あれから一夜明け…まめみは目を覚ました。
隣にはタキの寝顔があり、その表情は穏やかだ
そっと布団を抜け出し、眠い目を擦りながら辺りを見渡すと…まだ外は薄暗いが、誰かがお店の準備をしている様だ
まめみは眠っているタキを起こさない様に部屋を出ると、そこにはよっちゃんが居た。
よっちゃん「あらまめみちゃん、おはよう。よく眠れたかしら?」
まめみ「おはようよっちゃん。うん、よく眠れたよ。」
優しい笑顔で話すよっちゃんに、まめみも笑顔で返事をした。
タキ「…………。」
ぼんやりとした意識の中、2人の声が微かに聞こえた気がして…
起きなきゃと思い、タキはゆっくりと目を開けた。
すると、まめみとよっちゃんが部屋に入って来た。
どうやら無意識に声が出ていた様で、2人が気づいたのだ。
まめみ「おはようタキ君。」
よっちゃん「おはよう。」
タキ「おはようまめみちゃん、よっちゃん。」
相変わらずの優しい笑顔で挨拶をしてくれる2人に、タキも笑顔で挨拶をした。
それから少し経ち、まめおがやって来た。
まめお「おはようタキ、顔色も良いし大分楽になった感じだな。」
タキ「おはようまめお君。うん、今日は今までと比べたらかなり楽になったよ。」
まめお「良かった、タキがずっと苦しいのは俺達もつらいからな…。」
タキ「まめお君…。」
よっちゃん「さあ、3人共お腹空いたでしょう?タキ君はおかゆ、2人にも朝ご飯作って来るから待っててね。」
まめお「ありがと~よっちゃん!もう腹減ってしょうがねぇよ。」
まめみ「わ~い!久しぶりによっちゃんのご飯食べれる!」
タキ「よっちゃんのおかゆは美味しいから、僕も楽しみだよ。」
よっちゃん「あら、嬉しいわ!ふふっ、待っててね。」
そう言うとよっちゃんは、台所へ行き…
その間、3人はナワバリバトルの話をしていた。
まめお「そういえば、この前の煽り野郎の話してなかったな。」
タキ「うん、どうなったの?」
まめみ「ウデマエがS+だからって調子に乗ってたの。」
まめお「ホント調子こいた顔してやがったぜ、相変わらず卑怯なプレイングして煽ってたしな。」
タキ「本当に酷い奴だね…!」
まめみ「でも、あたし達勝ったよ。」
タキ「えっ?」
まめお「あの野郎の手の内は分かってるんだ、だからまめみと強力して裏を掻いてやったさ。最後は言葉にもなって無ぇ捨て台詞吐いて逃げてったぜ。」
タキ「そうだったんだ…それじゃあ、これで少しはマシになったのかな。」
まめお「…完全に消えた訳じゃねぇけど、それでもあの常習犯は当分ナワバリには来れないだろうな、広場のブロックリストに載ってたし。」
タキ「そっか…僕が行けなかったのは残念だけど…でも、ありがとう2人共。」
まめお「へへっ。」
まめみ「タキ君を傷つけてあそこまで追い込んだんだもの…許せないよ。」
タキ「ありがとうまめお君…まめみちゃん…!」
まめみ「……タキ君、あたし…タキ君にまだ謝ってない…。」
タキ「まめみちゃん…。」
まめみ「この前…タキ君を傷つけて…逃げちゃって…本当にごめんなさい…!」
謝るまめみの瞳には涙が…。
タキ「…まめみちゃん、謝らなきゃいけないのは僕なんだよ…僕こそ傷つけて本当にごめんね…。」
まめみ「タキ君…!」
まめお「まめみ、タキにも話そうぜ、俺達の秘密を…ダイオウイカの事を。」
まめみ「うん、タキ君…話しても大丈夫?」
タキ「うん、僕は大丈夫…2人が僕を受け入れてくれた様に、何があっても2人を受け入れるよ。」
まめお「タキ…!」
まめみ「タキ君…ありがとう…!」
そして…2人はタキに全てを打ち明けた。
今は亡き母親から継いだ「ブキと心を通じ合わせ…会話出来る能力」
昔…ダイオウイカに襲われ、まめおの背中に残る傷痕と、その正体がスルメさんだった事
悩んだ末…スルメさん達と和解し「ダイオウイカ」を乗り越える決意をした事
2人が話し終えるまで、タキは真剣な表情で頷いていた。
まめお「…これが俺達の持つ秘密だ。」
まめみ「今までそれでつらくて…お母さん達が亡くなった後は、スルメさんとよっちゃんに出会うまでは2人で生きてきたの。」
タキ「2人共…凄くつらい思いをしたんだね…でもさっきも言った通り僕は2人を受け入れるよ、だって大切な人達だもの。」
まめお「タキ…ありがとな…!」
まめみ「ぐすっ…ありがとう…タキ君…!」
泣きながら感謝の言葉を口にする2人に、タキは優しい笑顔で2人の手を握った。
そして…よっちゃんが朝食を持って来た
よっちゃん「ご飯出来たわよ。暖かい内に召し上がれ。」
まめお「おっ、美味そう!」
まめみ「あたしの大好きな卵焼きがある!」
タキ「僕も早く回復して、よっちゃんの作る普通のご飯も食べたいなぁ。」
よっちゃん「しっかり休めば直に良くなるわ、まずはしっかり食べて休まないとね。」
タキ「うん。」
まめお「よし、食べようぜ!」
3人「頂きます!」
そう言って3人は朝ご飯を食べた。
2人は朝ご飯を平らげ、タキもおかゆと水を完食した。
そして…タキはまだふらふらするものの、自力で立てる位にまでは回復していた。
まめお「せっかくだから、今日は3人で少し出掛けるか?」
まめみ「あたしは良いけれど…タキ君は大丈夫?」
タキ「うん、少しふらふらしてるけど…出掛けたい。」
まめお「決まりだな、行くぞ!」
2人「うん!」
こうして、3人はハイカラシティの広場へ
久々に外に出たタキには、太陽の光が眩しいが…暖かくて心地良かった。
そして3人はエチゼン君のお店へ
エチゼンくん「いらっしゃイのませ。」
色んな服のギアを見ていたが…
タキ「あっ…。」
彼が見つけたのは、「F-190」。
深緑の生地に、帽子の部分はフワフワのフェイクファーが付いたオシャレなコートだ
まめお「おっ、イカしてるな!」
タキ「うん、カッコイイ…!」
まめみ「せっかくだから、3人分買おうよ!」
タキ「本当?凄く嬉しい!」
そう言って嬉しそうにしているタキの瞳は「オレンジ」だった。
エチゼンくん「感謝です!」
その後3人はF-190を購入して早速着用してみた
タキ「どうかな?」
まめみ「うん、凄く似合ってるよタキ君!」
まめお「イカしてるぜ、タキ!」
タキ「ありがとう!まめみちゃんも可愛いし、まめお君もカッコイイよ。」
まめみ「え!?…あ、ありがとう…!」
感謝の言葉を口にするまめみの頬は真っ赤で…でも、とても嬉しそうだった。
3人は楽しい時間を過ごし…
夜
今日はまめみも、まめおと家に帰ってしまった為…お店にいるのはスルメさんとよっちゃん、タキだけになった。
しばらくしてタキは布団に横になりながら…今日の事を思い出していた
まめおの喜ぶ姿、まめみが照れて頬を赤らめている姿
一緒に過ごした時間が嬉しくて…自然と笑みが零れた
すると、スルメさんが部屋に入って来た。
スルメさん「タキ、具合はどうや?」
タキ「うん、落ち着いてるよ。」
スルメさん「それはよかったで。」
タキ「どうしてみんな、こんなにも僕に優しいの…?」
彼の疑問に、スルメさんは優しい笑顔でこう言った
スルメさん「それは、タキがみんなにとって大切で、守ってあげたい存在だからやで。」
タキ「ありがとう、スルメさん…すごく嬉しい。」
疲れていたが、タキは嬉しそうに笑っていた。
朝…タキがゆっくりと目を覚ますと、ちょうどよっちゃんが入って来た。
タキ「ふわぁ…おはよう…よっちゃん。」
よっちゃん「おはようタキ君。」
眠たそうにしながらも挨拶をすると、よっちゃんはいつもと変わらぬ優しい笑顔で返してくれた
タキ「ふわぁ…。」
眠そうに大あくびをするタキの頭の寝癖をゲソで優しく直していると、壁にかけてあった「F-190」に気づいた。
よっちゃん「あら、昨日3人で買ったフクなのかしら?」
タキ「うん、そうだよ!昨日まめお君、まめみちゃんと3人で同じフクを買ったんだ!」
不思議そうに聞くよっちゃんに、頷いて楽しそうに話すタキの瞳は「オレンジ」だった
よっちゃん「そうだったのね、良かったわねタキ君!」
タキ「うん!」
嬉しそうに楽しそうに話すタキの様子を見て、よっちゃんも嬉しそうに笑い
しばらく2人で話をした後に、よっちゃんは朝食を作りに台所へ
すると、まめおとまめみがお店に来た。
まめお「おはよう、よっちゃん!」
まめみ「おはよう!」
よっちゃん「あらまめお君、まめみちゃんおはよう!今タキ君のご飯作ってるんだけど、2人も食べる?」
まめみ「食べるー!」
まめお「俺も食べる!」
よっちゃん「ふふっ、今日も元気ね。それじゃあ作るから待っててね!」
2人「はーい!」
元気な返事をして、2人はタキの元へ向かった。
昨日買って壁にかけていたF-190を眺めていたタキだったが、2人の存在に気づいた。
タキ「まめお君、まめみちゃん、おはよう。」
まめお「おはようタキ。」
まめみ「おはようタキ君、今日は調子良さそうだね。」
タキ「うん、昨日みんなで出かけて楽しかったからかな。」
まめみ「ふふっ、少しずつタキ君が元気になって嬉しい。」
まめお「ここの所ずっと瞳の色も黒だったけど、今日は黄色に戻ってるな。」
タキ「まだ本調子じゃないけど、みんなのおかげで元気になってきたよ。」
まめみ「本当によかった。」
まめお「タキが元気ないと、俺達も元気を失くしちまうからな。」
そう言って優しく笑う2人を見て、タキも自然と優しい笑顔になる。
3人で話していると、よっちゃんが朝食を持って来た
よっちゃん「お待たせ、朝ご飯が出来たわよ!」
まめみ「わーい!」
タキ「今日も美味しそう!」
まめお「ん~いい匂い!」
3人「頂きます!」
よっちゃん「召し上がれ。」
今日は休みなのでスルメさんは買い出しに出かけ、よっちゃんは食事をする3人と昨日の買い物についてゆったりと話していた。
まめみ「それでね、タキ君がF-190を見つけて、せっかくだから3人で買おうよって話になったの。」
タキ「みんなで同じフクを買えて、凄く嬉しかったよ。」
まめお「今度ナワバリで着ていこうぜ!」
タキ「うん!」
まめみ「楽しみ~!」
よっちゃん「ふふっ、楽しかったみたいで良かったわ。」
笑顔で話す3人に、よっちゃんも自分の事の様に喜んでいた。
朝食を済ませた後
まめお「今日も3人で出かけないか?」
タキ「うん、いいよ。」
まめみ「今日はアネモちゃんのお店に行こう。」
よっちゃん「3人共、気をつけて行ってらっしゃい!」
3人「はーい!」
よっちゃんに見送られて、3人はハイカラシティのアネモの経営するお店へ行った。
アネモ「…ぃらっしゃいませぇ…。」
恥ずかしがり屋の看板娘アネモと、毒舌な店長、クマノミのクマノだが、売っているギアは一流の自慢の品ばかりである。
3人は色んなギアを眺めて…
タキ「へぇ~こういうメガネもあるんだ。」
まめお「お、こういうキャップも良いな。」
まめみ「あ、この帽子可愛い~!あのフクに似合うかな?」
それぞれ楽しんでいたが…まめおがある品を見つけた。
まめお「おっ、これ何だ?」
彼が手に取ったのは「ナイトビジョン」
夜間等の暗い場所でも視覚を確保する為のものである。
タキ「うわぁ…カッコイイ!」
まめお「おっ、タキもそう思うか?」
タキ「うん!」
2人で目をキラキラさせながら眺めていて…
まめお「おぉー!すっげぇ!」
タキ「視界が変わるね!」
ナイトビジョンを試しに被って盛り上がってる2人をよそに、まめみは帽子を眺めていたが…
まめみ「あ、これ可愛い!」
そう言って彼女が手に取ったのは「イカンカンクラシック」
編み込まれた黒い生地に、彼女の髪色と同じ桃色のリボンがついた帽子…まめみはこれが気に入った様だ
アネモ「ぁりがとぅござぃましたぁあぁ~!」
まめおとタキはナイトビジョンを、まめみはイカンカンクラシックをそれぞれ購入した。
その後、3人はスルメさん達のお店に戻り…
まめみ「えへへ…どうかな?」
家着の白いワンピースに身を包み、買ったばかりのイカンカンクラシックを被ってお披露目した。
まめお「よく似合ってるぜ。」
まめみ「ほんと?」
タキ「うん、とっても素敵だよ。」
まめみ「ありがとう、タキ君!」
満面の笑みで言うタキにまめみも同じ位の満面の笑みで応え、賑やかな時間が過ぎていった。
To be continued…