけど…それでもまめみが大好きで一緒にいたいんだ。」

まめみ「タキ君…タキ…く…ん……っ…!」

あの時…ここで言ってたよね…

…例えずっと思い出せなくても…僕は再び…まめみちゃんに恋をするよ。そして…まめみちゃんにもう一度…告白するよ。

あの言葉…本当に…なった…よ…

まめみが静かに瞳を閉じると、頬を伝って涙が零れ落ち…抱きしめているタキのF-190に消えていった。

タキ「まめみ…まめみは…どうかな?」

まめみ「あたしも…あたしも大好きだよ…タキ君…!」

タキ「よかった…!…まめみ、大好きだよ…!」

そう言うとタキはより強くまめみを抱きしめた。

まめみ「ぐすっ…ふふっ…タキ君…痛いよぉ…。」

タキ「わっ…ご、ごめんね…!」

泣きながらも笑いながら訴えるまめみに、タキは慌てて力を弱めた。

まめみ「ふふっ…タキ君、大好き!」

タキ「まめみ、ありがとう…!」

お互いに頬を真っ赤に染めながら顔を見合わせて嬉しそうに笑い

タキはまめみにゆっくりと顔を近づけ…優しいキスをした。

まめみ「タキ君…。」

タキ「ずっと一緒にいようね、まめみ。」

まめみ「うん。」

緑髪の少年の強い想いによって、桃色髪の少女の悲しみの涙は喜びの涙に変わった。

その後もプラベは続き、2人きりの時間を過ごした。

一方…2人がプラベを楽しんでいるのと同じ頃、ブキチがスルメさんとよっちゃんのお店に向かっていた…。

To be continued…