小説「緑髪の少年(再会編)」~懐かしさとブキチの提案~

朝、起きてきたタキがリビングに行くと、まめみが朝ごはんを作っていた。

まめみ「おはよう、タキ君。」

タキ「おはよう、まめみ。」

相変わらず何も思い出せないが、まめみはいつも通りの明るく優しい笑顔でタキはホッとした。

朝ご飯を食べた後…まめおはスルメさんのお店の手伝いに、タキはまめみとナワバリに出かけた。

試合前、ブキの手入れをしていたタキとまめみ。

まめみ「今日もよろしくね、パブロ。」

パブロ「(えぇ、一緒に頑張りましょうね、まめみ。)」

タキ「パブロは何て言ってるのかな?」

まめみ「一緒に頑張りましょうねって言ってるよ。」

タキ「僕も一緒に頑張るよ。まだ腕が鈍ってるけど…頑張って勘を取り戻す。」

まめみ「無理しないようにね。」

タキ「うん、約束する。」

まめみ「あ、もうすぐ前の試合が終わるから準備しないと…。」

そう言うとまめみは立ち上がって、ロビーへ向かった。

続いてタキも向かおうとしたが…頭の中に若干のノイズと共に、まめみとナワバリで遊んでいる様子が流れた。

タキ「(何だこの感じ…前にもこんな事があった…?)」

不思議な感覚を覚えたが、試合が終了して準備を促す音楽が響いた。

まめみ「タキ君、試合が始まるよー!」

タキ「…うん、今行くよー!」

何も知らず明るい笑顔で呼ぶまめみに、タキも優しく笑って答えた。

ステージはタチウオパーキングとモンガラキャンプ場。

2人は同じチームで共に戦い、ナワバリを楽しんでいた。

~モンガラキャンプ場~

まめみ「タキ君、顔色がよくないけど…大丈夫…?」

さっきまでとは違い少し青ざめた顔をしていて、まめみは心配していたが…

タキ「大丈夫…!」

まめみ「大丈夫そうに見えないけど…。」

タキ「本当に大丈夫…!ほら…試合が始まる…!」

まめみ「う…うん…。」

試合開始後、タキは敵陣の方へ向かい、そこから自陣の大きな金網のある広い場所…記憶を失う前に、2人で景色を眺めながら話した場所に辿り着いた。

しかし坂道の横の細い通路で…タキは動けなくなってしまった…。

タキ「うっ…!(またこの感じ…何なんだ一体!?)」

まめみ「タキ君!」

気になったまめみがスーパージャンプで飛んできた。

そして様子を見ると…タキが頭を抑えて唸っていて…

タキ「まめ…み…!」

まめみ「頭が痛いの…!?」

タキ「うぅ…試合の前に…少しノイズと一緒に見慣れない映像が流れて…今もまた…全然こんな記憶無いのに…!」

まめみ「…タキ君、あたしがこの辺を守ってるから休んでて。」

タキ「まめみ…!」

まめみ「大丈夫、あたしが絶対にタキ君を守るからね。」

そう言うとまめみは上の道へ行き…タキはバレルスピナーリミックスを置き、しばらく蹲って休んでいた。

しばらくして…落ち着いたタキはバレルスピナーリミックスを持ってまめみの元へ向かい…

タキ「ありがとう、まめみ…落ち着いたよ。」

まめみ「どういたしまして、よかった。」

タキ「さて…塗り返さないとね!」

まめみ「うん!」

バレルスピナーリミックスを持つ手に力を入れて、一生懸命塗り返したが結果は僅差で負け…2人はロビーを出てきた。

タキ「っ……!」

自分があんな事にならなければと目をぎゅっと瞑り俯いてしまったが…その直後にふわっと温かい感触がして、気がつくとまめみが自分を抱きしめていた。

まめみ「お疲れ様、タキ君。」

タキ「まめ…み…僕は…。」

申し訳なさでいっぱいのタキを、まめみは抱きしめたまま背中を優しく撫でていて…

まめみ「タキ君、無理はしなくていいんだよ。」

タキ「でも…まめみも試合したいよね…?」

まめみ「タキ君の体の方がずっと大事だよ、試合は出来る時にすればいいんだから。」

タキ「そうなの…?」

まめみ「うん、だから安心して…ね、タキ君?」

彼女はいつも暖かくて優しくて…僕は安心感に包まれるんだ

けど…それと同時にいつも懐かしい気持ちにもなる

どうしてだろう…分からないけど、この温もりがすごく心地いい

タキ「ありがとう…まめみ。」

そう言ってタキは、まめみの背中に手を回して抱きしめた。

その後2人はスルメさんのお店へ…

中に入ると…ブキチが来ていてスルメさんとよっちゃん、まめおと何やら話しているようだが…

まめみ「あれ、ブキチどうしたの?」

ブキチ「まめみちゃん、タキ君、ちょうどよかったでし!」

タキ「ちょうどよかった…?」

ブキチ「2人に話があるでし。」

不思議に思いつつ、2人は椅子に座った。

まめみ「話って何…ブキチ?」

深呼吸をすると、ブキチは話し始めた。

ブキチ「まめみちゃん、君とまめお君はブキと会話が出来るでしね?」

ドクン…!

まめみ「……………!!」

煩いくらい鼓動は早くなり…まめみは驚きで目を見開き、体中からは嫌な汗が流れる…。

タキ「……まめみ……!」

青ざめている彼女の手を、タキは強く握った。

まめみ「タキ君……まめお……!」

震えた声でタキとまめおの名前を呼ぶまめみだったが、まめおは穏やかな表情で…優しく語りかけた。

まめお「大丈夫だ、まめみ。ブキチは全部知ってる。…ブキチのじいさんが、俺達の力を持つイカについて知ってたんだ。」

まめみ「え…そう…なの…?」

まめお「……実はこないだ…俺がここでバレルスピナーと会話してるのをブキチに見られたんだ。でもその時にこの話を知って…だからブキチに全て話した。」

スルメさん「ブキチは代々ブキを作る家系、ブキとの繋がりも深いから、会話する力を持つイカの事も詳しく知ってるみたいなんや。」

よっちゃん「ブキチ君なら大丈夫、そう判断したからまめお君は話したのよ。」

まめみ「そうなんだね…それならホッとしたよ。」

ブキチ「ところで…タキ君。」

タキ「…………?」

ブキチ「君は……ブキの声を聞いてみたくないでしか?」

タキ「えっ…?…確かに…2人がブキと話してて羨ましいと思った事はあるけど…。」

ブキチ「なら話は早いでしね。」

まめみ「どういう事…?」

ブキチ「実は、ブキの声を聞く事が出来る装置を作ろうと思ってるでし。その試作品を、タキ君に是非試して欲しいと思ってるでし。」

タキ「僕に…どうして…?」

ブキチ「君はまめお君、まめみちゃんと友達だし、一緒にいる時間が長いでし。それだけ2人の力の影響を受けやすいんじゃないかと思うでし。」

まめお「俺の力を元にブキチがデータを作って…装置を作ってみたいって言うんだよ。」

ブキチ「あくまでブキの声を聞くだけで、会話は出来ないでしが…声を聞いてみる事で、よりよいブキの環境を作るキッカケが出来れば嬉しいでし。」

まめみ「どうする…タキ君…?」

タキ「僕は会話が出来なくても、ブキの声を聞いてみたいな。」

ブキチ「決まりでしね!協力、感謝するでし。」

こうして…ブキチはまめおからデータを取り、装置を作る為に「1日休業」にして作業を始めた…。

To be continued…