小説「白は空色に染まる」~友達以上、恋人未満?~

まめおとスーが恋人になってしばらく経ったが、穏やかで平和な日々を過ごしていたまめみ達…

最近の変化は…タキは一人称が俺に変わり、フーは警察官になる為に苦手なシューターの扱いに慣れる為の練習を始めていた。

幸せな日々を送るまめみ達だったが…1つ気になっている事があった。

それは…フーとペコの関係である。

まめみ「フーさんとペコちゃん…恋人なのかな?」

タキ「イマイチ分からないんだよね…姉さんも自覚が無い感じというか…。」

まめみ「でも、2人でいる事が多いし…何かお互いの事話す時に嬉しそうだよね。」

タキ「うん。」

まめお「フー兄はどうなんだよ、スー?」

スー「う~ん…あたしにもよく分からないわね。でも…毎日ペコが兄貴にお弁当を差し入れしてるのよね。」

ペコ「え、姉さんがそんな事を?」

スー「こないだ偶然見かけて、兄貴に聞いたらそう言ってたわよ。」

同じ頃…そんな話をされているとは知らず、ペコはお弁当を手にフーの元へ向かっていた。

ペコが練習場に着くと、フーはちょうどシューターの練習を終えて休憩しているところだった。

眠ると記憶を失うペコだが…フーの事は覚えていられる様になったらしく、毎日お弁当を作っては彼の元へ持って行くのだった。

フー「ふぅ…とりあえずこれで一旦休憩だな…。」

ペコ「お疲れ様、フー。」

フー「お、ペコ…今日もありがとうな。」

ペコ「どういたしまして。」

3Kスコープ使いのフー、愛用ブキの事情故に眉間には常に深い皺があり…鼻の傷や鋭い目つきも相まって一見怖そうな印象だが…本当は正義感が強く心優しい青年なのだ。

そしてペコの姿を見つけるとその表情は穏やかになり、口元は優しく笑っていた。

ベンチに座って蓋を開けると…そこには色とりどりのおかずとおにぎりが入っていた。

フー「お、今日も美味そうだ。」

そう言うとフーはおにぎりを手に取り頬張った。

ペコ「どうかしら?」

フー「ん、今日もすげぇ美味い!」

まるで子供の様に夢中で食べるフーを見て、ペコも嬉しそうに笑う。

ペコ「シューターの調子はどうかしら?」

フー「最初の頃に比べたらだいぶマシだが、まだまだ…だな。」

ペコ「あら、それでもかなりの的を倒せてるじゃない。」

フー「警察官になるには狙いを定められる様にならないと…いざという時に身を守れないからな。」

ペコ「そうなのね…。」

フー「…そんな顔をするなペコ、俺は簡単に死んだりしない。」

そう言うとフーは、ペコの頭を優しく撫でた。

ペコ「フー…。」

フー「ごちそうさん。…さて、練習を再開するか。」

そう言うとフーはシューターを持って再び練習を始めた一方、ペコは彼に撫でられた場所に手を当てて…その頬は赤く染まって…

その後夕方までフーが練習を続けるのをペコはベンチに座りながら見届けた。

練習を終えた後、フーはペコを自宅まで送り届けた。

ペコ「送ってくれてありがとう、フー。」

フー「あぁ。それじゃあ、また明日な。」

そう言うとフーは、またペコの頭を優しく撫でて帰って行った。

一方ペコは再び頬を赤く染めつつも…寂しげな瞳で彼の背中を見つめていた。

次の日もペコはお弁当を作って、フーの元へ向かった。

最近彼女は毎日ノートに日記を書いており、朝起きたらそれを読んで今までの事を知る様にしている

たとえ記憶が繋がらなかったとしても…モヤモヤするこの感覚をほんの少しでも埋められるのなら…そう思いながら日記を書いていた。

練習場に向かうと、フーは練習の最中で…ペコは彼の邪魔にならない様に、遠くからそっと様子を見守っていた。

フーを見ていると…自分の心が吸い込まれてしまいそうな…何とも言えない不思議な気持ちになる…

心は暖かくなり、ドキドキして…ずっと彼の傍に…その姿を見ていたいと思ってしまう一方、その気持ちが何なのか…ペコはまだ気づいていない。

一方フーは練習が一段落した様で、流れる汗を拭いながら戻って来たが…ペコの姿を見つけるといつも通りその表情は柔らかくなり優しく笑う。

ペコ「今日もお疲れ様、フー。」

フー「ペコ、今日もありがとうな。」

2人はベンチに座り、フーはお弁当を食べ始め…ペコはその様子を見ていたが…今日は少し寂しげな様子だった。

ペコ「…………。」

フー「…どうしたペコ?何だか元気がないな…。」

ペコ「え…そうかしら…?」

フー「いつも俺ばかり食べてるからな…ペコも少しは食え。」

そう言うとフーはおかずのタコさんウィンナーを取り…ペコの口へ運んだ。

ペコ「…………!」

フー「どうだ、美味いだろ?」

確かに彼の言う通り、自分で作った物だが美味しい…

けど…何よりも…フーの顔がとても近くて…

その緑色の瞳から目が離せなくて…

胸の鼓動が聞こえてしまうのではないかと思うくらい速くなるのを感じた…。

ペコ「え…えぇ、美味しいわ…。」

フー「俺はペコが作ってくれる弁当が好きだ。」

ペコ「フー…!」

フー「ごちそうさん。さて…もう少し練習してくるか。」

そう言うとフーは立ち上がってペコの頭を撫でて再び練習を始め、ペコは頬を赤らめつつ…胸に手を当てた。

鼓動は相変わらず速いままで…でも…何故か心地よさを感じて…

ペコは頬を赤らめたまま…フーの練習を見守っていた。

そして夕方…いつも通りフーはペコを自宅まで送り…

ペコ「…ありがとう…フー…。」

フー「どういたしまして。それじゃあ、また明日な…」

そう言ってフーが帰ろうと背を向けた瞬間…

ぐいっ

後ろから引っ張られる感覚がして…気づいたらペコが自分の着ているスタジャンロゴマシの裾を掴んで引っ張っていて…

振り返るとペコは俯いていた…。

ペコ「……………。」

フー「どうした、ペコ…?」

ペコ「……っ………しょ…に…。」

フー「ん…?」

ペコ「今夜…一緒に…いて………私を…独りに……しない…で……。」

フー「…………!!」

若い男女が同じ部屋に一晩2人きり…

それが何を意味するのか、気づかない男はまずいないだろう…

フーは驚いて目を見開き、その頬は一気に赤く染まった…

ペコ「……………。」

フー「…ペコ…そ…それはつまり…その…!」

しどろもどろになるフーだったが…

ペコ「…ダメ…なの…?」

フー「……っ……!!」

彼を見上げるペコの茶色の瞳は今にも泣きそうで…

その頬は真っ赤に染まっていて…

彼女の白いゲソは夕陽に照らされて美しいオレンジに輝き…

フーは思わず見とれて息を飲んだ。

そして…一呼吸置くと、彼女の肩に手を乗せて…真剣な表情で語りかけた。

フー「…本当に、いいのか…?」

ペコ「…えぇ…。」

フー「…分かった。」

ペコ「ありがとう…フー…。」

そう言うとペコは嬉しそうに笑い…その表情や仕草にもフーはドキドキが止まらなかった。

そして2人はペコの家の中へと消えて行った…。

しかし…フーが思っていた展開は全くなく…

フー「……………。」

ペコ「…すー……すー……。」

1つのベッドに向かい合ったまま…フーとペコは互いを見合わせる様に横になっていて…

ペコはそのまま眠りの世界へ…

一方フーは…もどかしい気持ちでいた

……そういつもりじゃなかったのか…?

……こんなの…生殺しだ……。

目の前で無防備な姿を見せている彼女を見つつ、下半身はモヤモヤして勝手にもぞもぞ動いてしまい…それを必死に抑えようとフーは葛藤した。

ペコ「……すー…すー…。」

フー「(…俺はペコの事が………けど…ペコは違うのか…?)」

いまだに心はモヤモヤしていたが…相変わらず眠り続ける彼女の頬を撫でて…フーも何とか眠りについた。

To be continued…